FAIRY TAIL 海竜の子   作:エクシード

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少し更新が遅れましたね、すみません。




ファイアボール

 

 

 

 

「ま、まさか……こいつがアースランドの……」

 

「これが……エドラスのあたし……」

 

二人のルーシィさんがお互いに見つめあう中、王国軍の兵士達の増援が到着したようで、いつの間にか僕達を取り囲んでいた。

 

「居たぞ!」

 

「話は後回しにしましょ!」

 

「このままじゃ捕まっちゃうよ!」

 

ハッピーの叫びを聞いて、兵士達と対峙する。

 

「ナツ、早くやっつけて!」

 

「どうやって?」

 

「あんたの魔法で、決まってんでしょ?」

 

兵士達を指さしてナツさんに指示するルーシィさんに、ナツさんは目を細めて魔法が使えない事を告げると、ルーシィさんを睨み付ける。

 

「つぅか! お前はなんで使えるんだ!?」

 

「し、知らないわよ!」

 

ルーシィさんとナツさんが揉めてる中、兵士達がジリジリと距離を詰めてくる。

 

「ルーシィ!」

 

「あいつらをやっつけて!」

 

「お願いします!」

 

「ルーシィさんしか魔法が使えないんです!」

 

「ルーシィさんだけが頼りなんです!」

 

みんなでルーシィさんに頼み込むと、ルーシィさんは真面目な表情で「もしかして今のあたしって最強?」と呟き、ナツさんが早くやるように怒り叫ぶ。

 

「開け、白羊宮の扉! アリエス!」

 

「あ、あの……がんばります…」

 

現れたアリエスさんを見たハッピーは「もこもこー!」と歓喜の声を上げ、エドルーシィさんや王国兵達は愕然としている。

 

「アリエス! あいつら倒せる!?」

 

「は、はい! やってみます!」

 

アリエスさんはそう言うと、兵士達に羊毛の塊をぶつける。

羊毛をぶつけられた兵士達は、

 

「気持ちいい~」

 

「優しい~」

 

「あふ~ん」

 

と頬を緩め、それを見たアリエスさんは困惑している。

 

「あれ? 効いているんでしょうか?」

 

「効いてる効いてる! 続けてやっちゃって!」

 

ルーシィさんの指示を受け、アリエスさんは兵士達に羊毛の塊をぶつけ続ける。

 

「みんな! 今のうちよ!」

 

「ナイスルーシィ!」

 

アリエスさんが足止めをしている間に、僕達は町を出て森へ避難した。

避難した森の倒木に座って休んでいる間に、ルーシィさんにエドラスに来た経緯を話してもらう。

 

「……という訳で、アニマが街をのみ込む瞬間ホロロギウムが助けてくれたの。空間の歪みを感じたとか言ってね、一時的に別空間にかくまってくれたみたい」

 

そして何もない広野に一人取り残されているとミストガンが来て、一方的に事情を聞かせてルーシィさんをこっちの世界に飛ばしたらしい。

 

「ミストガン!?」

 

「あいつは何者なんだ?」

 

というナツさんの疑問に「知らない」と答えるルーシィさんに、ハッピーが「なんでルーシィだけこっちで魔法が使えるの?」と尋ねる。

 

「うーん……もしかしてあたし、伝説の勇者的な――」

 

「無いな」

 

「――いじけるわよ」

 

涙目になったルーシィさんだが、その表情はすぐに真面目なものに変わる。

 

「正直わかんないわよ……ナツが魔法を使えないんじゃ、不利な戦いになるわね……」

 

「……てめぇら、本気で王国とやり合うつもりなのか?」

 

真剣な面持ちで尋ねるエドルーシィさんに、ナツさん達は当然だと即答する。

 

「仲間のためだからね!」

 

「魔法もろくに使えねぇのに王国と……」

 

暗い表情で呟くエドルーシィさんに、「ちょっと! あたしは使えるっての!」とルーシィさんが噛みつく。

 

「ここは、妖精の尻尾(現)最強魔導士のあたしに任せなさい!! 燃えてきたわよ!!」

 

「情けねぇが……」

 

「頼るしかないわね」

 

「不本意ですが」

 

「あい」

 

すっかりその気になったルーシィさんに、ナツさん達は不安げに呟く。

 

「頑張れルーシィさん!」

 

「頼りにしてます!」

 

僕とウェンディの言葉に気を良くしたルーシィさんは、さまざまなポーズを取り始める。

 

(不思議な奴らだ……こいつらならもしかして……本当に世界を変えちまいそうな……そんな気がするなんて……)

