ハリーポッターと機関銃   作:グリボーバルシステム

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投稿遅くなりました!すみません!
感想ありがとうございます!

ちょっと世界情勢的を加味して内容を変えていました


case95 Burrow Front Base 〜隠れ穴前線基地〜

ヴォルデモートは怒り狂っていた。

 

オリバンダーの拉致に失敗するどころか、返り討ちに遭い、虎の子の死喰い人を殺害されたのだ。

しかも、敵はオリバンダーの店で待ち伏せしていた。

つまり、こちらの作戦の情報が漏れていたのだろう。

 

生きて帰ってきたグレイバックはヴォルデモートに謝罪した。

ヴォルデモートとしてはグレイバックを罰したいところだったが、結局のところ罰していない。

 

グレイバックは英国中の人狼を束ねているリーダーだ。

人狼を味方にするにはグレイバックの協力は必要不可欠。

今ここで彼を失うのは得策では無い。

 

「センチュリオンは闇祓いと手を組んだか……。アエーシェマ。俺様の望んでいた情報は手に入ったか?」

 

「勿論です。ここにあります」

 

アエーシェマが羊皮紙の束を持ってきた。

 

ここは、カロー家の大広間である。

マルフォイ家程ではないが、かなりの広さがある。

今、その大広間にはヴォルデモートとアエーシェマしかいない。

 

「良くまとめられている情報だ」

 

ヴォルデモートはセンチュリオンに関する情報を欲していた。

アエーシェマは独自ルートでセンチュリオンの隊員や構成を調べてまとめたのである。

 

「いいえ我が君。その情報は不完全です。どうもセンチュリオンは情報保全に力を入れているようでして。隊員の名簿を作成するのが関の山でした」

 

アエーシェマにしては珍しく苦い顔をした。

 

「なるほど。向こうにはブレインがいるようだな。羨ましい限りだ。俺様の部下は戦闘にしか特化していない連中ばかり」

 

「目下のところ、死喰い人の中で有能な者を集めて組織改革をしているところです。しかし、ルックウッドはよくもまあ3年そこらでここまでの組織を作り上げたものです。敵ながら天晴れですな」

 

「それに関しては俺様も認めるところだ。あの組織を潰すのは容易では無い。何しろ今はダンブルドアの指揮下にある組織だ。正面から戦おうとしてもこちらの被害が増えるばかり……。だが、俺様も奴らに好き勝手させるほどお人好しでは無い」

 

「何か秘策があるのですかな?」

 

「あるとも。奴らの活動拠点はホグワーツだ。俺様も死喰い人もホグワーツには入れないが、俺様の息のかかった者を入れる事は容易なのだ」

 

アエーシェマは成程と思った。

例えばドラコ・マルフォイがそうだ。

もっともホグワーツには死喰い人のスパイであるセブルス・スネイプもいたが、アエーシェマはスネイプの本性を知っている。

 

「私も昨年は娘を利用してルックウッドの組織を壊滅させようとしました。しかしながら失敗した。どうやら娘のフローラは私の想像以上にエスペランサ・ルックウッドという男に入れ込んでいたようでして……」

 

「そのようだな。他にもノットの倅が奴の組織に引き入れられたようだ。しかも、ノットの倅はルックウッドの右腕として活躍しているのだろう?」

 

「そうです。セオドール・ノットは予想以上に有能な男でした。センチュリオンの快進撃も奴の頭脳があってこそでしょう」

 

センチュリオンの運営はエスペランサだけで行っているのでは無い。

エスペランサを支える頭脳が存在する。

その事はアエーシェマでなくても予想出来ている。

 

セオドールの戦略によって死喰い人達は今まで煮湯を飲まされ続けてきた。

 

また、セオドールとフローラの両名は休暇に入ってから実家には帰っていない。

恐らく家を捨てたのだろう。

 

今までアエーシェマはフローラを恐怖で支配してきた。

故に彼女はアエーシェマの言いなりだったし、逆らうような事は出来なかった。

 

「配下の者に裏切られる気持ちが貴様にも良く分かっただろう」

 

