バトル描写って難しいですね。頭で思っている事を文に起こすのに苦戦しました。
フレッドとジョージが校内を破茶滅茶にした後に自主退学した。
それに引き続いて生徒達が校内でアンブリッジに対してレジスタンス活動を始めた。
クィデッチでグリフィンドールが優勝した。
その裏でハグリッドが巨人を森に連れて来たことが判明した。
OWLの試験が行われ、数人の生徒がノイローゼになった。
試験中にハグリッドが連行されかけ、それを止めようとしたマグゴナガルが意識不明の重体となった。
そして、怒涛の日々の終わりにハリーがまたもや倒れた。
魔法史の試験中に椅子から転げ落ちたハリーを見て、同級生達は「またか」という顔をした。
ハリーが倒れるのはホグワーツの恒例行事である。
あのマルフォイですら、もう揶揄う気をなくしているようだ。
「シリウスがヴォルデモートに捕まった!僕は見た!前と同じだ。神秘部で捕まっている!」
医務室から即座に復帰したハリーはグリフィンドールの談話室でそう喚いた。
幸い、ロンとハーマイオニー、それからエスペランサ以外の生徒は居ない。
ちなみに、エスペランサはシリウス・ブラックが騎士団のメンバーで冤罪だと言う事を遠回しに知らされていた。
「いつ見たんだ?」
「魔法史の試験中に居眠りをしていて……それで見たんだ」
「ハリー。それは夢じゃないのか?」
「夢じゃない。ロンのお父さんが襲われた時と同じだった。僕はヴォルデモートの見ている光景を偶に見るんだ」
確かに前例はある。
ヴォルデモートとハリーの間には何か精神的な繋がりが出来てしまっているのだろう。
それは、ダンブルドアでなくても予想出来る事だ。
しかし、
「でもハリー。冷静に考えてみて。例のあの人がシリウスを神秘部で捕らえるなんて、現実的じゃないわ。例のあの人もシリウスも簡単に魔法省に入り込めるとは思えないもの」
「だけど、僕は鮮明に見た。どこなのかもはっきりわかる。神秘部に、小さなガラスの球で埋まった棚がたくさんある部屋があって、ヴォルデモートは97列目の棚の奥にいる。あいつがシリウスを使って、何だか知らないけどそこにある自分の手に入れたいものを取らせようとしてるのが見えた!そして、あいつがシリウスを拷問して、最後には殺すって言ってるんだ!」
「有り得ないわ!今は夕方よ?魔法省職員も大勢いる省内でそんなこと出来ると思う?」
「可能かもしれんぞ?ハーマイオニー」
「エスペランサまで!」
「魔法省内にはヴォルデモート派の連中が何人が居る。そいつらが協力すれば、魔法省内にヴォルデモートが忍び込むのは不可能じゃない。それに、ダンブルドアが追放された今、ヴォルデモートが行動を起こすには打って付けのタイミングだ」
「エスペランサの言う通りかもな。僕のパパの時の事もあるし、本当にシリウスが捕われているのかも」
ロンもエスペランサに賛同した。
「待って!待つのよハリー。例のあの人が2年生の時、ジニーを攫った理由を覚えてる?あれは、あなたを誘い込む為の罠だったのよ。例のあの人はそういう罠が得意なの。今回もハリーを誘い出す為の罠かもしれないわ」
「じゃあ本当にシリウスが捕らわれていたらどうするんだ?もうホグワーツに騎士団のメンバーは居ない。僕が行かなかったら誰がシリウスを助けるっていうんだ!シリウスは僕の家族なんだ!」
「よし、一旦落ち着け。二人とも。とりあえず今の状況を整理しよう」
「エスペランサ!そんな時間は無いよ!」
「ある。どちらにせよ今すぐに魔法省に行く手段も無い。まずは状況を整理するところからはじめる」
エスペランサはハリーを宥めた。
「まず、現段階で考えられる状況は大きく分けて3パターンだ。わかるか?」
