世界を忌み嫌う武器商人と過去を捨てた兵士   作:のんびり日和

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22話

岩場へと戻って来たネイサンとクロエに束や他の生徒達が出迎えた。

 

「いや~、お疲れ様ぁ! クーちゃんも」

 

「いえ、大したことはしてませんよ束様。それでこちらはいかがいたしましょうか?」

 

そう言いクロエは担いでいた箒を地面へと降ろす。降ろされた箒に束は無言で近づき、箒に渡したISの待機形態である髪飾りを取り上げ、頭を掴み持ち上げる。そして目と鼻の先ほどの高さまで顔を持ち上げ黒い笑みを箒に向ける。

 

「データ採取に手伝ってくれてありがとうね、箒ちゃん」

 

そう言い掴み上げていた箒をまるでゴミの様にその辺に投げ捨てた。その光景には周りに居た生徒達、そして教師達は驚きが隠せなかった。いち早く千冬が箒に駆け寄り容体を確認する。

 

「お、おい箒大丈夫か!? 此処までする必要があったのかマクトビア‼」

 

千冬がネイサンにそう怒鳴るが、ネイサンはため息を吐きながら答える。

 

「僕は博士の依頼をこなしただけです。SEが尽きるまで勝負は終了しない。ならどちらかのSEが尽きるまで戦うしか道が無いでしょ」

 

そう言いネイサンは束の方に顔を向ける。

 

「ではドクター、報酬の方は何ですか?」

 

「うん、これが君への報酬だ」

 

束がそう言うと何処からともなくコンテナが現れ、そしてコンテナが開くとドイツが製造している汎用機関銃ラインメタルMG3をモチーフにされたLMGが現れた。

 

「ラインメイタル MK-57。57㎜砲弾を最大で毎分120発発射できるLMGだよ」

 

そう言いMK-57をネイサンに渡す束。

 

「確かに」

 

ネイサンはISを展開したままMk-57を受け取り武装を確認する。

 

「早速試し撃ちしてみるかい?」

 

束は笑みを浮かべながらそう言うとネイサンは疑問符を浮かべつつも頷く。

 

「え、えぇ。ですが狙えるような的がありませんよ?」

 

そう言うと束は大丈夫!とVサインをして、ある方向に指をさす。

 

「あそこを見て」

 

そう言われ全員束が指した方向を見ると、白い何かが海面上に浮いていた。

 

「あれは?」

 

「ん? 只の的だよ?」

 

ネイサンは、はぁ。と了承しMk-57を構える。千冬は箒を地面へと横たわらせ容体の確認を1組の副担任に任せ、束が言った的とは何だと思い副担任が持っていた双眼鏡で確認する。するとその的は自身が倉持技研に依頼させて造らせていたISだと気付く。千冬は待ったを掛けようとするが間に合わず、Mk-57の銃口から大量の57㎜弾が放たれISと言う名の的に命中し、木っ端微塵に破壊した。数十発ほど撃った後ネイサンはトリガーから指を放し的が有った海面に目線を向けた後ISを解除し束に感想を伝える。

 

「中々いい銃ですね」

 

「ふふぅ~ん。そりゃあ私が作った物だから当然だもん」

 

束はドヤ顔でそう言っていると、千冬が束を殴り飛ばそうと拳を振り下ろしてきた。だが束はそれを難なく掴み横目で見る。

 

「なに? ちーちゃんに殴られるような事してないんだけど」

 

「なぜあのISを的にした‼」

 

周りはあの的がISだと知り全員驚いた表情を浮かべ束へと向ける。

 

「別に良いじゃん、別段必要とされていないISなんだし。それにコアも外してあるからあれは只の鉄屑。ゴミをどう処理しようが束さんの勝手じゃん」

 

そう言い掴んでいた拳を振り捨て、目線を外す。

 

「さて私の目的は達したしそろそろ帰るね。それじゃあバイビィ~‼」

 

そう言って束はスキップをしながら去って行った。スコールはやっと帰ったわね。そう思い訓練を始めようと号令を掛ける。

 

「……ではイレギュラーは有ったものの訓練を「ス、スコール先生大変ですぅ‼」……またぁ?」

 

真耶が旅館から大慌てで来るのを見てスコールは、束の登場は予期できたことだが、流石に2回目のイレギュラーは想定できず声を漏らす。

 

「これを!」

 

そう言い真耶は持っていたPDAをスコールへと見せる。スコールは一体何事?と思いつつPDAを見た瞬間目つきが変わり顔をあげる。

 

「訓練は中止! 一般生徒達は全員それぞれの部屋に至急戻る様に。また許可無く部屋から出た場合はそれ相応の罰則が科せられるため全員出ない様に!」

 