ヴォルデモートは皮肉を込めてアエーシェマに言った。

ヴォルデモートもまた死喰い人達に裏切られ、その事に未だ憤りを感じている。

 

「痛感しました。私は今、抑えようの無い憤りを感じている。私を裏切ったあの小娘には罰が必要だ」

 

アエーシェマは不気味にほくそ笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハリー・ポッターはダンブルドアと共に隠れ穴を訪れた。

 

ダーズリー家を連れ出してもらい、ホラス・スラグホーンという変わり者の教師を紹介され、やっと隠れ穴に辿り着いたのは真夜中のことである。

慣れ親しんだ隠れ穴であったが、今回は見慣れない光景が広がっていた。

 

まず、隠れ穴の入り口の鶏小屋の横に銃を持った戦闘服姿の男が二人立っていた。

 

「誰か?」

 

「わしじゃ。ダンブルドアじゃ。ハリーを連れてきた」

 

「念のため確認させてもらいます。認識コードを言ってください」

 

「AR1865-OKN2361。これでどうじゃ?」

 

「確認出来ました。どうぞ中へ」

 

戦闘服の男は銃を下ろす。

ハリーはその男を知っていた。

 

「エスペランサ。それに、ネビルも」

 

「おう。久しぶりだなハリー」

 

「こんなところで何をしているの?」

 

「簡単に言えばウィーズリー家の警護じゃ。それにハリーを守るためでもある。隠れ穴とて完全に安全とは言い難いからのう。わしの命令でセンチュリオンには隠れ穴の警護をしてもらっておる」

 

ダンブルドアが代わりに答えた。

見渡せば庭の周囲に有刺鉄線が張り巡らされ、監視カメラも設置されていた。

ネビルはハリーに軽く挨拶すると、庭の周りの哨戒を再開する。

 

「24時間体制で哨戒を行なっているんだ。3時間ローテで常に誰かが立直している」

 

エスペランサが言った。

庭の中には野営用の天幕が2つ張られ、その内の一つからはアンテナが伸びている。

 

「あれは何?アンテナみたいだけど?」

 

「通信基地だ。各地に散らばっている隊員と連絡が取れるようになっている。休暇中だしな。実家に帰る隊員も多い。だが、万が一の場合に備えて常に連絡が取れるようにしているんだ。その横の天幕は非番直の仮眠場所。流石にウィーズリー家の中に泊めてもらう訳にもいかんからな」

 

エスペランサに促されてダンブルドアとハリーはウィーズリー家の母屋に向かった。

 

母屋の入り口にはもう一人、戦闘服の男が立っている。

セオドール・ノットだ。

 

スリザリン生を快く思っていないハリーはセオドールの姿に怪訝な顔をする。

隠れ穴にスリザリン生が居るなんてもっての外だ。

ハリーの顔を見たセオドールはその心情を察した。

 

「センチュリオン副隊長のセオドールだ。まあ、あらためて自己紹介をする必要もないだろ」

 

「何でスリザリン生の君がここに居るんだ?確か君の父親も死喰い人だった筈だ」

 

「グリフィンドール生のスリザリンアレルギーも末期症状だな」

 

セオドールは特に気を悪くした様子も無く肩をすくめる。

 

「ハリー。セオドールは味方だ。何せセンチュリオンの副隊長だからな。彼が居なければ俺達は誰一人として魔法省から生きて帰れなかったんだ。それに、セオドールは既にノット家を捨てている」

 

「え?捨てている?それはつまり、家出したって事?」

 

セオドールは無言で頷いた。

 

「そういう事だ。セオドールはこの後、ダンブルドアと共に次期大臣のスクリムジョールと会合があるんだ」

 

「魔法大臣と会合?」

 

「ああ。どうもスクリムジョールは我々の事が気に入ったらしくてな。しきりに連絡を取ってくる。今日は俺の代わりにセオドールに行ってもらうつもりなんだ」

 

「まあ俺としても早いところ隠れ穴から遠ざかりたいとは思っていたから正直安心している。いや、別にウィーズリー家が嫌いなわけじゃない。ただ、やはりこういう温かい家庭というのはどうも居心地が悪くてな。それに、モリーさんは俺達の事を快く思っていなかったようだ」

