艦隊これくしょん -The world of the afterlife-   作:Garuda

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不運な事故によって生涯に幕を下ろした自衛官、五木 亮司。

自らを総氏神と名乗る女性、
アマテラス・オオミカミと出会い、
その死が偶発的に起こってしまった事だと知る。


その事を咎めることも無く、自分の使命を全うしただけだと言う五木に対し、
アマテラスは新たな世界で生を授けることを決める。
彼の希望に添う形で、
五木は艦隊これくしょんが実在する世界へと転生する事になったのだった。






Act. 2 接触 ーThe first contactー

 眩い光に包まれてからどのくらい経ったのだろう。

身体に程よい熱を感じた為、ゆっくりと目を見開く。若干、太陽の日差しが視界に入り目を瞑りそうになるが、直ぐに別な物が視界に飛びこんできた。

 

複数の大木、熱帯雨林のようだ。それも高く、葉がたくさん生い茂っている。

 

 

「………ここは……どこだ?」

 

 

 

 上半身を起こし、辺りを見回す。…見渡す限り、木々がそびえ立つ森。傾斜が少しあることから、山の中にいるようだ。艦これの世界に飛ばされたのに、初めに見たのが山中の森林とは如何なものかと一瞬思った。直ぐさま身体を起こし、その場に起立する。

 

 

 自分の身体を見ると、服装は陸上自衛隊の戦闘服3型を着込んでおり、各種装具品、靴も戦闘靴2型を履いていた。

 

 

「……よし。とりあえず、装具点検だ。」

 

 

 88式鉄帽、防弾チョッキ2型に戦闘弾嚢(せんとうだんのう)が大・小2つ、その中に実包入りの30発弾倉が6つ、水筒、救急品袋、認識票(ドッグタグ)、防護マスク、89式多用途銃剣、89式 5.56mm 小銃、そして何故か既に発砲可能(・・・・・・)な9mm拳銃と15発入り弾倉2つ……

 

 

「……現世の頃じゃ考えられねぇ装備だな。にしても、なんだって9mmの仕様が海自さん(特別警備隊:SBU)のP226なんだ?」

 

 

細かい事を気にしつつも、身体の隅々まで全て異状ないことを確認し、前世で身につけていた日付も確認できるデジタル電波時計を見た。

 

 

 

「現在時、1516(ヒトゴーヒトロク)。1942年、5月6日か。……感覚的には死んだ時から一日たったようなもんだが、実際は75年も前に居るのか…。」

 

 

時間と日付を確認、俄にも信じがたいがどうやら本当に転生したらしい。しかも現代の防人(自衛官の姿)でだ。この格好が決して悪いとは言わない、寧ろ身を守れるから有り難いくらいだ。

 

 

 

 言わなくても分かると思うが、この世界は深海棲艦と戦争の真っ只中……の筈だ。まだ確証こそ得られていないが…。そんなところへ武器を持たずに転生よりかは、幾分マシだと言える。

…だが、これから遭うであろう人々にこの姿を見せるとなると、自ずと警戒される様子が容易に想像出来る。

考えれば考えるほど俺は気怠くなり、ついに盛大な溜め息を吐いていた。

 

 

自分で願ったことなのに、難儀なものだ。

 

 

「……しっかし、現在位置が判らないのが痛いな。とりあえず、そこに置いてある(はい)のうの中身を見てから散策するか。」

 

 

そう言って、

俺は倒れていた近くに置かれていた戦闘背のう1型に目を向ける。中身を見てみると、上側には替えの戦闘服上下1着、戦闘雨衣、5日間分のTシャツ・下着・靴下、裁縫セット、2Lのペットボトル(水)が2本、

下側には日用品として携帯歯ブラシ・ジッポライター・ポケットティッシュ2つ、十徳ナイフ(アーミーナイフ)戦闘糧食(レーション)と併せて加熱材・加熱袋が朝昼晩の2日分、小袋に入った各種飴玉が少々だった。もちろん、全てが圧縮袋やジップロックで防水処置されている。

