何やら四魂の玉に憑依してしまったんだが誰か助けてクレメンス   作:nenenene

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一夜明けた朝、死舞烏襲来!

 

 

 

 ヤッホー!

 

なぜだか四魂の玉に憑依することになった普通の高校生、峰雪勇人です。

 意味不明な状況に遭遇して自分の命の危機ともなると、人間ってハイテンションになるんですね。初めて知りました。いや、まあ、こんなヘンテコな状況に遭遇すること自体初めてなので、普遍的な法則があるのかは知らないけどね。

 

 

 

 

 結局、昨晩は一睡もできなかった。眠気? そんなもの、一瞬で吹き飛んだわ!!

 ガクガク震えながら、一晩かけてどうすれば四魂の玉の四散を回避できるのかを考えたのだが、全く上手い考えが浮かばない。

 マジでどうすればいいんだ? 平和な日本で高校生をやってた俺には、ハードルが高すぎるぞ! 神様助けて!

 

 ……神なんて信じてないけどね(汗)。

 

 などと馬鹿なことを考えていると、犬夜叉とかごめが喧嘩を始めた。

 

「もう、あんたなんか知らない!!」

 

 かごめはそう怒鳴ると、足音高くばあさんの家から出て行く。それも、俺をポケットに入れたまま。

 

『ちょっ!? おまっ!!』

 

 俺は焦る。めちゃくちゃ焦る。心臓のバクバク具合から言って、間違いなく人生で最大の焦り具合だと断言できる! (いや、まあ、あくまで比喩的な表現なんだけど。……心臓なんてないから)

 

 このまま行くと、かごめは盗賊に拉致される。そして、その盗賊の親玉は妖怪に寄生されていて、その妖怪を倒す過程で四魂の玉は四散するのだ!!

 それは、俺の生命が危ない的な意味で、何としても阻止しないといけない!!

 

『何かないか!! 何か!!』

 

 何もありません。というか、今の俺は単なる玉なので、身動きが全く取れません。つまり、どうしようもない。

 

 ははははは。オワタ。

 

『無理ゲーすぎる!!』

 

 魂の底からの俺の叫び。

 そこに、光明が降る。

 

 

「えっ?!今のは誰?!」

 

 かごめが俺の声に反応する。四魂の玉になって拡張された俺の感覚によると、どうやら俺の心の中の叫び声が、妖気として外部に放出されたっぽい。

 

『俺が誰かだって?! そんなことはどうでもいい!! そんなことより早く村に戻れ!! 盗賊に狙われてるぞ!! お前!!』

 

 そうなのである。このバカ女は、ばあさんの家を出た後にズンズン村はずれに進んでいて、今では森の中にいるのだ!

 

 このままでは、原作通りに俺が四散してしまう!

 そういった焦りのせいで、俺の口調は知らず強いものとなる。

 それが悪かったのだろう。いきなり知らない場所に飛ばされて、変な化け物に狙われるなどという、普通の女子中学生が経験するはずのない出来事に、かごめは巻き込まれていたのだ。その上かごめは、自分が生まれかわりに巫女であり、自分の体から出てきた変な球のことを妖怪どもが付け狙っているから、生まれ変わりの巫女としてそれを守らければならない。などという勝手な話を一方的に聞かされて、かなり気が立っているのだ。

 そこにこんな強い調子で命令すれば結果は明らか。つまり、より一層頭に血が昇って意固地になり、先ほどよりも早足で骨喰の井戸に向かっていく!

 

「知らないわよ!!そんなのっ!!妖怪だか盗賊だかなっ」

 

 急にかごめが足を止める。

 それもそうだろう。かごめが向かう先には、複数の人影。その全員が刀や槍、弓といった武器で武装していて、衣服の上にはくたびれた防具まで着込んでいる。

 彼らはどう見ても堅気には見えない。というか、今話題の盗賊の皆さまです。ありがとうございました。

 

どうすんの?これ?

 

「げへへへ。上玉じゃないか。女。」

 

 盗賊の一人。恐ろしく体格のいい男がかごめに声をかける。

 

 バカな!

 

 その男からは生気が感じられない。代わりに、男の腹の中には、大して強そうではないものの、妖怪の気配がある。

 何を隠そうこの統領、妖怪に憑りつかれて死んでしまっているのである。原作では、この盗賊の統領はお寺か何かの中で、部下の戦利品を待っていたはずなのだが。なぜか、そいつが直接かごめを捕えに出てきている。

 俺は原作との微妙な乖離に軽くパニックになりかける。

 

 だが、

 

「なっ?!盗賊?!教えなさいよっ!!知ってたんなら!!」

 

かごめの怒鳴り声が俺を現実に引き戻す。

 さすがにこれには、俺もイラッとする。

 

『うるせえ!手前が俺の忠告を聞かねえからだろうが、バカ女!』

 

「バカ女ですって!!誰がバカよ!!誰が!!」

 

「手前だよ!」

 

 そう答えたのは俺ではない。盗賊の一人だ。

 その盗賊は背後からかごめを羽交い絞めにする。そして、背後から近付いていたもう一人の盗賊が、身動きの取れないかごめのセーラー服を乱暴にひん剥く!

