ハリーポッターと機関銃   作:グリボーバルシステム

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不死鳥の騎士団編は今回で終わりです!


case90 The end of peace 〜平和の終焉〜

センチュリオンへの入隊希望者は総勢で60人居た。

その8割がグリフィンドール生である。

 

ただし、低学年の学生や脳筋の学生が多く、筆記試験で多くの希望者が落とされた。

クリービー兄弟がその例である。

ちなみに、体力測定で落ちたグリフィンドール生は存在しない。

逆に学力試験を突破してきたレイブンクロー生は体力試験で何人かが不合格となった。

中にはM733を持てない程、筋力の無い者もいたのである。

 

ハッフルパフ生は持ち前の真面目さで試験を突破してきたが、精神鑑定で2人不合格となったなった。

スリザリン生も5人受験したが、その内4人は親が死喰い人であり、真実薬の投与でスパイであることが判明した。

 

結局、グリフィンドールの生徒で最終選考まで残ったのはたったの8名である。

ハッフルパフ生は4人。

レイブンクロー生が2人。

スリザリン生が1人。

合計すると15人の新規隊員を採用することになった。

 

新規隊員を含めるとセンチュリオンの隊員は総員で33名。

規模としてはやっと1個小隊というところだ。

だが、エスペランサ達にとっては喉から手が出る程欲しい人材が揃ったのである。

 

「いきなり新規隊員を実戦投入は出来ない。この1年間を教育期間として、新隊員教育を実施しよう。その間の任務は引き続き2個分隊で行う」

 

「それが良い。だが、新隊員の要員は分けておく必要があるだろうな」

 

エスペランサは新規隊員の能力を考慮して、彼らの職種を振り分ける事にした。

グリフィンドールの生徒は全員、その運動能力と度胸を見込まれて、歩兵課に決められた。

ハッフルパフの生徒のうち、2名は新たに設けた経理補給課に配属。

残りの2名は歩兵課であるものの、飛行技能の高さから遊撃部隊へ回された。

レイブンクローの生徒のうち、一人はフナサカの元で通信士となり、もう一人はザビニの下で情報要員となった。

 

さて、残るスリザリン生一人だが、この生徒の扱いに関しては少し特殊である。

このスリザリン生はグレゴワールという名の黒人で、元々ホグワーツではなく、アフリカにあるワガドゥー魔法学校に通う予定だったそうだ。

 

「何故、君は我が隊に入ろうと思ったんだ?」

 

入隊前の面接でエスペランサはグレゴワールに聞いた。

 

「自分は、元々、アフリカにあるワガドゥーに入ろうとしていたんです」

 

「ワガドゥー?」

 

「アフリカの魔法学校だ。歴史もあり、教える魔法のレベルも高い」

 

セオドールがエスペランサに補足説明した。

 

「ワガドゥーの教育レベルはホグワーツを遥かに上回っています。というよりも、ホグワーツ、いえ、英国魔法界の魔法レベルは低いです」

 

「へえ、そうなのか」

 

マグルの世界ではアフリカは先進国のように発展していない。

しかし、魔法界はその逆で、アフリカの魔法は非常に高度なのだそうだ。

 

グレゴワールはそれを誇らしげに言った。

 

「英国の闇の魔法使いは自分達のレベルの低さも知らずに世界を侵略しようとしている。自分はそんな奴らの鼻を折ってやりたいから入隊を希望したんです」

 

「随分と魔法に自信があるみたいだが……。お前はまだ3年生の生徒だろう?そんなに高度な魔法が使えるのか?」

 

セオドールが半信半疑といったかんじで聞いた。

 

「見てもらうのが一番です」

 

グレゴワールは徐に立ち上がり、掌を壁に向けた。

 

「フリペンド・撃て」

 

彼は杖も持たずに呪文を唱える。

すると、彼の掌から魔法で作られた閃光が射出された。

 

「お前、杖無しで魔法が使えるのか」

 

「ええ。まだ、初歩的なものだけですが。アフリカでは杖を持つ魔法使いの方が少ないんです。ワガドゥーでは錬金術をはじめとした高度な魔法を杖無しで学びます」

 