「ええと、シリウスが本当に例のあの人に捕まっているパターンと、これがハリーの単なる夢だったってパターン」
「それから、例のあの人の罠で神秘部には例のあの人が待ち構えているってパターンね」
ハーマイオニーとロンが答える。
「そうだ。ハリーの夢落ちというパターンが最も望ましいが、それはあまり期待しない方が良いだろうし、この場合は何の問題も無いからな。とすると、残る二つのパターンなんだが、このパターンには両方とも共通する点がある」
「例のあの人が魔法省にいるということね」
「そうだ。特に罠だった場合、ヴォルデモートが戦力を整えた上で待ち構えている可能性がある。神秘部についた瞬間にヴォルデモートと死喰い人の集団を相手にするのは俺でも嫌だ」
「じゃあ僕らにはどうしようもできないじゃないか」
ロンが悲壮的に言う。
「その通り。だから情報を集める必要がある。これが罠だと分かれば俺達は何もする必要は無い」
「でも、本当にシリウスがヴォルデモートに捕らわれていたら……」
「その時、ハリーはどうしたいんだ?」
「僕はもちろん、助けに行く!」
「無謀にも程があるぞ?相手は今世紀最強格の魔法使いだ」
「それでも行くよ。僕はシリウスを助けたい」
無謀だ。
そんなことは不可能だ。
そうエスペランサは思った。
恐らく、セオドールも同じ気持ちでエスペランサを止めようと思ったのだろう。
だが、ハリーはそれを承知で大切な人を助けようとしている。
その姿に自身を重ねて見たエスペランサはもう止めようとは思えなかった。
止めようとは思えなかったが、ハリーを失う訳にもいかなかった。
「分かった。俺も協力する。対ヴォルデモート戦なら2回経験し、死喰い人とも戦闘経験がある俺が味方に加われば心強いだろ」
「エスペランサ、でも、君はこの件には関係ない……」
「関係あるんだよ。ハリー。どの道、魔法省にはヴォルデモートが居る可能性が高いんだろ?なら俺が行く理由には十分だ。あのクソ野郎は俺が息の根を止めてやると誓ったからな」
そう言ってエスペランサは談話室に置かれていた武器の山から機関銃を持ち上げた。
何はともあれ、まずはシリウスが本当にヴォルデモートに捕らえられたかどうかを確かめなくてはならない。
その方法はアンブリッジの部屋にある煙突飛行ネットワークを使い、シリウスの隠れ家であるグリモールドプレイス12番地に直接行き、彼の安否を確かめるのが手っ取り早い。
問題は、アンブリッジの部屋の暖炉をどうやって使うか、だ。
「簡単な事だ。アンブリッジの気を引けば良いんだ」
エスペランサはかろうじて弾薬庫から持ち出した虎の子のC4プラスチック爆弾とMINIMIを使い、アンブリッジの気を引こうと考えた。
「お前さん。また廊下を爆破する気か」
1階の廊下の壁に爆薬を取り付けるエスペランサを見て、たまたま居たフィルチが溜息をつく。
年に何度も城を爆破されては管理人もたまったものではない。
「悪いが、今日だけ付き合ってくれ」
「わしはどうなっても知らんからな」
ハーマイオニーの呼び掛けに賛同したネビル、ジニー、ルーナもエスペランサの作業を手伝っていた。
C4の設置はやり方さえわかれば誰にでも出来る。
「C4設置完了!」
「よし!皆、2階に避難だ」
ネビルの報告を受け、エスペランサは他の皆を避難させる。
彼自身も階段の裏に隠れ、1階に誰も居なくなった事を確認した。
「派手にやるとするか!3、2、1、点火!」
起爆したプラスチック爆弾は轟音と共にホグワーツの1階廊下を跡形もなく消し飛ばした。
「何だ何事だ!」
「何が起こったんだ!」
爆発音を聞きつけ、尋問官親衛隊、他の生徒や職員が駆けつけてくる。
エスペランサは階段の影から粉々になって粉塵の舞う廊下に躍り出ると、5.56ミリ機関銃MINIMIを片手にして叫んだ。