そう声が岩場に響き、一般生徒達は一体何が?と疑問に持ちつつも教師達に連れられて旅館へと戻って行った。

 

「専用機持ちである貴方達は私に付いて来て」

 

そう言われネイサン、鈴、セシリアはスコールの後に付いて行き旅館へと戻って行った。

 

「―――ではこれより緊急指令を伝えるわ」

 

旅館の一室に集められたネイサン達にスコールは開口一番にそう言った。

 

「スコール先生、緊急指令とは一体何が起きたんですか?」

 

「その前にみんなに聞いておきたいことがあるわ。この指令は下手をすれば命をも落としかねないものよ。その為今すぐこの部屋から出て行ったところで別段責められることもないわ」

 

そう言うとセシリアと鈴は顔に若干暗い影が差すが、ネイサンに関しては特に何もなかった。

 

「…覚悟は良い様ね? では具体的な内容を説明するわ。今から4時間ほど前、アメリカとイスラエルが合同で軍事用のISの研究をしていたらしいんだけどそのISが暴走し、此方に接近中とのことよ」

 

スコールから出た軍事用と言う言葉にネイサン達は顔が歪む。

 

「…軍事用ですか」

 

「何よそれ、アラスカ条約ガン無視のISって言う事?」

 

「そ、そんなISを私達でどうしろと?」

 

セシリアの問いにスコールは真剣な表情で答えた。

 

「IS学園上層部から下された指令はこの暴走したISの撃破よ」

 

「「!?」」

 

その指令に鈴とセシリアは驚いた表情を浮かべ、ネイサンはやっぱりかと言った表情を浮かべる。

 

「貴方は予想出来たって言う表情ね」

 

「えぇまぁ」

 

「本来であれば、自衛隊が今回の件に対処するんだけど残念ながら接近しているISにいち早く対処できる駐屯地が接敵まで時間がかなり掛かるため、ISから最も近い所に居る私達が対処することになったわ」

 

そう言われスコールはネイサン達を見渡すが、口から息が零れる。

 

「けど、現状私達には軍用に対処できるほどの戦力が無いわ。その為自衛隊が「それよりもっといい方法があるよ~」…帰ったのでは?」

 

突然天井からぶら下がる様に現れた束に部屋に居た教師達はギョッと驚いた表情を向ける中、束は笑みを浮かべながら訳を話す。

 

「な~んか私の大切な子供で悪いことをしているって知って戻って来たんだぁ。それで戦力が不足してるんだよね? だったらこの子を連れて行ってあげてよ」

 

そう言い束は部屋と廊下を隔てる襖の一つを開けると、バイザーを付けた一人の少女が居た。

 

「この子は私の部下の一人だよ。それでどうかな? 別段報酬やら何やらは要らないし」

 

束の部下を貸してあげると言う申し出に、鈴達はありがたいと思う。

 

「それはありがたいです」

 

「別にお礼とかはいいよ。ただ戦力不足が原因でお気に入りである男子操縦者が死ぬのは見たくないだけだからね」

 

そう言って束はそれにしてもと言いため息を吐く。

 

「IS学園って無能な生徒が多いの? 聞いた話じゃ2人の専用機持ちが独房や格子付きの病室に放り込まれているって聞いてるよ。しかも其処にいる縦ロールも私のお気に入りに喧嘩売ったそうじゃん。まぁボコボコにされて借金背負う事になったみたいだからいい気味だけど」

 

そう言い目線をセシリアへと向ける束。

 

「あ、あれは織斑先生に頼まれて「けど頼まれる前にも喧嘩売ってるそうじゃん」そ、それは……」

 

「言い訳があるなら聞いてあげるよ。けど言い訳したところで真実は変わらないから」

 

そう言い束は目線を外しスコールの方へと向ける。

 

「それで作戦は今始めるの?」

 

「えぇ。マクトビア君達は「……申し訳ありませんが、わたくしは降ります」…そう。それじゃあこの部屋で聞いた事は他言無用よ。香澄先生彼女を一般生徒達の所に」

 

セシリアは俯きながら教師に連れられて部屋から出て行く。それを見た束は廊下から顔だけを出してセシリアの後姿に目線を向けながら、セシリアに聞こえるような声で呟く。

 

「何だよ、自称エリート様は肝っ玉が小さいなぁ!」

 

そう言われセシリアはビクッと背中を跳ね上がらせ、そっと後ろを見るとニタニタした顔を自身に向ける束を見て足早に教師と共に去って行った。

 

「あの篠ノ之博士、あまり本校の生徒を苛めないでくれませんか?」

 

スコールは呆れた表情でそう言うと、束はてへっと舌を出す。

 

「それじゃあマクトビア君、凰さん、そして……貴女達3人で撃退をお願いね」

 

