艦隊これくしょん -The world of the afterlife- 作:Garuda
鈍い音と共に一人の人間が突き飛ばされ宙を舞う、
それは決して綺麗なものではない。
刹那、
突き飛ばされたそれは地面に叩きつけられ、
ピクリとも動かなくなった。
──誰か!!誰か救急車を!!!人が轢かれた!!!!
──キャァァァァアアアアア!!!!!!!!
──ありゃあ…もう助からねぇだろ……
──お、おい!!アイツ逃げるぞ!!!!
──あのクソ野郎がぁ!!
──にぃさん、しっかりして!!
にぃさん!!にぃさぁぁぁん!!!!…………
薄れゆく意識の中で彼が最後に見たのは、
涙を流しながら自分を揺さぶる少女の顔だった。
Act. 1 終ワリノ始マリ -The beginning of the end-
自分の感覚が無に還った。
視界は暗転し、さっきまであった痛みも消え、周囲に広がっていた耳障りな喧騒や悲鳴がパタリと止む。
手足の感覚も無く、まるで先程体験した宙を舞うような感覚と似ていた。
だが、これだけは理解している。
俺は事故で死んだ。
俺の名前は
東千歳駐屯地の第11普通科連隊 第3普通科中隊で小銃小隊長を務める二等陸尉…だった。
事故で死ぬ前の俺はいつもと同じように、
何気ない休日を過ごしていた。
俺はゲームをすることが大好きで、
その日も朝から行きつけのゲームセンターへ行き、アーケード版の艦これをプレイする。他にも、休み休みに色々なゲームをプレイしながら、夕方までゲームセンターに居ることが当たり前になっていた。…我ながら体たらくなものだと思う。
夕食の弁当を買って官舎への帰路についた。
明日から新しい1週間が始まると思うと、ブルーな気持ちになってしまうが、ブルーマンデー症候群とまではいかない。
そんなことを思いながらバスを降り、
渡って自衛隊官舎へと足を進める。暫く歩くと、官舎はもう目と鼻の先だった。その時、見知った人物が目に飛び込んだ。
当人も俺の存在に気付き、こちらに向かって走り寄ってきた。
「にぃさん!」
「お~、沙美ちゃん。久しぶりだなぁ!」
彼女は
「にぃさんこそ、また“山に行ってたの?”」
「いんや~?それは明日からだよ、準備も終わったしな。次のやつも長い山籠もりだ。」
俺が笑いながらそう言うと、
「じゃあ、帰ってきたら美味しいご飯を食べさせてあげないとねぇ~。」
そう言いながら俺の買い物袋を覗き込む。
「ははははっ、…まぁ良いじゃねぇか。」
「良くないよ!休日だからって、コンビニ弁当だったりファストフードばっかり!!いくら自炊してるって言っても、休日もちゃんとした食事を取らなきゃダメだよ!!!!」
「ホント、沙美は俺の母親かっての…。まぁでも、帰ってきたら沙美の飯が食えるなら演習頑張るよ。」
「分かれば宜しい!」
そんなやり取りが面白おかしくて、気付けば二人そろって笑いあっていた。俺が先程まで考え込んでいた事などきれいさっぱり消え去り、明日から頑張ろうと心から思えるようになっていた。
………だが、俺に明日は来なかった。
俺が笑い終えたその時、
俺の目に飛び込んできたのは蛇行運転をしながら猛スピードで走ってくる1台のワンボックスカーだった。
状況を正確に理解する前に内心悟った
(このまんまじゃ二人とも轢かれる!!)