「フレッドとジョージが居なくなってから城内が静かだったからなぁ!俺も花火を上げさせてもらったぜ!ちょっとやり過ぎたがな!」
「ルックウッド!ついに狂ったな!もう、言い逃れは出来ない!退学だ!」
尋問官親衛隊の面々が一歩前に出てきてエスペランサに一斉に杖を向ける。
尋問官親衛隊は出て来たが、肝心のアンブリッジの姿が見えない。
アンブリッジを誘い出すために廊下を爆破したのに、当の本人が現れないのでは意味が無い。
エスペランサは銃口を天井に向け、引き金を引いた。
乾いた連続射撃音と共に天井に銃弾が叩き込まれる。
「ひぃっ!」
「きゃあ!」
「俺を退学にしたいならアンブリッジを連れてきやがれ!」
エスペランサは叫んだ。
だが、アンブリッジは現れない。
「下がれ尋問官親衛隊。君達にエスペランサを止めることは不可能だ」
冷静な声が階段の上から聞こえる。
見れば野次馬達を押し退けて、セオドールをはじめとした元センチュリオンの隊員達が杖を構えながら降りて来ていた。
「ノット!僕達は現校長の命でポッター一味を取り締まりに来ている。君たちの出番は無い」
尋問官親衛隊の隊長であるマルフォイがセオドールに食ってかかった。
クラッブやゴイルといった他の親衛隊構成員もセオドールに威嚇した。
「ウィーズリー兄弟や他の一般生徒の悪戯にすら手を焼く尋問官親衛隊にエスペランサを拘束するのは無理だ」
「何だと!?」
「君達はエスペランサという男を理解していない。彼は目的も無しに廊下を爆破したりはしない。この行動には何か意味があると考えるのが普通だ」
エスペランサが廊下を爆破するのは最早、ホグワーツの風物詩であったが、常に意味のある爆破だった。
トロールを倒すため、秘密の部屋に行くため、クラウチJr.を倒すため。
ならば、今回も何か目的があって爆破したに違いない。
その答えはすぐに出た。
「そこまでです。ルックウッド。あなたの目論みは破綻しました」
アンブリッジが現れる。
そして、アンブリッジの横には既に拘束されたハリーがいた。
「ポッターに私の部屋の煙突飛行ネットワークを使わせる為に、騒ぎを起こして私を誘導させる魂胆だったんでしょうけど。詰めが甘かったようですね。私は城内の暖炉を常時監視できるシステムを導入しているのです」
勝ち誇ったように言うアンブリッジを見てエスペランサは嘆声を漏らした。
「とんだストーカーもいたもんだ」
「さあさあ、あなたも投降しなさい。親衛隊はロングボトムやウィーズリー達も拘束するのです」
尋問官親衛隊の面々は階段の下にいたネビルやロン達を拘束し始めた。
エスペランサは少し迷った挙句にMINIMIを地面に下ろす。
こうなっては抵抗も無駄だろうと判断した為だ。
アンブリッジの部屋に拘束されたエスペランサ達と尋問官親衛隊が並んでいる。
エスペランサもハリー達も杖を没収されていた。
アンブリッジの机の上にはエスペランサとネビルから取り上げた武器が並べられている。
MINIMIにM733、M24。
各種弾倉と手榴弾の類、それからコンバットナイフ。
エスペランサとネビルはクラッブとゴイルに拘束され、ハーマイオニーはミリセント、ロンはワリントンに拘束されている。
ジニーとルーナもスリザリンの上級生に捕らえられていた。
セオドール達は居ない。
彼らは尋問官親衛隊ではないからだ。
「さてさて、ポッターは煙突飛行ネットワークを使って誰と接触しようとしていたのかしら?」
「誰でも良いだろう?」
「そうね。まあ良いわ。今からスネイプ先生が来て真実薬を使って吐かせる訳だし」
アンブリッジはニンマリと笑った。
「魔法界には黙秘権が無いみたいだな。ハーグ陸戦協定の爪の垢でも飲んで欲しいね」
杖を突きつけられながら嫌味を言うエスペランサは当然、無視された。