外観の収納スペースには飯ごう。そして、左側面には縛着(ばくちゃく)された戦闘シャベル(携帯エンピ)。……うん、完全に俺が演習前の隊容検査で入れてたやつだ。

 

今回の演習は、実際に背のうを使うと伝達されていた。そのため、本来の入れ組品の他に必需品を入れていたんだ。

 

 

 

「だけどよ、アマテラス様。流石にそのまま持ってくるとは思わなかったわ…。」

 

 それもその筈。

よくよく見てみると、今身に付けている装具一式全てが【俺の名前が書かれている官品(かんぴん)】だからだ。今頃、俺の武器装具がないとかで補給陸曹(ほきゅうりくそう)武器係陸曹(ぶきがかりりくそう)がてんやわんやしてるんだろうと思うと、非常に申し訳ない気持ちになってきた。

 

 

ここまでくると気になるのは、戦闘服のポケットだ。案の定、身分証明書や俺のスマートフォンまで出てきた為、もう驚くことすら疲れにしかならなくなっていた。

 

 

「……とにかく、時間も無いことだし散策するか。出来ればサバイバルは避けたいからな。」

 

 

その場にいても仕方ないので、情報収集をするべく歩き始める。通信機も無い、コンパスも無い、地図も無い、頼れるのは己の知識と訓練で培った技術だ。……それにしても、装備品が多くて重い・歩きにくい・取り回しが悪いときたもんだ。幸先はあまり宜しくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暫く道なき山中を下山していると、潮のにおいが漂いはじめ、林の向こう側に軍港のような施設が見えてきた。規模はそれなりのようだが、しっかりと柵が立てられており簡単には入れない。

 

 

「見た感じは小規模の軍港だが、どこの軍の物かは判らんな。気付かれずに入るには………おっ?」

 

 

ふと気になった方へ目を向けると、監視塔に立つ歩哨が眠りこけており、おまけに通用門は開いたままであった。これはチャンスだと思い、直ぐさま行動に移す。気付かれぬように、かかとから爪先にかけて音を出さぬよう、ゆっくりと歩みを進める。

 

 

 

 

 内部に侵入出来た頃には日が西へ傾き、水平線には夕陽が輝いていたが、真反対からは闇夜が迫っており今にも沈みそうな明るさだった。

 

俺はいま、この軍港の埠頭らしき場所にいる。

右手には【工廠】と書かれた大きなレンガ造りの建物があり、

後ろには先ほど通ってきた様々な隊舎の様な建物が何棟もある。

付近には何らかの工事をした形跡も有り、未発展なのがよく分かる。

 

 

そして左手には大型のガントリークレーンを含む各種起重機やそれを搭載した船舶、

停泊中の戦闘艦は、現代の護衛艦とは違った艦艇が2隻並んでおり、眼前には大海原が広がっていた。

 

その先には幾つかの島が点在しているが、呉や佐世保ではなさそうだ。

 

 

施設の確認は出来た……しかし、

辺りには人の声や航行中の船舶の気配がない。

 

 

 

(おかしい、軍港なら絶対に誰か居るはずなのに人の気配が感じられない。…と言うより、人が外に出歩いていないのが異状だ。この戦闘艦も、護衛艦じゃないな。確実に旧日本海軍の艦艇だし。…駆逐艦と軽巡洋艦みたいだが……明かりが少なすぎてハッキリとは判らねぇな。)

 

 

「……まずは誰かしらと接触しねぇとな。工廠ならリスクが低そうだし、そっちに行ってみっか。」

 

 

 

 

 工廠の前まで来ると通用口を見つけた。

直ぐさま入り口横に立ち、小銃に弾込めを行う。

槓桿(こうかん)を引ききり、小銃の左側に付いているスライド止めを上に押し上げてから槓桿を放す。これによって遊底部(ゆうていぶ)を固定し、薬室を確認してから小銃に弾倉を差し込み、槓桿を引き離して初弾を送り込み、防塵蓋(ダストカバー)を閉じる。その後、右側の切り替えレバーを人差し指のみで操作し、(安全)から(単発)へ流れるように切り替えた。

 

 

 

