IS学園のマシンガンラバー   作:ひきがやもとまち

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超久しぶり過ぎる更新になります。…正直まだ覚えてる方がいてくれたことに驚愕しながら書かせて頂きました。
ぶっちゃけ、ブルーレイデッキの故障で資料確認できる時間が限られてしまい、原作を大慌てで読み返しながら書いたため雰囲気的に前のと違うと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、即席だとこれが限界だったと思って頂けると助かります…。
割と本気で時間がなかった……(-_-;)


第12話「水平線に向かって撃て! だが夜になるまで撃つな!ジジィからのオ・ネ・ガ・イ☆」

 そこは暗い部屋でした。

 どこからどう見ても暗い部屋でした。太陽は東の空に高く昇って、夏の海と砂浜をエンジョイするリア充どもを嫉妬の炎で焼き殺したいほど暖めまくっているというのに、この部屋の中だけは真っ暗でした。

 部屋の中には机を三つ並べて合体させたような会議用テーブルが置かれていて、いささか政府直轄秘密機関の地下会議室的な感じがする内装で、実際に政府直轄秘密機関の地下会議室でした。

 

 地下会議室のテーブルには21人の女性たちが席に着いていて、着ているのが高校生だったらクラスで「厨二」と陰で笑われてしまいそうな学ラン制服姿で統一されています。

 

「――委員長」

 

 秘書らしい女性が一歩前へ進み出て、委員長と呼ばれた座長格の老婆に声をかけました。

 いや、委員長だから委員長と呼んだという方が正しいのかもしれません。どっちでもいいですが、同じですが。

 

「先ほど緊急の追加情報が届きました。――篠ノ之束がIS学園と接触したそうです」

 

 その報告の内容に、集まっていた学ラン姿の中年女性たち(一部初老も)がざわつき始めます。

 

「“天災”、再来ですか・・・・・・十年ぶりですね。あまりに唐突なことです」

「『白騎士事件』の時と同じですわ。災いとは何の前触れもなく、やってくるものです」

「幸いとも言えますけどね。男尊女卑の愚か者どもが費やした先行投資が無駄にならなかった点においてはですが。オホホホ」

 

 口々に悪口を言い出したのは、髪型とか化粧が金持ちっぽいマダムたちです。

 反論したのは、眼鏡で痩せてて背が低めの予算担当っぽい女性で、実際に予算担当のメンバーでした。

 

「しかし、暴走した《シルバリオ・ゴスペル》と、全世界指名手配中のIS開発者篠ノ之束がIS学園と接触したという事実への処置。さらには《G-5》の脱走・・・。

 情報操作のため、小国が一つ傾くほどの額が必要ですわね」

「――だが、もはや後戻りはできぬ」

 

 重々しい声と口調で、委員長が初めて声を発すると女性たちが全員ハッとなって黙り込み、老婆の方に視線を集中させました。

 

 

 

「いずれにせよ、天災再来における計画スケジュールの遅延は認められん。

 我らが修正した、【第二次オリムラ・プロジェクト】の遂行こそがワシらの急務。

 既にIS学園には、専用機持ちだけを使っての迎撃を命じた。

 ―――白式による遂行を願うよ、ブリュンヒルデのお嬢ちゃん・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――どこかの国のどこかの地下にある暗~い秘密会議室で、暗そうなお婆さんが性格暗そうな笑い声を響かせていたのと、ほぼ同じ頃。

 日本のIS学園が新装備のテストを、一年に一回数日だけの臨海学校と一緒にやっている、それ以外の日は何やってるのか不思議な国有地に建てられてる純和風の旅館の宴会用大広間で。

  

「二時間前、ハワイ沖で試験稼働にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代型の軍用IS《シルバリオ・ゴスペル》が制御下を離れて暴走。

 学園上層部からの通達により我々がこの事態に対処することになった」

 

 秘密会議と同じくらい暗くて重そうな雰囲気で、別の緊急対策会議が開かれてました。

 即席の対策会議室に使うことにした宴会用の大座敷に集められているのは織斑千冬先生と、一年生の専用機持ち五人+新人一名です。

 美矢ちゃんはいません。他の一般生徒たちと一緒に自室待機を命じられてます。

 

