GATE ~幻影 彼の空にて 斯く戦えり~(更新停止中)   作:べっけべけ

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ゲートの録画したアニメのCMカット作業をしていて書きたくなりました。

最初はタイトルを幻影ではなく亡霊にしようと思いましたが、他作品で既に亡霊があったので幻影にしておきました。

伊丹耀司?知らない子ですねぇ


航空自衛隊特地分遣隊、派遣

03:52(マルサンゴーフタ)、特地、デュマ山脈上空にて。

まだ朝焼けも迎えておらず星が浮かぶ暗い空を背景にそこでは全身を灰色に包んだ二羽の老兵が翼端を光らせ、轟音を引き連れながら翼を広げていた。

 

『こちらセイバー、位置に着いた。送れ』

 

事前に知らされていた陸さん(陸上自衛隊)特戦群(ヤバイ人達)から無線が入る。俺達は使う機会が少ない独特の[送れ]が如何にも陸自らしさを醸し出していた。

 

『こちらホークウィンド01(ゼロワン)。現在デュマ山脈上空を通過中。帝都を低空飛行(ローパス)した後東よりアプローチ』

 

そう神子田隊長が返答した。前半は確かに現状報告として合っているが後半は今回の作戦にそんな内容は無かった筈……。

 

『おい神子田。低空飛行(ローパス)するなんて聞いてないぞ』

 

すかさず隊長の後部座席に座る久里浜さんが突っ込みを入れるが、当の隊長の声はあっけらかんとしていた。

 

『目覚ましだよ、め・ざ・ま・し』

 

『た、隊長……ソレ本当にやるんですか?』

 

思わず聞き返した。奇襲攻撃と言っても過言ではないこの作戦において1度帝都を通り過ぎ、2度も上空を通過するなんて目撃者を増やす事になるのは目に見えている。

 

『おう、あったりめーよ』

 

『……俺知ーらねっと』

 

『ちょっ……久里浜さん、そこ止めるとこですってば!』

 

隊長の手網を握る事を放棄した久里浜さんに思わず俺の後部座席に座る瑞原(みずはら)が叫んだ。

 

「空自の奴ら……大丈夫なのか?」

 

「さぁ?投下してくれるんなら問題無いだろ。どのみち俺達の場所がバレるわけでもないし」

 

「はぁ……先が思いやられる」

 

帝都のとある一室でそのような会話がされていたとかされていないとか。

 

 

 

 

 

 

時を遡る事約一時間前。

特地、アルヌス駐屯地の東へ約2kmの地点に位置する航空自衛隊区域。そこには彼らの矛を収める為の格納庫(ハンガー)が並べられ、全長約3.2kmにも及ぶ滑走路が1本並べられていた。

 

未だに完成とは言えない状況ではあるが、あくまでもまだ簡易的な航空基地なのでその辺りは致し方ない。

何せ災害後の急ピッチな作業と同様、もしくはそれ以上の早さで築き上げられたこの基地は(ゲート)が開かれた際に起きた無差別襲撃事件……【銀座事件】が起きてから僅か3ヶ月の事だった。

 

突如、銀座にギリシア建築を彷彿とさせる神殿のような建築物が現れ、中世を思わせる兵士達やファンタジーなどの創作物にしか出てこないような容姿をした化け物が多くの人々の命を奪っていった。老若男女は容赦無く殺され、銀座のアスファルトは血と肉片によって赤黒く上塗りされた。

 

テロリストもとい特地から攻め入ってきた兵士による被害により出た死傷者は4桁にまで及んだ。

そのうちの死者は約3000人。うち警察の殉職者は150人程に達した。

おかしな宗教団体が引き起こしたテロ事件が足下にも及ばないその桁数は全国の国民を震え上がらせるには容易かった。

 

そしてその事件の発生から2日後、街中の帝国兵の多くはそれまで浴びていた機動隊による催涙ガスではなく、明確な殺意を孕んだ鉛玉の嵐をその身に受ける事となった。

飛龍は墜ち、(オーク)は首を失い、ヒトはその胸に6mmにも満たない小さな穴を幾多も開ける事によって事切れた。

 

