神殺しの白兎   作:猫パン

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なーんか思いついたんだよねぇ。


2週間かけてこの文字数なんで、続きは来るか知りません。


第一話

第一話

 

 

 

 

 

一つ。

また一つと武器が壊れていく。

 

重量重視のハンマーや切れ味重視のソードまで、なにもかもが彼に触れた途端に砕け散る。

彼の持つ恩恵を、彼の持つ叡智を突破しなければ彼に傷は与えられない。

 

ゴブリンやオーク、オーガ。中には上位種も居た。だが持つ武器が全て破壊され、彼の者は作業同然にその手に持つ刀で首を狩り歩く。

 

 

一帯から数百を超える生命反応が消えた頃、彼はポツリと呟いた。

 

 

「弱すぎて手応えすら無い…」

 

「一般的な戦士でもこの数は相手に出来まい、それが今のお前の鍛錬の成果だ。ベルよ。」

 

「師匠…」

 

ベルと呼ばれた少年が振り向くと、2、3メートルはあるだろかと思われる屈強な大男が居た。

身の丈もある大剣を肩に担ぎ、ベルを見下ろす。

 

 

「それでもですよ、ここまで強くなれたのも師匠が居たからこそです。」

 

「嫌いだったとは言え、お前は亡き父の忘れ形見のようなものだ。目を掛けるのは当然の話だ。」

 

その言葉に、ベルは照れたように頭をかいた。

1メートル以上身長差がある体格故、ベルの首がかなり上を向いているのだが…

 

 

「さてベルよ。お前は私が課した試練を全て乗り越え達成した。これでもう文句は無い、自信を持ってオラリオに向かわせることが出来る。」

 

「はい師匠!今までありがとうございました!!」

 

「達者で頑張るのだぞ、時々顔を出すのだぞ。」

 

その声を背に受け、ベルは駆け出した。

そして道中の自宅前に置いておいた自らの荷物が入ったベルの身の丈程のリュックサックを手にして一気に背負い、明くる日夢見た街への街道を駆け歩く。

 

目指すはダンジョン都市オラリオである。

 

 

 

「さあ頑張るのだぞベルよ。我が名我が力我が技術。英雄として祭り上げられたこのヘラクレスの大半をお前は受け継いだのだ、魅せてみろ…お前が紡ぐ英雄譚をな。」

 

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

 

「ここがオラリオか…広いなぁ。高いなぁ…」

 

オラリオに降り立ったベルは、我前に広がる街と、そびえ立つ塔を見て息を漏らしていた。

ベルの地元は農村であり人もまばらでそんなに大きくない村だ。

故に最大級のダンジョン都市オラリオへと初めてやって来たからこそ、感慨深い声が出てしまうのである。

 

 

「えーっとまずは…どこかファミリアに入らないとか、どこが良いかなぁ。」

 

ダンジョン都市オラリオで活躍する冒険者は皆、ファミリアに所属している。

ファミリアとは地上に降りてきた神々が自ら認め、入団を果たした人間に対して恩恵を与えて眷属となった者達の集団である。

与えられた恩恵により、人間はより強く強靭な存在へと昇華される。

様々な神々が地上に降りてきている為、多種多様なファミリアがある。

ダンジョン攻略をメインとする所、鍛冶や農業、流通など、戦闘系や生産系、司るものが違う神達だからこそ、創られたファミリアも違うのだ。

 

そしてダンジョンに行くためにはギルドを通す必要があるのだが、その際に必ずどこかのファミリアに入っている必要があるのだ

そしてファミリアに入る為には入団試験と言う物があるのだが…

 

 

「いやぁ…想像してたけど、やっぱりこうなるのかぁ…」

 

様々なファミリアの門を叩くこと30。

訪ねたファミリア全てで、団長にすら会うことが出来ずに門前払いを喰らっていた。

その全ての原因は、ベルの容姿にあった。

ぱっと見ベルは、保護欲を掻き立てる小さい兎のような、弱そうな少年なのだ。

 

ダンジョンへ行くとなるとその殆どが戦闘系ファミリアである。

ベルのような弱そうな見た目で戦闘系ファミリアへ入れてくれと頼まれても、土台無理な話だったのだ。

 

 

