世界を忌み嫌う武器商人と過去を捨てた兵士   作:のんびり日和

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30話

夏休みが終わり、ネイサン達は学園へと戻って来ていた。荷物をそれぞれ持ちながら学園の門をくぐり抜けると、スコールと真耶が立っていた。

 

「おはよう、3人共」

 

「おはようございます、皆さん!」

 

「おはようございます、スコール先生、山田先生」

 

「おはようございます!」

 

「おはよう」

 

スコールと真耶の挨拶にネイサン達はそれぞれ返す。

 

「それで、お2人が此処に居るのはマドカの事ですね?」

 

「えぇ、朝のSHRまでに書いて貰わないといけない書類が幾つからあるから迎えに来たのよ」

 

スコールの説明をしている中、真耶はマドカから荷物を受け取った。

 

「お荷物の方は私が預かっておきますので、寮のお部屋が分かりましたら鍵と一緒にお返ししますね」

 

「分かりました」

 

真耶の説明にマドカは了承し、スコール達と共に職員室へと向かった。

 

「それでは僕達も教室に向かいましょうか」

 

「そうね」

 

そう言い2人は教室へと向かった。

 

階段を上がり1年のクラスがある階へと到着し、教室に向かうと前方に車椅子を押しながら教室に向かう黒髪のポニーテールをした生徒が居る事に気付く。

 

「ねぇ、あれって篠ノ之さんよね?」

 

「えぇ、まだ学園に居たんですね」

 

そう言いながら教室に向かう2人。2人が後ろに居る事に気付いていない箒は車椅子を押しながら自身の教室へと入って行った。箒が教室に入って行った後、廊下に居た女子生徒達はヒソヒソと話し始めた。

 

「彼女、あんな体になりながらまだこの学園に居る気なの?」

 

「そうみたい。あの状態じゃあISだってまともに動かせないのに、何時までいる気なのかしら」

 

「噂じゃあ織斑先生が学園長に直談判して、残させたんだって」

 

「それって本当? 教師が一生徒の為だけに直談判って、彼女だけ依怙贔屓してるように感じるんだけど」

 

そう言いながら教室に居る箒に鬱陶しそうな目で見ていた。

 

「彼女、相当周りから恨まれているみたいね」

 

「そりゃあ、普段姉は関係ないと言っていたのに突然自分だけのISを貰おうとしたんです。恨まれて当然でしょう」

 

そう言いながらネイサンは3組の教室に入って行き、鈴も2組に入って行った。

 

それから時間は経ち朝のSHRの時間となると、真耶とスコールが教室に入って来た。

 

「はい、皆さん。おはようございます!」

 

「「「おはようございます!」」」

 

「あらあら、皆元気が良いわね? フフフッ」

 

元気よく挨拶を返す生徒達を見てスコールは笑みを浮かべながら教室の生徒を見渡す。

 

「さて、実は今日から転校生が入ってきます。皆さん静かにしておくように」

 

そう言いスコールは扉に向け、入って来て。と声を掛ける。扉が開かれ、黒髪の小柄な少女が入って来た。

 

「それじゃあ、名前と何か自分の事とか話して」

 

「…マドカ・マクトビア。ネイサン・マクトビアの妹。これからよろしく」

 

そう言い頭を小さく下げ、自己紹介を終えた。短い自己紹介にスコールは苦笑いになり、ネイサンも同じような表情だった。

 

「もう、短い自己紹介で終えないでよ。他に言うことは無いの? 好きな物とか、趣味とか」

 

スコールからそう言われ、マドカはしかめっ面でスコールを見た後、はぁ~。と息を吐き口を開く。

 

「好きな物は、兄さんが作った料理。趣味は本を読むこと」

 

そう言うとスコールは満足し、ネイサンは自分の料理が好きなのかと笑みを浮かべると、それを見たマドカはしかめっ面になりながら頬を紅く染めた。

 

「えっと、それではマドカさんのお席はネイサン君のお隣です」

 

そう言うとマドカは席へと向かい、席に着く。生徒達はキャーキャーとは騒がず、静かにSHRを聞く。

 

「それじゃあSHRを始めるわね。もう知ってると思うけど再来月に学園祭が行われるわ。出し物についての討論は後日、全校集会で学園祭の説明をされた時に行うからそれまでに案を考えておいてね。それと変な出し物とかは考えない様に。以上でSHRを終えるわ」