「お呼びでしょうか?」
アンブリッジの部屋にスネイプが訪れる。
「スネイプ先生。ポッターに使うために真実薬が必要なの。また持ってきてくれないかしら?」
「左様ですか。残念ながらこの間渡した分が最後です。真実薬の調合にはあと1ヶ月の時間が必要で、そうすぐに差し出せるものではない」
「私は!今欲しいと言っているんです!」
「何度も言うようで申し訳ないが、今は在庫が無い。ポッターに毒薬を飲ますのであれば協力したいところですが、真実薬は無理ですな」
「もう良いです!あなたも停職です。もう少し物分かりの良い人だと思っていましたが残念です!」
エスペランサはフローラが真実薬を調合するの間近で見ていたから分かるが、スネイプは明らかに嘘をついていた。
スネイプとしてもアンブリッジがハリーに真実薬を飲ませるのは阻止したいところなのだろう。
「パッドフットが捕まった!あの人に、あれが隠されてる場所でパッドフットが捕まった」
突然、ハリーがスネイプに向かって叫ぶ。
スネイプは少しだけその言葉に反応した。
「どういう事ですか?パッドフットって何?」
「さっぱりですな」
そう言い残し、スネイプはアンブリッジの部屋を出て行った。
「仕方ありません。こうなれば、磔の呪いを使ってでもポッターに口を割らせなくては」
「違法です!魔法省の役人が禁止された魔法を使うなんて!」
ハーマイオニーが批判するが、アンブリッジはニンマリとするだけだ。
「あら、私だってやりたくはありません。ですが、これしか方法はありません」
「大臣はあなたが磔の呪いを使う事をよく思わないわ!」
「大臣が知らなければ犯罪ではないのですよ?」
エスペランサは迷った。
ハリーに磔の呪いがかけられるのは阻止したい。
その気になればアンブリッジも、親衛隊も制圧出来るだろう。
だが、それはリスクが高い。
どうする……?
「違法な魔法を使ってもポッターに真実を吐かせたとなれば大臣は喜ぶでしょう。夏に大臣には内緒でポッターに吸魂鬼を差し向けた時もそうでしたし」
「え?そんな、まさか!あなたが僕に吸魂鬼を寄越したんですか!?」
「ええ。そうですよ?ポッター。魔法省では誰も彼もがポッターを失墜させたいと思っていた。だから、私がやったのです。だから、今夜も私が行動を起こさなくてはいけない」
アンブリッジはまもなくハリーに磔の呪いをかけるだろう。
吸魂鬼を私的利用するようなヤバい人間なのだから、それくらい平気でやる筈だ。
そして、今、ヴォルデモートは魔法省にいる。
エスペランサとしてはシリウス・ブラックを救う事は二の次で、ヴォルデモートを仕留めるまたと無い機会を逃す訳にはいかなかった。
行動を起こすなら今しかない。
エスペランサは決断した。
「おい、クラッブ」
エスペランサは自身を物理的に拘束しているクラッブに話しかけた。
「おん?」
「お前、近くで見ると山トロールよりブサイクだな」
「殺す」
瞬間湯沸器の如く頭に血が昇ったクラッブが杖を放り投げてエスペランサに殴りかかった。
だがその瞬間に隙が生まれる。
クラッブののっそりとした打撃を半歩下がって躱したエスペランサは代わりに彼の顔面を殴りつけた。
「グボァ」
鈍い音と共にクラッブは床に崩れ落ちる。
あっという間の出来事に親衛隊達は反応が遅れた。
エスペランサは攻撃の手を緩めない。
クラッブの鳩尾を踏みつけて完全に戦闘不能にさせた後、ネビルを拘束しているゴイルに攻撃を仕掛けた。
ネビルの拘束に両手を使っていたゴイルは当然、対応が出来ない。
エスペランサはゴイルの足を払い、バランスを崩させた。
「チャンスだ!ネビル!」
「了解!」
拘束が一時的に解けたネビルはゴイルの股間を思い切り蹴り上げる。
