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入学式も終わり、会場をから外に出る。
式典中には新入生総代の答辞があったが、喋っているフレーズのなかに「みんな仲良く」やら「互いに切磋琢磨し合って」といったフレーズが含まれていて、少し意外性を感じていた。
あんなに際どい台詞を使って、一科生たちから反感を向けられないのかと危惧していたが、どうやらそんな考えも杞憂だったようで誰も彼もがうっとりとした表情でスピーチを聞き入っていた。
それでいいのか一科生。
そして、何かまずいことでもあったのか、それらのフレーズが口から発せられる度に隣の達也が小さく肩をビクつかせていたのを見て心の中で笑っていた。
そういえば、新入生総代の苗字も司波だったが、身内なのだろうか。
そうして無事何事もなく入学式を終えれば、次はクラス発表である。
周囲は相変わらずガヤガヤと騒がしく、式典終了後に交付されたIDカードを手に、自分がどのクラスになったかなどあちこちで会話が聞こえる。
耳を向ければ友人たちとクラスが一緒で喜んでいる声や、逆にバラバラになってしまったことに残念そうな声が上がっている。
因にではあるが。
クラス分けは一学年を全8クラス、一科生と二科生で半分に分けて4クラスずつとなっており、A組からD組までが一科生、E組からH組までが二科生となる。
つまり、一科生と二科生が同じクラスになることはなく、こういったところでも差別的価値観が出来上がっているのだ。
ここまで来れば、学校側もこの差別を容認している節があるのだろうことは明白ではあるが、まぁ今語ったとしても今更で詮無きことである。
閑話休題
さて、狂三たち二科生は後半クラスとなるのだが、狂三としては流石に全員一緒のクラスは無いだろう、と思っていたのだが――
「いやー凄い偶然だねー」
「はい。まさか全員がE組だとは思いませんでした」
エリカと美月が驚きの声をあげる。
まさかの五人全員がE組に入るという奇跡。しかも、出席番号も上から司波、柴田、千葉、時崎と順々に並んでいたのだ。珍しいこともあったものである。
因みに、響は苗字が
「それじゃーこの後どうする?あたしたちもホームルームに行く?」
エリカが此方の顔を窺いながら尋ねてくる。
一般校なら兎も角、日本全国の、特に専門学校や魔法科高校系列の学校ならば、クラス担任という制度は存在しない。
今の世の中、事務連絡程度のことでいちいち人手を使うなどという無駄な人件費よりも生徒たちの学内端末へと配信する方が安上がりで面倒もないのである。
担任教師がいないのだから、ホームルームに必要性を感じないと言えばその通りなのだが、そこはそれである。そんなことを気にしてもしょうがないし、新しいクラスメイトたちと話すいい機会でもある。生徒たちにとっては全くの無駄と云うわけではないのだ。
だが達也は、その誘いに首を横に振る。
「悪いな。妹と待ち合わせているんだ」
その言葉にあぁ、と心の中で納得する。やはり新入生総代の女子生徒は達也の妹であったらしい。
「確か新入生総代の方が同じ司波でしたよね?」
響もそれに気づき、問いかける。その疑問に達也は頷く。
その事に更なる疑問を感じたのか、エリカが問いかける。
「あれ?そうすると、司波くんは双子なの?」
それは狂三も少しだけ気になっていたことである。何となく意識に引っ掛かった程度の疑問ではあるが、まあ好奇心を満たす程度の小さな疑問だ。
「いや、双子ではないよ。俺は四月生まれ。妹が三月生まれ。偶々同じ年度で生まれただけだ」
その答えにへぇ、と思った。珍しいことも起こるものである。中々にないレアケース、という奴ではないだろうか。
「でも、達也さんと妹さん、よく似てました」
「そうか?似ていたかな?」
美月の言葉に達也が疑問で返す。
妹さんは遠目からでも非常に美人であったのは確認できたが、達也は顔は整っているものの、美麗、と云うほど美形ではない。精々が中の上から中の下あたり(個人による)だろう。