 

セオドールはため息混じりに漏らした。

ロンの母親であるモリーが隠れ穴に武装集団を常駐させることに良い顔をしないのは容易に想像がつく。

 

「わしはモリーに挨拶してから魔法省に向かう。君は先に行っておいてくれ」

 

「了解しました」

 

セオドールはそう言って隠れ穴を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フレッドとジョージの部屋で一夜を明かしたハリーは、起床ラッパの音で目が覚めた。

フレッドとジョージはダイアゴン横丁で悪戯専門店を開くため、家を出ている。

 

ベッドから起きあがったハリーはメガネをかけた後、ダンボールの山(試作品の悪戯グッズが大量に入っていた)をかき分け、窓から外の様子を見た。

隠れ穴の庭に戦闘服姿の男女が5.6人集まり、点呼をしている。

 

「ウィーズリー家には迷惑かけるが、これも日課なんでね」

 

いつの間にか部屋に入ってきていたエスペランサがハリーに話しかける。

 

「昨日はゆっくり挨拶も出来なかったからな。よく眠れたか?」

 

「うん。ええと、あの人達は全員君の部下なのか?」

 

「そうだ。今は俺を含めて7人がここに駐屯している」

 

ドタバタと足音が聞こえたかと思えばロンとハーマイオニーが部屋に上がってきた。

 

「おい、君がもう来てるなんて聞いてないぜハリー!今朝来るって聞いてたんだ」

 

「昨日の夜に来たんだ。ダンブルドアに連れられて……」

 

「ダンブルドアとどこに出掛けていたんだい?」

 

「そんな楽しいお出掛けでもなかったよ。ホラス・スラグホーンっていう教師を教職に戻すのを手伝っただけさ」

 

「スラグホーンは良い先生だった?」

 

ハーマイオニーが聞く。

 

「うーん。ちょっとセイウチに似てる。それからスリザリンの寮監だったみたいだけど、スネイプみたいなタイプじゃなかった」

 

「アンブリッジ以下ってことは無いだろ?」

 

「あら、アンブリッジ以下の人を知ってるわ」

 

これまたいつの間にか現れたジニーが苛立ちながら言った。

 

「朝からどうしたんだ?」

 

「またあの女よ?頭にきちゃう。まるで私を3歳児のように扱うんだから」

 

「分かるわ!あの女は自意識過剰よ?」

 

ジニーとハーマイオニーが何やらヒートアップしてきたのでハリーは一体誰の悪口を言っているのだろうと疑問に思う。

 

「あの女って誰の事?ロンのママの事じゃないよね?」

 

「あーそれはな……」

 

エスペランサが何かを言いかけた時、扉が勢い良く開き、朝食が大量に載ったお盆を抱えたフラー・デラクールが現れた。

 

ハリーはキツネに摘まれたような顔をしている。

ロンもフラーに見惚れている。

無理も無い。

彼女はヴィーラの血をひいているのだ。

男は魅了されてしまう。

 

ヴィーラの影響をあまり受けないエスペランサは無反応だったが、一方で女性陣は非常に不快な顔をしていた。

また、フラーの後から不機嫌そうな顔をしたモリーと私服姿のフローラが現れる。

 

フローラもセオドールと同じく家を捨てていたので漏れ鍋に居座るしか無かったのだ。

 

「お盆は私が持って上がるからあなたが持って上がる必要は無かったのよ!」

 

「あら、私はこの人に会いたかっただけです」

 

フラーはハリーの前に朝食の載せられたお盆を置くと、彼の頬に熱いキスをした。

 

「私の妹のガブリエルを覚えていますか?あの子もハリーに会いたがっています」

 

「あの子もここに居るの?それと英語上手くなったね…」

 

「いえいえ。妹は来ていません。私は英語を勉強する為にグリンゴッツで働いているんです。でも、ガブリエルは来年の夏にここに来ますよ」

 

フラーの妹の話が出る度にフローラは露骨に嫌そうな顔をしたが、エスペランサは敢えてそれを無視した。

 

「それは何故……?」

 

「私は来年の夏にビルと結婚するからです!」

 