 呼吸を整えてから扉を開け、小銃を下向き姿勢(ロウレディ)で構えつつ死角を確認する。……やはり此所にも人はいない。

中を見てみると大型の船が1隻分、目測で約300mほどある屋内型のドックが現れた。小規模の軍港が持つにしては大きすぎる。

 

 

「あそこが事務所か。」

 

 

足下に注意しつつ、

事務所の前まで来ると話し声が聞こえてきた。

 

扉の横に付き、

通用口と同じ要領をとるが、

小銃は安全装置をかけて負い紐(おいひも)に自重を預けさせると、防弾チョッキに着けられた9mm拳銃を手に取る。

今度は扉を3回ノックした。

 

 

「はーい」

 

 

日本語でハッキリと若い女性の声が耳に入る。

 

 

 

 次の瞬間、扉が開いたのを皮切りに、

その場に立っていた作業着を着込んだ女性に対し、素早く左手で口をふさぎ込む。

同時に身柄を躊躇(ちゅうちょ)無く拘束し、

銃口を室内に居る他の者へと向ける。

 

 

中には中学生と大学生くらいの女性3人が、

作業着姿で椅子に座っていた。

彼女たちは突然の事に驚き、

反射的に立ち上がり声をあげようとするが、

こちらが先に声をあげる。

 

 

「…全員、動くな。動いたり声を上げるのなら、このお嬢さんが怪我をするぞ。…君も妙な真似はするな。」

 

勿論、俺にその気など無い。

無用な事態を避けるためワザと警告している。

 

俺の言葉を聞くと、

大学生くらいの女性が1人睨みを利かせ、中学生くらいの少女は怯えていた。もう1人の大学生くらいの女性と、俺に拘束されている女性は黙って頷く。

 

 

「宜しい。…こちらの女性を解放するが、もう一度言う、“妙な真似はするな”。無論こちらは、撃つ気など毛頭無い。…遭ってそうそう信用できないだろうが、俺は意識を失い、気がついたらここの港の近くで倒れていた。その為、君達と話がしたい。ここが何処なのか、君達は何者なのか。その代償として、俺が何者なのかを君たちに教える。…………言ってる意味は分かるね?」

 

 

ご託を並べつつ、会話の余地があることを諭すと、2人を除き、渋々といった様子で今度は全員が頷いた。

俺は直ぐさま女性を解放し、彼女達へと還す。

 

そして、ゆっくりと9mm拳銃をしまいながら話しかける。

 

 

「まず最初に、手荒なまねをしてすまなかった。自己紹介から行こう。………自分は日本国 陸上自衛隊 北部方面 第7師団隷下 第11普通科連隊 第3中隊 所属 五木 亮司 二等陸尉だ。歳は24になる。軍隊の階級では中尉に当たるが、気軽に亮司と読んでくれても構わない。」

 

 

「……私は兵装実験軽巡洋艦の夕張よ。ここで工廠長を担当してるわ。」

 

 

「夕張 砲雷長妖精です。」

 

 

「副工廠長 妖精です!!」

 

 

「同じく、工廠 妖精です……。」

 

 

それぞれ名乗りはしてくれたが、夕張とその砲雷長 妖精(睨んでいた女性)工廠 妖精(怯えていた少女)はこちらを完全に敵視していた。唯一敵視していないであろう、【副工廠長を名乗る妖精(もう1人の大学生くらいの女性)】が元気に自分の事を名乗っていたのが少し気になったが……まぁ、こうなるだろうとは思っていた。いきなり現れた不法侵入者を怪しまない方が逆におかしい。

 

そして何より、3人の少女は自身を【妖精】女性は【夕張】と言い放った。

この事から俺自身は確実に艦これの世界に飛ばされたとこの時までは思っていた………いや、

正確には思いたかったが正しいのかもしれない。

…すると、続けて夕張が

 

 

「…あなた、本当に何者なの?どこから侵入してきたわけ?そもそも、陸上自衛隊なんて組織は無いわ。それに、ここに日本人は居ないはずよ!」

 

 