 IS専用武装持ちは、専用機持ちに含めていいのか否か、未だ結論が出されていない問題だったからIS学園に入学できてた美矢ちゃんは、現場責任者の織斑先生から現場の判断によって対策会議室から遠ざける決定が下されてたのです。

 後ほど、これが原因で問題が起きます。

 面倒くさい厄介者を厄介払いのため、自分の見える範囲から遠ざけてしまったせいで逆に暴走されてしまうのは定番なのですけど、組織上層部の人たちは未だに同じ過ちを繰り返し続けてます。

 人という生き物は、過ちの歴史を繰り返すものなのです。偉い人には相変わらず、それが分からんのです。

 

「教員は学園の訓練機を使用して空域及び海域の封鎖を行う。

 よって、本作戦の要は専用機持ちに担当してもらう」

 

 ――つまり、暴走した軍用ISを今ここに集まった少年少女たちだけで止めろって事ですね。分かります。

 

 厳しい顔つきで淡々と、プロからアマチュアたちに問題処理を丸投げすることになった上層部の事情を説明しているのは、学園警備主任の織斑千冬先生です。

 黒いスカートスーツ姿の二十代中盤の若い女性で、とても美しい先生でした。

 

 緊急事態ですので話の内容は無責任でも笑ってはいませんが、普段から仏頂面の先生なので何時も通りの表情とも言えます。

 見るからに自信ありげな態度の人ですが、腹に一物ありそうなほど腹芸できる人とは今一思えない言動が日頃から散見されてる美人先生でもありますね。

 

「それでは作戦会議を始める。意見があるものは挙手するように」

「はい」

 

 先生と同じように厳しい顔つきで説明を聞いていた生徒たちの一人で、イギリス代表候補のお嬢様セシリア・オルコットさんが手を上げてから質問します。

 

 関係ないですけど彼女たちは今、全員が正座した姿勢で先生の話を聞いていました。

 外国人少女が4人で、日本人少年が1人のメンバーなのに礼儀正しい模範的な優等生さんですね。

 慣れない事して、作戦開始するときに足が痺れて動けなくなったりしないでしょうか? 少しだけ気になります。

 

「目標ISの詳細なスペックデータを要求します」

「わかった。ただし、これらは二ヵ国の最重要軍事機密だ。けっして口外はするな。情報が漏洩した場合、諸君には査問委員会による裁判と最低でも二ヶ月の監視がつけられる」

 

 と前置きした上で説明される敵機体について分かってる範囲のスペックデータ。

 

「広域殲滅を目的とした特殊射撃型・・・わたくしのISと同じく、オールレンジ攻撃を行えるようですわね」

「攻撃と機動の両方を特化した機体ね。厄介だわ。しかも、このデータでは格闘性能が未知数だ。持っているスキルも分からん。偵察は行えないのですか?」

「無理だな。この機体は現在も超音速飛行を続けている。アプローチは一回が限界だろう」

「一回きりのチャンス・・・ということはやはり、一撃必殺の攻撃力を持った機体で当たるしかないわね」

「という事は――」

 

 そこまで全員で対応策を相談し合っていた全員が、一斉に同じ結論に達して、一斉に一夏君が座ってる方へと視線を集中させました。

 

「一夏、あんたの零落白夜で落とすのよ」

「え・・・・・・?」

「それしかありませんわね。ただ、問題は――」

「どうやって一夏をそこまで運ぶか、だね。エネルギーは全部攻撃に使わないと難しいだろうから、移動をどうするか」

「しかも、目標に追いつける速度が出せるISでなければいけないな。超高感度ハイパーセンサーも必要だろう」

「ちょ、ちょっと待ってくれ! お、俺が行くのか!?」

「「「「当然」」」」

 

 という結論に落ち着きました。

 暴走した軍用ISを今ここに集まった少年少女たちだけで止めろ、って事から『初心者少年1人だけで止めろ』に作戦変更です。

 