「これだと冒険者になれなくてダンジョン入れない…お金もそんなに持ってないから、このままだと餓死確定な訳だけど…僕はまだ死にたくないからね。」

 

そう言いつつ、ベルは近くの店へと向かう。

お金が無いと言っていたベルであるが、別に今日明日で無くなる程しか無い訳では無い。

むしろ1ヶ月は余裕で生活できる程の貯蓄を旅の資金として持ってきたのだ、故に働か無ければ《今後》餓死確定なのである。

 

そんななか…

 

 

「君、僕のファミリアに来ないかい?」

 

偶然立ち寄ったじゃがまるくんのお店で呟いた独り言を、1人の売り子が聞いていてそう言ったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

「いやぁ助かったよ。最近降りてきてファミリアを作ろうと思ったんだけど、僕知名度が皆無だからさ。君が来てくれて嬉しいよ。」

 

「それは良いんですけど…本当にここですか?どう見ても廃教会なんですけど…」

 

「うん、ここだよ。」

 

神ヘスティアに案内されてやって来たのは、半分程崩れ去っている廃教会だった。

もう原形を留めているのが不思議なくらいぼろぼろで、何時全壊しても可笑しくは無かった。

 

 

「ささ、入って入って。こっちだよ。」

 

そう言ってヘスティアはベルの手を引き、教会内の祭壇へと歩き出す。

そして祭壇横の仕掛けを操作すると、祭壇がスライドして隠し階段が現れた。

 

 

「あ、なるほど。そう言う仕掛けなんですね。」

 

「うん。友達(ヘファイストス)がね、いい加減独り立ちしてくれって追い出されたときにここも一緒にくれたんだ。」

 

その言葉に頷きながら、ヘスティアに手を引かれるまま階段を降りていく。

そして1枚の扉を開けた先には、なんとも生活感のある部屋が姿を現した。

 

服はそこかしこに散乱し、テーブルの上には所狭しとじゃがまるくんの袋が並んでいる。

日用品も整理されず、そこら辺に乱立している。

ベルにとって、神様とは言え女の子の部屋とは到底思えなかった。

 

 

「ちょっと散らかってるけど、ごめんね。」

 

「ちょっと?!これがちょっとですか!?」

 

武一辺倒だった師匠や、家事の出来ない祖父に変わり幼い頃から全てをやって来ているベルにとって、この様は見るに堪えない状況であった。

流石にこの状況は看過できないと、ベルはヘスティアと立ち位置を変える。

そして扉からヘスティアを追い出すと…

 

 

「10分時間をください、最低限見られる部屋にしますから。」

 

「あ、ちょっとベル君!」

 

返答も聞かずに強引に扉を閉め、ヘスティアを締め出したのだった。

 

 

 

 

 

        ーー△ーー

 

 

 

「ほ、本当に綺麗になってる…」

 

言われたとおり10分を扉の前で待っていたヘスティアは、扉開けて見違えるように綺麗になっている部屋を見て驚いた。

散乱していた服は整理され、丁寧に折り畳まれて箪笥に仕舞われている。

そこら辺に乱立していた日用品の数々も、棚の上へと綺麗に整頓されて並んでいた。

流石にじゃがまるくんの袋は、どうにもならなかったらしくそのままであるが。

 

 

「収納スペースと時間が圧倒的に足りなすぎて全然片付いて無いですけど…」

 

「全然?十分さ!ありがとうベル君!」

 

感極まったヘスティアは、思わずと言う感じでベルへと抱き付く。

流石にその身長差からベルの胸へと顔を埋める事になってしまうが。

 

 

「ささ、お礼というわけじゃ無いけど君に、僕が初めて与える恩恵を授けよう。さ、服を脱いで横になってね。」

 

「服を…ですか。」

 

「うん、恩恵は背中に刻むんだ。別に何処でも良いみたいだけど、誰にも見られずに済むのが背中なんだよ。」

 

それに納得したベルは、着ていた服を脱ぐ。

そしてその服の下から出て来たのは、強靭な程にまで鍛え上げられた鋼のような肉体であった。

ヒョロヒョロなもやしっ子な外見とは裏腹に、その肉体には一切の無駄な贅肉と言う物が無かった。

 

 