「そんな躍起になって質問を投げかけないでくれないか?……まず、俺は軍人と呼べる存在じゃない。いま説明すると長くなってしまうので簡潔に話すが、俺は一人の日本人であり、陸上自衛隊という組織に所属する自衛官だ。それ以上でもそれ以下でもない。俺は気がついたらこの地域に居たんだ。……ここに侵入出来たのは、見張りに立っていた歩哨がうたた寝をこいてたからで、目的は日本語を介せる者を探してここに立ち入った。」

 

 

嘘はついていない。現に転生した直後は森の中で倒れていたし、日本語か英語を介せる者を探していたのは事実だ。“あの子ったら…”と夕張が言う。……どうやらアイツは彼女の兵員妖精なのだろう。そんな事はどうでも良いが、日本人ということを聞いた彼女達は、ほんの少しだけだが警戒心を和らげてくれた。

 

 

「……ところで、ここには君達しか居ないのか?それに、ここは何処で、日本人がいない(・・・・・・・)って言うのはどういうことなのか説明してくれないか?」

 

質問をされたからには、次はこちらの番だと言わんばかりに疑問を投げかける。

 

 

「…こ、ここには……夕張さんと駆逐艦の五月雨さん……そ、それぞれの艦の兵員妖精が……、一時的に寄港して……ます。そして…日本人がっ、いない理由は……此所は ハルマヘラ島 北マルク州 マバにある“仮設 第八八警備府”に……なります。ここから近いのは、北北東にあるパラオのコロールで………直線距離だと約1010km……です。」

 

俺の質問に対し、工廠 妖精が恐る恐る答える。

……まだかなり警戒されているようだ。

ただ、まず最初に分かったことと言えば、この世界は【前世と地理的条件は同じ】という事だ。これは有り難い。

 

 

「なるほど、日本人がいない理由は分かった。……しかし何でまたこんなところに警備府があるんだ?」

 

と、俺が問いかけると、副工廠長 妖精が代表して答えてくれた。

 

 

「実は……ここには元々、警備府は存在しなかったんです。……事の発端は一月前に行われた、とある輸送船団によるタウイタウイ泊地への緊急輸送を支援するため、本土から定期整備を終えて護衛任務に付いていました。

その際、旗艦である夕張さんが魚雷攻撃を受け、直援についていた五月雨さんが必死に曳航していたんですが、曳航作業は思うように進みませんでした。……その時、突如として現れた光に包まれ、我々は意識を失い、気付けばこの島の15km地点にいました。 夕張さんの破孔(やぶあな)は直っており原因は不明、一緒に居た僚艦や輸送船も五月雨さんを除いて見失い、ここの近海で深海棲艦の潜水艦と対峙。 辛うじて撃退には成功しましたが、残燃料も少なかった我々は、ここに仮拠点を設ける以外、乗員554名が生き残る方法が残されていませんでした。建築する際には、既存の湾港施設を再利用しつつ、近傍に駐屯していた陸軍の支援を経て造り、警備府の名前もあくまで自分たちで名づけたんです。……かく言う自分も、少し兵器の扱いに長けてるという事で“副工廠長”なんて肩書きがありますが、本来は“夕張の機関兵曹長”を担当しているんです。こういった事は、艦長である夕張さんの方が長けてるんで、私は専ら補佐みたいなもんですよ。」

 

 

と、副工廠長 (かねて) 夕張 機関兵曹長 妖精はそう言う。

その話ぶりから、生き残る為に苦渋の決断を行ってきたのがよく分かった。というか、陸と共同で造ったとは言えど、よくこんな立派な警備府を造りあげたな……そこが凄すぎるよ。

 

 

何はともあれ、俺は五月雨が夕張を曳航することになった史実を知っている。だがそれは1944年(昭和19年)3月2日に、当時の南洋諸島の呼び名である内南洋(うちなんよう)諸島への緊急輸送(松輸送)作戦であるし、聞いてる限りでは、どうも全く別の緊急輸送任務のようだ。……そして、史実と全く異なる日に編成され、被雷している上に、当の夕張は沈没すらしていない。これはどういう事なのか?【光に包まれた】という事や、艦娘が艦長という【職】についてることなど、他にも気になる事が多々あるが、疑問を頭の片隅に追いやって次の質問を投げかける。