 

みんな一緒に騒いでいた僕は、この時エドルーシィさんが複雑な表情で僕達を見ていた事を知らない。

 

 

 

 

 

********

 

 

 

 

 

エドラス シッカの街

 

 

 

「あー……この魔力の量じゃ、二人分でギリギリだな…」

 

「申し訳ありません。この量で限界です」

 

僕達は現在、シッカの街にある闇市に来ている。

というのも、本当はこの街では宿で休むことが目的で来たのだけれど、さっきの兵士達との戦闘で僕達の道具の魔力が切れたため補充をしようとエドルーシィさんに言われたからだ。

 

「どうすんだ、お前ら」

 

魔力を補充できるのは二人分が限界という事で、僕達は顔を見合わせる。

 

「とりあえず、戦力的にナツは決定でしょ? 後は……」

 

と言って、ルーシィさんは僕とウェンディを交互に見る。

 

「ウェンディかしら」

 

「当然、ウェンディね」

 

「ウェンディですね」

 

「ウェンディだな」

 

「あい! オイラもウェンディだと思います」

 

と、この通り全員一致でウェンディになった。

僕も別に異論はないので、ウェンディに魔力を補充してもらって宿に移動する。

 

 

 

「ホテルの人からエドラスの地図を借りてきました」

 

「アースランドの地形とあまり変わらないね」

 

ウェンディが借りてきた地図を机に広げると、シャルルが場所の説明をしてくれた。

 

「王都までまだまだ遠いな……」

 

「しかも、王国軍に見つからないよう気を付けないといけないですし、到着までどのくらいかかるか分かりません」

 

ナツさんにそう言った時、お風呂に入っているはずのルーシィさんの声が聞こえたため視線をそっちに移すと、バスタオル姿のエドルーシィさんが立っていた。

 

「こいつとあたし、体まで全く同じだよ!」

 

「だ――っ!! そんな格好で出てくな――!!」

 

「エドルーシィさん!? ナツさんとテューズが居るんですよ!?」

 

焦るウェンディを気にせず、「あたしは構わないんだけどね」と言ってナツさんの前に足を進めるエドルーシィさんをルーシィさんが「構うわ!!」とツッコミながら止める。

 

「賑やかだね、W(ダブル)ーシィ」

 

「Wーシィ?」

 

「それ、うまい事言ってるつもりなの?」

 

と会話しているフィール達をよそに、ナツさんはルーシィさん達を凝視する。

 

「なんだナツ、見たいのか?」

 

「やめて!」

 

エドルーシィさんが胸元をはだけさせると、シャルルが僕を睨み、ウェンディが僕の視界を遮る。

 

「あんたには刺激が強いわね」

 

「めっだよ!」

 

(なんでさ……そのくらい平気だよ……)

 

二人の言葉に心の中で異論を唱えていると、「ぷっ!」と噴き出す声が聞こえ、ウェンディの手がどけられた。

 

「な、何がおかしいのよ……そぉかぁ……あたしよりエドルーシィの方がスタイルがいいとかそういうボケかましたいのね?」

 

眉間に皺を寄せるルーシィさんの横でエドルーシィさんが鼻を鳴らして笑っているが、ナツさんは笑いを堪えながら、

 

「自分同士で一緒に風呂入んなよ……ぷふっ!」

 

と言い放ち、二人のルーシィさんは衝撃を受ける。

 

((言われてみれば!!))

 

「それにしても、ホントに見分けがつかない程瓜二つですね」

 

ナツさんの言葉に衝撃を受けて固まっている二人にそう言葉をかける。

 

「まさかケツの形まで一緒とはな」

 

「そういう事言わないでよ!」

 

ルーシィさんがお尻を押さえながら叫ぶと、ナツさんが何かを閃く。

 

「鏡のモノマネ芸できるじゃねぇか!!」

 

「「やらんわ!!」」

 

息ぴったりでツッコミを入れる二人に、シャルルとフィールが冷たい視線を送る。

 

「息もぴったりなんですか」

 

「悲しいわね」

 

「てか、二人共服着たら?」

 

ハッピーに指摘され、パジャマに着替えたルーシィさん達をナツさんが再び凝視する。

 

「お前らホントに見分けつけにくいな……」

 

「確か、髪型を弄ってくれる星霊も居るんだよな?」

 

尋ねられたルーシィさんが、キャンサーさんを呼び出す。

 

「お久しぶりですエビ」

 

「蟹座の星霊なのにエビ?」

 