 

「きゃああああああああああああ!!!」

 

 上半身をブラジャー姿にされたかごめが悲鳴を上げる。

 

「なんだ、女。変なもんを胸に巻いて」

 

 ブラジャーを見た盗賊の一人が、不思議そうな顔で呟く。

 

『変なもんって……。確かに下着は、昔はなかったらしいけど』

 

 その俺のつぶやきは無視された。

 まあ当然だ。盗賊どもには俺のつぶやきなんかわからないし、かごめはそれどころではなくなっている。というか、盗賊に拘束されて、服を剥がされた女子中学生が、冷静に反応できたらそっちのほうが怖い。

 

 ん?

 俺だって昨夜までは単なるどこにでもいる男子高校生だったはず。別に、小さいころから鍛えられていたわけでもなければ、妖怪を見知っていたわけではない。現にさっきまでは死ぬかもしれないと思って、ガクガクだったはずだ。それがなぜ、こんなに冷静になっているんだ。明らかに異常。

 なのに、違和感はそれほどでもない。四魂の玉という体(?)に、精神がひきずられているのか? マンガやアニメではよくある設定だけど、自分が経験するとなると微妙な感じだ。

 

 

「これも取っとくか」

 

 さっきの盗賊が、かごめのブラジャーを引き裂くべく再びかごめに腕を伸ばす。

 

「いやああああああああああああああああ!!! 助けて!!!」

 

 かごめが恐怖に染まった悲鳴を上げる。

 助けてと言われても、俺にどうしろと。今の俺はタダの玉。俺にはどうしようもないし、犬夜叉の気配は依然として、ここから離れた村の中にある。動きから言って、たぶん昼寝でもしているのだろう。

 

『哀れ、かごめ。ここで純潔を失うか。』

 

 まあ、純潔と言っても、現代ではほとんど死語みたいなものだし。どうせかごめだって、結婚までヴァージンを守るという気はなさそうだし、問題なかろう。

 俺はあっさりとかごめを見捨てる。

 

 

「ぎゃああああああ!!!」

 

 だが、天はかごめを見捨てていないようだ。かごめの胸に手を伸ばしていた盗賊は、背後から袈裟懸けに斬られ、絶叫を上げながら倒れる。

 

 え? どうなってんの?

 盗賊を背後から斬りつけたものの正体。それは盗賊達のお頭だ。

 どゆこと? こいつ敵やないんか?

 精神の動揺から、思わずエセ方言が出てくる。

 

「へ? お頭?」

 

 盗賊の方も混乱している模様。まあ、当然だろう。自分の仲間だと思っていたモノが突然他の仲間を攻撃し始めたんだから。かごめを羽交い絞めにしていた盗賊が呆然としてお頭を見上げ、拘束の力を弱める。

 そして、そのような隙を原作ヒロインが見逃すはずはない。だって、そうでもしないと話が進まないから。

 かごめはするりと盗賊の拘束を抜けて、一目散に逃走する。

 

「待て!!」

 

そう言って、盗賊は再度かごめを拘束しようとするが、

 

「うぎゃああああ!!!」

 

お頭がまたも大鉈を振るい、その盗賊を頭から真っ二つにする。

 

「ふしゅうううう。またはずした。おがしい。」

 

 お頭はそう言って、頭を振る。

 

 その様子に俺はドン引きだが、それ以上に、周りの盗賊たちは動揺している。

 

「お、お頭!!一体何を!!」

 

 だが、そのような手下の問いかけには答えず、お頭は三度大鉈を振るう。

 

「へぎゃあああ!!!」

 

 その攻撃もかごめには命中せず、別の盗賊に命中する。

 

 

「ひええええええ!!!!!」

 

 自分たちのお頭が狂い、三人も自分の仲間が殺されたのを見た残りの手下二人は、一目散にその場から逃れようとする。

 だが、

 

「にげるね!!」

 

「「ほげえええええ!!!!」」

 

 お頭は素早く手下達に近づき大鉈を振ると、呆気なく手下たちは全滅した。

 

『いやいやいや! おかしいだろ! なんで正確なんだよ!! 自分の手下を攻撃するときだけ!!』

 

 俺の渾身の突込みは当然のごとく無視された。

 ……俺、泣いていいよね?