 

 

「…では、艦隊の指揮官は?旗艦となると、督戦として座乗する提督とかもいるんじゃないのか?」

 

 

そう問いただした瞬間、全員の表情が一気に暗くなった。やってしまったと思った時にはもう遅い。

夕張が重い口を開く。

 

 

 

 

 

「提督は…………護衛任務の被雷時に……近くにいた妖精を庇った際、爆発で吹き飛んだ破片が刺さり……戦死されたわ。胸をひと突き、即死よ……。」

 

 

彼女たちの顔がより一層に暗くなる。聞けば提督になったばかりの新米だったらしく、将来を期待されていたという。

 

 

「すまない、辛いことを聞いて。…では、次級者は誰にあたるんだ?」

 

 

何とかこの空気を打開するため、俺は話題を変えようと代理責任者が居るのか問いかける。

 

 

「…作業着を着てるけど、い・ち・お・う“大佐”よ。あなたより私の方が位は高いわ。ただ、現状は五月雨ちゃんがこの警備府を統括しているわ。」

夕張が答える。

 

 

「…これは失礼しました、夕張大佐。申し訳ありませんが、その五月雨さんに……面会許可をお願い出来ませんか?今の会話で多少なりとも分かったことは、自分はあなた達とは別の世界からきた人間って事だけです。今の自分には身寄りがない上に、何より衣食住が危ぶまれている。その事をここに居るあなた方の仲間に知って貰いたいし、その点を含め、情報収集の為にもこの世界の実情を詳しく聞きたい。そして、可能であれば身の安全の保証が欲しいです。」

 

 

「……分かったわ。そういうことなら良いです、少しそこにかけてて下さい。」

 

 

「すみません、お願いします。」

 

 

夕張が出て行った後、俺は垂れ下がた状態だった小銃を手に取る。副工廠長を除く2人の妖精が身構えるが、そんな事は他所に銃口を下にする。安全装置が掛かっていることを確認、弾倉を外してから槓桿を数回引く。

その際、薬室から実包(実弾)が飛び出て事務所の床に落ちるも、目で追いながら槓桿を引ききり、スライド止めを押し上げて固定する。

 

 

それを終えると実包をしゃがんで拾い上げ、

外した弾倉に入れ直し、弾嚢に入れた。

その後、薬室を点検し弾が無い事を確認した後、各部位を一つひとつ丁寧に触りながら破損が無いか確認し、全てが終わると扉の方向に向きつつ銃口を下方へ向け、ドライ・ファイアの動作を行って安全装置をかけた。

 

同じ要領で9mm 拳銃も弾抜け安全点検を行う。

 

 

一通り弾抜け安全点検を終えた俺は、背のうを下ろし、近場の椅子に座る。その際に小銃は腰掛けたときに両足の間に置き、左手で脚部を持ち倒れないようにする。

 

一連の動作を見ていた3人の妖精たちは、

その洗練された動きに魅了されていた。

 

 

 すかさず、

見た目が大学生くらいの副工廠長 妖精(夕張 機関兵曹長 妖精)が質問してくる。

 

 

「凄く綺麗な執銃動作(しつじゅうどうさ)ですね!それに、私たちはその銃を初めて見ました!!亮司さん、その銃は何て言う名前なんですか?」

 

 

「お褒めの御言葉ありがとう。やっぱ気になるかい?……これは89式 5. 56mm 小銃と言ってね、俺らの組織では“はちきゅう”って呼んでる。その名の通り口径は5. 56x54mmの弾丸を発射する自動小銃(アサルトライフル)で、連射(フル・オート)3発制限点射(3バースト)単射(セミ・オート)を選んで撃てる銃なんだよ。俺の世界……と言った方が良いな。そこでは、隊員一人一人にこの銃が行き渡ってるよ。」

 

 

その後は妖精達の質問責めにあった。“空撃ちをしても大丈夫なのか?”とか、“連射速度はどのぐらいなの?”等々、本当に色々と聞いてくる。睨みを利かせていた砲雷長 妖精や、さっきまで恐る恐る話していた工廠 妖精もだ。

