後半は変化させてるつもりです……
「ふん……やれやれ、小僧にこんな思い上がった親族が居たとはな」
ハデスは紫色の魔力を放出し、ラクサスさんも全身に雷を纏う。
二人は睨み合い、放出された魔力によって宙に浮かんでいた瓦礫が地に落ちる。
その瞬間、ラクサスさんは一瞬でハデスの後ろに回って蹴りを放ち、雷を纏った拳でハデスを吹き飛ばす。ラクサスさんは電光石火のスピードでハデスに追い付き、ハデスを地面に叩き付けた。
追撃しようとラクサスさんはハデスに拳を降り下ろしたが、ハデスは後ろに跳んで攻撃を躱す。
「中々の身のこなし、そしてその魔力。小僧め……ギルダーツ以外にもまだこんな駒を持っておったか」
「……そういや昔、ジジイが言ってたっけな。"強ぇ奴と向かい合う時、相手の強さは関係ない。立ち向かうことの方が大事だ"ってよ……だよな、ナツ?」
倒れているナツさんに背を向け、ラクサスさんはニヤリと笑う。
ハデスはその言葉を下らないと一蹴して準備運動はもういいと言い放ち、手招きをしてラクサスさんを挑発する。
「おもしれぇ……! ――雷竜の咆哮ォォ!!」
ラクサスさんの口から放たれた電撃は一直線にハデスへと向かっていき、ハデスはそれを右に跳躍して回避する。
ハデスは自分を追って来る電撃を一瞥するとラクサスさんに鎖を放ち、ラクサスさんは攻撃を中断して鎖を躱した。
鎖はラクサスさんの後ろに設置されていた巨大な球体の置物に深々と突き刺さる。
球体はハデスによって引き寄せられて地面を転がり、その進路の先にはラクサスさんが立っていた。
ラクサスさんは球体の進路から逸れてそのままハデスに迫るが、ハデスは張り手でラクサスさんを吹き飛ばす。
ラクサスさんを吹き飛ばしたハデスが空中に何かを描くと、着地したラクサスさんの周囲に複数の魔法陣が展開される。
「これは、天照式のッ――!?」
「散れッ!」
「しまっ――!」
驚愕していたラクサスさんは回避行動が遅れ、爆発が起こる。
僕達全員を吹き飛ばす程の爆風の中、ハデスは佇んでニヤリと口角を上げた。
「これを食らった者は四肢の力を失い、まともに動くことは不可能。たとえ防いだとしても、その魔力の消耗は致命的」
ハデスは余裕の笑みを浮かべていたが、粉塵を切り裂いて現れた電撃を見て動きが止まる。
その一瞬の隙に、ラクサスさんは渾身の蹴りを食らわせてハデスを吹き飛ばす。
「今の威力で片足蹴りだ……まだもう片方ある、両手もある、頭もあれば全身もある。全部一撃に込めたら何倍どころじゃねぇ……試してみるか?」
「言うわ! 若さ故の自信か。だが魔の道において必要なものは若さとは違うのだよ! 若さとは!」
「抜かせッ!!」
ラクサスさんとハデス。二人の拳がぶつかり合い、その衝撃で暴風が吹き荒れる。
しかし、ラクサスさんはハデスに押し負けてしまって吹き飛ばされ、立ち上がろうとするも膝をついて立ち上がることが出来ない。
「おやおや、どうしたね……大口を叩いた割には膝をつくのが早すぎるのではないか?」
「ラクサス! お前まさか……さっきの魔法を食らって……!?」
膝をつき、俯いているラクサスさんにナツさんが声を上げると、ラクサスさんは肩を震わせて静かに笑いだした。
「世界ってのは……本当に広い……こんな化け物みてぇな奴が居るとは……オレもまだまだ……」
「何言ってんだ!」
「しっかりしろよラクサス!」
諦めたように笑うラクサスさんにナツさんとグレイさんは声を荒げているが、そんな二人を無視してハデスは冷たい視線でラクサスさんに手を向ける。
「やってくれたのう、ラクサスとやら……だがそれもここまで。うぬはもう消えよ!!」
「立て! ラクサス!」
エルザさんがそう言うと同時に、ハデスの手から魔法が放たれた。魔法はラクサスさんに迫り、僕達は避けるようラクサスさんに叫ぶ。
しかし、ラクサスさんは回避行動をとろうとせずに地面を殴り付けた。
「オレはよ……もう
「当たり前だァァ!!」
