今夜は金ローでグーニーズですね!
ハリーはエスペランサ以外の全員と合流した。
予言が置かれた部屋の出入り口の扉の前まで逃げて来た彼らは皆、息を切らしている。
ハーマイオニーもロンもジニーもルーナも今のところは無傷だ。
「皆、無事みたいだね。奴らに追いつかれる前に脱出しよう」
「ええ。そうね。あれ?エスペランサは?」
「まさか……死喰い人に捕まったんじゃ?」
「そんな事は無い…と思う。エスペランサは戦闘のプロだ。そう簡単にやられはしないだろう」
そう言いつつも、ハリーは心配になり、部屋の奥に目をやった。
「居たぞ!あそこだ。捕まえろ!」
突然、赤い閃光がハリー達に襲いかかる。
2人の死喰い人が通路の奥から失神光線を乱発しながら走ってくるのが見えた。
「盾の呪文だ!プロテゴ!」
「プロテゴ!」
ハリー達は盾の呪文を展開して失神光線を防いだ。
「ポッター以外は殺せ!アバダ……」
死喰い人の一人が死の呪文を唱えようとする。
だが、詠唱を終える前に彼らの全身に5.56ミリ弾が撃ち込まれた。
ギャァという悲鳴を上げて床に倒れ込む2名の死喰い人。
脇の通路からはM733を構えたエスペランサが飛び出してきた。
彼は死喰い人とは別のルートで出入り口まで走って来たらしい。
「エスペランサ!無事だったのか!」
「ああ。死喰い人を3人ほど処理していたら遅れちまった」
「し…処理って、まさか……」
ハリーはそこではじめてエスペランサの服が返り血に染まっている事に気付いた。
恐らく、3人の死喰い人を亡き者にしたのだろう。
「ぐ…た……助け…」
「こいつ、まだ生きてたのか。急所を狙った筈だったが、俺の腕も落ちてたみたいだな」
死喰い人の片方はまだ絶命していなかった。
どうやら致命傷にはならなかったらしい。
もう一人の方は脳天を撃ち抜かれて即死していた。
死喰い人は掠れる声で命乞いをする。
「助けて…助けてくれ」
「悪く思うな。これは戦争だ」
エスペランサは血塗れで倒れている死喰い人の口にM733の銃口を突っ込む。
彼の声は冷淡だった。
「何をするの!?エスペランサ!」
「何って……殺すに決まってるだろ」
「駄目よ!殺しちゃ!」
ハーマイオニーがエスペランサを止めようとした。
ハリー達他のメンバーも彼の行動を咎めようとする。
だが、ハーマイオニーをエスペランサは睨んだ。
彼の目は既に戦闘員の目になっている。
その目にハーマイオニーは恐れを覚えた。
敵を殺す事に一切の抵抗を持たない。
そんな目だ。
エスペランサが数多の戦場で敵兵を殺傷してきたことはハーマイオニーも察していたが、実際に人を殺す彼を見るのははじめてだった。
いつも一緒に生活していた陽気なエスペランサと、躊躇いもせずに死喰い人を殺すエスペランサが同一人物だとはとても思えない。
「じゃあどうしろって言うんだ?捕虜にでもするか?言っておくが、こいつを助けたところで俺達には何のメリットも無い」
数の上で有利な死喰い人と戦うのなら一人でも敵の数を減らさなくてはならない。
情けをかければ自分達の首を絞めることになる。
それに、助けた死喰い人が後々、脅威にならないとも限らない。
エスペランサはそれらのことを嫌と言うほど知っていた。
「でも!殺すなんて死喰い人とやってる事は変わらないのよ?」
「その考えが前回の戦争で不死鳥の騎士団が不利になった原因だ。敵を殺す事に躊躇していたら、こっちが殺られるんだ。戦場に道徳なんてものを持ち込んでも足を引っ張るだけだぞ。正義の味方(ヒーロー)ごっこがしたいのなら他所でやれ」
エスペランサは命乞いをしていた死喰い人の口内に銃弾を撃ち込んだ。
タン、という乾いた音と共に死喰い人は絶命する。
ハーマイオニーは小さな悲鳴と共に目を閉じた。
ハリー達も顔を強張らせている。