 つまり、【一夏、お前が乗るんだ】です。

 どっかの無茶ぶり秘密機関の、腹黒っぽく見えて結構いい加減な指示しかしてくれない学ランきっちり着るのが嫌いな所長と言ってる内容的には似たようなもんでしたし、海から日本に接近してきてるアンノウンというところも同じですし。

 

 ただまぁ、秘密機関と違って『世界と人類を守る立派な仕事』ってほど大風呂敷広げられる危機的状況かどうかは不明確な現状ですので、IS学園所長ならぬ臨時対策本部仮司令官の(仮称)織斑千冬先生からは「乗らないなら帰れ」とまでは言い切られる事はありません。

 

「織斑、これは訓練ではない。実戦だ。もし覚悟がないのなら、無理強いはしない」

 

 と、普段より優しい口調で言ってもらえるほどです。中年親父と違って美人は言い方が優しいですね。

 

 ――余談ですが、1900年代のアメリカ映画で【バック・トゥ・ザ・フューチャー】という作品があり、その主人公は『意気地なし』と呼ばれるのが大嫌いで挑発に乗る以外の選択肢をなくさせるための定番セリフとして使われてた名作シリーズだったのですが・・・・・・所詮はアメリカ映画の主人公ですからね。

 現代日本人で、ジジ臭いと言われることもある侍少年一夏くんには、一切合切金輪際なんの関係もない全くの余談でしょう。

 

 他にも、現在の時点で民主主義国家的に負けちゃってて選択肢ないとか、断ったときには少女たち4人に危険冒させて自分1人だけ尻尾巻いて逃げる構図になってしまったりとか、色々と一夏君の性格的に絶対受け入れられない状況になってしまってた事情がありましたけど偶然です。

 

 なぜなら千冬先生は、腹に一物ありそうな野心的な人には全く見えない人ですから。プロパビリティーの完全犯罪なんて、彼女が計画して実行するはずがありません。

 

 仮に結果だけ見たときには、断られる可能性ない選択肢を相手に与えて危険な任務を自主的に引き受けさせて実行させて、自分が命令した作戦で負傷しても自己責任が適用されて、反省文書かせまくるだけで自分自身は無罪放免される結果で終わったとしても。

 

 「逃げちゃダメ」な訳ではないですけど、「命惜しさに味方おいて逃げ出した腰抜けヤロウ」にはなってしまう窮状。

 そんな状況下で出撃を強制することなく、自分の意思で選んだ自主性を尊重してくれる織斑千冬先生。――偶然です。

 千冬先生は、そんなこと計画的にする人じゃありません! 私はそう信じています! 絶対大丈夫ですよきっとメイビー・・・・・・。

 

 

*(プロパビリティーの犯罪。自ら手を下さず、相手が死ぬ可能性が高くなるような状況へと相手を向かわせていく間接的な犯罪のこと)

 

 

 

「やります。俺が、やってみせます」

「よし。それでは作戦の具体的な内容に入る。現在この専用機持ちの中で最高速度が出せる機体はどれだ――」

「待った待ーった。その作戦はちょっと待ったなんだよ~、ちーちゃーん。もっといい作戦が私の頭の中にナウ・プリンティング! ここは断・然! 紅椿の出番なんだよっ!!」

 

 

 と話がまとまったところで、天井から落ちてきた女の子と呼ぶには些か歳がいきすぎてるかもしれないエプロンドレス姿の天災美女が落ちてきて、最新型の専用機・第四世代IS《紅椿》の超性能を披露して千冬先生から承諾をとって作戦変更案も採用されて、高機動型IS《白式》と《紅椿》の2機による暴走して接近中の《シルバリオ・ゴスペル》迎撃作戦が実施される運びとなったのでありましたとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 ―――そして、それら二つの出来事が起きていたのと同じ頃。

 臨海学校のつもりで海に来たら、条約違反の軍用ISが暴走したから迎撃しろと命令されちゃったため機密情報とか守秘義務とか守るために専用機持ち以外の一般生徒たちは碌に事情も知らされないまま割り当てられてた自室に閉じこもって待機するよう一方的に命令されてしまい、同部屋の友達と肩よせあって不安に怯えている少女たちがほとんどだったIS学園一年生たちのいる部屋の一室で。

 

 

「“復讐だやっちまえ!” “復讐だやっちまえ!” “復讐だやっちまえ!!”」

 

 ・・・パンチのある歌声で激しいリズムに乗って凄まじい早さの英語の歌を熱唱している、ジジィたちの一人がおりました。

 日本の老人たちは雷親父とかガミガミうるさいとか言われている昨今ですけど、それらお年寄りを敬わない人たちでも思わず反省したくなること請け合いな五月蝿さを、マイク握りしめて力強く熱唱しているジジィからは感じさせるものがありました。感じさせるもので溢れまくってました。

 

 ぢゃららららららら、ぢゃーん!