「なるほど。確かに魔法の腕なら即戦力だ。しかし、我々は……」

 

「マグルの武器を使って戦うんですよね?」

 

「ああ。そうだ。魔法の腕も求めているが、戦闘では基本的に近代兵器を駆使する」

 

「そこです。自分は魔法以上に破壊能力を持つマグルの武器にも興味があります。魔法族の発展にはマグルの先端技術を取り入れる必要がある。それに気付かない闇の魔法使い達は滅びの道を辿ることになるでしょう」

 

そう言い切るグレゴワールにエスペランサとセオドールは目を見合わせた。

 

変わった新入隊員は他にもいた。

フナサカの下で通信士となったレイブンクローのロルフ・スキャマンダーがそれだ。

 

「スキャマンダー、か。ニュート・スキャマンダーの孫だな?」

 

「はい。そうです」

 

如何にも真面目そうなロルフは緊張気味に答える。

 

「入隊の動機は何だ?君は平和主義者と聞いているが」

 

エスペランサはロルフが温厚で、平和主義者である事を知っていた。

ロルフは、ホグワーツ内でも彼程の人格者は居ないと噂される男だったのだ。

 

「ええと、その、戦うのは怖いです。武器を持つのも……。でも、自分には守りたい人がいるんです」

 

「守りたい人?それは、友人か?家族か?恋人か?」

 

「どれにも該当しません。でも、今まで、僕は弱くて……温厚とか平和主義者とか、僕はただ臆病で風見鶏なだけなんです。だから、あの子の事を守る事なんて出来ないと思っていた。ですが、この隊に入れば自分を変えられる!そう思ったんです」

 

「俺たちはたった一人のために戦うんじゃない。救うのは大勢の命だ。たった一人を守る事だけ考えていたら救えるものも救えなくなる」

 

「分かっています。しかし、"あの子"が笑っていられる世界を作るためなら……。平和な世界を作るためなら心を鬼にする所存。戦えます」

 

ロルフのその言葉にエスペランサは少し反応する。

その言葉は少し昔にエスペランサがフローラに言った言葉に似ていたからだ。

 

ロルフの面接が終わった後、必要の部屋にはエスペランサとセオドールのみが残された。

 

「たった一人のために戦うんじゃない、か。ひょっとして自分に言い聞かせたのか?隊長?」

 

「何が言いたいんだ」

 

エスペランサはタバコに火をつけつつ、セオドールを睨んだ。

 

「いや、別に。ただ、まあ、隊長には最近、守りたいと思える人が出来たんじゃないかと思っただけさ」

 

「…………何の話だ。俺にはさっぱりだ」

 

「シラを切るならそれも結構。だが、風紀だけは乱すなよ?部隊内の恋愛はあまり良い影響を周りに与えない。それを教えてくれたのは君だった気もする」

 

「肝に銘じておくさ」

 

エスペランサは苦笑した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エスペランサ達が新規隊員を獲得していた頃、リータ・スキータは黄金虫の姿に化けて、ノクターン横丁の地下にいた。

 

彼女は今、センチュリオンのスパイとして活動している。

ゴシップ記事担当のリータであったが、彼女とて、最初からゴシップ担当のジャーナリストだった訳では無い。

 

ただ、権力ズブズブの日刊預言者新聞でジャーナリズムを貫くのは難しく、一番、自由に記事を書けるのがゴシップだったに過ぎない。

いつしか情熱を失っていた彼女だったが、センチュリオンに半ば強引に雇われて少しだけ情熱を取り戻した。

それは、隊員の一人、ザビニの存在が大きい。

 

エスペランサやセオドールは破れぬ誓いや忘却術を使い、リータを使い捨てる気満々だった。

しかし、ザビニは違かった。

彼は誰よりも情報戦の重要性を認識していた。

故に、リータの情報収集能力に目をつけたのである。

 

ザビニはリータの存在が今後始まるであろうヴォルデモート勢力との戦闘において鍵になる事を熱く語った。

そして、リータが十分な戦力になる事を伝えた。

 

彼女としてはヴォルデモートとの戦闘なんてものはどうでも良かったのだが、断る術も持たない。

そのため、渋々、センチュリオンのスパイとして活動していた。

 