ゴイルは堪らず気絶した。
「ルックウッド!あなた!ただでは済まさないわ!」
アンブリッジはエスペランサに杖を向け、失神光線を放った。
だが、エスペランサはゴイルを盾にして攻撃を防ぐ。
ネビルは混乱していた親衛隊の一人から無理矢理杖を奪い取り、その親衛隊を吹き飛ばす。
「ロングボトムを拘束しろ!」
マルフォイが叫び、残っていた尋問官親衛隊達が杖を構え始めた。
「ネビル!武器だ!銃を奪還しろ」
「そうはさせないわ!覚悟しなさい。ルックウッド」
エスペランサは自分の羽織っていたローブをアンブリッジに向けて投げつける。
アンブリッジは一時的に視界を失った。
その隙にエスペランサは机に飛び乗り、アンブリッジとの間合いを詰める。
間合いを詰めれば杖で狙いをつけるのは困難だ。
銃が相手の時も同じだが、近接戦闘に持ち込めば飛び道具は意味をなさなくなる。
ローブが床に落ち、視界を取り戻したアンブリッジはエスペランサに杖を向け直した。
だが、遅い。
すでに至近距離に迫っていた彼は、アンブリッジの杖腕である右手を掴みあげた。
「離しなさい!痛たたたた」
「悪いな。こいつは破壊させてもらうぞ!」
エスペランサは掴んだアンブリッジの手から杖を奪う。
そして、奪った杖を真っ二つにへし折った。
「あああ!私の杖が!」
アンブリッジは悲壮な声を上げる。
一方でネビルも尋問官親衛隊相手に無双をしていた。
奪取したM733で威嚇射撃をして親衛隊を怯ませた後に、片っ端から失神光線を命中させていく。
拘束を解かれたハリー、ロン、ハーマイオニー、そしてジニーも果敢に反撃を開始した。
こうなればもう形勢はエスペランサ達の側にある。
ワリントンはネビルによって失神させられ、ミリセントはハーマイオニーに石化された。
最後まで残っていたマルフォイはハリーとロンとジニーに杖を突きつけられている。
ちなみにルーナはこの間、一切の戦闘を行わず、傍観していた。
「インペディメンタ・妨害せよ」
「ぐわっ」
ネビルの妨害の呪文がマルフォイに命中し、マルフォイの動きが止まった。
「お前の負けだ。アンブリッジ。魔法省高官も案外大した事無かったな。嘆かわしい限りだ」
「こんな事をしてただで済むと思っているの?」
「あんたがその台詞を言うのか。どうやらあんたの職場でヴォルデモートが暴れているらしいぞ?そいつを俺が退治しに行ってやる。感謝するんだな」
「何を言っているの?そんなわけないでしょう!?」
「俺も俄には信じられんが……とりあえず、これは返してもらうぞ」
エスペランサは机の上に置かれていたM733や弾倉を回収し始める。
「それから、あんたは少し眠ってろ。ステューピファイ・麻痺せよ」
失神光線がアンブリッジに直撃し、彼女は頭から床に倒れ落ちた。
「ネビル。寮に戻って準備する時間は無い。セオドール達が来る前にホグワーツから脱出し、魔法省へ向かう必要がある。手薄だが、武器はここにあるものが全てだ」
「了解。僕にはこれがあれば十分だよ」
ネビルはM24狙撃銃と7.62ミリ弾を回収した。
狙撃銃に小銃、短機関銃2挺と拳銃。
破片手榴弾4つとスタングレネード。
コンバットナイフが一つ。
弾薬は全て合わせても400発を下回った。
「ハリー。ブラックが神秘部でヴォルデモートに捕らえられてるというのは確かなんだな?」
「うん。間違いない。煙突飛行ネットワークでシリウスの隠れ家を見に行ったけど、シリウスはいなかったし、クリーチャーの証言からも捕らえられたのは間違いない」
エスペランサにはクリーチャーというのが何者かは分からなかったが、神秘部にヴォルデモートが居るのはどうやら確実らしい。
「でもやっぱり君たちを巻き込めない。ここから先は僕だけで行く」
