あの日、姉に見捨てられた俺を助けてくれたのは、
俺は一生この日の出来事を忘れないだろう……
自分の人生が変わったこの日を……
夜の闇を切り裂く幾つもの光。
それは、遠くへとみえる街へと進んでいた。
「全機、爆撃用意」
光の正体はインフィニット・ストラトス……女性にしか使えない"兵器"である。
そして、彼女達は、とある組織のパイロット……
「ISが主役のこの時代に何が完全男女平等だ!」
「蛆虫共がっ!一匹残らず燃えちまえ!!」
彼女達はこれから向かう街を焼き尽くそうとする、テロリストでもあった。
「ナパームやクラスター、燃料気化爆弾で焼き払……なっ……!?」
指揮官の女性が攻撃命令を下そうとした時、それは現れた……
「なんだあれは……」
月をバックに大型ライフルをこちらに向ける黒いヒトガタ。
そして、それは困惑するIS部隊へと襲いかかっていった……
「うーん、結局これも駄目かぁ……」
黒いヒトガタとIS部隊の戦いを遠くから見つめる一人の女性。
水色のワンピースにうさみみカチューシャを付けたその姿はまるでファンタジー世界から飛び出たキャラクターだと思うだろう。
が、そんなことはない。
何故なら、彼女の正体は『ISの生みの親』にして『女尊男碑の元凶』である『篠ノ之束』だからだ。
「せっかくISコアを提供したんだからもうちょっと役立っていいと思うんだけどね」
何もさせて貰えずに次々と撃墜されていくISを見ながら束が呟く。
彼女としてはIS部隊が目的地である街を混乱に陥れている間にそこの隠された情報を仕入れるつもりだったのだが、こうも簡単に撃墜されると陽動としての意味がない。
「でも、これで"あの街"には未知の技術がいっぱいあるって事だよね」
が、直ぐに気持ちを切り替えると改めて戦場と件の街を見つめる。
既に戦闘は終焉へと突入しており、IS部隊は壊滅寸前。
対してヒトガタは全くダメージを受けておらず、むしろまだまだ余裕があるようにも思える。
程なくして全てのISは撃墜され、パイロットは駆けつけた自衛隊のIS部隊に引き渡された。
恐ろしいことに、あのヒトガタはパイロットを殺さずに全てのISを戦闘不能にしてみせたのだ。
「うーん……何なんだろうね、あの機体。ISじゃないのに……」
自らが作った物のさらにその上を行く存在に疑問を覚える束。
しかし、考えても結論は出ない。
「まぁいいや、後で調べよーっと」
呟くと同時に意気揚々とその場を去る束。
既に頭の中では如何にして件の街『青空市』が保有する未知の技術を得ようかと考えを巡らせていた。
「うーん、弄りたい……」
「何をだ」
「ISを」
青空市唯一の学校『エンジェル学園』のラボの一つで一人の女性が項垂れていた。
「またか……何故あの時貰おうと思わなかった」
「いや……ね、あの時は『ラーズグリーズ』の調整で手一杯だったし、一夏が行方不明になったりで大変だったからね……」
「後悔先に立たずとはこの事だ」
「そーなんだよね……あーあ、どっかにIS落ちてないかなー」
「そんな都合よく落ちてる訳無いだろ」
少女の発言にツッコミを入れる白基調のトリコロールな何か。
「うぅ……AGE-1じいちゃんがいぢめる……」
「常識的な返答をしているだけだ」
「うぅ……余裕も出来たし、そろそろ本腰入れて解析しようと思った矢先なのに……」
不貞腐れる女性。
だが、そんな彼女に一つの幸運が舞い降りる。
「ルーシェ、いる?」
「ここにいるよー……で、何の用、ミアリー?」
ラボに入ってきた『ミアリー』と呼ばれた女性。
「実はね、倉持技研にスパイしていたシャドハン達が面白い情報を持ってきてね」
「ほぅ、実に気になるね、その情報」
「でしょ……で、その内容なんだけど……」
語り始めるミアリー。
その情報は彼女達を歓喜させる事になる。
「あぁ、あのスットコドッコイのISを作るために急遽技術者を集めた結果、日本の代表候補生の専用機開発が凍結ねぇ……」
「成程な……で、それのどこが面白い情報なんだ?」
「わからない?上手くすれば私達が自由に弄れるISが手に入るって事よ」
ミアリーの言葉に目を輝かせるルーシェ。
「だが、好き勝手弄って問題ないのか?」
AGE-1と呼ばれたソレのツッコミ、だが……
「作るのよ、コアを。リバースエンジニアリングすれば余裕でしょ」
「だよねー、この超天才技術者のルーシェ様に不可能はナッシング!」
「成程、それは思いつかなかった」
「そうと決まれば……」
「やりますか」
グッ!と手を組むルーシェとミアリー。
そんな光景を見ながらAGE-1は……
「取りあえずフローリアン博士とスカリエッティ博士と澄井博士とゾルダーク博士とブラウン博士とエルマール博士とミストラル博士とジャスティスと赤枠とにとりとDEM、キサラギ、アクアビット、トーラスの技術者でも呼んどくか……」
知り合いの技術者を呼ぶことを決定した。
「そうと決まれば早速アイシーに交渉してもらおう」
「あ、デジトロイドがネットで防衛庁長官の意外(アブノーマル)な趣味を……」
「これは使えるねぇ……」
「でしょう……」
どうでもいいことだが、こいつ等全員マッドである。
余談だが、これが原因で一人の少女が無理やりIS学園からエンジェル学園に入学させられることになる。
そして、件の少女はというと……
「どうしてこんな事に……」
電車に揺られながら小一時間。
今までのことを彼女は思い返していた。
世界初の男性ISパイロットの為のISを作るから専用機開発が凍結された。
なので自分で引き取って自力開発しようと思ったら『エンジェル学園』が開発するという話になった。
更に何故か自分もエンジェル学園に通うことになった。
IS学園入学を無理やり取り消されて……
出発前に役人が言っていたことを思い出す少女。
『青空中央駅東口前の『平和の像』で、待っていて欲しいと言われている』
平和の像?
いかにもな名前だ?
待ち合わせ場所に思いを馳せる少女。
「興味深い……一体どんなのだろうか?」
そんな事を思う少女だった。
更に30分後……
「着いた……」
青空中央駅東口前の『平和の像』の前に彼女は立っていた。
「これが……『平和の像』?」
その像は丸っこいボディに短砲身のキャノンとキャタピラを付けただけのモノ。
台座には×の字状の傷と文字が刻まれていた。
「……えっと……『平和の礎、この像を平和として』……どういう事?」
これの何処に平和の要素があるのかと思案する少女。
が、その思案は背後からかけられた声によって中断させられることになる。
「君が更識簪さん…かな?」
「えっ、あっ、はいそうで…す……が……」
声のした方を見た瞬間、少女『更識簪』の表情が凍りついた。
何故なら、声をかけた人物は世界初の男性ISパイロット『織斑秋一』とう瓜二つだからだ。
そして、自分の運命を狂わせた元凶……
簪の眼に怒気が宿り始めるが、目の前の人物は『そんなこと知ったことか』と言わんばかりに自己紹介を始める。
「俺の名前は『織斑一夏』だ。これから君が住むことになる寮『皐月寮』の住人の一人だ。エンジェル学園へようこそ、歓迎しよう、盛大にな!」