スコールがそう言うとネイサンと鈴、そしてバイザーをした少女は頷き部屋を後にした。砂浜に整列しそれぞれISを身に纏いそれぞれ砂浜を発った。

ネイサンは束が連れてきた少女に気付かれない様に目線を向ける。少女はネイサンと同じ全装甲(フルアーマー)タイプの機体でネイサンと同じAWMSを両手に持ち、背中にも同じAWMSを1丁と長い刀を付けていた。

 

(束さんが連れてきた彼女は一体何者なんだ? 見た目からして十代前半辺り。恐らく俺より下か)

 

ネイサンは束が連れてきた理由を考えに耽っていると、無線がそれぞれに入り意識を戻す。

 

『こちら本部、皆さん聞こえますか?』

 

無線の相手は真耶で、心配しているのか声に張りが無かった。

 

「こちらネイサン、感度良好。接近中のISに関する新たな情報が入ったのですか?」

 

『その、篠ノ之博士がアメリカ政府のネットワークにハッキングして入手した情報を今からそちらに送ります』

 

真耶からの報告に一部国際問題待ったなしの発言が含まれており、鈴はうぇっ!?と声をあげた。

 

「……了解です。データ確認しました。……オールレンジ型のISで、人は乗っていないですね」

 

「こ、これ攻撃を受けたら本当にヤバいヤツよね?」

 

鈴は今から相手にするISが本気で人を殺す為のISだと分かり、声が若干震えていた。

 

(タッグマッチの時みたいな相手じゃ、甲龍だと対処できない)

 

鈴は自身のISでは太刀打ちできないかもしれない。そう思い暗い影が落ちる。

 

「鈴」

 

すると突然ネイサンが鈴を呼ぶ。鈴は顔をあげるとネイサンが顔を自身に向けていた。

 

「怖いのは分かります。僕だって怖いです。ですが今此処で逃げたら多くの人があのISで犠牲になるかもしれません。少しでも時間を稼ぎ増援の到着を待ちます。現状僕達が出来るのはそれしかありません。倒そうとは考えず少しでも時間稼ぎをすることだけを考えてください。それと僕の相棒になるんでしょ? この位でへこたれないでください」

 

そう言われ、鈴は胸にあった不安が拭われ自身を奮い立たせるよう叱責する。

 

(そうよ。私はこれからアイツの相棒になるのよ。これからこういった戦いが何度もあるかもしれないのに、こんな初っ端で挫けてどうするのよ!)

 

そう言い気持ちを再度引き締め直し、前だけを見据え始めた。するとずっとダンマリしていた少女が口を開いた。

 

「目標と接敵までもうすぐ。安全装置解除(セーフティーアンロック)

 

そう言うとネイサンもセーフティーを解除し撃てる様に構える。

 

「目標を目視で視認! これより作戦に移ります‼」

 

目標のIS銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)を確認したネイサンはそう言いAMWSの引き金を引き、攻撃を開始した。少女と鈴もネイサンの掛け声とともに散らばり距離をとりつつ攻撃を開始した。

 

「喰らえ‼」

 

鈴は龍咆を展開して、最大圧縮した空気を叩き込む。福音は最大まで圧縮された空気の攻撃を受けるも体勢を取り直し、攻撃を繰り出す。

 

「……」

 

少女は特に言葉を出さず淡々と言った感じにAMWSを構え、36㎜チェーンガンと120㎜を撃ちだす。射撃による攻撃が来たのを察知した福音はエネルギー弾を展開し、弾丸を消滅させて攻撃を防いだ。全方位にエネルギー弾を展開し移動を再開する福音にネイサンはサイドワインダーを発射し、動きを鈍らせようとするが、福音は接近するミサイルを検知しサイドワインダーに向けエネルギー弾を放った。

 

「クソ。実弾兵器では足止めにもなりそうにも無いな」

 

ネイサンはイライラが募りだし、素の口調が現れ始めた。

 

「だったら、単一機能を使って足止めをするのが良いんじゃないのか?」

 

するとネイサンの傍に少女がやって来てそう言うと、それしかないかと呟きネイサンは鈴に通信を繋げる。

 

「鈴、俺のワンオフでアイツを止める。その間に彼女と共に一斉攻撃を」

 

『た、確かにそれでアイツの動きは止められるかもしれないけどアンタが一番危険じゃない!?』

 

「これ以外方法は無い。本部、自衛隊の増援は後どの位で到着する?」

 

普段とは違う口調に通信に出た真耶は驚くも、自衛隊の位置を直ぐに確認し報告した。

 

『え、えっと現在航空自衛隊のF-4Jの2個小隊がそちらに向かっています。到着予定時間はおよそ20分です!』

 

「了解。それまで俺のワンオフで抑えます」

 