 

 と、機械から流れてくる楽器の音がして。

 

『九六点』

 

 という数字が表示されました。

 今さっきまで熱唱していたジジィの歌の点数です。

 

「くっ―――互角か!」

「なんの! まだメインマイクがやられただけじゃわい!!」

 

 歌い終わったジジィの前に歌っていたジジィが唾を飛ばしながらマイクを奪い取って、再びマシーンの前に立ちます。

 自分の出した点数と同点だった事が納得いかなかったのでしょう。新たに曲を選び直して登録して、発声練習しながら歌が始まるのを騒がしく待つつもりのようです。

 

「すご~い! スッゴく上手い歌い方だったねぇ美矢っち~。英語で歌ってたから歌詞は何言ってるのかまったく分からなかったけどぉ~」

「ですね、さすがは大先輩です。すさまじいマシンガン愛が込められた歌声に、痺れて憧れてマシンガン乱射したくなる気持ちが抑えられなくなるところでしたよ。むしろ撃ちたい」

 

 そして、爺さんが歌い終わって入れ替わって新たに歌い直しにいくのを、IS学園一般女子生徒の少女たち二人が拍手と一緒に楽しそうに見物しながら、ポッキーとかポテチとかパクついておりました。パクリと。

 

 

 彼女たちが今いる場所は、我らがマシンガン大好き少女の【篠原美矢】と、のほほんさんこと【布仏本音】が二人だけで使うよう割り当てられてた五人部屋でした。

 本来は5人で寝泊まりするのを想定して作られた部屋なのですが、問題起こしそうな生徒たち二人で、先月に問題起こしたばっかりでもある生徒たち二人だけを閉じ込めて監視するには他の生徒たちを巻き込まないで済ます必要性があったため、このように豪華な邸宅っぽい部屋が割り当てられる構図となったわけです。まるで戦争を逆転勝利させた白い悪魔が戦後に政府の手で幽閉されてたみたいな感じで。

 

 

 そして、二人だけで使っているためスペース的には大分余裕があった部屋に押しかけてきてカラオケマシーンまで持ってきてカラオケ大会開催しはじめてしまった子供のように瞳をキラキラさせてるガキみたいなジジィども五人組の名前は【G-5】

 

 またの名を【5人のお爺さん】といって、『再現不可能と言われるISコア』を武装だけでも再現することに成功した天才科学者たちの集団であり、マシンガン大好き過ぎる変態ジジィどもの集団でもありました。

 

 彼らは当初、シルバリオ・ゴスペルの暴走とIS学園が対処する指令を受けたことなどの緊急事態が発生してしまったため、一応は事情を知ってしまった部外者として自由の身にして帰すわけにもいかなくなって部屋の一つに押し込んで事態が解決するまで収監させてもらう立場になったのですけど、アッサリ脱走してきて美也ちゃんたちの部屋とやってくると暇潰しにカラオケ大会はじめてしまって今に至ります。

 

 査問委員会による裁判も二年間の監視も、政府の収監施設から勝手に脱走してきたコイツらには今更過ぎるので大した抑止力にはなれなかったみたいですね。

 どちらの方が罪が重いかは、決める人の主観と国籍で四十八パターン近く意見別れそうなので割愛しますが、少なくとも軽犯罪より罪は重いことでしょう。これは絶対。 

 

「ふっ・・・復讐だの戦争だのばかりを題材にした楽曲ばかり歌いおって・・・まったく、バカバカしい限りじゃわい」

「なんじゃとう!?」

「確かにワシも昔はおぬしらと同類じゃった。じゃが今は違う。ワシは間違いを悟ったのじゃ・・・。

 今のワシは目が女神への信仰に目覚めておる。女神様の歌う平和の唄を聞きたいと心から思っておる・・・それ故に!