「あ、あー。おめでとう?」

 

「フラーとビルはグリンゴッツで知り合ったそうだ」

 

エスペランサが補足説明する。

 

「私は下に行きます。ハリー朝食を楽しんでね!」

 

フラーは再度ハリーにキスをして部屋を後にした。

 

「ええと、この朝食はフラーが作ったんですか?」

 

いまだに顔を赤くしたままのハリーがモリーに聞く。

 

「いいえ。この娘が作ったんですよ」

 

モリーがフローラを指さす。

フローラは非番直の時、ウィーズリー家の家事を手伝っていた。

本人曰くウィーズリー家に迷惑をかけているのだから少しでも家事を協力したいとの事だ。

 

最初はカロー家の娘を家に入れる事すら抵抗していたモリーであった。

しかし、毎日家事の手伝いをするフローラがすっかり気に入ってしまったようで、今では彼女のみウィーズリー家の中で寝泊まりする事が許可されていた。

 

「最初はスリザリンのカローが飯を作るって聞いて、てっきり毒でも盛られるんじゃないかと思ってたんだけど。ママったら今じゃ私よりもカローの方を娘みたいに扱うんだから」

 

ジニーが呆れたように言う。

 

「ええ!何だか娘がもう一人出来たみたいで楽しいわ」

 

モリーはフラーの事を完全に無視しているようだ。

 

「私もこんなに楽しく休暇を過ごしたのははじめてです。それに家事はそれなりに出来る自信があったので……」

 

「あら、私も家事なら勉強中です!」

 

フラーが大声で主張したが反応した者はいなかった。

フローラのこれまでの境遇を考えればウィーズリー家で過ごすこの休暇は天国なのだろう。

 

「さあ、他の人の朝食も準備しないといけないからもう行きましょう!ジニー、あなたも手伝ってもらわないと……。あ、あなたはここに残っても良いわよ?隊長さんも居る事だしね」

 

モリーはフラーとジニーを連れて厨房へ降りていった。

ジニーはあからさまに嫌な顔をしていたが、しぶしぶ付いていく。

 

フラーは最後にハリーにキスをしてから階段を降りていった。

 

「俺が他人の家に口を出すのも気が引けるが、お前らフラーの事を嫌い過ぎだろう?」

 

「当たり前でしょう?あの女は人をイラつかせる天才だわ。本当に救いようがない。ビルもフラーじゃなくてトンクスを好きになれば良いのに」

 

「おいおいハーマイオニー。フラーがいるのにトンクスを好きになる男なんて居ないぜ?そりゃトンクスは顔はまあまあさ。でも、フラーに比べたら」

 

ロンが言う。

 

「トンクスは性格が良いわ。それに闇祓いだからとても知的よ?」

 

「フラーも馬鹿じゃないよ。3校対抗試合で代表選手だったんだから」

 

「まあハリー!あなたまでもフラーの味方をするの?そりゃそうよね?朝から3回もキスされたんですもの」

 

「ハーマイオニー落ち着け。ハリーは一般論を述べたまでだ」

 

エスペランサがヒートアップしつつあるハーマイオニーを止めようとした。

だがこの発言も火にガソリンを注いだだけだったようだ。

 

「本当に男はどいつもこいつもフラーにメロメロなのね?エスペランサだって顔が良ければ誰だって良いんでしょ!」

 

「何言ってやがるんだ?だいたいにしてフラーは確かに美人だが、フローラの足元にも及ばねえ。俺がフラーに惹かれる訳がねえだろうが」

 

エスペランサの発言に場は騒然となる。

彼がフローラの事をどう思っているかを知っている人間はセンチュリオンの隊員以外ではほとんど存在しない。

ハリー達3人も勿論知らない。

 

そもそもエスペランサが女性の外見を褒めるという天変地異が起きたに等しい出来事に驚愕していた。

 

微妙に気まずくなった空気の中、仄かに顔を赤らめたフローラが口を開く。

 

「そ、それはさておき。今日はOWL試験の結果が届くみたいですよ?」

 

「そんな!今日!?何でそれを黙っていたの!?」

 