「そいつは思い違いだ。ハリー。俺はブラックの救出を手伝いに行くんじゃない。ヴォルデモートを殺しに行くんだ」
「僕もエスペランサと同じ理由で行く。他の人は?」
「私達も行くわ。その為にダンブルドア軍団で頑張ってきたんだもの」
全員の意見が一致した。
「でも、足はどうしよう?煙突飛行ネットワークは魔法省に監視されてるし……」
ロンが言う。
確かに、魔法省の存在するロンドンまでの移動手段がない。
「箒はどう?」
「無理だ。ナビゲーション無しではたどり着けない。ホグワーツとロンドンの位置関係すら俺達は知らないんだからな」
「移動手段ならあるよ」
今までほとんど喋っていなかったルーナが口を開く。
「本当か!?」
「うん。セストラルに乗せてもらえば良いんだよ。セストラルなら迷う事なくロンドンまで辿り着けるでしょ?」
「その手があったわ!でも、セストラルはどこにいるのか分からない」
ハーマイオニーが言う。
「大丈夫だよ。セストラルは禁じられた森にいっぱい住んでるもん。それに、セストラルを見ることが出来る人がここには3人も居るでしょ?見つけるのはそんなに難しくないと思う」
「よし。移動手段があるなら話は早い。急いでセストラルのところに行こう」
ハリーの号令で、全員、アンブリッジの部屋を飛び出した。
禁じられた森に行く為にアンブリッジの部屋を出て、1階の大広間に出たエスペランサ達であったが、大広間から外へ出る扉の前に一人の生徒が立っていることに気付く。
まるでエスペランサ達の行手を阻むように立っているその生徒はセオドールだった。
エスペランサ達は立ち止まる。
「どこへ行くつもりだ?」
「さあね。お前には関係ないだろ?」
「当ててやろうか。隊長。ヴォルデモートのところだ」
セオドールはさらりと言い当てる。
彼の言葉にハリー達は驚いた顔をしたが、エスペランサは少しも驚かなかった。
セオドールにとって、エスペランサが廊下を爆破した理由を推測し、これから何をしようとするかを予想するのは容易かっただろう。
「考えれば分かることだ。これは罠だ。大方、ポッターが魔法省にヴォルデモートが出現したという夢でも見たんだろう?ウィーズリーの父親が襲われた時と同じように。今回もポッターは自分の大切な人が襲われている夢を見たんだろう。それで、助けに行こうとしている。違うか?」
「御名答だ。だが、もうホグワーツにはダンブルドアも居ないし、魔法省は役立たずだからな。俺達で行こうって話だ」
「いや、違うな。エスペランサ。君はこれがヴォルデモートの罠かどうかなんて関係ないんだな。君はヴォルデモートと戦う事を目的として魔法省に行こうとしているんだろう」
「そうだ、と言ったら?」
「悪いが全力で止めさせてもらう。君が行ったところで、全員、ヴォルデモートに殺されるのがオチだ。僕はそういう無駄な死を防ぐ為にここに来たんだ」
セオドールは杖をエスペランサ達に向けた。
「あいつは本気だ。先に行け。ハリー、ネビルもだ!」
「でも……」
「これ以上時間を無駄に出来ない。セオドールは俺が引き付ける。その隙に行け!3カウントで走り出せ!3、2、1!行け!」
エスペランサはカウント終了と同時にM733の引き金を引いた。
もちろん、セオドールに命中させるつもりはない。
狙いは大広間の天井に吊られているシャンデリアだ。
銃弾を受けたシャンデリアは勢い良く床に叩きつけられ、その破片が宙に舞う。
「今だ!行け!走れええ!」
落下したシャンデリアに気を取られたセオドールの脇をハリー達が走り抜ける。
「まあ良いさ。さっき元センチュリオンの隊員全員に召集をかけた。彼らが来ればポッター達は簡単に拘束出来る。だから、僕は今ここで君を拘束出来ればそれで良い」
そう言って、セオドールは杖をエスペランサに向けた。