しかし……。

 

(こいつは凄いざんす……。魔法省のお膝元のロンドンで、こんな魔法界の闇がゴロゴロと)

 

リータが黄金虫に化け、潜入したのはアングラな連中が揃うと言われているノクターン横丁地下の飲み屋だ。

そこでは、以前から違法魔法生物の売買等が行われてきたのだが、今日はそれ以上に闇が深い会合が行われている。

 

(狼人間を束ねるドンに、魔法生物の違法バイヤー、指名手配中の人攫い軍団に、あれは反巨人犯罪グループのリーダーか)

 

犯罪者のバーゲンセールのような光景にリータは身震いした。

彼女は酒瓶の置かれた棚の裏に身を潜めて、会合を伺うことにした。

 

薄暗く、埃っぽい店内に揃った20人もの男たちは酒を一通り飲み交わすと、本題に入り始める。

 

「闇の帝王が復活したんだ。今まで地下でしか活動出来なかった俺達も堂々と陽の下で活動出来るってもんさ。で?闇の帝王からは何か指示は無かったのか?」

 

「死喰い人の残党からは指示があった。ここに居る何人かは既に指示を受けている筈だ」

 

「死喰い人ねえ。奴ら、俺たちを隠れ蓑にして何年も甘い蜜を吸ってた連中だろ?胸糞悪い」

 

「何人かはそうだろう。だがなあ、ドロホフやベラトリックスといった忠誠心のある連中もアズカバンから出て来た。連中は信用出来るぜ?」

 

「何だって良いさ。暴れることができりゃな」

 

彼らは能力や性格から死喰い人になれなかった荒くれ者達だ。

ヴォルデモートへの忠誠心よりは、己の欲望のために活動している。

 

しかし、ヴォルデモートは彼等のような半グレ達を扇動させることの重要性を知っていた。

 

「ベラトリックス嬢のいう話じゃ、アズカバンから吸魂鬼が消えた。つまり、俺たちのボスであるグレイバックも娑婆に出て来れる。こいつは面白くなりそうだ」

 

狼人間グループを束ねる男が酒を一気飲みして言う。

英国内の狼人間はルーピンを除き、ほとんどが犯罪グループに所属していた。

 

「狼人間だけじゃない俺たち半巨人達も血に飢えてる。死喰い人の連中は外国の巨人達を従えたらしい。そいで、その巨人達を指揮してマグルの村を襲う事を許可してくれた」

 

「そいつは本当か?」

 

「半巨人だけじゃねえ、人攫いのグループにもダイアゴン横丁で暴れろという指示が来ている。どうも、要人を攫う必要があるみたいだな」

 

「へえ。決行はいつだ?」

 

「2週間後にダイアゴン横丁でド派手にやるみてえだ。俺たち以外のグループにも声がかかってる」

 

ヴォルデモートの命により、彼らが英国内で暴れ始めるのは時間の問題だ。

 

(こいつは…例のあの人は本格的に行動を起こそうとしてるということか!)

 

ダイアゴン横丁で行われる人攫い、巨人による襲撃。

ヴォルデモート復活を聞いて慌てて体制を整えている闇払いや魔法パトロール部隊は即応性が無い。

となれば、現状、それらを阻止出来るのはセンチュリオンだけだ。

 

そして、そのセンチュリオンに襲撃の情報を伝える事が出来るのは……。

 

(私だけ……ということざんすね。私が…英国を救う情報を持っている)

 

ゴシップ記事ばかりを書き、様々な方面からヘイトを買ってきたリータであったが、まさか自分が英国魔法界を救う立場になるとは思っていなかった。

自分はそういった正義の味方とは正反対の人間ではないか?