咄嗟に沙美の手を取ると、俺は彼女を無理やり引き離して進路上から遠ざける。
彼女が驚きの表情を見せるが、1秒か2秒くらいたってから、突如としてその顔が首をかしげたように見えた。
だが彼女の首は曲がっていない。
ではどういうことか?そして判った。
突き飛ばされたと理解できたのは、
嫌な音を立てて地面に叩きつけられた後だった。
(話す事も出来ない上に実体も無いのか。これが死後の世界で“霊魂”って存在なのかねぇ。)
暗転した世界の中で、どこに行くわけでも無くフワフワと何も無い空間を漂う。
(……このまま消えて無くなるか、地縛霊として現世に舞い戻るんだろうな。)
そう思っていた次の瞬間、
強い光が差し込むとその光に吸い込まれていく。
何が起こってるのか判らないでいると、視界が徐々に開けていく。すると、先程までなかった身体が現れる。4肢を視界に入れながら、恐る恐る顔がある位置に両手を当てる。顔もある!!
状況を確認するため周囲を見渡すと、
まるで雲の上にいるようだった。
それも空想世界によくありがちな、明るく・清んだ空間を感じさせる、言わば【天界】いや【冥界】なのかもしれない。
そんな場所に俺は立っていた。
───その通り。ようこそ、冥界へ
声がした方に振り向くと、
身長は160cmくらいで黒のストレートロング、紅色で染色された和服を着込み、女性らしい豊満な胸、そのあまりにも綺麗な容姿から、如何にも【女神】と思える女性がそこに佇んでいた。俺は声をかけようとするも発声出来ない事に気が付く。
───貴方の言いたいことはわかります、私の名は【アマテラス・オオミカミ】。日本神話における日本人の総氏神。
(アマテラス・オオミカミ……。)
───まず初めに、貴方を誤って死なせてしまったことに非礼をお許しください。
(?それはどういう………)
…つまりこういう事だった。
蛇行運転していた運転手(後に飲酒運転と知ったが)を地獄に堕とす際に、何らかの影響で外界の力が働き結界が損傷、その反動が現世に影響を与えた。結果、地獄に落とす筈だった者が一時的に生き残り、俺が巻き添えを喰らったという事だった(飲酒運転野郎はもちろんその後は事故死し、地獄に堕とされたそう)。
(……ということは、アマテラス様が非礼を詫びる必要などありません。それに、あの時の私は使命を全うしただけに過ぎません。)
────貴方は本当に心優しき
(提案?)
────貴方を別世界に転生させるのです。もちろん、貴方の希望にそった艦これが存在する世界で。
(………まさかとは思いましたが、そんな事が本当に出来るのですか?)
────可能です。それに……貴方が望む世界は、並行世界として実在します。
マジかよ、
この神様しれっと凄いこと言いきりやがったぞ。
(…では、来世でも自衛官としていられるのですか?)
────そればかりは出来ません。ですが、各種装備品から兵器までなら召喚することが出来ます。………勿論、ただでとはいきませんよ?
(召喚する方法は?)
────大妖精配下の工廠妖精に精製する知識を与えておきます。貴方はそれに見合った資材を注ぎ込めば問題なく生産されます。…ただ、それでは希望にそったとは言えないので、転生直後は貴方の装備一式を与えましょう。
貴方は今後、現世とは比べものにならない程の試練に見舞われます。それを乗り越えるためにも、貴方には私の持てる全ての力を与えたいと考えております。
(…アマテラス様……何故そこまで?一介の人間にここまで固執する理由は?)
────あなた方の言葉で【神のみぞ知る】とでも言っておきましょう。
(…フフフッ…なんだそれ。)
俺は呆れつつも、アマテラスから発せられた言葉に含み笑いを浮かべる。
────さて、名残惜しいですがそろそろお時間です。……貴方に、神々の御加護が有らんことを。
アマテラスがそう言うと、瞬く間に光が身体を包み込む。俺は光に身をゆだねた。優しくて、暖かい…そんな事を思いながら瞼を閉じた。
「………ここは……どこだ?」
周りには現世の護衛艦とは違った艦艇がズラリと並んで停泊していた。
「人っ子一人居やしない……とりあえず散策するか。」
「提督は……戦死されたわ…。」
「俺も君たちと…共に戦う!!」
次回、
艦隊これくしょん -The world of the afterlife-
Act. 2 接触 -The first contact-
あなたはこの世界で、何を思うのでしょうか?