金髪さんのいる同盟軍   作:ドロップ&キック

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今夜も執筆速度の関係で深夜アップです(^^

いや~、結婚というのは、いや結婚に限らず冠婚葬祭というのは、実際の催事よりその準備の方がずっと大変という事がままあります。

例えば、今回は多分そんなお話です。

まあそれと、オリ設定やら新情報がチラホラと……?




第102話:”偉大なるアレイスター・ハイネセンとエッダ教会”

 

 

 

結婚……

それは、愛し合う者達が契りを交わすこと。

ただし、自由惑星同盟憲章において、婚姻の定義はあるが年齢性別に関する記載はない。ついでに人数制限すらない。

自分で自分とは理論的に結婚できないので、単数でなければ良いという事だろう。

実は、かつて自分の名前を書いて婚姻届けを提出した自分大好きの変人がいたのだが、流石に受理されなかったようだ。

 

まあ、原則有人惑星ごとにある自治政府においては『居住する住民の文化的/歴史的背景に配慮し』という建前で、制限を加えてる場所もある(そのあたりは自治政府の裁量に任されてる)。

であるが、ここ首都惑星ハイネセンでは、同盟始まりの地らしく『自由惑星同盟憲章と建国の理想を最大限に実現する』事を目標としてでかでかと掲げるため、婚姻に対しては本当に制限はない。

ぶっちゃけ、年齢性別も問わなければ、やろうと思えば一夫多妻も多夫一妻も可能だ。

さて、ここで素晴らしき偉大なる同盟の国父にして始祖、”アレイスター・ハイネセン”の言葉を記しておこう。

 

『性癖と結婚観は、人の数だけ存在する! それは個性であり、他の個を侵害するものでなければ、個性は尊重されるべきものである! 性癖も結婚も双方の合意の上ならば、なんの問題ない! 民を個を尊重できない国など滅んでしまうがよい!! 存在する価値など微塵も無いのだから!!』

 

聞け! 民よっ!!

ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムは自由を、個を否定した! 拒絶したのだっ!

残る連邦人がそれを受け入れるというのなら、我々はそれを全力で否定し拒絶する!

肉体は物質の限界に阻まれるとしても、精神とは本来自由であるべきものなのだっ!!

奮い立て民よっ!!

自由こそ人の真理なれ(ハーレー・リバティ)っ!!

 

 

 

……ジーク・ハイネセン! はっ!? いやいや。ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムと同じ時代に生きたアレイスター・ハイネセンが何故、ゴールデンバウムの危険性にいち早く気付き、民をまとめて脱出できたのか理解できた気がする。

価値観は正反対なれど、人間性……というか性格は、存外ルドルフもアレイスターも似ていたのではないだろうか?

おそらく、どっちも扇動的政治家だったのは間違いない。

 

それにアレイスターの発言は一見まともそうだが、なんともヒッピー的……というか、そこはかとなく”アクシズ教”臭がするのは気のせいだろうか?

ちょっとだけ、『こんな奴を始祖と(あが)めて大丈夫か? 自由惑星同盟』と思わなくもない。

 

ともかく、どこぞの好色赤色倍化少年のように『ハーレム王に俺はなる!』をガチで目指すこともできるのが自由惑星同盟であり、惑星ハイネセンだ。

ただし、それを実際にやろうとする人間は極端に少ないが……まあ、手間暇資金など現実的な部分を考えれば、それも当然だろう。

そんな猛者は普通……ワイドボーンがそうだった。

ただ、あそこは極端にサイズがミニマムということに加え、ハーレムと称するにはちょっと抵抗がある。

ニュアンス的には、屋敷ではあるが”ペット小屋(ブリーダーハウス)”や”ドールハウス”と表現する方がしっくり来る気がするのだが……

 

 

 

まあ、ブラックというより同盟の暗黒面(ダーク)的な話はいいとして……

 

「という訳でキャゼルヌ先輩、招待状はどの程度の範囲に送ればいいんでしょう?」

 