 女神様の歌われる、戦争を唄で終わらせられるほどの絶唱を聞きたくないかーッ!?」

『『『うぉぉぉぉっ!? それは聞いてみたいぞォォォォッ!!!』』』

 

 

 そして新たに別のジジィがなんか変なこと言ってきたので変な展開になり、美矢ちゃんが大先輩のマシンガンラバーさんたちの前で歌うことになったみたいです。

 要するに――ヒマだったのです。

 臨海学校きた日の夜に、旅館の自室から出ることできずに大人しくするよう命じられてしまった若い学生さんたちと、見た目はジジィで中身はガキなマシンガン好きジジィ共にしてみれば、やること何もなくてヒマでヒマでしょうがありません。

 

 修学旅行と臨海学校の夜時間というものは、旅館を抜け出して地元のお姉さんたちが接待してくれる健全な接待業のお店で大人の階段上るか、カラオケぐらいしかすることがありません。

 あとは、麻雀するかオセロするかトランプするかUNOするかのどれかです。学校行事でいく旅行なんて、そんなものです。基本的にヒマでつまらない。

 

 

「よし! では腹は決まった! 真夏の夜の夢は女神様の歌声こそ相応しい!

 さぁどうぞ! 我らが女神マヤ姫様よ! ワシらはあなたの歌声を聞きたがっておりまするぞ!」

「いや、お恥ずかしい。では僭越ながら私、篠原美矢が歌わせてもらいますね。

 ―――私の唄を聞けェェェェェェェッい!!!!!!!!」

 

 

 と、美矢ちゃんが叫んで声と表情と声音とテンションとを激変させまくって歌い始めます。

 まるで、戦争なんてバカらしいぜと変形ロボット乗って戦場に乱入して、唄だけで戦争とめてしまった伝説の歌姫の真似事したくなってしまった熱血ロックシンガー少年みたいにアップテンポでなめらかな歌を・・・・・・、

 

 

 

――過去も未来も乗り越えて 精一杯戦おう

  人に野蛮と言われようと 幾多の返り血浴びようとも

  わたしは戦う 戦友と共に

  戦える者は唯一 戦えぬ者のために

  人が争いを消せない 悲しい生き物だとしても

  大好きな君が今天国に行くより いつか私が地獄へ行く方を選ぶ

  大好きな君の明日を守るため 今日わたしは戦場へと進む

  ああ戦友よ いざ行かん

  胸を張り 前を見て 足並み揃え

  掲げた銃の重みは 守るべき人の重み 噛み締めん

 

  ――だから私は そいつらを地獄へと叩き込む

  ノルマンディーの大海を 白ブタ共の死体で埋め尽くすために

  私の愛銃はMG40 ヒトラーの糸鋸

 

 

 

 ・・・どこの軍歌っ!? そして、どこら辺に平和の唄が!?・・・そういう激しいツッコミが浴びせられて当然の、女子高生がカラオケで選ぶ歌じゃ絶対ありませんでしたが、美矢ちゃんは楽しそうでした。心の底から本当に。マシンガンの名前が歌えりゃそれでいいのでしょう。

 まぁ、MG40がマシンガンかは微妙ですが。RPG―7も厳密にはロケットランチャーではないので、そこはテキトーに日本人的に意訳してノリで。

 

「わぁ~、美矢っちも歌うの上手かったんだねぇー♪ パチパチパチ☆ あと、お菓子おかわり~」

 

 歌を聴いていた、のほほんさんも楽しそうでした。なんとなく面白そうに感じれれば歌詞の内容はどうでもよいのでしょう。あと、お菓子もらえれば。

 

『『『・・・ぶらぁう゛ぁ・・・・・・ブラーヴァァァァッッ!!!!』』』

 

 そしてジジィ共は1人残らず泣いています。悲しいのではなく感激したのでしょう。美矢ちゃんをマシンガンの女神と信じてる彼らは、女神が歌えば何でもよいのでしょう。信仰心ってのは、そういうもんです。