口角を吊り上げ、そうツッコむエドルーシィさんを見て、ルーシィさんが「やっぱりそこにツッコむか! 流石あたし!」と嬉しそうに言う。

 

エドルーシィさんがキャンサーさんに散髪を頼み、キャンサーさんは一瞬で髪を短く切る。

 

「こんな感じでいかがでしょうかエビ」

 

「うん、これでややこしいのは解決だな」

 

あっさりと髪を切ったエドルーシィさんに、ルーシィさんは本当によかったのか尋ねると、エドルーシィさんは不思議そうな顔をする。

 

「アースランドじゃ、髪の毛を大切にする習慣でもあるのか?」

 

「まぁ、女の子はみんなそうだと思うエビ」

 

「女の子ねぇ……」

 

キャンサーさんの返答にエドルーシィさんは頭を掻き、表情を悲しそうなものに変えて既に暗くなった窓の外を眺める。

 

「こんな世界じゃ男だ女だって考えるのもバカらしくなってくるよ。生きるのに……必死だからな……」

 

「でも、こっちのギルドのみんなも楽しそうだったよ?」

 

というハッピーの問いに、エドルーシィさんは悲しそうに笑う。

 

「そりゃそうさ。無理にでも笑ってねぇと、心なんて簡単に折れちまう。それに、こんな世界でもあたし達を必要としてくれる人達が居る。だから……たとえ闇に堕ちようと、あたし達はギルドであり続けるんだ」

 

その言葉を聞いたナツさんは笑顔を浮かべるが、エドルーシィさんは俯いて拳を握り締める。

 

「でも、それだけじゃダメなんだよな……」

 

「え?」

 

エドルーシィさんの呟きにルーシィさんが疑問符を浮かべるが、エドルーシィさんは「いや、なんでもねーよ」と返し、それ以上は何も言わなかった。

 

 

 

 

 

********

 

 

 

 

 

「信じらんないっ! 何よこれ!?」

 

突然耳に入ったルーシィさんの叫び声で目を覚まし、瞼を擦りながらルーシィさんに訳を尋ねる。

 

「どうしたんですか……ルーシィさん……」

 

「朝っぱらからテンション高ぇな……」

 

「エドラスのあたしが逃げちゃったのよ!」

 

そう言ってルーシィさんは僕達にメモ紙を差し出したので、紙を受け取って読み上げる。

 

「王都へは3日歩けば着く、あたしはギルドに戻るよ。じゃあね、幸運を」

 

「手伝ってくれるんじゃなかったの!? もぉ! どういう神経してんのかしら!!」

 

顔を真っ赤にして怒っているルーシィさんに、ハッピーが「ルーシィと同じじゃないの?」と問いかけるが、「うるさい!!」と一蹴されてしまう。

 

「仕方ないですよ、元々戦う気はないって言ってましたし」

 

「だな」

 

みんなで宥めようとするも、ルーシィさんは険しい表情で振り返る。

 

「あたしは許せない! 同じあたしとして許せないの!!」

 

グルル……と唸るルーシィさんに、ナツさんが「まぁいいじゃねぇか」と鎮めようとするが、ルーシィさんの怒りは結局収まらなかった。

 

 

 

 

 

********

 

 

 

 

 

「うわ、もう機嫌直ってる」

 

「本屋さんで珍しい本見つけて嬉んだろうね」

 

「凄い喜んでたもんね」

 

あの後、街に出て色々なものを見ていると、ルーシィさんは本屋さんに寄って珍しい本を見つけたとかで、朝とは一転して上機嫌で歩いている。

 

「あれは喜び、というよりも興奮って感じでしたけどね」

 

フィールの言葉に、ルーシィさんの様子を思い出す。

本を見つけて鼻息を荒くしていたあの様子には、店主さんも若干引いていた。

 

「何の本買ったんだよ、ルーシィ」

 

「こっちの世界の歴史書。あんた達も、この世界について知りたいでしょ?」

 

と尋ねるルーシィさんに、ナツさんは「別に」と言って興味なさそうにしていると、ルーシィさんが歴史書を空に掲げる。

 

「歴史書が物語ってるわ! この世界っておもしろい!! 例えばここなんて――」

 

「興味ねぇって」

 

何かを話そうとしてナツさんの言葉に遮られたルーシィさんがナツさんを睨み付けた時、何かの音が聞こえ、僕達の居た場所が薄暗くなった。

 

「なにっ!?」

 

「あそこ!」

 

上空を見ると、巨大な飛行船が僕達の上を飛んでいた。

 

「急げー!!」

 

「すぐに出発するぞ!!」

 

「っ!? 隠れて!!」

 

