ハリーポッターと機関銃   作:グリボーバルシステム

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case93 Battle of Diagon Alley 2 〜ダイアゴン横丁の戦い 2 〜

漏れ鍋の戦闘指揮所は戦時治療所としても利用される。

今、この戦時治療所には深傷を負った闇祓いとセンチュリオンの隊員が続々と運び込まれていた。

店内を血の匂いが覆う。

搬送は後方支援にあたっていたセンチュリオンの新隊員が行った。

彼等は重症患者を見て顔を青くしている。

 

ズル休みスナックボックスの鼻血ぬるぬるヌガーで出る血液とは訳が違うのだ。

 

「机の上を開けてください。あと、ハナハッカ液を大量に用意!」

 

そんな中、手にゴム手袋をしたフローラが救急医療キッドと照明を担いでやってくる。

彼女は至って冷静だ。

 

「負傷者は?」

 

「闇祓いの連中は全員重症だ。我が隊は俺とスローパーが負傷している」

 

自力で漏れ鍋まで帰ってきたアンソニーが右腕を押さえながら言った。

彼自身、右腕の感覚が無くなるほどの重症を負っている。

戦闘によってアドレナリンが分泌した為に痛みは思っていた程無い。

それに、魔法界において骨折は簡単に治せる部類の怪我であった。

 

それよりも、その後に運ばれてきたスローパーの方が深刻だ。

 

本来であればトリアージを行い、現場復帰可能な軽症者から順に手当をしていくのが定石である。

だが、フローラにはそれが出来なかった。

運ばれてきたスローパーは放っておけば30分も保たないだろう。

仲間の死を救えるのはこの場では彼女のみだ。

 

「痛み止めの魔法薬の備蓄があります。骨折程度の痛みなら緩和出来るはずです。私は今からスローパーの治療に移ります」

 

「ああ……頼む」

 

アンソニーはロジャーに支えられて指揮所の奥に向かった。

指揮所の奥では負傷した闇祓いが手当を受けている。

手当をしているライムグリーン色のローブを着た魔女や魔法使いは聖マンゴから派遣されてきた癒師、すなわちヒーラーだ。

 

ザビニとフナサカがスローパーを机の上に乗せる。

フローラの指示でかけられていた全身金縛りの魔法が解かれる。

その瞬間、スローパーの身体から血が噴き出した。

 

「大動脈が傷ついて、そこから出血している……。このままでは失血死だ」

 

「分かっています。フナサカとザビニは止血帯で止血して下さい。出来ますよね」

 

「当たり前だ」

 

二人は慣れた手付きでスローパーの太腿に止血帯を巻いた。

彼等も一通りの訓練は受けている。

これで全身金縛りの呪文が無くても一時的に止血が可能だ。

 

その間にフローラはスローパーの首にかけられていた認識表(ドックタグ)を確認する。

認識表には彼の血液型が記されていた。

 

「O型ですね。それなら備蓄があります」

 

「どうするつもりだ?魔法薬を煎じるのか?」

 

戦闘に参加していなかった後方支援の闇祓いが不安そうに彼女の手元を覗き込む。

 

「裂傷は魔法で完治出来ますが、すでに相当量の出血が確認されています。輸血した後に大動脈を塞がなくては失血死は免れません。それに感染症の危険もあります」

 

「輸血?失血死?ハナハッカでは駄目なのか?」

 

「血液の不足が致命的なんです。ハナハッカは効果ありません。それから、感染症対策の為、傷者に近寄るならマスクと手袋をして下さい」

 

闇祓い達にはフローラの言葉が理解出来ていなかった。

医療を魔法に頼りきっている魔法使い達は医学に関する知識が中世で止まっている。

感染症も微生物の存在も勿論知らない。

 

だが、今全て説明するのは時間の無駄だ。

そう判断した彼女は裁断用の鋏でスローパーの戦闘服を切り裂き、患部に消毒液をぶちまけた。

 

「だが、フローラ。俺達は輸血パックを持っていない。どうやって輸血するんだ?」

 

マグル出身で、ある程度西洋医学の知識があるフナサカがライトでスローパーの患部を照らしつつ質問する。

 

「確かに必要の部屋では輸血パックは出てきません。ですが、ハニーデュークスでは吸血鬼用のドリンクが売られているんです。これを使います」

 

「吸血鬼用のドリンク……使えるのか?」

 

「成分は確かめています。問題ありません」

 

ホグズミード村のハニーデュークスには吸血鬼用のジュースが置いてある。

ジュースとは名ばかりで、中身は血液のようなものだ。

しかも、この血液ジュースは血液型ごとに種類が分かれていた。

聞いたところによれば血液型で味が違うらしい。

 