「べ、ベル君…その体は…」

 

「あ、これですか。師匠との修行の成果、というところですかね。」

 

そう言いながら腕を少しだけ上に上げる。

たったそれだけの動作にも関わらず、腕に付いている筋肉という筋肉が唸るように躍動して動くのだ。

 

その光景にヘスティアは驚愕しながらも、ベルにソファーへと寝そべるように促す。

そしてヘスティアは、その背に飛び乗った。

そしてベルの背へと、恩恵を刻みつけようと指から血を垂らす。

 

恩恵と言う物は神が眷属となった者に対して、自身の血を媒介に神聖文字を刻むことで能力の底上げを行うことである。

そしてそれは、神であるヘスティアの血がベルと混ざる事でもある。

 

それは、拒絶反応としてヘスティアを突き飛ばした。

 

 

「っ!?」

 

咄嗟だったが何とか受け身を取ったヘスティアが、驚愕の表情を浮かべながらベルを見るが…

何の反応もしていないが故、勘違いだとそう自身に言い聞かせながらベルに刻まれたステイタスを見る。

 

 

「なっ!?」

 

そして今度は、声を上げて驚いた。

 

 

「どうしました?神様。」

 

「いや、何でも無いよ。うん。」

 

そう何でも無いこと。

さっさと羊皮紙へと書き写す、ベルが読める文字に変換することも忘れない。

 

 

「はい、ベル君。何分僕も初めてだからね、ベル君が読んでくれないかい?」

 

「?…わかりました、読みますね。」

 

そう言って読み出した内容も、ベルの背中に書かれた神聖文字と全く同じだった。

 

 

 

 

 

ベル・クラネル  

 

種族、人間(ヒューマン)偽神(デミゴット)

 

Lv??

 

力: エラー

 

耐久: エラー

 

器用: エラー

 

俊敏: エラー

 

魔力: エラー

 

宝具:射殺す百頭(ナインライブズ)

 

憧憬一途(リアリス・フレーゼ)

・早熟する。

・懸想が続くかぎり効果持続。

・懸想の丈により効果向上。

 

神殺しの魔王(カンピオーネ)

・神を殺した者に与えられる称号。

・殺した神の特性を受け継ぐ。

・神性を持つ存在に効果絶大。

・神性を持つ存在からの干渉を大幅に軽減。

・?????

・神が嘘を看破出来なくなる。

 

 

十二の試練(ゴッド・ハンド)

 

・低ランクの攻撃の無効化。

・同攻撃に対しての耐性付与。

・命のストックを11個付与。

・魔力によってストックの回復が出来る。

 

 

 

 

 

「うそぉ…」

 

そう、自身で読んでもベルが読んでも内容が変わることは無かった。

そして色々とツッコミどころ満載ではあるが、ヘスティアは1番気になったスキルについて聞いてみることにした。

 

 

「ね、ねえベル君。この神殺しの魔王(カンピオーネ)って何かなぁ…」

 

「ああ、それですか。師匠にも言われたんですよねぇ。」

 

頭をかき、若干照れながらそう言うベル。

その事に安堵するヘスティアだが、次に続く言葉に血の気が引いた。

 

 

「何でも、何にも特性を持たない人間が神を殺すことで、殺した神の特性を自分の物に出来る存在へとなれるみたいですね。」

 

見た目ロリ巨乳のヘスティアとて、竈と慈愛の処女女神だ。

こんななりでも普通の人間にとって敵うことがない超越存在という自覚はある。

地上に降りて人間と同程度に弱体化してるとはいえ、それでも人間が殺すことが出来ない存在が神なのだ。

だが目の前に、人間では勝てないはずなのに神殺しを為し得た存在が目の前に居るのだ、ヘスティアは生まれてこのかた初めての死の恐怖を覚えたのだった。

 

 

「安心して下さい神様、僕はもう貴女の眷属(家族)です。神様に手なんて出しませんよ。」

 

「そ、それなら良いけどさ…じゃあベル君、このスキルの説明も本当かい?正直これが事実だったら神に詐欺紛いのことをしてもバレないんだけど。ちょっと試しに嘘を言ってみてよ。」

 

恐怖心が少し薄れたヘスティアは、再度スキルの確認をするためにベルに尋ねる。

 