慌てた様子で走る王国軍を見て、建物の陰に隠れて会話を盗み聞く。

 

「あの巨大魔水晶(ラクリマ)の魔力抽出がいよいよ明後日なんだとよ!」

 

「乗り遅れたら世紀のイベントに間に合わねぇぞ!」

 

会話を聞いたみんなの顔が険しくなる。

 

「巨大魔水晶って……」

 

「マグノリアのみんなの事だ……」

 

「魔力抽出が2日後!?」

 

「歩いていったら間に合いませんよね……」

 

シャルルが俯いて、魔力抽出が始まったらもう二度と戻せないと告げ、それを聞いたナツさんは汗を浮かべて飛行船を奪う事を提案する。

 

「奪う!? あの飛行船をですか!?」

 

「ふ、普通、潜入とかなんじゃ?」

 

「だって隠れんのヤダし……」

 

と口を尖らせるナツさんに、ハッピーが「ナツが乗り物を提案するなんて珍しいね、どうしたの?」と問いかけると、ナツさんはニヤリと笑みを浮かべる。

 

「ふふふ……トロイアがあれば乗り物など――」

 

「私達魔法使えませんよ?」

 

「テュ、テューズが居――」

 

「僕も無理ですよ?」

 

すかさずそう告げると、ナツさんは目を逸らして「この案は却下しよう」と言い出し、シャルルとフィールが「オイ!」とナツさんにツッコミを入れる。

 

「あたしは賛成よ! それに、奪わなきゃ間に合わないじゃない!」

 

「でもどうやって奪うんですか?」

 

と尋ねると、ルーシィさんは鼻を高くしてポーズを決める。

 

「あたしの魔法で。知ってるでしょ? 今のあたし、最強――って」

 

その様子を見たナツさんは不安げに小さくため息をつくが、ルーシィさんは気づいていない。

 

「ルーエンの街で戦ってわかったのよ。どうやら魔法はアースランドの方が進歩してるんじゃないかってね」

 

「確かにそうかもですね」

 

「まぁ見てなさい!」

 

みんなの声援を受けて飛び出して行くルーシィさん。

 

「開け、獅子宮の扉! ロキ!」

 

と叫んで鍵を降り下ろすが、出てきた星霊はバルゴさんだった。

 

「ちょっと!? どういう事!?」

 

「お兄ちゃんはデート中ですので、今は召喚できません」

 

「お、お兄ちゃん!?」

 

困惑するルーシィさんに、「以前、そう呼んで欲しいとレオ様より」とバルゴさんがお兄ちゃん呼びの経緯を話す。

 

「バッカじゃないのあいつ!!」

 

「あいつルーシィだ! 捕まえろ!!」

 

「どうしよう! あたしの計算じゃロキなら全員やっつけれるかもって……」

 

迫り来る兵士達と、涙目で困惑しているルーシィさんの間にバルゴさんが入り込む。

 

「姫、僭越ながら私も本気を出せば―――踊ったりもできます!」

 

と踊り出すバルゴさんにルーシィさんは「帰れ!」と叫ぶ。

そんな事を気にせず迫ってくる兵士達を前に、ハッピーがアクエリアスさんを出すようルーシィさんに助言する。

 

「いや、ここ水ないし!」

 

「テューズの水烈砲なら水を出せると思うよ?」

 

急いで水烈砲を取り出すと、ナツさんとウェンディが魔法を構えて前に飛び出す。

 

「やるしかねぇな……こっちのルールで!」

 

「もう使い方は大丈夫です! 私達で時間を稼ぐから今のうちに!」

 

が、すぐにナツさんとウェンディが兵士達にやられてしまう。

 

「ナツとウェンディが全然ダメだぁ!? テューズ、早く水出してぇ!」

 

水烈砲を捻って開くと水が発生する……が、発生したのは一滴だけでそのまま地面に落ちてしまった。

 

「魔力切れ……」

 

「こっちも全然ダメだぁ!?」

 

ナツさんとウェンディは魔力を補充したが、僕は補充できていない事をすっかり忘れていた。

 

「マズイわ! 飛行船が!」

 

「飛んでいってしまいます!!」

 

「あれに乗らなきゃ間に合わないのに!」

 

ウェンディが悲痛な叫びを上げるが、僕達は全員兵士達に取り押さえられているため、飛行船が飛んでいくのを見ていることしかできない。

その悔しさに奥歯を噛み締めていると、遠くからエンジン音が聞こえ、その音は段々と近づいてくる。

 

「なんだ……?」

 