ハーマイオニーが絶叫した。

 

「聞かれませんでしたので」

 

「どうせハーマイオニーのことだから全科目優秀なんだろ。そんな事より、ハリーはダンブルドアと昨日何か話したりしたか?」

 

「ああ、ダンブルドアは今年いっぱい僕に個人授業をしてくれるんだってさ」

 

「えええ!そんなことを黙っていたなんて!」

 

「マーリンの髭!でも何で突然ダンブルドアは君に個人授業を?」

 

ロンとハーマイオニーがまたも絶叫する。

 

「何故かははっきりとは分からない。けど、恐らくは予言のせいじゃないかと思う。ほら、魔法省で砕けた予言……」

 

「でも、あの予言は砕けてしまって誰も聞けていないわ」

 

「それが、ダンブルドアは予言を保存していたんだ。その予言によれば……ヴォルデモートを倒さないといけないのは僕らしい。僕とあいつはどちらかが生きる限り他方は生きられないんだ」

 

この予言の内容には全員驚いた。

 

「やっぱり……。実はそうなんじゃないかって私とロンで話していたのよ。ハリー、やっぱり怖い?」

 

「いや、正直なところずっと前から分かってた気がするんだ。僕とあいつがいつか決着をつけなくてはいけないって……」

 

「我々センチュリオンはハリーへの協力は惜しまない。もし仮にヴォルデモートをハリーが倒さないといけないのなら全戦力を使って支援しよう」

 

エスペランサがハリーに言った。

予言とやらをエスペランサは疑ってはいたが、それでもハリーとセンチュリオンの利害は一致したのだ。

 

「エスペランサ達を巻き込むわけにはいかないよ」

 

「何を言ってるんだ?我々の当面の目標はヴォルデモート勢力の殲滅だ。現にこの2週間で巨人3体と死喰い人4人、それに人攫い十数人を排除した。それに、近日中には狼人間の本拠地に奇襲を仕掛けるつもりだ。もう俺達は戦い始めている」

 

そう言ってエスペランサは日刊預言者新聞を放り投げた。

新聞にはロンドン市内での戦闘についての記事が書かれている。

 

「グレイバックを仕留められなかったのは痛手だがな」

 

グレイバックは仕留められなかったが、近日中に狼人間のアジトは片っ端から闇祓いによって潰される予定だ。

闇祓いの3割は前回の戦闘で深傷を負って病床を動けないが、残った構成員で戦うそうだ。

 

センチュリオンも出動を検討したが、流石に新学期が始まってからは外での活動が難しくなる。

 

「そう言えばこの間、ダーズリー家で見たニュースでロンドンの橋が崩落したって言ってたけど……。ひょっとして……?」

 

「俺達だ。人攫いの連中との戦闘で橋を一つぶっ壊しちまったんだ。っと?ありゃフクロウじゃないか?」

 

エスペランサが窓の外を指差す。

見れば複数羽のフクロウが飛んできていた。

 

「ああー!ダメー!終わりだわ!」

 

悲鳴を上げているハーマイオニーを他所に、エスペランサ達はフクロウから封筒を受け取った。

封筒は間違いなくOWLの結果通知である。

 

エスペランサは自分の試験結果に目を落とした。

 

天文学 可

薬草学 良

魔法史 優

呪文学 良

魔法薬学 可

マグル学 優

占い学 不可

変身術 優

闇の魔術に対する防衛術 優

 

「悪くは無い成績だな」

 

予想より良い成績だったエスペランサは気を良くしてチラリとフローラの成績を見る。

フローラの成績はほとんどが優だった。

 

「どうしました?」

 

「いや、何でもねえ」

 

「隊長のあなたはさぞかし良い成績だったんでしょうね?ちょっと見せて下さい」

 

「嫌だ」

 

「見せて下さい」

 

隙をついてエスペランサから試験結果を取り上げたフローラはニヤリとする。

 

「私の勝ちですね?」

 

「勝負をしていた記憶は無いぞ……」

 

そう言ったエスペランサだったが、彼は今日一日ずっと落ち込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平和に過ごすハリー達を他所にセンチュリオンは過酷な訓練と任務に励んでいた。