その言葉を聞いたラクサスさんは笑みを浮かべ、全身から雷を放出する。
だが、放出された雷はハデスの魔法ではなくナツさんに向かっていき、ラクサスさんは直撃を食らってしまう。
「オレの……奢りだ……ナツ……」
倒れても尚ラクサスさんを笑みを浮かべており、ナツさんはラクサスさんの雷を纏いながらフラフラと立ち上がった。
「帯電?」
「オレの……全魔力だ……」
その言葉通り、ラクサスさんはナツさんに全魔力を託したが、それは同時にラクサスさんはあの魔法を魔力なしの状態で受けたことを意味する。
そして、そこまでして託された雷をナツさんは食べた。
自身とは異なる属性の為、本来食べることが出来ない筈の雷を食べ、吸収した。
「なんで、オレに……オレはラクサスより弱ぇ!」
「強ぇか弱ぇかじゃねぇだろ……傷つけられたのは誰だ……ギルドの紋章を刻んだ奴がやらなくてどうする! ギルドで受けた痛みはギルドが返せ! 百倍でな……」
「あぁ……百倍返しだ……!!」
ラクサスさんの言葉を受けたナツさんは炎と雷を纏い、怒気を含んだ眼差しでハデスを睨む。
炎と雷の融合――"雷炎竜"。
「うぉぉぉぉッ!!」
ナツさんは一瞬で距離を詰めるとハデスの顔面に拳を叩きつけ、空中で体を捻って炎を纏った蹴りを浴びせる。
炎の蹴りの後に雷がハデスに落ちて追撃し、今度は拳に炎と雷の二つを纏う。
「オレ達のギルドを傷つけやがってッ!」
マスターやガジルさん、仲間達を傷つけられた怒りに任せてナツさんはハデスに連撃を叩き込む。
「お前は……消えろォォォォ!!!」
炎と雷の塊をハデスに叩きつけて爆発させるナツさん。
だが、ハデスは爆発を防いで跳躍し、粉塵から抜け出すと空中で身動きの取れないナツさんの両手を鎖で拘束した。
「両腕をふさいだぞ!」
「んんぬぅぅ……あぁァァ!!」
「なっ!?」
ナツさんは血管が浮き出る程の力で鎖を無理矢理引きちぎり、余裕の笑みを浮かべていたハデスの表情が驚愕に変わる。
そんなハデスに見向きもせずに、ナツさんは全身に纏っていた炎と雷を吸い込み始めた。
「雷炎竜の――咆哮ォォ!!」
ナツさんの咆哮は凄まじく、
「ハァ……ハァ……やった……ぞ……」
息切れしているナツさんは、瓦礫の上で白目を向いて倒れているハデスを見て安堵し、魔力切れを起こしてバランスを崩してしまう。
戦いの影響で床に開いた穴に落ちそうになるナツさんだったが、ルーシィさんが間一髪のところでナツさんの腕を掴んでナツさんを引き上げた。
「助かった……もう完全に……魔力がねぇや……」
雷炎竜の力は、圧倒的な魔力故に消費する魔力も多いらしい。
だがマスターハデスは倒れ、戦いは終わったと全員が安堵する。
しかし。
「……大した若造共だ……」
突然部屋に響いたハデスの声によって、その安心は恐怖へ変わる。
あれだけの攻撃を食らったハデスは、何事もなかったかのように立ち上がった。
「マカロフめ……全く、恐ろしいガキ共を育てたものだ。私がここまでやられたのは何十年ぶりかの?」
ハデスはボロボロだった服の上に魔法で作り出したマントを羽織り、右目の眼帯に手をかける。
「このまま片付けてやるのは容易いことだが、楽しませてもらった礼をせねばな……”悪魔の眼”、開眼」
そう言うとハデスは閉じていた右目を開き、赤く染まった瞳が姿を現す。
ハデスの髪が逆立って雰囲気が変わり、周囲に黒い魔力を漂わせている。
「うぬらには特別に見せてしんぜよう……”魔導の深淵”。ここからはうぬらの想像を遥かに越える領域」
「バカな!」
「こんなの……あり得ない……!」
「こんな魔力は感じたことがない!」
圧倒的な魔力を放つハデスを前に、全員の表情が恐怖に染まる。
危険だ。
魔力、雰囲気、空気、それら全てが危険だと、頭の奥で警報が鳴り響いている。
「終わりだ、
その深さを埋める者こそ、大魔法世界――ゼレフの居る世界! 今宵、ゼレフの覚醒と共に世界は変わる。そして、私はいよいよ手に入れるのだ! ”一なる魔法”をッ!
