束はネイサンの部屋の窓から出た後、人気のない学園の廊下を普通に歩いていた。
「ふんふんふ~ん♪ えっとあそこは何処だっけ」
そう言いながらポケットから学園の見取り図を取り出し指でなぞりながら目的の場所を探し、指で指す。
「あった、あった。さて、ちょっと警告に行こうかな」
そう言いながら束は目的の場所へと向かって歩き出した。その顔は耳まで届きそうな鋭く口角を上げ笑っていた。だが目はまるで、ウサギと言う皮を被った獲物を狩る狼の様な目だった。
――生徒会室。其処は主に学生達からの要望などを話し合ったりして決めたり、学園行事の進行役などを行う生徒会の為の部屋だ。そんな部屋に一人の生徒が溜まっていた書類を片付け終え、固まった筋肉を解そうと体を伸ばす。
「ん~‼ やっと終わったぁ~。全く虚ちゃんは厳しいわね」
そう言いながら書き終えた書類を『チェック済み』と書かれたバスケットへと入れる。
そしてパソコンの電源を入れる。そしてパスワード入れ終えログインした。
「さて、彼が何者か。やっぱりコソコソ調べるより直接聴けるポジションに連れてくればいい。私だって暗部の長よ、政府の指示を全うできずして何が更識楯無よ」
そう言い楯無はパソコンで作業をしようとした瞬間
「なるほどねぇ~、屑な政府共の指示でやったんだ?」
突然背後から声を掛けられた事に驚き楯無は首を後ろへと向けた瞬間
「かはっ!??!」
突然首を絞められそのまま持ち上げられた。しかも片手でだ。楯無は持ち上げた人物に驚く。
「し、しの…のの博士」
「やぁ、初めましてだね。暗部組織、更識の長」
そう言いながら束は笑みを浮かべながら首を絞める。
「い、一体何がも、もく、てきなんですか?」
「目的? そりゃあ決まってるじゃん。お前がこれ以上ネイ君の周りをうろつくの止めさせる事。それ以外にお前みたいな奴に会いに来るわけないじゃん」
なに? 知ってるくせに聞いたの?と言わんばかりの真顔を浮かべ、首を絞める力を強める。
「かっ!! ぐぅっ?!!」
楯無はこのままでは絞殺されると思い、ISを展開しようとしたが開かなかった。
「無駄だよ。お前のISは展開できない様にこっちでロックしたからね。……一度しか忠告しない。ネイ君の周りをうろつくな。もし続けたら、お前がネイ君の部屋に侵入し、盗聴器を仕掛けたことをばらす」
そう言うと、楯無は目を見開き驚く。
「何で知っているのと言った表情だね。私はISの生みの親だよ? お前のISから位置情報とか色々調べたら分かるんだよ」
そう言いながら顔を束の前へと持って来て殺気の篭った目で睨む。
「いいな? 二度とネイ君の周りをうろつくなよ?」
束にそう聞かれ、楯無は本気で殺されると思い首を激しく縦に振った。
これだけすればもうしないだろうと思った束は楯無を放そうとした瞬間
『ティロリ〜ン』
とパソコンから音が鳴った。
束はその音に反応し目を向けるとパソコンのディスプレイ端に『新着メールあり』と表示されていた。そして束の視線はその表示の下にあるファイルへと行く。
「『学園祭特別プログラム計画書』? 面白そうな物みっけ~」
そう言いながら片手で束はファイルを開く。
「ふむふむ、なるほどね。ネイ君を景品みたいなモノにして部活同士で争わせる。そしてそれを生徒会が横から掻っ攫うと。ふぅ~~ん。本当に面白い計画だねぇ」
そう言うと束は放そうと思っていた楯無の首を絞める力を強める。
「あがっ。 ぐぅぅう……」
「これ見た瞬間気が変わった。今此処で殺す」
そう言い束は首を絞める力を強めようとした瞬間生徒会の扉が開かれた。
「お嬢様、全校集会の日程が決まり、お、お嬢様!!?」
眼鏡を掛けた女性は生徒会室に入った瞬間楯無が殺されそうになっている事に驚き大声をあげる。
「チッ。命拾いしたな」
そう言い束は楯無を女性目掛けて投げる。楯無はそのまま女性にぶつかり、女性共々床に倒れ込む。
「きゃっ!!? お、お嬢様だ、大丈夫ですか?!」
女性は投げられてきた楯無の容体を確認しようと慌てて声を掛ける。楯無は漸くまともに呼吸できず、荒々しく呼吸をする。
「ゲホッゲホッ。う、虚ちゃん?」
「は、はい。ご無事ですか?」
「え、えぇ何とか……。っ!? 篠ノ之博士は?!」
そう言い楯無は部屋の中を見るが其処には束の姿は無く、更にパソコン本体も消えていた。
「お、お嬢様。まさか先程の女性は……」
「……えぇ、篠ノ之博士よ。直接警告してきた」
そう言い楯無は壁にもたれて呼吸を落ち着かせる。そして虚と呼ばれた女性は顔を俯かせた後、意を決して口を開く。
「お嬢様、もうこれ以上彼を調べるのは止めましょう。これ以上調べたら確実に今度は殺されます」
そう心配そうな声で言うが、楯無は苦渋そうな顔で横に振る。
「駄目よ。これは政府からの指示。我々がそれを断る権利は「では、死んでもいいというのですか! 相手はあの篠ノ之博士なんですよ! 我々が相手に出来る様な相手ではないのですよ!」……」
そう言われ楯無は手を握りしめる。確かに相手との力量は確かに天と地の差がある。それでも自分は更識の長。仕事を放棄するわけには。と頭に響く。
「……無礼をお許しください」
「え? 《バチンッ‼》ッ!!??」
突然虚は楯無の頬を平手打ちした。楯無は突然平手打ちした虚に茫然とした表情を浮かべながらその顔を見る。虚の顔からは涙が溢れ流れていた。
「更識の長である前に貴女は一人の人間なのですよ! わざわざ死にに行くような事をしないでください! それに貴女が死んでしまったら、一体誰が簪お嬢様を守るのですか!」
「っ!」
虚の言葉に目が見開き直ぐに俯く。自分は危うく大切な妹を一人ぼっちにさせる所だった。そう思った楯無は口を開く。
「……分かったわ。もう彼の調査から手を引きましょ」
そう言うと虚は少し安堵した表情を浮かべ「分かりました」と静かに返した。
次回予告
学園祭に関する事で全校集会が行われた。そして集会を終えたネイサン達はクラスで出し物を決めた。そしてクラスの出し物の為の買い出しへと出掛ける。
次回
買い物~3組は何をしましょうかね?~