 

ハリーとロン達が庭でクィディッチをしている横でセンチュリオンの隊員は徒手格闘の訓練をしたし、裏山で演習も実施した。

また、闇祓いとの共同任務も幾つか遂行している。

 

とは言えロンドンの時のような大規模な戦闘は行っていない。

死喰い人側も慎重になったのかあまり頻繁に活動をしていなかった。

 

任務のほとんどは役人の護衛や諜報活動である。

魔法界における最重要人物は今のところハリーであるから、センチュリオンの半数はハリーの護衛についていた。

 

故にハリーがダイアゴン横丁に出かける際も8名の隊員が護衛についた。

ハリーとハーマイオニー、そしてウィーズリー家の面々の周りを戦闘服姿の隊員が歩く。

エスペランサ、ネビル、フローラ、ダフネ、アストリア、アーニー、ザビニ、アンソニーだ。

 

ダイアゴン横丁を歩くこの迷彩服の集団は好奇の目に晒されていた。

魔法使いにとってマグルの軍隊は物珍しかった。

 

エスペランサ達は顔をフルフェイスのゴーグルで覆っていたが、それはセンチュリオンの隊員を特定されることを防ぐためでもある。

 

無論、ホグワーツ生からセンチュリオンの隊員の素性はバレるだろうが、それでも無いよりマシだろう。

また、今回の護衛にはハグリッドも同行していた。

ダンブルドアは当初、ハグリッド一人で十分だと言っていたが、ダイアゴン横丁での戦闘を機に意見を変えたようである。

 

「こんなに護衛が付くなんて聞いてないし、こんなに要らないよ。これじゃ目立って仕方ない」

 

ハリーがため息混じりに呟いた。

 

「そうだ。ハリーの護衛は俺一人で十分だ。だが、ダンブルドアがなぁ」

 

「そう。これはダンブルドアの命令だ。それにダイアゴン横丁はもう安全じゃない。見ろあそこを」

 

「あそこは……オリバンダーの店?」

 

空っぽになったオリバンダーの店をハリーが見つめる。

その先の道は通行止めになっていた。

 

「表向きにはオリバンダーは拉致された事になっている。だが、その実、俺達が保護しているんだ。ついこの間までここで戦闘が行われていた。もうダイアゴン横丁すら戦場になっているんだ」

 

「ここで君たちは既に戦っていたのか。でも、オリバンダーが居ないとなると誰が杖を作るんだ?新入生は杖が買えないだろ」

 

「一応、外国のメーカーで間に合わすんだとさ」

 

ダイアゴン横丁は閑散としていたが、所々に無線機を持った魔法使いが立っていた。

 

「あの人達も君達の組織の人間なのか?」

 

「ああ。彼等は闇祓いだ。前回の戦闘でセンチュリオンに入隊したいと言ってきた闇祓いが何人か居たんだ。闇祓いは優秀な人材が揃っているから即戦力だった。今はダイアゴン横丁の警備をしてもらっている。他にも聖マンゴや魔法警察からも入隊希望者が居る」

 

闇祓いからセンチュリオンに入隊を希望した者は10名近くいたし、聖マンゴからも衛生隊に4人入隊した。

魔法警察パトロール部隊からは17人も入隊を希望する人間がいる。

 

こうなると部隊編成を変える必要が出てきた。

今までの2個分隊を解体して新たに3個小銃小隊を編成。

これらを統合して指揮する司令部を新たに創り出した。

第1小隊長はエスペランサ、第2小隊長はセオドール、第3小隊長はアンソニーが任命されている。

 

エスペランサとセオドールはいっそのこと司令部として小隊を持たないようにする案も出たのだが、残念ながら人員が不足している為、二人とも小隊長を兼任することになった。

 

この他に衛生隊、遊撃班、狙撃班、野戦砲部隊、補給隊、需品隊、経理補給隊、情報作戦隊、整備隊、通信隊、給養部隊などを編成している。

これらのパートの長を務めるのはセンチュリオンの初期のメンバーだ。

 

