夏です。海です。IS学園臨海学校のプライベートビーチです。
太陽がサンサンと輝き、砂浜を「ジーワ、ジーワ」と焼いて焦がして炙りながら、いい感じに自然の火炙り鉄板を創作している真夏の海。
「海だー!」
海に着いたからには、年頃乙女のIS学園生徒たちから自制する心など月の彼方まで蒸発しきって、代わりに体と心が太陽で暑く焼かれて燃え上がり・・・・・・深夜のアバンチュールを求めて身体が疼き出す生徒もいたかも知れません。子供の可能性は無限大ですから。
「それでは、ここが今日から三日間お世話になる花月荘だ。全員、従業員の仕事を増やさないように注意しろ」
「「「よろしくおねがいしまーす」」」
千冬先生からのありがたいお言葉と説教を右から左へスルーさせて、その先にある浜辺にあるプライベートビーチで過ごす一時を妄想することに費やしてました。
今の彼女たちの思考に横入りすることを許してもらえる雑念など存在していなかったからです。
「それじゃあみなさん、お部屋の方にどうぞ。海に行きたい方は別館の方で着替えられるようになっていますから。そちらを利用なさってください」
若年寄な女将さんの言葉に女子一同は「はーい」と元気よく返事を返して旅館に向かい、直ぐに出てきちゃいました。もちろん手ぶらです。
遊ぶのに邪魔な荷物だけ部屋に放り込んで、必要な分だけ持って出てきたのでしょう。最近の夏と海にロマンスを求める乙女たちはやることにそつがなく、自覚のない効率主義者が多いのかもしれません。
ちなみに初日は終日自由時間に割り当てられてますから、日本国民の払ってくれた血税で遊びほうけていても勤務時間内に該当されて、お給料を支払ってもらえる専用機持ちな国家代表候補生たち。子供で公務員って・・・ズルいですよね。
「さて、俺も行くか」
専用機持ちだけど国家代表候補生じゃないから特にこれと言った義務を背負ってはおらず、どこの国の所有物か互いの政府が牽制しあってるせいで逆に権力のエアポケット地帯が形成されて、安全と自由が確保されちゃってる自覚のない日本国全体にとっての居候高校生織斑一夏君もまた、自分以外は周り全員女子たちのなかを堂々と半裸晒して海で遊ぶために旅館の中を直進していきます。
普通の学校でやっちゃったら問答無用でお巡りさんを呼ばれかねない変態行為ですが、彼は気にしておりません。なぜなら『日本国に養われてるんだから義務を果たすよう』担任で実姉の織斑先生から言明されてるからです。
だから彼は女子の中でも堂々と海パン一丁姿で海を満喫します。自分で望んできたわけじゃないIS学園生としての義務を果たす! その大義名分の名の下に!
ですが・・・・・・そんな彼が海へと向かうには更衣室の前を通らなければなりません。
女性しか動かせないISの操縦者育成機関が保有する施設という関係上、更衣室の前に『女子』の二文字は必要ありませんでした。
ですので旅館の造りが水着に着替えて海へと直行できるよう設計されてるのには作為的な意図はありません。
「わ、ミカってば胸おっきー。また育ったんじゃないの~?」
「きゃあっ! も、揉まないでよぉっ!」
「ティナってば水着だいたーん。すっごいね~」
「そう? アメリカでは普通だと思うけど」
「・・・・・・・・・」
ーーただし、地形を利用して敵を追いつめる戦術を学ぶのも税金で運営されてるIS学園生の義務ではあります。
如何にも女子らしさを『演出した』、織斑一夏君と同学年で臨海学校も一緒になったIS学園一年女子勢たちが更衣室のカーテンが邪魔して通路側からは見られないことを利用して猛アピールするのだって立派に義務を果たしていると言えるでしょう。多分。
海は人を開放的な気分にさせます。そして人は生を謳歌するため、時に性欲に流されることを良しとする本能的倫理観を持っている生き物でもあります。
獣欲に流されるまま夏の思い出と呼称する不純異性交遊に勤しみたいと欲するのもまた、開放的な気分になって文明の利器たる服を脱ぎ捨てたスッポンポンに近い姿の女子勢としては自然の道理だったのかも知れません。ーーいや、知らんですけども。
そうして皆が思い思いに海でのアバンチュールを楽しんでいる中。当然ながら彼女も開放的な気分になって海を満喫しておりました。
彼女なりのやり方で思う存分、清々しいほど満面の笑顔を浮かべながら・・・・・・。
「青い空~♪ 白い雲~♪
ーーそんな海を撃ち落とすのは最強のマシンガナーである、この私だぁぁぁぁっ!!」
どがずがどががががががががががががががっっ!!!!!!!!