うぬらは行けぬ! 大魔法世界には! うぬらは足りぬ! 深淵へと進む覚悟が!」
そう告げて、ハデスは見たこともない構えを取る。すると周囲に漂っていた黒い魔力が色濃くなっていき、景色を黒色に染めた。
「ゼレフ書第四章十二節より、裏魔法――
ハデスが魔法を発動させると、瓦礫から泥のような魔力が溢れだし、人型の化け物のような形状に変化し始めて雄叫びを上げる。
「深淵の魔力を持ってすれば、土塊から悪魔をも生成できる。悪魔の踊り子にして、天の裁判官。これぞ裏魔法!」
一体一体が化け物じみた魔力を持ち、その数は二桁を優に超えている。
恐い。恐ろしい。
手足が震える。顔を上げられない。体が動かない。出来ることなら逃げ出したい。
圧倒的な魔力を前にして、絶望的な力の差を見せつけられて、それでも尚立ち向かうことなんて僕には出来ない。
「何だ……こんな近くに仲間が居るじゃねぇか」
突然耳に入ったナツさんの声に、恐怖に染まっていた思考が停止する。
恐怖はある。体も震えていると言うのに、そのナツさんの声に何故か安心出来た。
「恐怖は悪じゃねぇ。それは、己の弱さを知ると言うことだ。弱さを知れば、人は強くも優しくもなれる。オレ達は自分の弱さを知ったんだ。だったら次はどうする……強くなれ! 立ち向かうんだ!
一人じゃ恐くてどうしようもねぇかも知れねぇけど、オレ達はこんなに近くに居る。すぐ近くに仲間が居るんだ!
今は恐れることはねぇ! オレ達は一人じゃねぇんだ!!」
恐怖は無くならない。絶望的な状況も覆らない。
でも、ナツさんの声を、言葉を聞いて、仲間の存在を近くに感じて、立ち向かう勇気が湧いた。
立ち上がれる。一人じゃ無理でも、仲間とならこの恐怖にも勝てる。
「行くぞォォォォ!!!」
「残らぬ魔力で何が出来るものか! 踊れ、土塊の悪魔!」
悪魔達によって放たれた魔法の中を、ただひたすらに駆ける。
魔法が足元に当たり、体勢を崩すナツさんの手をルーシィさんとウェンディがしっかりと掴み、ナツさんを前方に投げる。
エルザさんとグレイさんはナツさんを一瞥し、それぞれ足をナツさんの足裏に合わせてハデスに向かいナツさんを蹴りだした。
ナツさんの進路を塞ぐように立ちはだかる二体の悪魔を、稲妻と共に現れたラクサスさんと一緒に殴り飛ばす。
それによって生まれた隙間をナツさんが通過し、僕は悪魔に吹き飛ばされてしまうが、ナツさんは悪魔に邪魔されずにまっすぐハデスへと向える。
「全てを闇の底へ! 日が沈む時だ!
ハデスの魔法により爆発が起こり、転がっていた体を起こしてナツさんの方を凝視する。
粉塵が晴れて見えた光景は、ハデスの顔に拳をめり込ませるナツさんだった。
「バ、バカな……裏魔法が効かぬのか!? あり得ん……私の魔法は――ぐっ!? まさか……私の心臓を――!!」
突然右目を押さえたハデスはハッとした表情に変わり、手が離された事によって見えた右目は、赤くない、普通の瞳。
「らァァ!」
動きを止めたハデスにナツさんがアッパーを入れて殴り飛ばした時、悪魔達に罅が入って崩れていく。
その時、地響きを感じて振り返る。
「……あれ」
「天狼樹が元通りに……」
視界の先には、天狼樹が島に来たときのようにそびえ立っていた。
すると、紋章が光だして力がみなぎってくる。
「え? これって……」
「紋章が……」
「……光ってる?」
「魔力が元に……」
「戻っていく……!」
天狼樹が元通りになったお陰なのか、空だった体が魔力で満たされていき、ナツさんは雄叫びをあげながらハデスに殴りかかる。
(私が……この私がマカロフに負けると言うのか……!!)