「お前という奴は……」

 

と疲れた様子で眉間を人差し指で揉み解しながら、階級が一時的に並ばれてしまった後輩に呆れたようなため息をついた。

というか初登場(第016話)で大尉だったのだが、その直後に出世して少佐、現在は兵站/補給部門の拡充が急がれたため、出世が早まり”中佐”の地位にあった。同期の中でもスピード出世してて何よりである。

 

「局所的にはひどく優秀なのに、どうして時折常識的な部分がスコンと抜け落ちてるんだ?」

 

さて、少し状況を説明をしよう。

愛しいアンネローゼと結婚するのはいい。それに関しては迷いも躊躇いもない。

だが、いざ結婚式を開こうとしたのはいいのだが……ヤン・ウェンリー、何をしていいのか全くわからなかった。

 

いや、ちょっと待って。どうか石を握らないでほしい。

そもそもヤン・ウェンリーという男、これまで自分の人生に結婚というファクターを加えたことが無かった。

いや、婚約までして……勿論、エンゲージリングを贈ったりしてるのに今更かと思うかもしれないが、彼の人生観において結婚とは、イゼルローン要塞を通り過ぎ、銀河帝国の首都惑星オーディンよりまだ遠い事象だった。

まあ、言うならば”宇宙(そら)よりも遠い場所(けっこん)”ってところだ。

しまった。今の時代、宇宙は人類にとって全然遠くない場所だった。むしろ生活の場だ。

 

そこで、アンネローゼとミューゼル夫妻(パパ&ママ)に相談し、”帝国からの亡命者(フォリナー)”社会ではメジャーな銀河帝国式、主神オーディンとゲルマン神話(北欧神話)の神々を崇める『エッダ教会』で挙式することになった。

まあ、フォリナーは銀河帝国の体制や社会システムを否定したのであって、別に宗教まで否定した訳ではない者が大半なので別に不思議な事じゃない。

現実に『親交や宗教の自由を求めて同盟に亡命』という者は、極々少数。というか帝国人でゲルマンの神々を崇める”エッダ教”以外の宗教を知る者の方が少数派だ。

 

まあ、”エッダ教”自体も実はキリスト教をベースに『オーディンを主神としたゲルマンの神々で多神教化』した宗教であり、実はちゃんと宗教として成立したのは帝国建国後、人類史に数多存在した宗教と同じく民心をまとめるための方便として考案され、言うならば国策として生まれた”国教”だった。

要するに人類史全体から見れば、ベースとなった神話は古くとも宗教としては新興もいいところだ。

13日戦争~90年戦争前の世界、中世から近世にかけてキリスト教が多くの土着の多神教を駆逐して世界宗教になった経緯を考えると、『宗教が全般的に廃れた遥か未来、宇宙時代に甦ったキリスト教っぽい多神教』というのは、なんとも歴史の皮肉を感じる。

 

そんな訳でまだ誕生してから400年少々しか経ってない、『なんとなくゲルマンっぽい西洋風宗教』だけあって純粋に宗教として考えると、まだまだ未熟というか未完成な部分も多い。

例えば、教義や戒律なんていうのはベースから比べると割と……というか、かなり『ゆるふわ』な感じだ。

ただ、面白いことに”政教分離の原則”は非常に厳格に設定されている。まあ、「国政の道具」として設定したのに、ガチの中世期のように王侯貴族より教会の方が権威や権力を持ったりしたら本末転倒なので、その辺は当たり前と言えば当たり前なのかもしれない。

西暦313年の”ミラノ勅令”以後のローマ帝国の顛末も歴史的事実として残っていたし、皇帝家にしてみれば『カノッサの屈辱』的な展開など御免こうむるのであろう。

 

なので銀河帝国においてエッダ教ないしその教会の勢力は、権威も権力もかなり限定的だ。皇帝を超える権威や貴族を超える権力など、帝国には不要どころか害悪でしかないということだ。