ナツさんがそう呟いた瞬間、妖精の尻尾の紋章がついた魔導四輪が突っ込んできて兵士達を吹き飛ばし、車の扉が開いた。

 

「ルーシィから聞いてきた、乗りな」

 

急いで全員が車に乗り込むと、エンジンがかけられる。

 

「とばすぜ、落ちんなよ? GO(ゴー)! FIRE(ファイア)!!」

 

車は凄まじいスピードで街を駆け抜け、荒野を走る。

 

「助かったわ」

 

「ありがとうございます!」

 

「ナツさん、大丈夫ですか?」

 

「お……おおお……うぷ……」

 

ルーシィさんとウェンディが運転手さんにお礼を言っている中、僕は隣で気持ち悪そうにしているナツさんの背中を擦る。

 

「王都へ行くんだろ? あんなオンボロ船より、こっちの方が速ぇぜ? ふふ……妖精の尻尾(フェアリーテイル)最速の男――」

 

運転手さんが着けていたゴーグルを上に上げ、その素顔を見た僕達に衝撃が走る。

 

「――"ファイアボール"のナツとは、オレの事だぜ」

 

「「「ナツ――っ!?」」」

 

「オ、オレ……?」

 

エドナツさんは、助手席に座っているルーシィさんを一瞥し、バックミラーで後ろの様子を眺める。

 

「ルーシィが言ってた通り、そっくりだな……で? あれがそっちのオレかよ……情けねぇ」

 

「こっちのナツさんは、乗り物が苦手なんです……」

 

苦笑いしながらエドナツさんに説明すると、「それでもオレかよ?」とナツさんを見てニヤリと笑う。

 

「こっちのオレはファイアボールって通り名の、運び専門魔導士なんだぜ?」

 

「この魔導四輪、SEプラグついてないよ!?」

 

ハッピーに言われて、みんな初めてSEプラグがないことに気づく。

 

「SEプラグ?」

 

「ウェンディ知らないの?」

 

若干驚きつつそう尋ねると、ウェンディは後頭部に手を当てて恥ずかしそうに笑う。

 

「セルフエナジープラグ。運転手の魔力を燃料に変換する装置よ」

 

「そっか、こっちじゃ人が魔力を持ってないから、SEプラグは必要無いんだ」

 

「何よ、車に関してはアースランドより全然進んでるじゃない」

 

ルーシィさんの出した答えに納得し、完全に魔法のみで走っているこの車に感心していると、フィールがそれを否定する。

 

「いえ、魔力が有限である以上燃料となる魔力もまた有限。もう分かっているでしょうが、エドラスでは魔力は貴重なものになっていますから……」

 

フィールが語り終えると、車が突然停止する。

 

「そういう事だ。だから、オレが連れてってやるのはここまでだ。降りろ」

 

「「「え!?」」」

 

エドナツさんはハンドルから手を離すと、驚いている僕達を睨み付ける。

 

「これ以上走ったらギルドに戻れなくなるんだ。あいつら……また勝手に場所を移動したからな……」

 

「うぉぉ!! 生き返ったぁ!!」

 

突然声が聞こえ、外を見るといつの間にかナツさんが外に出ていた。

 

「もう一人のオレは物分かりがいいじゃねぇか……さ、降りた降りた!」

 

そう言うと、エドナツさんは僕達を掴んで外へ放り投げる。

 

「王国とやり合うのは勝手だけどよ……オレ達を巻き込むんじゃねぇよ。今回はルーシィの頼みだから仕方なく手を貸してやった。だが面倒はごめんだ、オレは……ただ走り続けてぇ」

 

座り込んでいるルーシィさんを見て「ルーシィつってもお前じゃねぇぞ?」と付け足すエドナツさんを、ナツさんが掴み上げる。

 

「お前も降りろ!」

 

「ばっ! てめぇ! 何しやがる!?」

 

「同じオレとして一言いわせて貰うぞ!」

 

ナツさんは必死に抵抗するエドナツさんを無理矢理引きずり下ろす。

 

「お前……なんで乗り物に強ぇ?」

 

「そんな事かい!?」

 

ルーシィさんがナツさんにツッコミを入れるが、エドナツさんの様子がおかしい。

手で顔を隠し、体を小さくして震えている。

 

「ご、ごめんなさい……僕にも……よく分かりません!」

 

 

 

 

 





エドラス編、思ってたよりも時間かかりそうですね。
どう動かすかなど、現在大魔闘演武編までは決まっているんですが、文にすると大変で……大魔闘演武編など、考えていてもそこまで行くのにどのくらいかかるのやら……

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