「他の死喰い人が来る前にここを離れるぞ。今の銃声を聞きつけた連中が襲ってくるはずだ」
エスペランサはそう言いつつ、2つの手榴弾を取り出した。
手持ちの手榴弾はこれがラストだ。
「何をするつもりなんだい?」
「罠を仕掛ける。上手くいけば一人でも多くの死喰い人を倒せるかもしれん」
彼は手榴弾の安全ピンを抜く。
そして、安全レバーが飛ばないように死喰い人の死体を手榴弾の上に被せた。
死体を使った最も簡単に出来るトラップだ。
作業をしながらエスペランサは自分が思っていた以上に冷静な事に気付く。
彼とて対人戦闘で人を殺したのは数年ぶりだ。
ホグワーツの生活で平和ボケしていた故に敵を殺す事に躊躇ってしまうかもしれないとも思っていた。
だが、一瞬で彼は戦闘員に戻ることができた。
現時点で殺した死喰い人は5人。
あと10人残っている。
死喰い人はホグワーツの生徒が相手とあって油断し、慢心していたのだろう。
だからエスペランサの奇襲攻撃が効いたわけだ。
しかし、5人も殺されたとなれば、もう油断も慢心もしないだろう。
敵は本気でこちらを叩きにくる。
ここからが本当の戦闘だ。
「くそっ!殺してやる殺してやる!」
二人の死喰い人が杖を構えてハリー達を捜索している。
水晶玉、その他の逆転時計を含めた様々な魔法道具が粉々になり、無数の棚が崩壊している部屋の中での捜索は困難を極めた。
倒れた棚を浮遊魔法でどかして進路を確保するのは時間がかかる作業だ。
「冷静になれ。セルウィン。敵を侮るな」
「ああ!?こっちは3人も殺されたんだ!ホグワーツのクソガキに!見つけたらズタズタにしてやる。磔の呪いに悪霊の炎……」
「熱くなりすぎだ。アエーシェマが言っていただろう。エスペランサ・ルックウッドに気を付けろ、と。今は冷静さが求められる状況だ」
トラバースが言う。
沸点の低いセルウィンと違い、トラバースは冷静だった。
彼はその冷静さから死喰い人の中でも参謀的な役割を果たしている。
そうこうしている内に二人は部屋の出入り口に到達した。
そこには二人の死喰い人が血を流して倒れている。
床には血による水溜まりが出来ていた。
「おい!大丈夫か!しっかりしろ!」
セルウィンが倒れていた死喰い人を抱き起こす。
息は既に無い。
絶命している。
「くそっ!許さねえ!」
そして、抱き起こした死喰い人の身体の下からゴロゴロと2つの手榴弾が転げ出て来た。
ピン、という音と共に重りを失った手榴弾の安全レバーが本体から外れる。
「何だ……こ」
トラバースは最後まで言葉を発する事が出来なかった。
直後に起爆した手榴弾の破片が彼の全身を切り裂いたからだ。
ズドンという鈍い音を聞いたルシウスは咄嗟に音の方向へ杖を向けた。
爆発で床が小刻みに揺れている。
「爆発音……誰かやられたのか?それとも」
「今の音はコンフリンゴでもボンバーダでも無い。恐らくは奴が持つマグルの武器による攻撃だろう」
焦るルシウスとは反対にドロホフは冷静だった。
死喰い人の中でもトップクラスの戦闘センスを持つドロホフはビクビクと怯えるルシウスを鼻で笑う。
アズカバンで十数年も過ごしてきた彼は娑婆でのうのうと暮らして来たルシウスを快く思っていない節もある。
「お前は所詮、ぬるま湯に浸かっていた貴族。それに対して、あのエスペランサという少年は我々以上に血生臭い戦闘を繰り広げてきたのだろう。ハリー・ポッターの仲間にこんな厄介な奴が居るとは……。あのアエーシェマが気にかけるのも頷ける」
エスペランサが厄介なのはマグルの武器と魔法の両方を使えるところだ。
通常の魔法、つまり、闇の魔術では無い魔法では火力が足りない。
だが、その火力不足をエスペランサはマグルの武器で補っている。
ドロホフはそう分析した。