結果、帝国兵を含めた死者数だけでもその数は6万に達した。

 

その後[ここまでやる必要はあったのか]といった意見が何も被害を受けていない県外の一部団体から出るのだが、それはまた別の話。生憎、日頃から妄想に取り憑かれ面白可笑しい妄言を喚き散らすだけの連中に貸すような耳を俺は持ち合わせてはいない。

 

それに陸上自衛隊でも幾人か死傷者が出ていた。訓練などによる殉職ではなく、本当の戦闘での死亡。その多くは狭い市街地戦による敵の放った事により降り注いだ毒矢の雨や、占拠されたビルなどから突如飛び降りてきたりするオークなど人外兵士による奇襲攻撃によるものだった。

 

そして事件発生から5日後、政府の取り決めにより(ゲート)の前までようやく敵を押し戻していた陸上自衛隊にはようやく前進を開始する許可が出た。

 

(オーク)(オーガ)によって設けられた木製のバリケードの隙間を縫うように這って侵入したテロ対策ロボットや蛇型災害用ロボットが敵の位置を報告。10式戦車による鉄の矢がそれらをいとも容易く貫いた。

 

その後門の先の特地(向こう側)では銀座で積み重なった死体と同様の数だけまたも(むくろ)が量産された。今度は誰が誰やら分からなくなるほどの光景だったという。彼らはハゲタカやカラスが一口で食べられる大きさになった者もいれば、炭となって土に還った者もいた。死屍累々、そんな言葉を誰もが思い浮かんだ。

 

 

 

この世界……特地ではわからない事があまりにも多過ぎる。

目的不明の敵国、地球上には存在しない未知の動植物、そして絵本の中の物語を思わせる未知の技術【魔法】……(ゲート)を通った先の世界は謎で満ち溢れていた。

 

自分も含め一見異世界にはしゃぐように見える一部オタク自衛官達にも緊張と不安が見え隠れしていた。……あのような惨劇が始まりだったので当たり前だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今作戦より数週間前。

 

オリーブドラブ1色に塗られた1-1/2t(1トン半)トラック。そのバンパーには【特派】と白く書かれており、その前方に並ぶ各車両にも同様の文字が塗装されていた。

車両の列から外れ砂埃をほんの少し巻き上げながら停車すると、との荷台から大きなカバンをそれぞれ抱えた俺達、航空自衛隊特地分遣隊飛行小隊が降り立った。

 

「うーん……あんまり異世界に来た実感が湧かない」

 

「だな。空が黄緑色ってわけでもないし」

 

「おいそれ何処のジャムのいる惑星だよ」

 

「いやいや、案外地球の神様の生まれ故郷かもよ?」

 

辺りを見渡せば真新しい建築物が立ち並ぶ此処は【特地】。(ゲート)を中心に建てた星型要塞から東に約2km、その地点に俺達航空自衛隊の特地派遣部隊の本部が置かれていた。

 

「先に来た偵察隊は大変なんだろうなぁ」

 

「……だろうな」

 

ちょうど真上でけたたましい音を立てて空を切り裂くRF-4EJ偵察機らしき森林迷彩のファントムを目にして呟いた。翼端から白いベイパーを引きながら旋回していく様が羨ましい。

 

「あぁ!早く俺もF-4EJ改(ファントム)に乗りてぇ!」

 

俺達の前を歩く隊長も同じ事を思ったらしい。

 

今回派遣された戦闘機乗りは2組。1番機には大ベテランの神子田(かみこだ)2等空佐と久里浜(くりはま)2等空佐が、2番機にはどういうわけか俺達3等空尉なヒヨッコが就く事になった。

 

お偉いさん曰く、もう定年を待つベテラン達だけを投入するよりもまだ伸び代がある若いヤツも連れていって向こう(特地)での実戦を積ませると伸びる所もあるかもしれない……だそうだ。

 