 

そう言うとネイサンは、起立、礼。と言いSHRを終えると教室にいた生徒達は挙ってマドカに群がった。

 

「マクトビア君の妹って言ってたけど、本当?」

 

「好きな物がマクトビア君の手料理って言ってたけど、どんな料理が好きなの?」

 

「マクトビア君の普段の私生活ってどんな風なの?」

 

大勢の生徒達がマドカの元に向かった為、マドカは対処しようにもどうしたらいいのかと、ネイサンに助けを求める目線を送る。

 

「皆さん、マドカが困っているので一人ずつ質問をしてあげて下さい」

 

ネイサンは苦笑いを浮かべながらそう言うと、質問がある者はじゃんけんをして順番を決めマドカに質問した。

時間は経ち、放課後となりネイサンとマドカ、そして鈴はアリーナへと向かっていた。

そしてアリーナへと到着しISを身に纏いアリーナ中央に集う3人。

 

「さて、どう訓練する?」

 

「僕は射撃訓練をするんで、2人は近接訓練をするって言うのはどうでしょう?」

 

「私は別にそれでもいい」

 

そう言いネイサンは離れると、鈴は紅龍に装備されているグルカビームナイフを装備する。マドカも自身のIS、F-22に装備されている長刀を構える。そして互いに近接訓練を始めた。

 

「さて、自分も射撃訓練を「ネ、ネイサン君、ちょっといいですか?」おや、山田先生どうしたんですか? ISスーツまで着て」

 

ネイサンはISスーツを着た真耶にそう声を掛けると、真耶は恥ずかしそうに訳を話した。

 

「えっと、最初はマドカちゃんの荷物を届けようとしたんですが、スコール先生から荷物を届けるついでに訓練をしてきたらどう?と言われて、来たんです」

 

「訓練をですか、ですが何でまた訓練を?」

 

「実は私も専用機を持つようになったんです」

 

「えっと、専用機をですか?」

 

そう聞き返すと、真耶はコクンと首を縦に振った。

 

「まぁ、いいですが」

 

そう言いネイサンは真耶のISはどう言う物だろうと思っていると、真耶がISを身に纏った瞬間目を疑った。真耶が身に纏ったのは自分と同じA-10なのだから

 

「えっと、山田先生。何処でその機体を?」

 

「えっと、ウサギさんがプレゼントしてくれたんです」

 

そう言うとネイサンは誰なのか直ぐに理解すると同時に、何故ISを渡したのだろうか?と疑問を浮かべた。

 

「何で山田先生にISを渡したのか、聞いてます?」

 

「えっと、私にもわかりません。ただ何となくだそうです」

 

真耶はネイサンに本当の恋心を抱いている女性で、傍で支えられる度胸があるからという理由で選ばれたとは言えず、尤もらしい嘘で誤魔化した。

 

「そう、ですか」

 

ネイサンは何処か納得がいかない様な表情を浮かべながらも、納得し訓練を始めた。互いに同じ武装、同じ性能の為互いのISを操縦する腕が勝負となった。

 

数時間後、訓練は終了となった。服などを着替え終え、ネイサンはアリーナの出入り口にいると荷物を持ったマドカと鈴、そして真耶が出てきた。

 

「それでは山田先生、また明日」

 

「はい、今日は訓練に混ぜて下さってありがとうございます!」

 

「いえ、私もいい訓練になりました」

 

「私も回避訓練とかが出来たので、いい経験になりました」

 

そう言い3人は寮へと帰り、真耶も教員用の寮部屋へと帰って行った。3人は寮へと到着し、廊下を歩いていると鈴が思い出したようにマドカに話しかけた。

 

「そう言えば、マドカって何処の部屋なの? 今度遊びに行きたいし」

 

「ん? 私の部屋は『1123』だ」

 

部屋の番号を聞き、ネイサンは少し驚いた表情を浮かべマドカに向けた。

 

「その部屋は僕の部屋だ。どうやら相部屋の様だな」

 

そう言うとマドカは若干嬉しそうな表情を浮かべる。

 

「そうなの。それじゃあ今から行っても良い? この前アンタが出した宿題の答え合わせとかしたいし」

 