どちらかと言えば、国家体制がある程度強固になった今となっては緩めの民間信仰の受皿、つまり民衆の日常の不安面に対する精神的受皿であり、また冠婚葬祭などの催事を行う場所という認識が一般的だろう。

 

 

 

「つまり、エッダ教会で帝国式……というかW(西洋)式でやるのは決定したけど、参列者の選定に困ってると?」

 

結局、ヤンが”カミュXO”のボトルをぶら下げて、結婚や妻帯歴でも先輩のキャゼルヌ家を訪問したのは、どうやらそういう理由だった。

まあ、新版によれば『コニャック三杯で帝国軍から鹵獲した巡航艦と、帝国軍の軍服40着を用立ててくれる』先輩らしいので、そのあたりに隙はない。

 

「はい。ミューゼルさん家はすぐは問題無いらしいですが、私の場合は同盟に親族居ないし……」

 

「まあ、それはそうか」

 

キャゼルヌは少し考えてから、

 

「とりあえず、友人一同……まあ、お前さんの場合は結構士官学校の付き合いに限定されるな? ミューゼルは身内にだろうし……俺やラップ、ワイドボーン、アッテンボローやフォークはその関係者も当然だろうな。俺とオルタンスの結婚式も出たろ? あと仕事でつるむ事が多いやつとか」

 

「ええ、まあ。なら、バグダッシュもかな?」

 

どうやら、まだ使役関係というか主従関係というか腐れ縁というか……ともかく、形容しがたい縁はまだ切れてはいないようである。

まさに幸か不幸かであるが。

 

「それと世話になってる上司には必ず招待状を出しておけよ? 特にこれまで複数顔を合わせてる上司と、これから先仕事でそれなりに長い付き合いになるだろう上司、その関係者には絶対だ。来る来ないは別にして、礼儀の問題だからな」

 

「う~ん……そうするとシトレ校長、じゃくて大将とリンチ中将、バグダッシュに送り付けるならグリーンヒル少将(出世していた)に、ほぼ毎日顔を合わせていたヒラガ中将とかたまに一緒に飯(おご)ってもらってるロボス中将も……」

 

「待て待て待て待て待て待て」

 

たまらずキャゼルヌは再び人差し指で眉間を抑え、

 

「尉官や佐官より将官の方が付き合いが多いとか、お前の交友関係って一体全体どうなっているんだ?」

 

「さあ……成り行き?」

 

なぜか首を傾げるヤンの仕草は、なぜか妙に『人類が衰退してしまった世界(実は本当の意味での人間は、助手さん一人しかいなかった)』で新たな地球の主役とされてる謎生物っぽかった。

それはともかく、『成り行きでそんな状況になってたまるか!』というツッコミをどうにかキャゼルヌは抑え込んだが、『まあ、ヤンのやる事だしな』と割とひどめの答えで納得し、

 

「ああ、それとお前さんの後見人だか里親だかやってた人は忘れずに呼んでおけよ? 名前、なんて言ったっけ?」

 

「ヨシュアさん」

 

ヤンはどこか懐かしそうに微笑み、

 

”ヨシュア・()()()さんですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございました。

いよいよ出来ましたミンツ一族w
もちろん、ヨシュアさんはユリアン少年と繋がる血脈なんですが……まあ、原作では開始時に故人になっていた実父ではないです(^^
ヤンとユリアン君については、まあおいおいにってことで。

帝国の宗教に関しては、「ゲルマンの神々を崇めてる」って事と、「なんかゲルマンっぽい雰囲気を重視してるけど、プロイセンっぽくもあるからキリスト教テイストも入ってる」ので、この世界線では『キリスト教をベースにゲルマンの神々を崇める多神教化した』って感じの”エッダ教”と相成りました(^^
帝国発祥の割には、割とぬるいというか寛容な宗教っぽい?

そして、アレイスター・ハイネセンェ……なんか存外愉快なオッサンだった疑惑がw


追記
キャゼルヌ先輩の階級を少佐→中佐に修正しました(^^

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