俺としては防空や戦競技の戦力を減らしたくないからとしか聞こえないんだが。

しかし本物のケモミミを見る事ができるというこちらの世界に来る事ができたし、加えて手当て付きの若干高くなった給料まで貰えるので万々歳である。

 

なおこの世界に来る事が出来るのは派遣された自衛官と一部の土木工事に関する業者。野党やマスコミが入れろと騒いでいるが、俺としては何かと自衛官を悪者扱いしようとする連中が多いので入ってこないでほしいところだ。

 

今でもとある新聞では[侵略行為を働く自衛隊]などと報じているらしい。

人の不幸は蜜の味と言わんばかりに銀座事件の被害者の写真や名前などを調べ上げベラベラと垂れ流して被害者を2度殺したというのに今度は自衛隊が特地で侵略行為を働いているという……おそらくあの兵士達を目にしていないからそのような事が口にできるのだろう。もしくは話のタネになるからだ。

 

実際俺達航空自衛隊はそのほとんどの人員が帝国の兵士を画面でしか見た事が無い。銀座事件が起きた際は茨城県に居たし、現場を見る事もなかったし見たくもない。

 

秋葉原で数年前に起きた無差別殺傷事件を軽く超える規模の死傷者を出した今回の事件。日本国民は未だに緊張感を持つ者が少なく、またいつこのような出来事が起こるか不安である。

 

「んじゃ、移動が完了次第報告書作成だな」

 

「大変ですね~隊長も」

 

「お?なんだ西元、代わってくれるのか?」

 

「イヤー無理っす」

 

雑談を交えながら建物内へと歩みを進めた。

急ピッチで建てられた筈の建物だが、派遣前に使っていた建物と比べて物凄く綺麗だった。

壁が薄いわけでもなくプレハブでもない、建築業者の本気を見たのだと思えた。

 

(居るのかなぁ……獣耳娘)

 

未だ見た事の無い特地特有の亜人種。

 

同じ高校で陸上自衛官になった栗林志乃(くりばやししの)、通称クリボー。現在は二等陸曹で航空自衛官である俺よりも先に此処、特地に派遣されていた筈の彼女から久しぶりに連絡が来た時には目を疑った。

 

[今こっちの旅館でエルフと魔法使いと亜神と女騎士と同人作家と酒盛り中]

 

そのメッセージと共に送られてきたデータを開けば自撮りの写真であろう画像。そこにはその日の国会に関するニュースで出てきた3人と知らない女性3人……そして当の本人であるクリボー。

 

それぞれがチューハイやビールなどの酒類の缶を片手にカメラ目線でピースサインをとる女性陣。

 

とりあえずその画像は俺のスマホの容量の中を圧迫する数値の内のひとつになったのは言うまでもない。

 

なお、俺に特地行きの切符(書類)が手渡される事になるのはその次の日の事であった。

 

 

 

 

 

 

 

さて、話を戻すとしよう。俺が特地(こっち)に派遣されから約2週間。

ちょうどクリボーが所属するという第三偵察隊が炎龍……特地甲種害獣(ドラゴン)と遭遇。

左腕を110mm携行対戦車弾(パンツァーファウスト3)でようやく吹き飛ばしたらしく、64式とM2重機関銃(50キャリバー)じゃ歯が立たなかったとの事。

他の陸さんはそりゃ大層驚いていたが、空自ではM2重機関銃は一部の人間しか使わないし、対戦車兵器のLAMもそもそも扱わない為今ひとつイメージがつかなかった。

 

空自で似たようなものといえば91式携帯地対空誘導弾(スティンガー)ぐらいしか無いだろう。基本対空の事しか考えていないし対戦車なんて想定外だ。

 

と、いうわけで俺はてっきり空自てドラゴンを退治するものだとばかり思っていた。しかし現実は違った。

 

空幕(航空幕僚監部)を通して陸さんとこのお偉いさん、狭間陸将から爆撃要請が来た」

 

ついこの前まで書類仕事が嫌で逃げ回っていた神子田隊長が真面目な顔をしてホワイトボードでできた壁に貼られた1枚のドデカイ航空写真に手をバシンと当てた。

 