ハニーデュークスでこれを見つけたフローラは即座に大量購入を決断した。

その様子を見た他のホグワーツの生徒はいよいよ彼女の事を本気で恐れ始めたのだが……。

 

吸血鬼用の血液ジュースの缶を片っ端から開けたフローラは中身を魔法で取り出す。

注射器は使わず、魔法でスローパーの体内に血液を流すのだ。

 

マグルの医療知識と魔法を融合させることで迅速な治療を可能にしている。

 

缶からチューブのように流れ始めた血液ジュースはスローパーの大動脈に魔法で綺麗に流し込まれていった。

 

「これで助かるのか?我々には何をしているのかさっぱり分からないが」

 

様子を見にきた癒者が不安げに言う。

 

「見たところ大動脈が切れている他に致命傷は見当たりません。輸血後に魔法で縫合してしまえば命は助かります」

 

フローラは医療免許も持たなければ、医療経験も少ない。

それでも、ここまで迅速な対処が出来たのは魔法が使えたからだ。

 

魔法が無ければスローパーは間違い無く死んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フローラがスローパーの治療をしている頃、エスペランサとセオドールは今後の作戦の展開に頭を悩ませていた。

 

「敵5名はフォーテスキューの店からロンドン市街地方面に後退か……」

 

「遊撃班とネビル、スーザンが追跡中だ。だが……どうも引っかかる」

 

セオドールがダイアゴン横丁の地図を眺めつつ言う。

地図の上には敵味方を示すマグネットが複数置かれていた。

 

「敵が姿眩ましを使わなかった件か?」

 

「そうだ。しかも、ノクターン横丁に逃げるのでは無く、ロンドン市街地の方へ逃げた。普通なら奴らの巣窟であるノクターン横丁から地下へ逃亡するか、姿眩ましで追跡を振り切る筈だ。だが、奴らはそれをしなかった」

 

「敵は死喰い人よりも人攫いが多い。連中は死喰い人ほど有能ではないからな。姿眩ましが使えなかったんじゃないのか?」

 

姿眩ましと姿現しは免許制の高度な魔法だ。

使えない者も多いという。

ホグワーツでは6年生から免許の取得が出来る。

センチュリオンの隊員の中ではコーマックやチョウが免許を取っていた。

セオドールは独学で出来るようになっている。

 

「隊長。人攫いは拉致に特化した集団だ。連中にとって姿現しと眩ましは必須の魔法。全員、習得していると考えるべきだぞ」

 

「では尚更、敵が徒歩で逃走した理由が不明だ。これではまるで追跡してくれと言っているようなものだ」

 

エスペランサも敵の逃走ルートを見る。

 

ダイアゴン横丁とマグル界を繋ぐ道は漏れ鍋の他にもいくつか存在する。

漏れ鍋の裏もその一つだ。

人攫い達が逃げた先にもマグル界への抜け道が存在していた。

 

「マグル界に逃げる気なのか?どちらにせよ逃してはおけん」

 

そう言いつつエスペランサは思考を巡らせた。

もし自分が人攫いだったら……。

少なくともオリバンダー誘拐という任務に失敗し、仲間の半数を殺されたとすれば撤退する。

これ以上戦っても戦果が得られないのだから。

 

そして、撤退するのなら最も追跡され難い方法、すなわち姿眩ましを使うだろう。

もし、何らかのトラブルで姿眩ましが使えなかった場合、直接ノクターン横丁の地下に逃げる。

 

だが、敵はそれをしなかった。

 

「オリバンダーの拉致はヴォルデモートの命令……なんだよな」

 

「ああ。そう聞いている」

 

「そうか。そういうことか」

 

「そういうことって?隊長は何か分かったのか」

 

「恐らく……。敵は今回の任務に失敗した。オリバンダーの拉致も、フォーテスキューの殺害も失敗したんだ。つまり、ヴォルデモートに与えられた任務を遂行出来なかった訳だな」

 

「そんなことは分かっている」

 

「ヴォルデモート陣営の人間にとってヴォルデモートの命令は絶対だ。しくじればヴォルデモートの怒りを買い、それ相応の罰を与えられる。今回、任務に失敗したグレイバック達も例外では無い。連中はそれを恐れている」

 

「まあ、そうだろうな。ミスをした死喰い人は例外無くヴォルデモートに罰を受けていたらしい」

 

「だから連中はそのミスを補う成果が必要だった。その成果というのは……」

 

「成程、我々の首か」

 