だが……

 

(悪役のままじゃ終われない。誰だって主人公に憧れる。今回はこの私が救世主になってやろうじゃないのさ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また1年が過ぎた。

他の生徒と同様にセンチュリオンの隊員達もホグワーツを離れる。

 

一通りの人事作業を終え、武器弾薬の残量も確認したエスペランサもホグワーツ特急に乗り込んだ。

 

この2週間、センチュリオンはかつてない程に多忙だった。

新入隊員の教育、今後の作戦立案、市街地戦を想定した訓練、武器弾薬の整備、闇払いとの連絡。

これらの業務を2週間で終わらすことが出来たのは上出来と言えよう。

 

何故、そんな短期間の間に業務を行う必要があったのか。

それは、"黄金虫"がもたらした敵に関する情報が来たからだ。

 

 

休暇中にヴォルデモートが動く。

 

 

予想していたとは言え、敵の侵攻が目の前に迫りセンチュリオンの隊員達も焦燥感にかられた。

ついに本格的な戦闘が始まる。

 

エスペランサとセオドールはダンブルドアにセンチュリオン出動の許可をもらい(許可には1時間もの時間を要した上に、闇払いとの共同作戦で受理された)、隊員達にその旨を知らせた。

そして、休暇中の有事に備え、必要の部屋から小火器、重火器、各種弾薬や基地設営用の資材に至る物資を搬出させた。

 

「休暇中にヴォルデモート勢力がどの程度の破壊活動をするかは予想がつかない。リータの情報からすれば、まだ本格的な侵攻はして来ないだろう」

 

ロンドンへ向かうホグワーツ特急の最後尾のコンパートメントでセオドールはエスペランサに言った。

ホグワーツ特急の最後尾の車両はセンチュリオンの隊員が意図的に占領している。

車両内には隊員だけでなく武器弾薬等も積み込まれていた。

 

「断言出来る根拠はあるのか?」

 

「ある。まず、ヴォルデモート勢力の主力はほとんどがまだアズカバンに投獄中であり、娑婆の世界にいる死喰い人も先の戦闘でかなりのダメージを食らっている。この状態で全面的な攻勢に出る程、ヴォルデモートは馬鹿ではない」

 

「仮に攻勢に出てきたらどうする?」

 

「その時はむしろチャンスだ。我々は少なくとも2つの分隊を有する戦闘組織を編成している。不完全な状態の敵と戦闘になれば有利に事を運べる算段が立てられる」

 

「つまり、敵が体制を整えるまでに打撃を与えれば勝機はあるということか」

 

かつて、極東の島国である日本が合衆国に戦争を挑んだ。

無謀にも思えるが、その実、開戦当時はランチェスターの法則に基づいた勝算を考慮した宣戦布告だったと言われることもある。

将来的に敵が我の戦力を遥かに凌ぐ戦力を持つ可能性があるのならば、早めに開戦して、叩いてしまった方が勝算がある、という事だ。

 

「勝機があるとまでは言わないが、作戦は立て易い。何せ死喰い人の連中は複数個の部隊を編成して組織戦闘をするなんて芸当はしてこないからな。ただし……」

 

「ただし?」

 

「魔法界の戦闘は個人の魔法力で勝敗を覆せてしまう事がある。我々がいくら組織戦闘をしたところで、ヴォルデモートが現れれば即、敗走だ」

 

「ヴォルデモートだって無敵じゃない。俺はここ数年、ヴォルデモートの倒し方は考えてきたつもりだ。NBC兵器に大量破壊兵器を使えば……」

 

「NBC兵器というものがどういうものなのか"俺"は知らない。が、ヴォルデモートは非常に"生"に執着している。俺がヴォルデモートなら魔法を使ってあらゆる"死"から自分を守る術を身につける」

 

「死の克服……か。そんなことが可能だと思うか?」

 

「そうだな……。ハリー・ポッターに倒されたヴォルデモートが何故生きていたと思う?」

 

「死を克服する、あるいは、それと同様の魔法を使っているから、か」

 

「あくまで憶測だ」

 

エスペランサは窓の外に目を向ける。

雄大な英国本土の景色がそこにはあった。

これから戦争が始まるとは思えない平和で穏やかな光景だ。

だが、戦火はすぐ目の前にある。

 

明日か明後日か、それとも1週間後か。

間違い無くヴォルデモート勢力との戦闘は始まるのだ。

 

英国魔法界の平和な時代は既に終わっていた。

 

 

 




不死鳥の騎士団編はこれで終わりです
次回から謎のプリンスに入ります。

ハリー達がもはや空気に……
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