彼がが杖を向けた瞬間、エスペランサの持つ小銃と短機関銃が吹き飛ばされる。
「何!?お前、まさか」
「無言呪文だ。習得には然程時間はかからなかった」
セオドールは無言呪文で武装解除呪文を使ったらしい。
しかも、エスペランサからは二つの銃が武装解除された。
無言で2回の武装解除呪文を発動させた事になる。
セオドールの魔法の腕はホグワーツでもトップレベルのものだったが、まさかここまでとはエスペランサも思っていなかった。
「流石だな。だが、俺も負けるわけにはいかない。ステューピファイ」
エスペランサは失神光線を放つ。
しかし、それも無言の盾の呪文で防がれてしまう。
魔法の撃ち合いでは分が悪い。
そう判断したエスペランサは不意をつくためにスタングレネードを取り出し、投擲した。
「スタングレネードで目潰しをした後に相手を制圧。君の十八番だ。だが、僕には通用しない」
セオドールは投擲されたスタングレネードを魔法で消し去った。
5年生で習う高難易度魔法。
消失呪文だ。
だが、消失呪文を使う事で一瞬だけセオドールに隙が出来る。
エスペランサはその隙をついて間合いを詰めた。
「相手にわざと魔法を使わせ、隙を作る。これも、君の十八番だったな」
「戦闘中に会話とは随分と余裕じゃねえか」
近接格闘戦ならエスペランサの方が圧倒的に有利だ。
彼はセオドールに殴りかかった。
セオドールはその攻撃を間一髪でかわしたが、この殴打はブラフ。
続く回し蹴りを躱す余裕は無かった。
「ぐおっ」
胴体に回し蹴りを受けたセオドールは体勢を崩し、膝をつく。
思ったよりもダメージがあった。
腰を鈍い痛みが襲う。
「ステータム・モータス 強制回避」
追撃をするエスペランサから逃れる為にセオドールは強制回避の魔法を使う。
後方3メートルの位置に強制的に移動した彼は即座に武装解除呪文を無言で放つ。
武装解除呪文はエスペランサに命中して、彼の杖は明後日の方向に飛んでいった。
「くそっ!」
「勝負あったな。これで君の武器は何も無い」
「まだ俺自身が残っている!」
杖を失ったエスペランサはセオドールに突撃をかけた。
やぶれかぶれの特攻だ。
だが、セオドールは油断しなかった。
エスペランサはセオドールの魔法攻撃を避け、再び間合いを詰めて近接戦に持ち込む魂胆なのだろう。
ならば、躱され易い失神光線や武装解除呪文よりも、広範囲を攻撃出来る魔法が有効だ。
「コンフリンゴ・爆破せよ」
セオドールは自身とエスペランサの間の床をまとめて爆破した。
爆風でエスペランサは後方へ吹き飛ばされる。
無論、至近距離での爆破呪文はセオドールにも被害を与えた。
吹き飛ばした床の破片が彼の身体を切り裂く。
石で出来た床に滴る鮮血をチラリと見たセオドールは、ここでようやく勝ちを確信した。
銃はおろか、杖すら持たないエスペランサはこの爆風で確実に戦闘力を奪われたに違いない。
殺傷を極力避ける為にエスペランサ自身ではなく、手前の床を吹き飛ばしたわけだが、それでも大ダメージは受けるだろう。
だが、セオドールの予想は大きく外れた。
爆破による黒煙の奥に無傷のエスペランサが見える。
「何っ!?」
驚いたセオドールは再び杖を構えたが、遅かった。
何故か無傷のエスペランサは、何故か杖を持っていたのだ。
「エクスペリアームズ・武器よ去れ」
武装解除呪文が彼の杖から放たれ、セオドールの杖が宙を舞う。
「何故だ。僕は確かに君から杖を奪ったはず……。まさか」
「杖を複数持っていれば、武装解除呪文は然程怖くない。この通り、な」
エスペランサは懐から4本の杖を取り出した。
「杖を複数本隠し持っていたのか!」
「ああ。クラッブとゴイル、ワリントンとミリセントの杖だ。ちょいと失敬してきた」