その報告をしたと同時にネイサンは通信を切った。旅館に居た真耶は驚いた表情を浮かべ通信越しに止めさせようと叫ぶ。

 

「ま、待って下さい! それは危険です! ネイサン君? ネイサン君‼」

 

後ろに居たスコールは険しい表情を浮かべながら隣にいた束に目を向ける。

 

「彼なら大丈夫だよ。あのISが持っている武器で彼のワンオフを如何にかできる可能性なんてほぼ不可能に近いからね」

 

束はそう言いながら、空間ディスプレイで何かを探っていた。

 

「ワンオフを起動する。出来るだけ注意を引いておいてくれ」

 

「……分かった」

 

ネイサンは隣にいた少女に援護を頼み、ギリギリでワンオフを起動する為一気にブースターを展開し福音の懐へと飛び込みに行く。

 

「聞こえたな? アイツの援護をするぞ」

 

通信越しに鈴へそう言い少女はAWMSで出来るだけネイサンに気が向かない様に援護を始めた。通信を聞いた鈴は無茶しないでよ!と内心そう怒鳴りながら圧縮空気のチャージを始めた。

そして2人の援護が功を奏しネイサンに気が囚われていない福音に、ネイサンはそのまま福音の前へと出て正面からタックルをするような形で動きを封じた。福音はエネルギー弾を展開してネイサンを引き離そうともがく。

 

「大人しくしろぉ‼」

 

ネイサンはワンオフが発動していられる間までは何とか耐えようと考えていると、福音はネイサンを引き剥がそうと腕を高く上げ振り下ろした。

 

「ネイサン‼」

 

そう叫び鈴は双天牙月で振り下ろされてきた腕を防いだ。

 

「下がれ鈴‼」

 

「ワンオフで攻撃は防げても、引き剥がされたら意味がないでしょ!」

 

そう叫び、ネイサンに向け振り下ろしてくる腕を鈴は必死に防いでいると、もう片方の腕を振り上げてくるのが見え、鈴は急いでそちらも防ごうとしたが福音の方が早く、ネイサンに振り下ろされようとした瞬間

 

「甘い!」

 

そう言い少女は背中に背負っていた刀で攻撃を防いだ。

 

「助かったわ!」

 

「礼はいらん。腕を破壊するぞ!」

 

少女はそう言い刀で腕を破壊しようと攻撃を繰り出した。鈴も同様に持っていた牙月で腕を破壊しようと攻撃を始めた。だが軍用のISの所為か、2人の攻撃のダメージは微々たるものだった。

 

「硬すぎる!」

 

「クソッ! 流石軍用と言うべきか」

 

2人が腕を破壊しようと頑張っている中、ネイサンはモニターに映っているワンオフの残りの起動時間に焦っていた。

 

(不味い。攻撃が激し過ぎてワンオフのタイムリミットが予想より早い!)

 

ネイサンはどうすれば。と悩んでいると、突然束からの通信が開かれた。

 

『マーちゃん、首の部分にスピアを刺して!!』

 

その言葉に少女は拡張領域から針のようなモノを取り出し、それを福音の首におもいっきり刺し込んだ。そして暫くして突然福音から『ギガガ』と機械が軋む音が鳴った後、福音は事切れる様にネイサンにもたれるように倒れ込んできた。ネイサンは突然福音が停止した事に驚き、少女が持っている針が何なのか聞く。

 

「そいつは?」

 

「これか? こいつはハッキングとかに使用する道具だ。まさかISにも使えるとは驚きだったがな」

 

そう言い針を拡張領域に仕舞い、オフレコだぞ?と少女は鈴とネイサンに言い現場から去ろうとした。

 

「ちょ、ちょっと何処に行く気よ!?」

 

「忘れたのか? 私は博士の部下だぞ? この国の役人共に見つかると五月蠅いから早急に退出させてもらう」

 

そう言い少女はネイサン達の元から去って行った。

 

「いいの、ネイサン?」

 

「まぁ彼女の言う通り、政府の連中に色々聞かれるより早急に去るのは得策だろ。それよりこいつを持つのを手伝ってくれ。結構重い」

 

そう言われ鈴は慌てて銀の福音を持つのを手伝う。それから数分後に航空自衛隊のF-4Jが現れ、最寄りの駐屯地まで銀の福音を運びネイサン達の任務は終了した。




次回予告
事件終了後、ネイサンは鈴と共に海辺が見える岸壁まで行くと其処には束が居た。すると束はネイサンに連れてきた少女をネイサンの妹として連れて行ってあげて欲しいと頼む。そして束は鈴にもある依頼を出す。
次回臨海学校~銀の福音編後半~

―――君が進もうとする道には必ず必要となる物だよ
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