センチュリオンはヴォルデモート陣営にとって目の上のタンコブだ。

魔法省の戦いで闇陣営はセンチュリオンの火力の前に痛手を被った。

そんなセンチュリオンの隊員の首を献上すればヴォルデモートは罰を緩くするかもしれない。

 

いや、ヴォルデモートの罰のある無しに関わらず、グレイバックは戦闘による成果を求める性質だ。

センチュリオンを罠に嵌めて殺しにかかる機会があるなら必ず使うだろう。

 

「敵はまだこの戦闘での勝利を諦めてはいない。オリバンダーの拉致には失敗したが、それの代わりとなる戦果を求めた訳だ。戦略としては愚かだが、今の我々にとっては最悪の状況でもある」

 

セオドールが苦々しく言った。

現在戦闘可能なセンチュリオンの隊員は6名しかいない。

闇祓いはほとんどが戦闘不能であり、支援は期待出来ない。

一転して不利な状況だ。

 

「敵は体勢を立て直して我々と全面的に戦闘を行う気か………」

 

そう呟いたエスペランサは傍に立て掛けてあった自分の小銃を担ぎ上げ、鉄帽を装着し始めた。

 

「おい、隊長!何をする気だ?」

 

「敵を追跡しているのはネビル達4人のみだ。俺が増援に行く」

 

「止めろ。指揮官が指揮所を離れたら作戦が遂行出来ない」

 

セオドールはエスペランサの腕を掴んで引き留めようとする。

アンソニー達実働班は半分が戦闘不能。

動けるロジャー以下2名も負傷者の搬送に追われている。

 

ネビル達の支援に行ける人材はもう残っていない。

 

「このままではジリ貧だ。敵はロンドン市内で最終決戦を行うつもりだろう。俺は米軍時代、市街地戦闘を専門としてきた。増援に行くなら俺しかいない」

 

「隊長一人増えたところで形成は不利なままだ。それに、隊長を失うというリスクを犯すわけにもいかない」

 

「一人ではそうかもしれない。だが、二人なら戦局を変えられるかも知れんぞ?」

 

口論していたエスペランサとセオドールの前にいつの間にかスクリムジョールが来ていた。

 

「何の用ですか?」

 

「君達の話は聞かせてもらった。人手が足りないのだろう?」

 

「そうです。ですが、増援は望めません。闇祓いもほとんどが戦闘不能ですし」

 

セオドールが皮肉を込めて言う。

 

「そのようだ。私の部下はほとんどが戦闘不能だ。ぬるま湯に浸かりすぎたようだ。あそこまで簡単に戦闘不能になるとは思わなかったよ。だが、私は動ける」

 

「は?」

 

「私が手を貸すと言っているのだ」

 

「しかし、あなたは現役を退いて久しい……」

 

エスペランサはスクリムジョールの足を見た。

過去の戦闘で脚が不自由になっているのは目に見えて明らかである。

 

「確かに私は現役の闇祓いでは無い。しかし、若い連中に実力で劣るとは思ってない。それに、闇の魔法使い達を倒すことの出来るまたとない機会を逃す程、私は優しく無い」

 

「確かにあなたの援護があれば多少、勝率は上がるかもしれない。だが、我々の戦闘形態にあなたが合わせられるかどうか……」

 

「出来る限り、君の戦い方に私が合わせる。君達は色々と思うところもあるだろうが、私の悲願は闇の魔法使いの殲滅だ。その点に関して利害は一致している」

 

そう言ってスクリムジョールはエスペランサに手を差し出した。

エスペランサは一瞬迷ったが、その手を取る。

 

「と言うわけだ副隊長。指揮所は任せる」

 

「全く……。第一線に出たがる指揮官を持つと下が苦労する。まあ、こちらとしては全力でバックアップの体勢を整えるから心配はするな。人手は足りんが、俺の頭があれば大丈夫さ」

 

セオドールは諦めたように言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(間違いない。これは敵の罠だ)

 

グレイバック達を追跡中のネビルも敵の魂胆には気付いていた。

本気で逃走するなら姿眩ましを使うだろう。

しかし、敵はそうしなかった。

 

誘っているとしか思えない。

 

だか、ネビルは追跡を止めるつもりはなかった。

敵の向かった先はロンドンの市街地。

マグルの世界だ。

 

そこで、グレイバック達が暴れ始めたら止められるのはセンチュリオンしかいない。

 

ネビルとは違う考えで人攫い達を追跡していたのは同じく狙撃班に配置されていたスーザンだ。

彼女の叔母であるアメリア・ボーンズは数日前に死喰い人に殺害されていた。

 

アメリア・ボーンズは有能故に死喰い人にとって目障りな存在だったのだろう。

スーザンは叔母の仇とばかりに死喰い人や人攫い達に殺意を抱いていた。

 