 

「モグモグ・・・美味しい~♪ でも聞いたことない歌だったね美矢っちぃ。カラオケマシーンに入ってて良かったよぉ~、モグモグ」

「実は私も驚きました。一部のファンからは熱狂的な人気のあるインディーズバンドの曲で、一時期はメジャーデビューも期待されてたほどだったそうなのですけど、その後どこを探しても本人たちが見つからなくなったとかで伝説のバンドグループとも呼ばれている人たちの歌なんだそうです」

「ふ~ん? そんなに大人気だったのに、どうして出てこなくなっちゃったんだろうねえ~? 不思議だねぇ~」

「まったくですよね。このバンマスやってるベースの人なんて、途中からギターも弾きながらマラカスも振って、バイオリンまで完璧に演奏してみせる一人四役の演奏が神業だとネットでは未だに再生回数多い人でしたのに・・・」

「・・・モグモグ。なんか変なお面かぶって頭にリンゴ乗せながら演奏してるんだけど・・・あと、これはもう神業じゃなくて人体の限界を超え過ぎちゃってる動きだとのほほんさんには見えるんだけど・・・モグモグ」

「この超人的な演奏と相まって、一説には【世界の危機を救うために異世界から召喚されてきた勇者たちが世界を滅ぼす敵を倒したから自分の世界に帰って行く途中で、ついでに演奏していった】とも言われているほどです。

 ネットの中でついた渾名が【出来過ぎ仮面男と愉快すぎる仲間たち】【ザ・謎の仮面ミュージック&謎の美少女ギタリストファイター】とかの名前で呼ばれてまして」

「・・・・・・モグモグ。それ多分、ミュージシャンにつける渾名じゃないと思うんだよぉ・・・モグモグ、ごっくん」

「お菓子、まだあるけど食べます?」

「食べるぅ~♪」

 

 と、部屋の借主である正規のIS学園生徒二人は気にすることなくお菓子と、再生したネット映像に夢中です。

 画面の中ではセーラー服着て機関銃持ってる女の子の熱唱と、頭にリンゴ乗っけて超人じみた動きで楽器を奏でまくってる神業的演奏が映し出されています。

 ISを使ってもいないのに、どうやって可能としていたのか全く謎のミュージシャンたちですよね。正体は一体何者だったのでしょう? 素顔は見えているのに誰にもサッパリ分かりません。

 世界を守るために悪と戦うヒーローなんてものは、大体そんなもんです。

 

 

 そんな感じで話が一段落して、ジジィ共も次は誰が歌うかを改めて決め直そうかと思っていた丁度その時。

 

 

 じりりりりっん、じりぃぃぃぃっん!

 

 部屋の隅に置かれていた、ダイヤル式の固定電話が古風な着信音を鳴り響かせました。

 純和風の旅館にはたまに置いてある、古い型式の据え置き電話です。内線専用のため同じ建物内でしか使えない代物ですけど、情緒が感じられるため置かれ続けていたのでしょう。

 

「はいはい、もしもし。こちら《G-5》の一人ですが・・・・・・なんじゃとぅ!?」

 

 その固定電話に腕を伸ばして、ジジィの一人が受話器を取って耳に当てて返事をしたところ、カッ!と両目を見開いて大急ぎで胸元から古風な片眼鏡と手帳を取り出して、受話器の向こう側の声をよく聞き取ろうと耳を澄まし。

 

「・・・暗号を変えても無駄なことじゃ・・・なになに。米軍とユダヤ人が共同開発した《しるばばぁとこすへる》が暴走して、IS学園が迎撃のため呼び出されたじゃと!?