 

「んー…わかりました、じゃあ分かり易いのにしましょう。僕は神様と元々知り合いでした。」

 

ベルは今日初めて会ったが故に、そう答えてみた。

ヘスティアでなくとも明らかに嘘だと分かるそれだが、問題はそこではなかった。

 

 

「…は、反応が無い…」

 

 

神は全員、下界に居る全種族が嘘をついてもそれが分かるのだ。神にとって種族が違えど皆子供、子が親に嘘を付けないように。

だがヘスティアは、目の前のベルが言った言葉が嘘だと分かっているにも関わらず、それが嘘だという事を証明する神特有の反応が何も無かったのだ。

 

 

「ほ、本当に看破出来ないんだ…」

 

「そんなに凄いことなんですか?」

 

「凄いなんてもんじゃないよ、神特有の技能が通じないなんて普通あり得ない事だよ。」

 

そうヘスティアが力説するが、ベルにはいまいち理解できていなかった。

 

 

「とりあえず、ベル君。君はこれから冒険者登録に行くと思うんだけど、ステイタスやスキルの事は他言無用だよ?」

 

「はい、わかりました。」

 

「ではベル君、行ってくるんだ。」

 

「はい!」

 

そう言ってベルは冒険者ギルドへと向かうため、廃教会を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

 

 

ヘスティア神に眷属にして貰い、ベルは早速冒険者ギルド前へとやって来ていた。

自身の冒険者登録と同時に、新たに発足したヘスティアファミリアの登録も同時に行いに来たのだ。

意を決して扉を潜ると、多様な種族の冒険者が換金所やカウンターなどに賑わっていた。

 

ベルは若干目を惹かれながらも、受付カウンターへと向かう。

そしてセミロングでブラウンヘアーの、眼鏡を掛けたエルフの女性に話し掛ける。

 

 

「あの、冒険者登録とファミリアの新規申請をしたいのですが…」

 

「冒険者登録…ですか。君みたいな子にはおすすめ出来ないよ?」

 

その受付嬢はベルをジロジロと見て、向いていないと判断したのかそう投げかけてくる。

 

 

「大丈夫です、こう見えて腕には自信がありますから。」

 

「…とてもそうは見えないけど…良い?冒険者というのは君が考えている以上に危険な職業なんだよ?当然のように命の危険だって付きまとうし、死にそうになってもLvすら上がらない事もあるんだよ?それでも良いの?」

 

「はい、でなければここに居ません。」

 

そう言って、受付嬢の目を見るベル。

 

 

「わかりました、そこまで言うなら止めません…」

 

そう言いながら受付嬢の女の人は用紙を取り出し、机の上に置く。

 

 

「この用紙に、君の名前と種族、年齢。Lvと所属ファミリアの記入をお願いしますね?」

 

言われた通りにベルは用紙を記入していく。明らかにバレてはいけないものは隠しながら、真実では無いが嘘では無い事を書いていく。

書き終えた用紙をベルは受付嬢に差し出す。

受付嬢は、その用紙を受け取り、確認するように呟いた。

 

 

「名前はベル・クラネル。種族はヒューマン。 年齢は14。Lvは1…ヘスティア・ファミリア? 初めて聞くファミリアね。」

 

「はい。僕が初めての眷属だそうです。」

 

「なるほど、新規のファミリアね…」

 

そう言うと、受付嬢は再度記入に誤りが無いかを確認し、サインを記入する。

 

 

「只今をもちまして、ヒューマン、ベル・クラネルをオラリオの冒険者として登録します。 宜しいですか?」

 

「はい。」

 

特に不備も無いためベルは頷く。

 

 

「では、これより私、エイナ・チュールがベル・クラネルさんの攻略アドバイザーとして担当することになります。以後お見知りおきを。」

 

「よろしくお願いします、エイナさん。」

 

これで登録の全てが完了し、ベル・クラネルという新たな冒険者が生まれた。

 

 

 

 

 

 

        ーーーー△ーーーー

 

 

 

 

 

正式にベルが冒険者となった翌日、ベルはダンジョンの第1階層最奥手前の広場に居た。

そこは第2階層へと続く階段の手前にある広場で、初心者が必ず通る最初の関門。

所謂ボス部屋だった。

 

