金髪さんのいる同盟軍   作:ドロップ&キック

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サブタイ、”のっぽの赤毛さん”の誤植ではありません。




第010話:”のっぽのサリー”

 

 

 

手強い1500隻の正規艦隊は三方に別れ、自艦隊の後ろに回り込もうとしている。

前方には1000隻の貴族艦隊……2.5倍の艦隊に前後を挟まれつつあり、リンチ艦隊の置かれた状況は最悪と言ってよかった。

 

だが、リンチの顔には確かに笑みが浮かんでいたのだ。

 

「こいつぁいい! とりあえず”腐れ貴族(眼前の敵)”だけ気にすりゃいいってな!!」

 

そして上機嫌なまま、

 

「全艦砲雷撃戦用意! スパルタニアン、全艇発艦用意!! 魚雷(ミサイル)の弾頭はレーザー水爆! 信管調整は直撃/近接/時限の三種同調! 主砲(ビーム)は長短の射程切り替えしくじるな!!」

 

リンチはベレー帽を阿弥陀に被りなおし、

 

「出し惜しみはなしだ! 最初(ハナ)っから全力で行くぞ!! 全艦、最初の三連撃は艦隊統制斉射(フリート・サルヴォー)でキメるっ!!」

 

そして戦闘艇が飛び立ち、敵艦隊を射程に捉え……

 

All Guns Stand-by(全砲門砲撃よぉーい), FIRE(撃てっ)!!」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「全艦、回避運動自由(レッツ・ダンス)! 全兵装使用自由(オール・ウエポンズ・フリー)!!」

 

敵艦隊に吐息が届きそうな距離、中性子ビームの主砲群が短射程モードに切り替わった瞬間、リンチは声を張り上げる!

 

「ここから先はなりふり構わねぇ殴り合いだ!! テメェら気合負けすんじゃねぇぞ!! 足を止めるな!!」

 

提督(ボス)駆逐艦(バンディッツ)044より入電! ”我、被弾セリ。コレヨリ天国ヘ突撃セン。天使ガぱんちらデ誘ッテヤガル。同盟万歳!!”……以上です」

 

「バンディッツ044、敵巡航艦に体当たりを敢行! 敵艦ともに轟沈しました!!」

 

悲鳴のようなオペレーターの声に、

 

「おう見事だ!」

 

リンチは星空に散った仲間に敬礼を送る。

 

(チッ……また減っちまったか……)

 

 

 

戦況は意外なことにリンチ艦隊の圧倒的優位に進んでいた。

数は互角ながら、士気/練度/装備のいずれもリンチ艦隊が勝っていたのだから意外と言ってはいけないのかもしれないが……

 

「敵通信に”全周波数広域妨害(バラージ・ジャミング)”をかける! 楽曲(ナンバー)は”のっぽのサリー(Long Tall Sally)”! ”Led Zeppelin ver”で景気良く流せ!!」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「な、なんだこれは……」

 

通信を通して流れてきたのは炎のようなシャウトと激しいビート、そして貴族であるコルプトには意味不明の単語の羅列……まあ、意味がわかったところで顔をしかめるだけだろうが。

 

コルプトは混乱の極致にいた。

敵艦隊はあまりに無謀で出鱈目で、まるで死への恐怖がないように肉薄してきて片っ端からこちらの船を沈めてくるのだ。

中には体当たりを仕掛けてきて、共に爆沈する物までいる始末……それも1隻や2隻ではない。

 

そんな時に流れてきたのは、コルプトは知る由もないが、リンチのお気に入りのロック・ナンバー……地球最盛期(レジェンド)ロックンロールのスタンダード・ナンバーときた。

 

実は”ラインハルトが皇帝として死んだ”世界線の同盟とこの世界の同盟が大幅に異なるのは、その”継承された情報の質と量”にあった。

自由惑星同盟の成立が二つの世界で年代すら異なることは前にも述べた。

だが、重要なのはその時期だ。

 

”原作”と呼ばれる世界線では、アーレ・ハイネセンが40万人の民を引き連れ脱出したのは帝国成立から160年以上経った後の話だ。

その時期は、もう幾度も”大粛清”が行われ、あらゆる「反帝国的なもの、帝国にはそぐわない退廃的な物」は償却されていたに違いない。

実際、ヤンが閲覧していた歴史資料などが持ち出されたのは奇跡的と言っていい。

 

だがこの世界線では十分な準備期間の後に、帝国成立前夜にアレイスター・ハイネセンが”長征1万光年(ロンゲスト・マーチ)”を敢行している。

 

しかもその時に使われたのは、”イオン・ファゼカス号”のようなドライアイスで急造した船ではなく、原作より160年前の技術とはいえまともな恒星間航行船で編成された大船団だ。

人員も10億人もおり、私物まで含めれば持ち出し可能だった銀河連邦時代の情報は、それこそ原作と比べるほうが馬鹿馬鹿しいほどだろう。

 

そして無事にその持ち出された情報の一つが、”のっぽのサリー”……それも西暦1970年のロイヤル・アルバート・ホールで演奏された幻の”Led(レッド) Zeppelin(ツェッペリン)”バージョンだったという訳だ。

 

 

 

もはやコルプトの処理能力は、”雑音”に掻き乱され今にも限界突破しそうだった。

 

(な、なんなのだ……こやつらは……)

 

「なぜ、こうなるのだ!?」

 

コルプトは心底、主神オーディンを呪った。

自分はただ貴族の嗜みとして人狩りを楽しみたいだけだったのに……と。

 

コルプトにとり、自由惑星同盟を名乗る叛徒は、ただ自分達”高貴なる者”に媚び諂い、命乞いをする存在でなければならないのだ。

それがコルプトにとっての摂理であった。

 

だが、現実はどうだ?

次々と沈められているのは、自分の艦隊だ。

コルプトには、同盟その物が得体の知れない怪物のように思えてならなかった。

 

結局、コルプトはその長くはない生涯において、”この戦争”がなんなのかを理解することはなかった。

 

 

 

「ぜ、()()反転せよ!!」

 

そして恐慌の中で下されたの最悪の命令。

 

「しかし閣下……」

 

「口答えするな! これは撤退ではない!! 一度引いて態勢を整えるのだ!!」

 

だが、やはりコルプトは戦争を理解してない。

もう敵艦隊が自艦隊と接触し、近接艦隊戦になってる最中、そんな命令を出せばどうなるかということを……

 

 

 

「直撃、来ますっ!!」

 

「ば、ばかなぁぁぁぁーーーーーーっ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やっぱりトラディショナル・ロックのスタンダード・ナンバーは熱い!(挨拶

銀英伝と言えクラッシックですが、原作のリンチ少将もある意味、ロックな生き方したと思うんですよ。
アルコール依存症で最後は裏切り者として死ぬなんて、まさにある種のロックのような退廃的な生き様ですから。

この作品のリンチ少将は、別の意味でロック的、まさに魂の奥までロック魂な”火の玉ロック親父”を目指してみました(^^

実はこの世界の同盟が引き継いだ”地球から脈々と受け継がれた膨大な情報”は、多くのサブカルも含んでいて、歴史に多くの影響を及ぼしたみたいですよ?






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