 

 

「目標はここだ。帝都帝国元老院」

 

真上からの写真じゃパッとしないが、丸く円状に作られた建物の壁や屋根が印象に残る。

 

「一般市民への被害を可能な限り回避する為と我々からの[メッセージ]を伝える為、日の出と同時に特戦群の誘導によってここを爆撃する。装備はAIM-9L(ナインエル)が2発と三沢の米軍から貰ってきたEGBU-12付Mk.82(ペイブウェイⅡ)が2発、爆撃は第1波が俺と久里浜が、第2波が西元と瑞原だ」

 

アルヌス周辺を大まかにまとめた地図が広げられ、飛行ルートと爆撃のアプローチコースが確認されていく。

 

ここ、アルヌス駐屯地を飛び立ったら針路0-7-7(東北東)へ。コアンの森とデュマ山脈を越えたら帝都という比較的簡単なルートである。

 

「空自特地分遣隊 初の実戦だ!気合い入れていくぞ!」

 

「「はい!」」

 

「やれやれ……」

 

早速テンションがMAXになった神子田隊長を筆頭に各自のヘルメットを手に取った。なお、現在時刻は02:13である。……しかしこの作戦については深夜、または早朝から開始するので要睡眠と聞いていたので昼寝はバッチリだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって陸自と空自の機体が共同で使用している滑走路。

 

夜空の下のだだっ広い駐機場(エプロン)には森林迷彩に包まれた双発のMU-2C改めLR-1連絡偵察機が2機駐機している他、陸上自衛隊所属のCH-47チヌークなども並んでいた。

 

そして長い間日本の空を守ってきた老兵……F-4EJ改が2機並んでいた。それらには垂直尾翼に赤いダンダラ模様と機首の下にはシャークティースが施されている。機首の下の所にはラジアンナンバーが振られており、番号は[680]と[320]。

 

その[320]に俺と瑞原(みずはら)が乗り込むこととなるのだが、俺はある点に気がついた。

 

「うわぁ……まじでAIM-9L(ナインエル)だ……」

 

主翼下の兵装支持架(パイロン)に取り付けられた近距離用空対空ミサイルの飛行制御部分は茶色く、先端のシーカーには黄色いカバーが被せられていた。

 

その飛行制御部分の後ろにある弾頭部分。青色(キャプティブ弾)ではないソレは実弾であるのだと灰色の顔をして物語っていた。

 

最近の中国やロシアに対するスクランブルでもAAM-3(90式空対空誘導弾)にその座を譲りつつあるコイツは幸か不幸かぶっちゃけ在庫処分場である特地(ここ)に来てしまったのだろう。

どのみち実弾は無人標的機以外には使用される事の無く廃棄処分となるので特地(こちら)で使わせずにはいられないのは当たり前と言えば当たり前ではあるが。

 

「はいはい、そう愚痴るなって。実弾なだけまだマシじゃん?」

 

並んだ瑞原が呆れたように言った。

 

その後整備小隊の隊員の人から渡された整備記録の書類に目を通すが、いつもの如く何ら異常は見当たらない。

 

そしてマニュアル通りに外部点検を済ませ、目の下に闇のように深い隈を刻んだ整備員と武器弾薬員を目にしながら操縦席へと身を収めた。

 

 

 

 

 

 

KM-3エンジン始動車から機体に繋がれた電源ケーブルとコンプレッサーのホース。

 

整備員と指でエンジン回転数の確認を取り合いながらエンジンのタービンを回していく。

 

『40。エアーカット』

 

『エアーOFF〜』

 

右エンジンから回し始め、完了したら次は左のエンジンを。

深夜2時に起こる轟音に意義を唱える者は居ない。せいぜい定時帰りで寝ている極一部の人間が叩き起されるだけだろう。

 

何故ここでは苦情は来ないのか。

理由は至極簡単、皆眠れずに働き続けているかエンジン音如きでは起きられぬ程に疲れきって爆睡しているからである。

 