その部屋はダンジョンに入って直ぐに出て来るゴブリン、その派生系のモンスターが居る部屋だ。

第1階層序盤で必ず出て来るゴブリンというモンスター故、舐めてかかると最悪死ぬ最初の関門。

ゴブリンキングと、取り巻きのゴブリン2体。

 

そこにベルは、3体の骸の脇に立っていた。

 

初心者が必ず躓く最初の関門とは言ったものの、ベルにとっては何にもなく作業同然に終わらせていた。

 

 

「うーん、村で戦った時の方が強いかな・・・でもゴブリンだしなぁ・・・」

 

ベルはしゃがんでゴブリンの死体をツンツンしていた。

その死体は、例に漏れずダンジョンに吸収されかかっている状態ではあったが、脇に転がる魔石がそれの死を意味していた。

 

 

「それにしても弱いなぁ・・・説明では成り立ての冒険者が必ず苦戦するモンスター、って言っていた筈なんだけどなぁ。」

 

魔石を拾い、その死体には目もくれずに歩き出す。

 

成り立ての冒険者が必ず苦戦するモンスターというのは間違いでは無い。

ベルの言うとおり成り立ての、ゴブリン位何ともないと楽観視した冒険者の約半数が、ここで苦戦しその半数は、命を落とすか冒険者を辞めざるを得ない状況に追い込まれたのだ。

ゴブリン位で何をと思うだろうが、冒険者に成り立てと言えば、恩恵を貰って初めて来るのだ。いくら恩恵を刻まれ強靭になったとはいえ、元々戦闘能力が無かった一般人だ。

どうやって戦うか、戦う際の体はどう使うのか。引き際はどこで、何を持っていけば良いのか。

その最たるは全て、実戦で磨かれるものだ。

恩恵を貰った所で、素人なのは変わりがない。

1日や2日で出来る訳が無いのだ。

 

だからこそ、成り立ての冒険者が必ず苦戦するのだ。

だが苦戦するというのは良いことでもある。

命からがら逃げ帰って笑い話なら良い方だろう、最悪死んでしまうのだから。

だがゴブリン程度に苦戦するようであれば、そもそもが冒険者に向いていないと実感できるだろう。

なにせ第1階層のボスで苦戦するなら、その先に進んだところで早々死ぬのがオチなのだから。

 

だがベルは、成り立ての冒険者とは違う所がある。

それは何か、下地と言えるものだ。

 

オラリオに来る前から手解きを受け、実戦を交えながら様々な事を学んできたベルは、この街に来て初めて冒険者になる者とは戦闘経験が段違いだ。

恩恵を刻まれる前から戦っている為に、恩恵に頼り切りになることもない。

自らが磨き上げた技術や体で戦っているのだ。

恩恵を刻まれた今、鍛え上げられた肉体は更に強靭になっている。

 

故に最初から戦い方を知っているベルが、苦戦する筈が無いのだ。

 

 

「よし、これならお金にも困らないぞ。今日は一日狩りの時間だ!」

 

そう言ってベルはさらに進んでいく。

道中にモンスターが出てこようとも瞬殺しながら。

抜刀された刀身すら見ることが出来ずに、モンスターは絶命していく。

首を狩られたモンスター達は崩れ落ちながら、その身に宿す魔石を外へと放り出す。

その魔石を謎技術で地面に着く前に回収するベルは、首を狩りながら歩く。

その際に飛び散る返り血すらも、ベルには触れることが出来ない。

現にベルは、一切の血糊が着いていないのだ。

斬り捨てた敵がズレ、血を吹き出す頃にはもう既に別の敵を斬っている。

浴びる通りが無かった。

 

 

そして第2階層。

第1階層の人型系とは違い、第2階層は4足歩行を主としたモンスターが出て来る。

主にウルフやタイガーなど。

 

だが出て来るモンスターの種別が変わろうとも、ベルのやり方は変わらない。

ただ歩き、その首を狩るだけである。

 

ベルを喰らおうと突っ込んでくるウルフなど、正面から突撃してくる良い的であった。

 

そうして進んでいくと、聞いたことのない雄叫びがダンジョン内に響き渡る。

 