確かに、達也と彼女は御世辞にも似ているとは言い難かった。
「はい。お二人のオーラは、凛としていてよく似てました」
成る程オーラか、言われてみれば二人の落ち着いた感じはよく似ていると言えよう。しかし、DNAとは不思議なものである。同じ血でもこうも変わるものなのだろうか。
その答えにエリカは便乗し、そんなエリカに達也は「お調子者」という評価を下す。それに対して達也くんひどーい、と一ミリも思ってないエリカの返事を受け流す。
「それにしても柴田さん、オーラが見えるなんて……目が、とてもいいんだね」
達也から放たれた言葉に美月が顔を少し青くする。両方の表情から察するに、単純な視力のことではないだろう。魔眼か、それに近しいものか。
何れにしてもそういった霊的に近いものが見えるのであれば、やはりこちらも霊力が漏れ出さないよう注意しなければならない、と狂三は美月を要注意人物に定めた。
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そうして暫く会話をしていれば、少し奥の方からゾロゾロと固まった集団がこちらへ歩いてくる。
その人の塊は一科生の集団であり、その中心には入学式に見た顔――達也の妹と思われる人物が居た。
達也を見つけると、その集団を掻き分けて此方へ近付いてくる。
近くで見れば成る程、そこには驚くほどの「美」が存在していた。
腰まで伸びた艶やかな黒髪。黄金比のプロポーション。すれ違う人すべてを振り返らせるだろう穏やかな顔。大和撫子を具現化したような人物だ。
「お待たせ致しました、お兄様」
ピンと伸びた背筋と綺麗に保たれた姿勢。
不自然さがまるでない洗礼されたその動作一つ一つが、彼女の品性を底上げする。
見た感じでは彼女も良いところのお嬢様ではないのだろうか、と思わずにはいられなかった。
そんな彼女は二、三言達也と会話すると、ニコリとしながら「ところで」とこちらに顔を向ける。
「お兄様?新しいご友人と、早速デートですか?」
但し、その目は一切笑っていなかった。
何故だろうか、彼女の周りから徐々に冷気が漏れているように思えてならない上に、妙な圧力を感じるのだが。
隣では響が「あ、これブラコンの上にヤンですか」と蒼い顔でボソリと呟いている。
普段から色んな性格の少女たちを見てきたが、なんだろうか、琴里とはまた違ったタイプのブラコンである。鳶一と美九と六喰と琴里を足して二で割ったような、そんな感じである。
そして、精霊に近い威圧感がこの少女から感じられた。人とはまこと不思議なものである。
狂三はここまで人一人が威圧を出せることに、恐怖よりも感心を覚えていたが。
「そんなわけ無いだろう、深雪。お前を待っている間に話をしていただけだ。そういう言い方は、彼女たちに失礼だぞ?」
呆れ声で溜め息を吐きながら達也が窘める。
そうすると、今しがたまでの冷たい笑いは霧散して、彼女――深雪はお淑やかな表情を取り繕う。
「初めまして、司波深雪です。よろしくお願いしますね」
小さくお辞儀をする。それを見て此方も自己紹介を返すと、その後は割とフレンドリーな賑わいを見せ始める。どうやら彼女は、割と気さくな方のようだ。
しかし、深雪の後ろには先程まで会話していた集団――生徒会と思われる――が居た。どうやら深雪がこちらと会話をし始めたことで待ちぼうけを食らってしまったようだ。
若干置いてきぼりだった達也はそれを見かねて深雪に声を掛ける。
「深雪。生徒会の方々との用事は済んだのか?」
「ああ、それは大丈夫ですよ」
達也の言葉に声が掛かる。話し掛けてきた彼女――生徒会長は、「本日は挨拶だけでしたので」と言うと、深雪と二、三言言葉を交わすと立ち去っていく。
他の人たちは、それを見てしどろもどろすると、此方を一瞥して睨むと早々に去っていった彼女を追いかけていった。
彼らの目には「