その姿にネビルは危うい物を感じている。

 

『ネビル!こちらHQだ。聞こえるか?』

 

突然、無線機からセオドールの声が届いた。

 

「感度良好。送れ」

 

『よし。もう気付いているかもしれないが、これは敵の罠だ。だが、追跡は続行しろ。敵が市街地でマグルに対して無差別攻撃する可能性もある。何としてでも敵を殲滅するんだ』

 

「了解。でも、こっちは遊撃班含めて4人しかいない。増援は?」

 

『今、隊長とスクリムジョールが漏れ鍋の裏からロンドン市内に前進した。彼らはセントポール大聖堂方面から敵を追い詰める。コーマックとチョウはウェストミンスター付近を北上中。君達はタワーブリッジの方から西に進み敵を挟み込め』

 

スーザンが持っていたロンドンの地図を地面に広げる。

敵を3方向から追い詰めて殲滅する作戦なのだろう。

 

「マグルの街のど真ん中だ。こんなところで戦闘をするのか」

 

『そうだ。だが、被害を最小限に抑えるために決戦場所は人口密集地を避け、ミレニアム・ブリッジに設定する』

 

「ミレニアム・ブリッジ……」

 

ミレニアム・ブリッジは現在建設中の歩行者用の鋼鉄で出来た橋だ。

建設中故に通行人は居ない。

 

確かに決戦の地にはふさわしいだろう。

 

「何でも良いよ。ヴォルデモート勢力の人間をぶっ殺せるなら……」

 

スーザンが呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミレニアム・ブリッジは現在建設中のテムズ川にかかる近代的な橋だ。

 

英国のミレニアムプロジェクトの一つとして建設が開始された。

とは言え施工がされたのはつい最近であり、ほとんど未完成の状態である。

 

橋の中央はまだ繋がっていないし、付近には建設用の資材や重機が置かれていた。

 

コーマックとチョウはセオドールの指示通り、この橋にグレイバックを追い込むための攻撃をしている。

 

「撃て撃て!弾幕を切らすな!」

 

コーマックはロンドン市街地に向けて走り去るグレイバック達に箒の上から銃撃を加えた。

空薬莢が花吹雪のようにロンドンの空に舞う。

 

無論、それらは全て防がれてしまう。

 

ダイアゴン横丁からロンドンの市街地に出たグレイバック達は箒で追ってくるコーマックとチョウをチラチラと見ながら逃走していた。

 

ちなみにコーマックもチョウも目眩しの魔法は使っていない。

彼等はロンドン市街地に出た瞬間にマグル除けの魔法を広範囲にかけた。

そのおかげで半径2キロ以内に居たマグル達を簡単に避難させる事に成功している。

 

「小賢しい蝿だ!」

 

グレイバックは仲間の人攫いに防御を任せ、自身は路駐してあった自動車を片っ端から爆破したり吹き飛ばしたりした。

 

ガソリンに引火して炎上、爆発していく自動車。

マグル除けの魔法の効果でマグルの通行人が存在しないのが幸いだった。

 

吹き飛ばされた車がテナントに衝突し、黒煙を上げる。

突如生起した近代兵器と魔法の戦闘に市街地は破壊されていった。

 

「くそっ!HQ聞こえるか?敵は車を片っ端から爆破させて煙幕のようにしている。故に狙いがうまく定められない!」

 

苛立ったコーマックは箒に跨りながらセオドールを呼び出す。

グレイバックによって数十台の自動車が爆破されたせいで視界が悪い。

道路はあっという間に黒煙に覆われていた。

 

『落ち着けコーマック。マグル除けの魔法は効いているか?』

 

「効いてる!だが、そんなことはどうでも良い!視界が悪くて銃撃が全然当たらねえんだ」

 

『今、敵はどの辺りに居る?』

 

「エンバンクメント駅付近をテムズ川沿いに東へ逃走中」

 

『良し。それなら問題無い。そのまま敵を追撃しろ。銃弾が当たらなくても良い。そのまま攻撃し続ければ敵はキルポイントに追い詰められる』

 

敵はテムズ川沿いに逃走している。

あと500メートルも走ればミレニアムブリッジの建設現場だ。

 

そして、そのミレニアムブリッジ建設現場の先からはネビルとスーザンが待ち伏せている。

 

「なるほど……。あの橋のところで挟み撃ちにするつもりなのか」

 

『そうだ。ミレニアム・ブリッジをキルポイントにする。3方向から挟撃し、確実に仕留めろ』

 

「了解!」

 

そう言ってコーマックは再び引き金を引いた。

 




最近寒いので布団から出れません
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