「ヒャッハーーーーーーっ!!!!! たーのしいぜぇぇぇぇぇっ!!!!!!」
IS学園1年1組生徒、篠原美矢ははしゃいでいました。海で。草原の上をはしゃぎ回る子供のように波打ち際を駆け回り、追いかけっこに興じる仲睦まじい恋人たちのように純粋無垢な笑顔で心の底から楽しそうに。
ーーたった一人で走り回りながらマシンガンを撃ちまくっていました。
空に向けて、雲に向けて、太陽に向けて曳光弾を縦横無尽に描かせまくりながらーー
『・・・・・・・・・』
その光景を他の生徒たちは、唖然茫然自失しながら遠巻きに眺めていました。眺めている以外に出来ることはありませんでした。
今、海へと飛び込んでいくのが見えました。その笑顔が眩しいです。
海水に足を洗われながら、それでも笑顔100パーセントで撃ちまくり続けています。
やがてマシンガン片手に万歳しながら、まっすぐ空へと向けて撃ちまくり始めます。
「みんなーーーーーっ! 見えてるかぁぁぁぁぁぁっ!?
私はここで! IS学園で今日も撃ってる(生きてる)ぜぇぇぇぇぇぇっ!!!!
オープンボルト! 略してOB! OB! OB! オォォォビィィィィッッ!!」
かつて仲間たちと過ごした輝かしき夏の思い出へと感謝を捧げる祝砲ならぬ祝連射。
彼女なりの海での『スゴく楽しい過ごし方』を満喫していたわけではありますが・・・・・・
ーーどっから誰がどの視点から見てても変態でした。
『・・・・・・・・・・・・』
よく通る声で吠えながら、年頃の乙女が水着姿で手に構えているマシンガンを振り回しながら撃ちまくり、何の目的で買ってきたのか常人には一生かかっても解りそうにない頭にリンゴ乗せて、心の底から楽しそうに海へと進んで沈んでいく姿は、見ている側の彼女たちに『真面目に生きるのって・・・難しいことなのね・・・』と、そう悩まざるを得なくさせる意味不明なパワーに溢れまくっておりました。
ーーちなみにですが、美矢が今日着ている水着は、メーカーのロゴがプリントされてる奴です。
ブラの方には“ヘッケラー&コック”、ボトムには“スミス&ウェッソン”等の男尊女卑時代における大手銃器メーカーのロゴがカラフルでファンシーに散りばめられてます。
『白騎士事件』で鉄クズ認定されてから、スッカリ需要が激減してしまった各社はこう言うところで頑張って努力して生き残り戦略を立て続けながら男尊女卑の時代にまで生き残っておりました。
『ドラマに出てくる三流悪徳業者とは違うんだよ! ドラマとはっ!』ーーです。
「・・・ふぅ~、静かだ・・・。たまには日頃の疲れを忘れてノンビリ休むというのも悪くない・・・」
そんな彼女たちの作り出す喧噪からは程遠く、旅館の一室である自分の班に割り当てられた部屋でイスに座って寛いでいるドイツ代表候補生ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐がつぶやいてました。当然、浴衣姿で。
彼女は旅館に着いた早々、割り当てられた部屋へ直行。ーーそのまま戻ってくることないまま、都会の喧噪を忘れて寛げる人里離れた古風な旅館での休息時間を満喫していたのです。
走ったラウラは、帰ってこなかったのです。友人を借金のカタに置いて東京へと走り、帰ってこなかった太宰治と同じように・・・・・・違うか? うん、全然違うな。
「穏やかな平穏はいい・・・戦いはストレスしかもたらさない・・・。