残業代も出ないこのサービス残業の嵐。

それは特地(ここ)日本(向こう)も変わらないらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「西元3尉瑞原3尉、御武運を」

 

その整備員に返事と感謝の意味を含めた敬礼を行うと、操縦席横のハシゴが取り外される。

 

各アクチュエーターの動作確認を行う。

高揚力発生装置(フラップ)補助翼(エルロン)昇降舵(エレベーター)方向舵(ラダー)制動(アレスティング)フック……スクランブルではないので細かくチェックを行っていく。

 

そして燃料流量、油圧、速度などの計器類を瑞原と一緒に確認をしていき、全て異常無し。スロットルをIDLE(アイドル)の位置から少し前進させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

AlnusTower, HAWKWIND 02,(ホークウィンド02からアルヌスタワーへ。) at Runway 18. (滑走路18の)Request taxi(滑走許可を求む)

 

『アルヌスタワーよりホークウィンド01、02へ。此処の空では俺達以外喋らない。多少は日本語でいいぞ』

 

「え」

 

『うっわ、テキトー!』

 

『アッハッハッハ!そいつァいいや!』

 

後部に座る瑞原と神子田隊長……いや、TACネーム[GOD]が無線で笑いを飛ばした。

 

キャノピーが閉まるのを待ちながら滑走路へと機首を向かわせた。

 

 

 

 

 

 

『アルヌスタワーよりホークウィンド01、02へ離陸許可。陸さんのヘリと鳥にぶつからなければ良し、残燃料には気をつけて[メッセージ]を届けてこい』

 

『ホークウィンド01、了解(コピー)

 

『02、了解(コピー)

 

 

 

滑走路上に灰色がふたつ並び、エンジンノズルが急激に開くと黄色い炎を出してA/B(アフターバーナー)が点火される。

 

一瞬にして跳ね上がる燃料流量計の白い指示針。エンジン系統の2列に並んだ計器類が仲良く震えるのを見届けると、神子田隊長に続いて操縦桿を僅かに身に寄せた。

 

タイヤ痕がまだほとんど無い滑走路をガタガタと機体を揺らしながら駆け抜け、足が地から離れる。すぐにハンドルを上げる事で前脚(ノーズギア)主脚(メインギア)を収納し高度をそのまま上げていく。

 

『ヒャッフォォォォ!』

 

『おーいGOD(神子田)。叫ぶなら無線抜きでやれ』

 

一番機で相変わらずなやり取りが行われるのを聞きながら上昇していく。

 

『針路0-7-7に修正。ターンヘディング、ナウ』

 

了解(ツー)

 

我らがファントムのコンピュータ、BARONこと久里浜2等空佐がナビゲーションを行う。

 

この人の指示通りに機首を向ければ何処へだって正確に行くことが出来る。後部座席で相棒の瑞原が何か悔しがっているが、大方指示が彼よりも遅かったからだろうか。ベテランに追いつくのはそう簡単な事じゃない、もっと経験が必要なのは言うまでもないだろう。

 

 

高度約21000ft(6500m)、速度420kt(780km/h)

 

目下に広がる灰色の雲海を目の前に俺の心臓は暴れていた。

初の実戦。敵に対空兵器は皆無ではあるが、訓練ではなく人命も関わると思うと何か感じるものがあった。

 

 

 

そのまま飛行を行う事約30分。話は冒頭に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在高度2500ft(760m)、速度320kt(600km/h)

 

帝都確認(Tallyho)!』

 

隊長のその宣言の通り遠くには帝都らしき影が映っていた。松明だろうか、所々では小さな灯火が点々と光っていた。

 

WARMAR(西元)、俺に続け。かっ飛ばすぞ!』

 

了解(ツー)

 

そう言われてスロットルを左右両方共MIL(ミリタリー)へと前進させていく。

 

エンジンの出せる最大出力で速度を高め、高度も徐々にだが落としていく。

ゆっくりと振れる高度計、何度も体を襲う-0.5G程の不快感。

 

『Go gate!』

 

隊長の掛け声に合わせてこちらもスロットルをMIL以上の出力……MAXと書かれた位置まで押し込んだ。

 