 ふむふむ、急がなければ手を出す前にかいけつされてしまうかもしれん、と・・・・・・なるほど!」

 

 と、どこぞの空賊みたいなやりとり終えて受話器を戻すと美矢ちゃんたちと同類ジジィ共の方へと向き直って―――笑いました。心の底から嬉しそうな邪気のない笑顔でニッコリと。

 

「諸君・・・吉報じゃ。政府機関に所属し、マシンガンを愛する同士から連絡があった。

 もうすぐ、この旅館近くの海に超高速で飛行しながら最新型IS《汁婆とゴスペラ》だかなんだかいう、まぁなんかカタカナ語の空飛ぶISが飛んできてIS学園が迎撃するらしい。

 と、すればじゃ。―――あとは言わんでも分かっておるじゃろう?」

 

 

 ニッコリとした笑顔で聞き返されて、ここまで言われて分からないものなどマシンガン好きのラバー達にいるわけがありません。

 そうです。この状況下で彼らのようなもの達が求めるのは、たった一つだけです。間違いありません。

 

 

「つまり、この状況は―――夜空を飛んで攻撃してくる飛行機械を、マシンガンで撃ち落とすところが見れる絶好の機会じゃ!

 対空じゃ! 対空砲じゃ! 対空マシンガンじゃ! コレを見ずに今夜は寝られないぞよ! オールナイトじゃよ! 日本の夜明けはマシンガンで海から来た敵を撃ち落としてからやってくる!!!」

 

『おおぉぉぉッ!? まさにマシンガンの女神様のお導き! OB! OB! OB!!

 神よ! 我らがマシンガンの神よ! 偉大なる対空マシンガンの餌食になってくれる飛行機械に祝福あれ! アーメン・ボルトォォォォォォッ!!!!!』

 

 

 テンション上がりまくるジジィ共!

 年寄り達が一人残らず暴走した以上、彼らを止めるのは残された若者達だけに可能な神聖なる義務というものになってくるはずです! 本来ならば!!!

 

 

「分かった! なるほど了解だ! マシンガン片手を夜空に向かって、飛んでる機体は全部撃ち落とせばいいんだねっ!? うほっ! 燃える! 面白そう! バーニン!!」

 

 

 そして案の定というか、言うまでもないっつーか、マシンガン撃つことしか頭にないマシンガン脳の女子高生は役に立ちません。

 年取ってなくて頭が柔らかい若い人でも、マシンガン撃てればそれでいいトリガーハッピーなんて生き物に柔軟な思考なんて期待しちゃダメなのです。

 

 

「んぅ~? なんかよく分からないけど、美矢っちたち危ないことしに行こうとしてるな~? のほほんさんの目は騙されないのだー。

 友達を危険な場所にはいかせないために、のほほんさんも一緒に行ってあげるぅ。なんか楽しそうな気がするし♪」

 

 

 そして、残された最後の希望だった心優しき若き少女も参加希望出しちまったことにより、儚くも事を穏便に済ませられる可能性は潰え去り、ブレーキ役は消滅して自主的な自制は期待するの無理そうな状況が形成されてしまいました。

 

 オマケに、軍事機密に関わる話するために専用機持ちたちを織斑先生が集めた大座敷は防音設備が整っていて、一般生徒の部屋で起きてる騒ぎは聞こえません。

 教員の皆さん方は現在、海域封鎖のため量産型IS乗って出撃中。全員で回っても密航船一隻ぐらいは見逃してしまうかもしれない広大な海でしたので、一人も旅館内には残っちゃいません。

 第一、IS使った新装備の性能テストもやる場所ですので、普通の部屋同士でも壁は防音機能高くて、カラオケとか大声出して狂態晒しまくったぐらいじゃ聞こえる範囲は限られちまっている施設なのですよ。

 

 

 ・・・ハイテク故の、臨機応変さに欠けた施設であったことが災いを招く一因となってしまったIS学園臨海学校、初日に起きた大事件。

 果たして、この戦いがどのような結末を迎え、どのような笑いがもたらされてしまうのか・・・? それは戦いが始まって終わってみないと分からない。

 

 

 

「――では、夜までには時間あるし、もう少し歌ってから準備始めるとしようかの。

 夜空を飛ばん的など、ただの普通の的じゃい。カモ撃ちなんぞ屁にもならんわい」

 

『『『賛成。どーせマシンガンで撃つなら夜空を飛んでる方がいい。

   そっちの方が見栄えがいいから』』』

 

 

 

 という事になった。

 ・・・・・・つくづく趣味だけで行動決める趣味人という連中は、よく分からない・・・・・・。

 

 

 

つづく

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