「えぇ、構いませんよ。では先に鈴の部屋に行ってから行きましょう」

 

そう言い3人は鈴の部屋に先に行き、鈴は中に入ってタブレットを持って部屋を出てネイサン達と共に部屋へと向かった。

 

「それにしてもアンタが出した宿題、難しかったわよ。バルメさんやレームさん達にお願いして教えてもらわなきゃ、解けなかったじゃない」

 

「そうですか? 自分は父に貰った参考書で学びましたが大して難しくありませんでしたよ」

 

「アンタが難しくなくても、私には難しいの!」

 

そう言いながら廊下を歩ているとネイサンの部屋の前へと到着した。

 

「さて、此処が僕の……」

 

部屋だと言い切る前に、ネイサンは違和感を覚えた。

 

「兄さん?」

 

「どうしたのよ?」

 

マドカと鈴は怪訝そうな顔でネイサンの様子を伺うと、鋭い視線を扉に向けていた。

 

「……誰かが部屋に入った跡がある」

 

「「!?」」

 

その言葉を聞いた2人はすぐさま拡張領域からP226を取り出しスライドを引き、初弾を薬室に送る。

 

「……確かなの、部屋に誰かが入ったって?」

 

「えぇ。鍵を差し込む部分に僅かに、新しい傷が出来ているんです。恐らく誰かがキーピックを使用して中に入ったかもしれません」

 

そう言いながらネイサンはコルトを取り出し扉に鍵を差し込み、ロックを解除する。そして一気に扉を開き、銃を構える。中には誰もおらず、3人は警戒しながら進む。そして部屋を一つずつ確認していき侵入者が居ないか確認する。部屋をくまなく探したが、結局侵入者は居なかった。

 

「侵入者は居なかったわね。何でアンタの部屋に?」

 

「分かりません。荷物も確認しましたが盗られた物は一切ありませんでした」

 

「なら、考えられるのはあと一つしかない」

 

そう言いマドカは拡張領域からある機械を取り出し、電源を入れる。

 

「マドカ、何それ?」

 

「盗聴器発見器。兄さんの周辺でコソコソ動く奴等から兄さんを守る為に、博士から貰った。……有った」

 

そう言いコンセントに差し込まれている2叉のコンセントを取る。

 

「マドカ、他にもありそうか?」

 

「まだ鳴っているから、恐らくあると思う」

 

そう言い部屋中を探し回ると、合計8個の盗聴器が見つかった。

それを見た鈴は信じられない。と言った表情を浮かべた。

 

「アンタが世界最初の男性操縦者だからって、これじゃあプライバシーも何にもないじゃない」

 

「えぇ。これを一体誰が仕掛けた知りませんが、舐めた事をしてくれますね」

 

「そうだな。こいつを仕掛けた奴には徹底的に潰さないと気が済まない」

 

そう言いマドカは盗聴器を壊そうと、盗聴器を掴もうとするとネイサンが待ったを掛けた。

 

「それは大切な証拠だ。学園長に話しに行って暫く別の部屋か、新しくキータイプではなくカードリーダータイプの物に替えるかなどして貰わないと」

 

そう言い盗聴器を袋に詰め、部屋の荷物も纏める。

 

「私も行く。私もこの部屋に下宿する予定だったんだ」

 

マドカはそう言い付いて行くと言うと、ネイサンはいいぞ。と了承する。

 

「私は自分の部屋で待ってるから、どうするか決まったら教えてね」

 

そう言い鈴は部屋から出て行こうとすると、マドカが盗聴器発見器を鈴へと投げ渡した。

 

「もしかしたら鈴の部屋にもあるかもしれないから、一応見ておけ」

 

「……そうするわ。有ったら私も学園長室に行くわね」

 

そう言い鈴は部屋へと戻って行った。そしてネイサンとマドカは学園長室へと向かった。




次回予告
盗聴器を持って学園長に会いに行ったネイサンとマドカ。するとスコールと真耶が鈴を連れて慌てたような様子で入って来た。内容がネイサン達と同じ盗聴器がらみで、鈴の部屋からも見つかったのだ。学園長はある案を出した。
次回
学園長の権限
~この様な碌なことをしない人には、しっかりと“お話”しないといけませんね~

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