彼は魔法使いが決闘を行う時、何故、予備の杖を持たないのかが疑問だった。
杖を複数持っていれば武装解除呪文の対抗手段にもなるし、不意の奇襲も可能だ。
故にエスペランサは尋問官親衛隊の面々から杖を勝手に借用した。
もっとも、他人の杖というのはあまり言う事を聞いてくれないため使い勝手が悪い。
それでも、簡単な盾の呪文と武装解除呪文程度なら発動出来たわけだ。
「俺の勝ちだ。ステューピファイ・麻痺せよ」
失神光線を放つエスペランサ。
セオドールの意識はそこで途切れた。
「悪いなセオドール」
自分の杖と小銃、それに短機関銃を拾い上げたエスペランサは地面に倒れて動かなくなったセオドールに声をかけた。
全力で自分を止めに来てくれたセオドールを放っておくのは心が痛んだが、もはや一刻の猶予も無い。
エスペランサはハリー達に追いつく為に走り出そうとした。
タァン
走り出そうとしたエスペランサの足元に一発の銃弾が撃ち込まれる。
「動かないで下さい。そして、武器を捨てて下さい」
「フローラか」
エスペランサが振り返るとフローラがM92を構えて立っていた。
銃口はエスペランサに向けられている。
「お前も俺を止めに来たわけだな」
「そうです。魔法省に行けばあなたは確実に殺されます。これは罠です」
フローラの手は震えていた。
「なぜ罠だとわかる?」
「それは……。私の義父はヴォルデモートと組んで今年一年、裏工作をしていました。恐らく、ポッターを魔法省に誘き寄せる為に。そして、あなたを殺す為に」
「なるほど。という事は今、魔法省にヴォルデモートがいるのは確実なんだな」
「そうです。そして、アエーシェマ・カローも確実にいます。あなた達がのこのこ現れるのを待ち構えているでしょう」
「それは良い事を聞いた。ヴォルデモートだけじゃなく、アエーシェマの息の根も止められる良い機会って訳だな」
「あなたは……馬鹿なんですか?そうまでして殺されたいんですか!勝ち目がある訳ないじゃないですか!それでも行くんですか?そんなの自殺行為です」
フローラは激昂してもう一発弾丸を撃ち込んだ。
だが、エスペランサは動じない。
「フローラ。俺、魔法界のこと結構好きなんだよセンチュリオンの隊員も、他の生徒も、先生も。そんな魔法界が脅かされそうになってるんだ。勝ち目が無いから戦わない。普通に考えればそうだろう。だがな、俺は軍人だ。軍人の本望は最後の最後まで国民を守ること、つまり、今の俺にはヴォルデモートから魔法界を守らないといけないんだ。勝ち目がある無しに関係無く、俺は皆を守る為に戦うんだ。それが俺の生き方だ」
「そんな生き方……認められる訳ないですよ」
「認められようとは思っていない。俺のこの生き方を隊員に強要してしまったのが俺のミスだ。だから、ここからは俺だけで良い。ヴォルデモートの息の根を止めるのは俺一人で十分だ」
「あなたは分かっていない。何で私やセオドールがあなたを止めようとしているのか。あなたに死んで欲しくないからです!」
「俺だって誰にも死んで欲しくない。だから、戦いに行くんだ」
エスペランサは再び歩き出した。
フローラはそんなエスペランサに銃口を向け、引き金を引こうとする。
足でも手でもどこでも良い。
今なら確実に命中させることが出来るだろう。
エスペランサを止めるには致命傷にならないが、行動不能にさせる程度のダメージを与えれば良い。
しかし、フローラは引き金が引けない。
指に力が入らない。
エスペランサに銃弾を撃ち込む事を本能が拒否している。
フローラは自分にはエスペランサを止められない事を悟り、地面に膝をついた。
崩れ落ちた彼女を残し、エスペランサは禁じられた森に向かう。
大広間にはフローラの啜り泣く声のみが残された。
グロウプとベインは出番無しということで