エスペランサは上下関係を明確にするために各隊員に階級をつけることにした。

隊長であるエスペランサを大尉、副隊長のセオドールを中尉、他の初期のメンバーを少尉としている。

そして、新規隊員は2等兵から年数と昇任試験の結果を考慮して階級を上げていく事にした。

 

闇祓い出身の隊員はまだ本格的な戦闘訓練を行っていない。

銃の取り扱いも教育を受けていないためダイアゴン横丁の警備を任せる事にしたのだ。

 

ダイアゴン横丁の多くの店はシャッターが閉まっていたが、その一方で露店が目立つ。

浮浪者のような老婆が怪しげなネックレスを売っていたり、非合法の魔法薬さえ並んでいた。

 

「お嬢ちゃん。魔除けのネックレスはいかがかね?死喰い人にも効果がある」

 

歯の抜けた老婆がハーマイオニーにドス黒いネックレスを売りつけようとしてきた。

 

だが、ハーマイオニーが口を開く前にエスペランサの横にいたザビニとアーニーが老婆にM733の銃口を突きつける。

 

「ち、ちょっといきなり銃を向けなくても良いんじゃない?この人は怪しいけどとても死喰い人には見えないわよ?」

 

「口出しするなハーマイオニー。センチュリオンは闇祓い局によって強制捜査権が与えられているんだ」

 

エスペランサが冷たく言う。

 

「ちょっと拝借……。ああ、このネックレスはアウトだね。闇の魔術がかかってる。ええと魔法省の定めた有事特例危険魔法物品番号第245番にある精神錯乱系統魔法のかけられた物品だよ」

 

ダフネが分厚い冊子を見ながら報告した。

ヴォルデモートが復活してから闇の魔術がかけられた物品が大量に流通するようになっている。

そのため、魔法省は有事特例危険魔法物品というリストを作成し、その取り締まりを行なっていた。

 

ちなみに、ロンの父親であるアーサーはこの件に一枚噛んでいる。

 

「お嬢ちゃん。馬鹿を言っちゃいけないよ。これはノクターン横丁で仕入れただけの危険性の無いネックレスなんだ。何も怪しくない……」

 

「ノクターン横丁か……。あそこも俺達の管轄だ。婆さん、悪いがあんたを連行しないといけない」

 

エスペランサの指示でザビニとアーニーが老婆を拘束しようとする。

これには老婆も焦ったようで杖を取り出した。

 

「婆さん。こっちは闇祓いと共同戦線を張っているんだ。抵抗したら公務執行妨害になるぞ?」

 

「わ、わたしゃ何も悪い事はしていない!そりゃ少しは危険な物を売ってはいたけど死喰い人と繋がりなんて無いんだ」

 

「そうかな?少なくともこれらの闇の物品を調達したルートを辿っていけば死喰い人に辿り着くだろうさ」

 

「し、知らない!わたしゃ知らない!」

 

老婆はそう叫びながらも魔法でエスペランサ達を攻撃しようとした。

しかし、それよりも早くアーニーとザビニが老婆を地面に押し倒し、銃尾で彼女の杖をへし折る。

 

「なんじゃ!わたしたちゃこうしないと生きていけないんだ!あんたらは力があるから良いさ!でも、わたしたちのような弱者は闇の魔法使いにヘコヘコして犯罪に走らなければ殺されるか、のたれ死ぬかどちらかしかないんじゃ!」

 

地面に押し付けられた老婆は叫ぶ。

しかし、それ以上抵抗はしなかった。

 

「恨むならヴォルデモート陣営を恨め。我々を恨むのはお門違いだ」

 

「同じじゃ!あんたらも例のあの人も、結局のところ暴力で市民を従えようとしているだけじゃないか」

 

その言葉を無視してエスペランサは老婆を魔法で縛り上げる。

他の露店商達は老婆とエスペランサの様子を見て、血相を変えて店を畳み始めた。

彼らも彼らで闇の物品を売買していたのだろう。

 

「あの露店商達もクロだな。魔法省は何をやってたんだ?」

 

エスペランサは舌打ちをする。

こういった違法売買の摘発はアーサーの部署が担当している筈だった。

 

「私の部署にここまでの力は無い。人も少ないし摘発には手が回っていない現状なんだ」

 