 

「ブモォォォォォ!!!」

 

その声は、この階層で聞こえる筈が無いのだ。

そもそも『それ』の生息地はまだまだ下層なのだから。

だからこそベルは、一気に駆け抜ける。

 

 

 

そしてそこに居たのは……

 

 

 

 

 

5匹のミノタウロスと、1匹の亜種。

 

 

 

そしてそれの前で立ち竦む独りの女冒険者の姿だった。

身に着けている装備からして、見るからに新人。

しかも第1層を攻略してきたばかりのような、新人にしては実力がありそうではあった。

 

だがそれは第1層では、と言うことになる。

彼女の我前に居るミノタウロスは15階層以降から出現する、第1層攻略後に遭遇するモンスターとしては最悪であった。

 

 

「何でこんな所に居る!糞ッ!間に合え!」

 

ベルが気付いた時にはもう既に彼女の我前に居たため、その斧が振り下ろされるまでに辿り着けるかどうか、全速力で走るベルですら分からなかった。

 

 

そしてその斧は振り下ろされ……

 

 

 

 

彼女の首を刎ねる直前に、ベルが突き出したその刀身により防がれた。

 

普段のベルであれば、止めるより斬り殺す方を選ぶ。

だが刀身の道筋に彼女が居たため、それは出来なかった。

 

 

「さあ今のうち、早く逃げて!!」

 

ベルがそう呼びかけるが一切の反応は無く、ただ気絶している彼女がそこに居た。

 

 

「ッチ!仕方ないとはいえ面倒な。」

 

これによりベルは、防御に徹せざるを得なくなった。

いくらベルとはいえ、6体のモンスターに囲まれた状態で気絶した人を守りながら戦うのは厳しいのだ。

 

ベルの体格的に抱えると剣を振れず、寝かせて1体と向き合えば他の5体が彼女を襲おうとする。

今のベルが一度に相手取り、瞬殺出来るのは4体が限度。

そうなれな残り2体が彼女へと矛先を向けるのだ、それはいただけない。

そのためデメリットを考慮して抱えているのだが、剣を振るう事が出来ないため攻撃できない。

攻撃ができなければ倒せない為、どうにも手詰まりであった。

そのまま避け続けているなか、1体のミノタウロスが斬り裂かれる。

 

 

「あの、手伝います。」

 

「誰だかわからないけど助かります!」

 

蒼い装備に見を包んだ金髪金眼の女剣士がそこに居たが、生憎とオラリオに来たばかりのベルには誰だか分からなかった。

 

ベルは知らないが、彼女はロキ・ファミリアに所属する第1級冒険者。

最強の1角と謳われるLv5、剣姫アイズ・ヴァレンシュタインである。

 

その彼女が持つ剣は、今しがた仕留めたミノタウロスの血が滴っている。

アイズがベルに群がるミノタウロスを殺した事により、アイズにもヘイトが集まる。

半分近くアイズに向かっていったミノタウロスを見て、好気と悟ったベルは、抱えて居た女性を降ろすと自身を見ていたミノタウロスに攻撃をけしかける。

 

 

ベルは今まで、モンスターがその刀身を抜き放たれた事すら認識できない程の速さで振るっていた。

移動速度そのものも早いため、集団を相手にした場合次々と瞬殺出来る。

 

そして今、ベルの前に居るのは2体。

たかが2体など、ベルにとっては物の数では無かった。

 

手に持つ斧が振るわれる事も無く、ミノタウロスはその首を地に落とされた。

 

ベルが守っていた女性を狙うミノタウロスはもう存在せず、残りはアイズが相手取って居る3匹のみ。

 

 

 

だがそれも、アイズが瞬く間に消し飛ばしてしまった。

 

亜種とはいえミノタウロス、Lv5であるアイズの敵では無かった。

 

 

「ありがとうございます、ええーっと…」

 

「アイズ。ロキ・ファミリア所属、アイズ・ヴァレンシュタイン。」

 

「アイズさんですね。僕はベル。ヘスティア・ファミリア所属のベル・クラネルです。」

 

そうしてお互いに自己紹介をする。

 

この挨拶から数時間後、2人は再度出会う。

 

 

 

 




見る人居るの?これ


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