尚、リーシャの料理は劇物の模様
初めて彼を見たとき、私は、かつての自分を思い出した……
何故なら、あの時の彼は、全てに絶望し、そして否定し、心の殻に篭っていた自分と一緒だったから……
だからだろう、彼を助けたいと思ったのは……
あの日、彼女に救ってもらった自分のように……
「彼、大丈夫?」
「今は落ち着いてます。ですが……」
彼等の母艦、その医務室で眠り続ける少年。
「発狂したり、死を願ったり……完全に己を見失ってる」
「聞けば彼の姉はかつて『白騎士』と名乗ってたようだが……」
「あんな奴騎士の風上にもおけぬわ!」
「私達の曲聞かせれば立ち直るかな?」
「それで治ったら苦労しないわよ……」
「ここは一つ、私の琴の音を聞かせましょうか」
「黙れよ、影の薄い12英雄が」
そして、別室では彼に同情する者、彼の双子の弟、彼の姉に怒りや憎しみを向ける者が集まってた。
「ええぃ、もう我慢できん!今すぐ突撃してその根性叩き直してくれるわ!!」
「そうだそうだ!!」
「いざ往かん!我らの正義の為に!!」
「うっさいわよアンタ達、少し黙りなさいよ!!つか今突撃したら周りに迷惑でしょうが!!私だって突撃したいの我慢してんだから!!!」
「エ、エリザも少し落ち着いてよ……」
「エリザロッテ様があそこまできれるなんて珍しいわね」
「ナターシャ、アンタ落ち着きすぎ」
ワーワーガーガー騒ぐその部屋を尻目に一人の少女が彼の眠る医務室へと足を運ぶ。
彼女の名は『エリス』、彼を救出した者の一人だった。
医務室には彼以外誰もおらず、そして、ベッドから呪詛の声が響いてた。
「こんな世界、消えてしまえばいい……」
その言葉にエリスの表情が悲しみに歪む。
今の彼は正しくかつての自分だ。
だが……彼女は信じていた、彼を助けられると。
自分もまた、助けられたから。
「今度は、私の番だ……」
小さく呟くと彼が眠るベッドに腰をかける。
「ほっといてくれ……俺は……わっぷ!?!?」
「安心しろ、私が傍にいてやる。私がお前の味方になってやる。痛みも苦しみも、私が全部飲み込んでやる……」
尚も呪詛を呟く彼をエリスは無理やり起こすと、そのまま彼の頭を自分の胸に抱き込んだ。
いきなりの行動に彼が手をバタバタと動かすが、エリスはそんな事を気にせず、更に抱く力を強める。
(な、なんで胸を押し当てられてんの俺!?……でも、いい匂いだ…………)
突然のエリスの行動に驚く彼だったが、次第に手の動きが収まり、数秒後に部屋は静寂に包まれた。
「あらあら」
扉の影から医務室の中を除くリーシャ。
彼女もまた、一夏の事が心配で見に来たのだが、既にエリスがいたので影から覗いていたのだ。
「でも、エリスちゃん、もう大丈夫なのね」
かつて、内なる力が原因で迫害を受けていたエリス。
そんな彼女は何時しか自分の殻に閉じこもり、全てを否定していたのだ。
『すべての真実』を聞かされた一夏の様に。
「私が入ったらお邪魔かな?」
医務室の中ではエリスが自分の体験談を一夏に話していたり、積んでいたゲームを一緒にプレイしていた。
一夏の表情には笑顔が戻っており、これならば完全復活も時間の問題だろうとリーシャは判断した。
「折角だし、何か作って持って行ってあげましょう」
そう言いながらキッチンへと歩を進めるリーシャだった。
五分後、顔面をボコボコに殴られ、更に簀巻きにされた挙句、自室に放り込まれていたリーシャを偶々彼女の部屋を訪れたメディカルロボ『プリストルQ』が発見するが、それは別のお話である。
「さぁ、自発的な歴史改変を始めよう。奴を、倒す為に……」
一夏救出から約半年後……
ミッションを説明する
我々エンジェルフォースへの協力を約束してくれたデュノア社社員がスポンサーの息のかかった軍によって拘束された
彼等はフランスのレンヌ・サン・ジャック空港よりチャーター機で国外へと脱出する手はずだったが、どうやら情報が漏れていたようで、待ち構えていた軍によって捕まったとの事だ
この中には社長及び彼の妻子がおり、彼等が抑えられるということは即ちデュノア社が敵の手に落ちる事を意味する
そこで我々は彼等デュノア社社員の救出を敢行する
敵を殲滅し、彼等を無事日本へと連れてくるのだ
「これが、我々エンジェルフォースにとって初のこの世界における正式な作戦行動となる。失敗は許されない、なんとしても救出するぞ」
『了解』
「それでは、出撃!」
それから数分後、レンヌ・サン・ジャック空港を包囲するようにエンジェルフォースの『ヒーロー』達が転移し、戦端は開かれた。
???「貴方のコスモスデータ、頂くわ」
???「あー!、皆避けて避けてーーーーー!!」
11月参戦零型がアップを始めたようです