アーサーが苦々しく言う。

 

「仕方が無い。隊長、丁度良い機会だし一斉に摘発したらどうだ?」

 

「一応、特例で我々には強制的に奴等を拘束する権利が与えられている。だが、その権利の乱用は正直言ってよろしくない」

 

センチュリオンは軍隊だ。

ダンブルドア指揮下の常設軍という名目で存在が許されている。

 

だが、軍隊が露店商の取り締まりや拘束を問答無用でする姿を国民はどう思うか。

有事である現在は許されるかもしれないが、戦後は必ず禍根を産む事になるだろう。

 

だが、エスペランサが迷っているうちに露店商の男がセンチュリオンの隊員達に魔法攻撃を仕掛けてきた。

ギリギリのところで攻撃をかわしたエスペランサは隊員達に拘束を命じる。

こうなってしまえば仕方がない。

 

「公務執行妨害だ。全員拘束しろ。殺傷は控えたいところだが抵抗されたら小火器の使用を許可する」

 

隊員達は小銃を携行したまま逃げ出した露店商の拘束に向かった。

ハリーを護衛する為の最小限の戦力は残しておきたかったのでフローラとグリーングラス姉妹は残しておいたが。

 

「ねえ隊長……。私たち正しい事をしてるんだよね……」

 

ダフネがボソリと言う。

 

「これが戦争だ。いつだって戦争の名の下に市民は苦しんできた。だから正しい戦争なんて存在しない。市民を守るのが軍隊なら市民の命を奪うのも軍隊だ。そんな歪な世界で俺達は存在している」

 

「……………」

 

「そして、そんな歪な世界を変えて平和な世界を作ろうとしているのが俺たちだ。俺達は俺達自身を肯定しなくては戦っていけない」

 

ダフネはエスペランサの言う事が少しわかった気がした。

戦いを始めた以上、自分達が正しいのか正しくないのかを議論する余地は残っていないのだ。

 

 

「こんなことならもっと人員を回してくるべきだったな……」

 

半減した護衛隊を見てエスペランサはボヤく。

だが、センチュリオンは人員不足が甚だしく護衛に割ける人数は8名が限界だったのだ。

 

「まあ良いじゃねえか俺もアーサーもいるんだからハリーは安全だ」

 

ハグリッドが安心させるように言う。

確かに半巨人は戦力だ。

何せ魔法耐性がある。

 

「良し。じゃあハリー達はどこへ行きたい?」

 

「ええとマダム・マルキンのところでローブを買わないといけない。僕もローブは小さくなったし、ロンなんて踝が丸見えだ」

 

「私もドレスローブを買いたいわ」

 

ハリー達3人はマダム・マルキンの店に用があるようだ。

 

確かにハリーもロンも1年でかなり背が伸びた。

エスペランサは筋肉量以外は何も変わっていないのでローブを新調する必要は無い。

というか彼はローブよりも戦闘服を着ている時間が長く、ホグワーツでもローブ姿になる事はあまり無かった。

 

「隊長は身長が伸び悩んでいるからねえ。ローブを新調する必要は無いみたいだね」

 

ダフネがニマニマしながら嫌味を言ってくる。

 

「お前達だって昨年からちっとも体型が変わってないじゃねえか。ホグワーツ1年生でももう少し発育が良いだろうよ」

 

「あの……聞き間違えで無ければ今、"お前達"って言いましたよね?」

 

「あ、いやそれはあれだ。言葉の綾だ」

 

フローラをはじめとした女性隊員陣から殺意を向けられたエスペランサは必死で取り繕う。

グリーングラス姉妹は小柄で見た目はホグワーツ下級生とあまり変わらない。

フローラの身長は欧州では珍しく150に届いていなかった。

当然、本人たちはこのことを気にしている。

 

「センチュリオンに警務隊が無くて良かったですね。もしあれば隊長が真っ先にセクハラでしょっ引かれていますから」

 

 

後年、センチュリオンには警務隊が発足することになる。

その発足のきっかけが初代隊長の女性陣に向けた心無い発言であるということは誰しも知ることであった。

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