「エスペランサ・ルックウッド以外の連中は脅威にならない。所詮はホグワーツの生徒。ならばルックウッドを叩けば後は楽だ」
「いや待て!我々の目的は予言だ。なら、ポッターを捕まえなければ」
「馬鹿を言うな。ルックウッドはポッターの用心棒のような物なのだろう?ポッターを捕まえようとすればルックウッドは必ず立ち塞がる。それなら、先に奴を倒す事に全力を注ぐのが良い」
「なら……エスペランサ・ルックウッドの処理は私に任せてもらおうか?」
ルシウスの背後から一人の男が現れた。
アエーシェマ・カローである。
アエーシェマの後ろにはもう一人死喰い人が立っていた。
「アエーシェマ!貴様、こんな時にどこへ行っていた!?それにオーガスタス!お前も私の命令を無視したのか!あの場にいた死喰い人にはポッターを追うように命じた筈だぞ!」
「神秘部には野暮用があってな。まあ、その目的も果たした。オーガスタスには戦線を離脱して私に神秘部の道案内を頼んでいた。お陰で目的が果たせたから感謝している」
ルシウスはそこでアエーシェマが手に何かを持っているのに気付く。
彼が手に持っていたのは一つの水晶玉だった。
「目的とは、その手に持つ予言の事か?」
「そうだ。この予言は少し特殊な物でね。本来、この世界には存在し得なかったイレギュラーな予言だ。君には理解出来ないかもしれんが、無言者であるオーガスタスはこの予言の異常性に気付いていたようだ。それも十数年前に」
「言っている意味が良く分からん。私に分かるように話せ」
アエーシェマは愉快そうに水晶玉を手の平で回した。
「君には理解出来んよ。それから、この神秘部に存在する逆転時計を全て破壊する事も目的の一つだった訳だが……ポッター一味が私の代わりに全て破壊してくれたみたいだな。これは既定事項だったが、上手くいってくれて良かった」
「逆転…時計だと?何の為に」
「それを今、貴方に言う必要も無いし、言うつもりも無い。それよりも、ポッターとルックウッドを追っている死喰い人を全員、ここへ戻せ」
「何故だ!そんな事をしたら逃げられるに決まってる!」
「ルシウス。先程の爆発でトラバースとセルウィンが死んだ。これで我が方の死者は7人だ。お前が指揮をすると犠牲が増えるだけだと何故気付けんのだ?」
「ぐっ……。なら、貴様が指揮を執ればポッターを捕らえられるというのか?」
「無論だ」
「大した自信だな」
ドロホフが鼻を鳴らす。
「私はエスペランサ・ルックウッドをお前よりも良く知っている。奴を倒す為には、奴の戦い方を理解しなくてはならん」
「ルックウッドの戦い方……だと?」
「そうだ。まず、ルックウッドの戦い方だが。奴は奇襲と罠を駆使して我々を各個撃破しようとしている。ならば、単独で動くよりも集団で動いた方が良い。これだけで奴の作戦を封じる事が出来る」
ルシウス達はエスペランサの使う武器がどのようなカラクリで動くのかを知らなかったが、アエーシェマは理解していた。
エスペランサの使う小銃や機関銃は火薬の力を使い、弾丸を高速で飛ばしているだけの道具に過ぎない。
盾の呪文で十分対応が可能だ。
つまり、常に盾の呪文を展開させる防御要員と攻撃要員に分けて戦えばエスペランサの攻撃は凌げるのである。
「とにかく、ここからの戦い方は私に任せておけ。悪いようにはならん。逆転開始だ」
ルシウスは不服そうだったが、渋々仲間の死喰い人達を呼び戻し始める。
その様子を見ながら、アエーシェマは横に立つオーガスタス・ルックウッドに話しかけた。
元無言者の死喰い人であるオーガスタスは無表情だ。
「ここまではこのイレギュラーな予言通りとなった。だが、私の存在を阻害するかのように生まれたエスペランサ・ルックウッドという障害は排除しなくてはならん」
「…………」
「お前の息子……殺しても差し支えないな?」
「………ああ」
今回もちょいと短めです。