 

 

 一般人や少しかじった程度のミリタリーオタクに誤解されがちだが、現代の軍用銃は信頼性が向上しているため、空撃ち(ドライ・ファイア)する事によって撃針(げきしん)、つまりファイアリング・ピンを痛める事は、殆ど気にする必要がない。

それらを答える毎に、「おぉ~!」とか「へぇ~!!」などの歓声が沸き上がる。

 

 

 

 

 

 

暫くすると夕張が戻ってきた。

その後ろには、不思議な透明感のある青髪のロングヘア、前髪は一部長い毛先が淡い金色に、後ろ髪は毛先が銀色に染まっており、白いセーラー服を着た見た目は高校1年生くらいの少女が居た。その少女が俺に話しかけてくる。

 

 

「初めまして。あなたが……私に面会を求めてきた……侵入者さんですか?」

 

うん、笑顔で開口一番これは酷いと思うが、事実なのであまり咎めないようにしよう。

 

 

「そうです、貴女がここの責任者の“五月雨”さんですね?」

 

 

「はい!一等駆逐艦、白露型駆逐艦6番艦の五月雨です!“階級は中佐”に値します!!」

 

 

「日本国 陸上自衛隊 北部方面 第7師団隷下 第11普通科連隊 第3中隊 所属 五木 亮司 二等陸尉です。歳は24で、中尉の階級に値しております。部下からは“五木二尉”と呼ばれていましたが、特段、呼び方は気にしておりませんので好きに呼んでもらって構いません。お会いできて光栄です、五月雨中佐。」

 

 

彼女の自己紹介に続いて、俺自身も軽く自己紹介をする。やはり此所は艦これの世界のようだ。

…だが、またも不確定要素が出て来た。俺は彼女が自己紹介で発言するよりも前、夕張が言い放った【階級】という単語が気になっていた。本来、それはユーザー(提督本人)にしか適用されないものであり、艦娘が名乗るものではない(・・・・・・・・・・・・)。ますます、悩みの種が増えてくる。

 

 

「夕張さんからお話は聞いています。あなたは帝国陸軍の方では無いようですが、危害を加えるつもりは無いとの事なので、特別に今回の行動は不問に致します。……ですが、武装解除だけはさせて頂きます。宜しいですか?」

 

やはりそう来るか。

 

 

「銃剣を除いて、とっくに武装解除してますよ。実際にあなた方を()る為に拳銃を抜こうものなら、3アクション+a(プラスアルファ)はかかります。現にこちらは丸腰。そちらは薬室に装填済みの十四年式拳銃が2丁。…それでも不服でしょうか?」

 

俺の言葉に2人が驚く。そりゃそうだ、隠せてると思ってるのか、彼女らが持つ拳銃は俺の視界にさっきからチラチラと映っていた。素人じゃないんだから分かるに決まってるだろうよ…。

 

 

「……はぁ……警戒するだけ無駄って事ですね。それで、あなたは本当に………何者なんですか?」

 

 

2人は拳銃を机に置き、俺と正対する。

 

 

「それについては……今から言う話を嘘だと思わないで聞けるのなら話してあげますよ、五月雨中佐。」

 

 

「……分かりました。」

 

 

俺は、彼女達にこれまで身に起こった事を全て包み隠さず話した。俺が転生者であることも。最初こそ懐疑的に聞いていたが、日本の歴史……特に第二次世界大戦の話をすると、あからさまに表情が変わった。そこからの終戦、復興への道のり、自衛隊発足までの過程を伝えた。

 

 

「……これが、俺の居た世界です。」

 

 

彼女達は驚きのあまり多少ショックを受けているが、五月雨だけは俺の話しに対し、一部ショッキングな事には表情を僅かに変えつつも、それ以外は真剣に耳をかたむけていた。

 

 

「…よく分かりました。五木ちゅう……じゃなくて、二尉(にい)ですね。…貴方が居た世界の事を。次は、私たちの世界ですね。」

 

 