ゴウッ

 

そんな爆轟にも似た爆発音と共に大きく振動する機体。ドラム缶をひっくり返したかのように燃料を飲み干していくエンジンが唸りを上げていった。

 

 

旋回時程ではないが軽く座席に押さえつけられる身体。

 

音速には決して達しているわけではない。

しかし民家の上空80mという低い高度と住民達を叩き起すには十分過ぎる程の轟音が、朝焼けの陽射しと共に静かな空を切り裂いた。

 

 

 

『目が覚めたかね市民諸君!』

 

HAHAHAと笑いそうな声色の隊長が叫ぶ。

 

さっきまでと打って変わって隊長の気持ちがわかった気がする。……ちょっと楽しい。

 

そのまま俺達は帝都上空を490kt(900km/h)程で突き抜けた。

 

針路方向を0-7-7(東北東)から旋回し、今回の目標である元老院にお届け物(Mk.82爆弾)を渡すべく真東から真西へと向けてアプローチコースに入る。

 

『こちらセイバー。目標に向け誘導開始』

 

再び特戦群からの通信。先程の低空飛行(ローパス)で流石に彼らも到着した事に気づいたようだ。

 

スピードブレーキを展開し、減速させる事で隊長機から距離を置く。そのまま第二波攻撃のタイミングを待つべく隊長とは違う方向へ旋回をしていった。

 

投下用意(ドロップ、レディ)……(ナウ)!』

 

その宣言が発せられると、隊長機がドンドン上へと高度を上げていった。

 

それから数秒後、帝国元老院は砂埃による黒煙に包まれ……夜明けの帝都に2回の爆音を響かせた。

 

『セイバーよりホークウィンドへ。目標をマーク。第2波準備良し、送れ』

 

『ホークウィンド02、了解(コピー)。アプローチに入る』

 

無線でそう言うと、空中警戒待機の状態からラダーペダルを踏み込んだ。

 

機首が向く先には黒煙を上げる元老院。

 

東からのアプローチの為逆光とはならず、むしろ帝都が俺の後ろから照らされてよく見えた。

 

CCIP(命中点連続算出)モードに切り替えたHUDに現れる投弾線と着弾点ピパー。

 

よくゲームなどで目にするソレを煙で目印が立っている元老院へと合わせた。

 

投下用意(ドロップ、レディ)……(ナウ)

 

操縦桿の赤い兵装使用ボタンが押し込まれる。

そこから流れた電気信号は主翼下の2つの手土産の拘束を解除するよう指示した。

 

目標上空を通り過ぎたところで聞こえたかもしれない爆発音。しかしそのほとんどは自機の唸るエンジン音によってかき消されていた。

 

『全弾命中。目標は石材に戻った。繰り返す、目標は石材に戻った』

 

『ホークウィンド01よりセイバー、誘導感謝する。RTB(帰投する)

 

了解(ツー)

 

隊長の指示に従い、後を追う。

こうして[メッセージ]とやらを送り届ける任務は終えたが……遠足は家に着くまでが遠足だ。帰り道には特地甲種害獣(ドラゴン)に遭遇しても状況によっては巴戦(ドッグファイト)には持ち込まず、速度を生かして振り切る予定だ。

 

はぁ……と、一つ溜息が漏れ出る。

 

空自にとって初の実戦での空爆。幸か不幸か空自で初めての警告射撃もF-4EJ(ファントム)だったな。

 

いつまでも鞘に収まる事を許されなかったこの剣は皆の目にはどう映るだろうか。

 

その刃は脆く、錆びついているのだろうか。

それとも…………

 




スイマセンm(_ _)m主人公(伊丹耀司)は出ないんです。

テュカとかロウリィとはどう関わらせれば良いか全くわからないから出せないorz

ホントなら既婚者コンビになる320ですが、彼女もできたことが無く描写が不可能なので独身設定です。

爆弾は漫画版だとGCS-1付きJM117、アニメだとペイブウェイっぽいんだよなぁ
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