 

 まあ、冗談はともかくとして、現在の状況は非常によろしくない。何せ、犬夜叉の奴は以前村で昼寝中だし、俺には何もできん。かごめは物語が始まったばかりで近接戦闘能力が皆無。というか、物語終盤でも、接近戦はほとんど無理だったはず。

 そして、目の前には敵の妖怪が操る大男(大鉈装備)。

 俺はそれらの要素を総合的に分析する。

 

 ふっ! 無理だな。こいつ死んだわ。

 俺の明晰な頭脳(笑)が出した結論に、間違いはない。俺はかごめに憐みの視線を向ける。

 

 まあ、目はないけど。

 

 

『お願い。助けて。』

 

 かごめが両手で俺を包み込んで、祈りを捧げてくる。

 一歩一歩、ゆっくりと、ふらつきながら、近づく、お頭。

 

「いやあああああ!!! 死にたくない!! 死にたくない!!! お願いよ!! 何でもする!! 何でもするから!! 」

 

 かごめは死への恐怖から、失禁しながら必死に命乞いをする。だが、そんなものが妖怪に通用するはずもない。

 一歩一歩、お頭が近づく。

 

「助けてよ!! 命だけは!!! お願いします!! 助けてください!!」

 

 かごめが、無茶苦茶に泣き叫ぶ。

 

「いや!!! いや!!! 死にたくない!!!! お願いします!!! 助けて下さい!!!! 何でもするから!!!! そ、そうだ!! 服脱ぎます!! 裸になります!! 赤ちゃんだって!! たくさん産むから!! だから助けて!!」

 

 かごめは最早、半狂乱。自分が何を言っているのかもわからなくなっているらしい。

 だが、そんなかごめへと、お頭が一歩一歩近づいていく。

 その表情はだらしなく弛み、口からは涎。

 

「ぐへ、ぐへへへへ」

 

 と、奇怪な声を上げる。まあ、死んでるから当たり前なんだけど。

 

「いやあああああああああああああああああああああああ!!」

 

 死への恐怖から、かごめは股間から黄金水を垂れ流し始める。チョロチョロチョロ。ぶざまな音が股間から漏れ出て、地面に水たまりを作っていく。

 

「誰かあああああああああああああああああ!! 助けてええええええええええええええ!!」

 

 かごめの絶叫! そこに、救い主が現れた。

 

 ヒュン。という風切り音。次の瞬間。

 

 ザシュ。コロコロ。お頭の頭部が切断され、生首が地面を転がる。

 

 ザアアアアアアア!!

 

 お頭の胴体から、鮮血が噴出。まるで噴水のよう。周囲を血で濡らしていく。

 

『ん? なんだ?』

 

 なんで急にお頭の首がチョンパされたのか? なんか今、鋭利な糸のようなものが、高速で飛来したような気がするが? 気のせいだろうか?

 

 俺はそう疑問に思うも、すぐに打ち消す。いや、気のせいのはずはない。現にお頭の首は見事に両断されているのだ。“何か”がそれを切ったのは間違いない。

 

 などと俺が疑問に思っていると、「ギャギャギャ」という不快な鳴き声が聞こえる。鳴き声の発生源は、お頭。その心臓のあたりだ。

 

 ああそうかと、俺は思う。このお頭はカラス妖怪に寄生されてるんだったな。そんな俺の目の前で、お頭の胴体がふくらむ。ついで、カラスの化物が姿を現す。

 

「ギャギャギャ」

 

 カラスの鳴き声。そいつはお頭の胴体から出てきたあと、かごめへと向かう。

 

「なに?! 何なの!!? どういうことよ!!」

 

 かごめが半狂乱に騒ぎ出す。どうやら、状況の変化について行けないようだ。まあ、むりもない。というか、俺も良く分からん。一体だれがお頭を殺したのか? いや、殺したというか、何と言うか……お頭は既に死んでいたんだが。

 

 などということを俺が考えていたところ、またも糸のようなものが光る。高速で飛来するそれは、カラス妖怪の頭部へと正確に命中。「ギャ」という、カラスの悲鳴。一瞬後には、烏の頭部が両断される。

 

『なんだこれ? 何でいきなりカラスが死ぬんだ?』

 

 この妖怪は、犬夜叉に登場するすべての妖怪の中でも五本の指に入る重要キャラだったはず。なにせ、こいつを倒すために、かごめの放った破魔の矢が四魂の玉を砕いてしまう訳であるからして……むしろ作中で最も重要であると表現しても過言ではない(断言!)。

 

 そのはずなんだがなぁ?

 

 なんで急に死ぬのか? いや、まあ、現状で四魂の玉に憑依している俺としては、死亡フラグがへし折れて万々歳なんだが……どうにも納得がいかない。

 

 などと俺が沈思黙考していると、声が駆けられた。

 

「ねえ、あんた。持ってるんでしょ? 四魂の玉」

 

 それは、少女の声だった。

 

 

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