その後、「帰ろうか」と言った達也にエリカが待ったを掛け、一同はそのままエリカに案内されケーキ屋へと続いていく。
実際には「ケーキ屋」ではなく「ケーキも美味しいカフェ」であったが、そこで短くもないガールズトークに狂三を除く女性陣は花を咲かせていた。
狂三はというと、時々こちらに投げ掛けられる会話を適当に返しながら男一人で居辛そうな達也と会話していた。
狂三なりの気遣いであったが、あまり深入りな話をすると深雪にまた冷たい視線を当てられそうだし、エリカには「達也に気があるのか」なんて言われかねないので適度に話しながら読書に更け込むことにした。
そうして時間を過ごすこと三時間ほど、気付けばそれなりな時間になっており、カフェの置き時計が時間を知らせる音楽を鳴らすのと同時にその場はお開きとなった。
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夕暮れ時、東京から離れ、天宮市のある隣の県へと帰るために電車へと乗る狂三と響。
キャビネットから普通電車へ乗り換えれば、そこからあっという間に普段見ている街の景色へと変わる。
移動手段であれば狂三の影を使った方が早いのだが、そこは気分の問題である。ガタンゴトンと小ぎみよく揺れる電車の座席に腰掛けながら外を眺める。
少し夕焼けに染まった空は、ユラユラとしながら静かに水平線の向こうへと顔を沈めていく。
シンとしている車内では、狂三と響しか乗っておらず貸切状態である。
「それで、狂三さんは楽しかったですか?初登校は」
「そうですわねぇ。割と、楽しめたと思いますわ」
「明日からは毎日通うんですよねえ。私は楽しみです」
「ふふっ、そうですか。それは良かったですわね」
何気ない会話をしながら、電車は進む。
利用者の減少によって都内ではガランとした車内も、天宮市が近づくにつれて人が増えてくる。
そうして日も殆ど沈んだ頃、電車は漸く自宅からの最寄り駅へと着く。そこからは我が家へと向かって二人で歩いていく。
「今日は後夕飯はどうするんですか?」
「どうやら士道さんがわたくしたちの分までご用意してくださっているようでして、ご厚意に甘えるつもりですわ」
「えっホントですか!よし、これで食費が少し浮きます」
「…響さん、割と貧乏ですの?」
「ええ、今月は特にカツカツでして、次の給料日まではヤバいです」
小さくガッツポーズをする響を、またジト目で見ながら呆れる。
本来は中学卒業したての学生がバイトをホイホイ出来る筈はないのだが、保護者の居ない響は色々と誤魔化してバイトをしていた。
週4日で時給950円。定休日有り賄い有りの割と好条件の飲食店である。因みにその飲食店の大本は「ラタトスクフーズ」という会社である。
本来響たちが住んでるマンションは学生バイト程度で払える家賃ではないが、家賃の方は払う必要がないので自身の普段の食費やら生活用品やらを買うために必死に働いてるのである。
飲食を必要としない狂三としては、あまりその苦労が分からないが半分は人である響には死活問題なのだ。
話しているうちに、一軒の家に辿り着く。中からは何時ものようにワイワイとした声が聞こえてくる。漏れてくる電気の光に暖かみを感じる。
ガチャリ、と玄関の扉を開けると、狂三たちを待っていたのか、少年がこちらに笑いかけてくる。
「お帰り、二人とも」
その顔を見て、狂三も自然と顔を綻ばせる。
「ただいまです、士道さん」
靴を脱ぎ、家内へ上がるとリビングから美味しそうなカレーの匂いが香ってきた。
その匂いにつられてさらに顔を綻ばせながら、狂三は温かい食卓へと向かった。
原作文ってどこまでがセーフなのか分からないからキャラの台詞やら説明文やらを被らないように書くのが中々大変。
天宮市がお隣県なのは、作者の勝手な妄想です。
検索しても出てこなかったから。
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