人は戦いから学んだことは直ぐ忘れるが、それでも一時の穏やかさの大切さを知ることは出来るのだ・・・人の成すこと全てには意味があったのだな・・・・・・」
・・・何かどっかのマシンガンバカのもたらすストレスが原因で、ドイツの戦闘狂が悟りっぽいのに目覚め始めていたりするけど良いことなのだろうか? 悪いことなんだろうか? ーーいや、良いかどうかは別として悪いことでは無いだろう確実に。
因みにの話を、も一つ二つ付け足すと。
「い、ち、か~~~~~~っ! ほらほら真面目に準備体操なんてしてないで泳ぐわよ」
「こらこら、お前もちゃんと準備体操しろって。溺れてもしらねぇぞ」
「あたしは溺れたことなんかないわよ。前世は人魚ね、たぶん・・・!? ごぼぼっ!?」
・・・人民軍兵士の超人的な身体能力を自慢している国で世界最高戦力の最新型を与えられてる、有事の際には防衛力な代表候補生が足つって日本の海で溺れ死にかけて、
「おい、鈴! 大丈夫か!? ーーったく、言わんこっちゃねぇ。ちゃんと準備運動しないからだぞ」
「ごほっ! けほっ! ち、違うわよ! 溺れたのは、その、あんたのせいで・・・」
数ヶ月前まで一民間人に過ぎなかった日本人の少年に助けられて、言い訳を並べ立てながら砂浜まで背負われてて運んでもらう醜態晒したり。
「い、一夏さんがされたいのでしたら、前も結構ですわよ? ーーって、きゃああっ!?」
「あー・・・ごめん」
「セシリアすまん! その、見えてはいないから、な?」
「な、なっ・・・・・・っ!?」
ヴィクトリア王朝時代に最盛期を迎えて目覚ましい発展を遂げた大英帝国の支配階級として光に満ちた生活を送る傍ら、退廃的で隠微な遊びに耽っていたことが最近では当たり前の認識になり始めているイギリス代表候補生で英国貴族の末裔令嬢が、男の眼前に乳首晒しかけて恥ずかしがってたり。
「なあ、箒。これってーー」
「知らん。私に訊くな。関係ない」
「あっはっはーっ! 引っかかったね、いっくん! 前にミサイルで飛んでたら偵察機に撃墜されそうになった私は学習する生き物なんだよぶいぶい。ところで箒ちゃんはどこかな? トイレかな?」
女子高生のラノベヒロインからオバサン呼ばわりされるのが定番になってる年齢の美女が、エプロンドレスにウサミミつけて日本の恥を晒しまくる自分を避けて逃げ出した妹の後を追って走り去ってたりしておりました。
彼女はこれでも一応ISを開発した生みの親その人であり、ISを起点にして変革されていった今の世界を形作った最大にして最初のキーマンと言えるかも知れない人でもあります。
座右の銘は「自分は天才だ。自分を認めない周りの奴らはみんなバカだ」
・・・・・・ISの登場から始まった女尊男卑時代は、まともなままでは生きていけない変な法則でも蔓延しているのでしょうか? 後世に於ける研究と調査結果が待たれます。未来を待て!
「ずずぅぅー・・・・・・はぁ。茶がうまい。世は全て事もなし・・・軍人としてまことに喜ぶべき幸福な時間だな・・・」
この一言をいってた人が誰かは言いません。時間の無駄ですから。
ーーあ、フランスから着ていた元男装の麗人少女で、現在は普通にかわいらしくて魅力的なボクっ子は普通に海で遊んで普通に楽しんでおりました。
登場当初の設定が頭おかしいほどマトモになれる世界。ISワールド。・・・プライスですが、要りませんか?
つづく