そう言うと、五月雨は語り出した。

だが、俺は彼女から発せられた話の内容を聞いて言葉を失った。

何故なら、この世界は艦娘という存在は居るが、それらはあくまでも、口寄せによって人間の身体を捨てた【巫女】のような存在であり、元は人間だったという事。そしてその艦娘は、一つの戦闘艦の艦長であること。なにより【似て非なる第二次大戦中の世界】だからだ。この世界は、前世とは全く異なる歩みを進めているが、一つだけ違った点がある。それは【あの無謀な作戦行動を行ってない】という事だ。という事は、事の運び方によっては結末を変えられるのかもしれない。そう考えながらも、俺は次の確認をとる。

 

 

「なるほどね…。ということは中佐、ここの燃料・弾薬・食糧を含む兵站は、あまり宜しくないのですか?」

 

 

「…そんな、階級なんてお気になさらないで下さい!歳は私の方が下ですし。あと、敬語も気にしませんから。……そうですね、燃料・弾薬・鋼材等の資源は限られています。事情をこちらに駐屯している陸軍の第32師団の師団長と族長にお話ししたのですが、ここの土地や衣類、食糧を分けてもらうのがやっとな状況です……。」

 

 

階級的には五月雨が上にあたるのだが、

彼女はそれをあまり気にしないタイプなようだ。

それにしても参った………ここに本来1944年4月頃に来る陸軍が駐屯してるとはいえ、兵站が確立されているのが最低限の衣食住だけとなると、ここから一番近いパラオまで向かうのは無理だ。ましてやこの時代は、米軍とは戦争状態になってはいないものの、深海棲艦と戦争状態にある状況だ。

 

付近に潜水艦が潜んでいるかもしれないのに、兵站がこれでは厳しい限りだ。

 

 

「では、何とかして燃料だけでも確保しないとならないのか。……宛はあったりするのか?」

 

 

「1週間前に陸軍の将校さんに頼んで、タウイタウイ泊地の提督に連絡をとってもらい、何とか油槽船1隻をこちらに回して貰える事になりました。」

 

今までの話の中で最大の朗報だ。ここの陸さんとは良好な関係を築けているらしく、相手さんは空路でタウイタウイまで飛んで行って2人の生存と油槽船(タンカー)を回すことを手配してくれたようだ。

 

 

「それは良かった。…では、五月雨さん達は補給後はタウイタウイへ?」

 

 

「…そうもいかないんです…。」

 

 

「えっ?」

 

 

「この島は今、私たちや陸軍さんが居るからこそ、周辺の安全が保たれているんです。」

 

 

「…潜水艦……か。」

 

 

「鋭いですね、その通りです。…そうなると、通商破壊艦隊…延いては敵の港湾施設がある可能性が高いです。今回こちらに向かってる油槽船も潜水艦を警戒して護衛を含めて向かってるのですが、戦力としてはこちらに回す事が出来ないので、事実上、私たちだけでこの近辺の制海権をとらなければなりません。………それをしてからじゃないと帰れません……ここの人達から受けた御恩を返してからじゃないとダメなんです!!」

 

 

五月雨は力強くそう言い切った。

彼女等は現地人の協力があってこそ、今を生きている。脇目を振らず・真っ直ぐに、驕れることなく、ただ一心に“誰かの力になりたい”という思いを込めて、これから先の事を見据えている。

 

……本当はここに来たときから決めてはいたが、まぁ良い。俺の腹積もりを話すとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なら、俺も君達と…共に戦う!」

 

 

決意に満ちた表情で言い切る。

 

 

「「「「「!?」」」」」5人が一斉に驚く。

 

 

部屋の窓から見える景色はすっかり暗くなり、

一日が終わる事を告げていた。

 

 

 

 

 

 




「あなたはこの世界の人間ではないのですよ?!」


「この世界に生を受けたからには、彼女の言っていた試練とやらを乗り越えてみようじゃないか。」


「海軍とは勝手が違いすぎるのよ!?」


「言ったじゃねぇか、俺に任せとけって。」






次回、
艦隊これくしょん -The world of the afterlife-

Act. 3 初仕事 -Let's coking!-


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