「勝つのはオレ達だァァ!!」
「否!! 魔導を進む者の頂きに辿り着くまでは、悪魔は眠らない!」
ハデスはナツさんの拳を弾くと反撃を開始し、ナツさんの腹に一撃入れ、殴り飛ばす。
しかし、ナツさんと入れ替わるようにハデスとの距離を詰めたラクサスさんに拳を叩きつけられる。
「行け!
ラクサスさんの言葉にナツさんはモードを雷炎竜に切り替え、ラクサスさんが時間を稼いでくれている間に僕達もハデスに駆け出す。
「恐らくこれが最後の一撃!」
「戻った魔力を全部ぶちこむぞ!」
「返り討ちにしてくれるわッ!!」
ラクサスさんを倒したハデスは構えを取り、僕達の足元に爆発を引き起こす。爆発をそれぞれ回避し、後方に跳んだルーシィさんが金色の鍵を振りかざす。
「契約まだだけど……開け、磨羯宮の扉! カプリコーン!」
「仰せのままに、ルーシィ様」
ルーシィさんの振りかざした鍵は金色に輝き、サングラスにタキシードを来た人型のヤギの星霊、カプリコーンさんが現れる。
カプリコーンさんはルーシィさんの「お願い!」と言う声を聞くと同時に走りだし、驚くハデスに蹴りを入れる。
「うぬは!?」
「ゾルディオではありませんぞ! メェはルーシィ様の星霊――カプリコーン!!」
カプリコーンさんはハデスの顎を蹴り上げて空中へ飛ばし、僕は空中へ放られたハデスを狙い、両手に魔力を集める。
「――海竜の碧水!」
放たれた水塊は空中で身動きの取れないハデスに命中し、ハデスの背後にウェンディが跳躍する。
「――天竜の翼撃!」
ウェンディの両腕から放出された暴風がハデスを襲う。
風はハデスの更に上に居るグレイさんの元へ水を運び、グレイさんは水の中に手を入れて魔力を通した。
「アイスメイク――
グレイさんは足元に造形した氷の板を蹴り、勢いを乗せてハデスを切りつける。
切り口からは氷が広がってハデスを氷漬けにし、グレイさんは着地と同時に剣を投擲する。
「エルザ!」
「換装――黒羽・冷閃!」
エルザさんがすれ違いざまに一閃すると、氷剣と共に氷漬けだったハデスの氷が砕ける。
するとエルザさんは換装して、両手に剣と槍を構える。
「受け取れ、ナツ!!」
エルザさんの武器からは炎と雷が放たれてナツさんに向かい、ナツさんはそれを両手に纏ってフラフラと立ち上がるハデスとの距離を詰める。
「滅竜奥義・改――!」
「させるか!
「――紅蓮爆雷刃!!」
間に合わないと踏んだのか、ハデスは魔力が溜まりきる前に魔法を発動させたが、完全でなかった
その時、夜が明けて辺りが明るくなり、倒れて動かないハデスを見て全員が笑みを浮かべる。
「じっちゃん……奴らに見せてやったぞ。全身全霊をかけたギルドの力を……!
これがオレ達のギルドだァァァ!!!」
膝をつき、雄叫びを上げるナツさんに駆け寄る僕達を朝日が照らす。
いかがだったでしょうか?
これにてハデス戦も終わり、天狼島編も後一話です。
最後の戦闘ですが、バトン渡しみたいな感じで繋げていきたいなと思ってこうしたんですが、グレイの氷滅竜剣。設定ではテューズの水で造形してるので滅竜属性があったりします。
変化の話ですが、自分もずっと原作と同じ展開なのもつまらないと思うので、徐々に所々変化させていくつもりです。