金髪さんのいる同盟軍   作:ドロップ&キック

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なんか書きあがってしまったので、第2話目を投降。
「金髪さんのいない」を入れると本日3本目……書きすぎ?




第002話:”ヤン先輩とミューゼル後輩”

 

 

 

さて、ここは惑星”エル・ファシル”。

銀河の地獄の一丁目……

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「先輩、状況は?」

 

「良くはないね。リンチ少将が心当たり全てに連絡を入れているが……時間内に駆けつけてこれる場所に、適当な艦隊はなさそうだ」

 

「エル・ファシルの駐留艦隊だけで、なんとかするしかないということか……」

 

俺の名は、ラインハルト・ミューゼル。

自由惑星同盟軍の少尉、いわゆる士官学校でたての新米だ。

なぜか敵国……銀河帝国の皇帝になったという意味不明の記憶があるが、今はそれを深く考えてる場合じゃないだろう。

 

目の前にいるのはヤン・ウェンリー中尉。

士官学校時代からの先輩で、何かと気が付いたら世話になっていたりする。飄々としてるが、これで意外と面倒見がいい。

元々は戦史研究科にいたが、キャゼルヌ先輩とシトレ校長の陰謀(?)で戦略研究科に転科させられた過去がある。

ああ、俺がヤン先輩に出会ったのも、転科させられた直後だったと思う。

 

そう、フォークがパイロット科に転科したのもその頃だから間違いない。

フォークは秀才肌でなんでも卒なくこなすが、メンタル面が弱い。

またひょんなことから”()()”を知ってしまったから、俺が「ストレスまみれで人間関係ギスギスの参謀より、フォークに向いてる戦科がある」って薦めたんだ。

 

あれは我ながら良い判断だったな。

パイロット科に行ってから判明したことだが……フォークには、常人離れした高い空間認識能力があることがわかったんだ。

本人に聞けば『パイロットになるために生まれてきたような逸材』と教官に褒められたと喜んでたしな。

宇宙がフォークの心理面の安定を促すのか、”持病”も大分病状改善されたらしい。

ただし、最近は『今日も宇宙(そら)が蒼いなぁ……』と呟くことがある……少し心配だ。

 

 

 

まあ、そのフォークと俺、それとアッテンボローの同期三人は、それぞれ方向性は違うが、全員がヤン先輩の世話になっている。無論、世話になった先輩はヤン先輩だけじゃないが、俺は特にヤン先輩に何かと縁があった気がする。

今もこうしてエル・ファシルに同行してるわけで、縁は今も続いてると考えていいだろう。

 

なんとなく人事に影響がある人物……シトレ校長とかの意図を感じなくもないが、それは気にしても仕方ない。

 

ただし本人、遵法意識というか……ルールを()()()に甘く解釈する場合がある。

まあ、俺と違って融通が利くという言い方も出来るのだが……

後は私生活がアバウトすぎるのはどうにかした方がいいと個人的には思うぞ?

 

 

 

さて、ミス・グリーンヒルが去った後、俺と先輩は今後の展開を話し合っていた。

 

現状を端的に要約すれば、「マンハント目的の腐れ貴族艦隊がエル・ファシルに接近しつつある」ということだ。

マンハントとは文字通り”人狩り”、エル・ファシルの住人を帝国に連れ去り、男は農奴、女は性玩具として自ら使用する、あるいは転売するつもりだろう。

 

ロクなことをしない連中だが、それが貴族というものだ。

無理やり納得するなら”別の人生を生きた俺の記憶”も同じような主観をもっているようだ。

 

ただ問題なのは貴族子弟が金魚の糞のように引き連れてる艦隊が、エル・ファシル駐留艦隊より数的優勢ということだろう。

 

 

 

「総勢2500隻か……」

 

”もう一人の俺”の記憶によれば、別の展開があったようだが……

 

だが現状、エル・ファシルが陥ってる状況は極めてシンプルだった。

貴族艦隊は最初、1000隻程度で押しかけてきたが、防御陣形を敷きほぼ同数の艦で待ち構えていたリンチ少将率いるエル・ファシル防衛艦隊を見て交戦することなく後退した。

 

だが、彼らはそのままイゼルローンまで逃げ帰ったのではない。

どうやらよほど有力貴族の息子がいたらしく、イゼルローン要塞から同盟領方面に出ていた哨戒艦隊をかき集め、総勢2500隻の艦隊として逆襲を企てているのだ。

 

貴族は無駄にプライドが高く、面子を傷つけられたと解釈すると実に執念深い……

 

「リンチ少将の艦隊は約1000隻……さて、どうしたもんか」

 

そう頭をかく先輩だが……

 

「先輩が指揮すれば、このくらいの戦力差は引っくり返せるんじゃないのか?」

 

半ば確信を持った言葉が口から自然に出た。

 

「バカを言っちゃいけない。むしろ後輩、君のほうが勝てそうな気がするんだがね?」

 

まあ、俺に艦隊指揮を任せてもらえるなら、勝ってみせようじゃないか……って何を考えている?

 

 

 

「元気がいいな、坊主ども」

 

俺と先輩が話していると、のっしのっしという感じで一人の男が姿を現した。

付けた階級章は”少将”……エル・ファシルで少将といえばアーサー・リンチ少将だけだ。

 

俺と先輩は敬礼し、リンチ少将は返礼すると、

 

「堅苦しい話はなしだ。単刀直入に言う。ヤン中尉、ミューゼル少尉……民間人を連れて脱出できるか?」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「……少将、どういう意味です?」

 

最初に口を開いたのは先輩だった。

 

「言葉通りさ、中尉……俺は1000隻を引き連れ、討って出るつもりだ」

 

 

 

そう言い放つリンチ少将の表情……俺には覚悟を決めた”漢”の顔に見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




とりあえず2話目を投稿~。

実は水と油のフォークとアッテンボローを無自覚でつないでいたのがラインハルトだったというおかしな設定(^^

「記憶の融合」の前から、けっこう色々歴史を変えてるみたいです。
フォーク、パイロットになっちゃったし……




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