果たして、お嬢ニヒトはどこまではっちゃけられるか?
そして……
とある日曜の平和な午後、アンネローゼと共に午後のお茶を楽しもうとしていたヤンの元へ
その霹靂の主人の方、幼女(偽)の名は”ヨブ・トリューニヒト・
「それにしてもなんで
流石は帝国と違いサブカルが未だしぶとく息づく同盟の政治家、お嬢様はすぐにピンと来たようで……
「誰が男の娘よ? 生憎、出るべきとこは出てないけど、付いてもいないわよ。なんなら自分の目で確かめてみる?」
と、ぴらりとミニスカドレスの裾を盛大にたくし上げてみせるお嬢ニヒト。
真っ白なニーソにキャラ物のおぱんつという組み合わせをチョイスするあたり、中々”わかっている”と言えよう。
「いや、いいから! というか下着まで女児用じゃないか……本当に私より年上なのかい?」
目を逸らすかと思いきや、ガン見とは言わないが意外としっかり見ていたヤン・ウェンリー。
アンネローゼと一緒に過ごすうちに耐性だか免疫だかがついたのか、はたまた好奇心のなせる業か?
「安上がりでいいじゃない? いいこと? 私のサイズ……身長136cm/体重29.8kgでそれなりにエロい大人デザインの下着はないの。基本的にオーダーメイドよ。知らないと思うけど、下着のオーダーってけっこういい値段するのよ? 今はイレギュラー……というかノリでぱんつ見せびらかしてるけど、本来なら見せる予定はなかったわけだしね」
とようやくスカートの裾を手放し、
「見栄だの面子だの体裁だのってのも商売道具である以上一般人より面倒で、金をつぎ込まなくちゃいけない部分は多分にあるけど……政治家は税金で飯を食ってるんだから、下げられる経費は下げるべきだわ。見えない部分なんかは特にね」
「そりゃ、ごもっともだけどさ……」
「ああ、それでも流石に私も女だから勝負下着くらい持ってるわよ? って、なに? 会って間もなく勝負下着が必要になるようなシチュエーション、想像しちゃった?
「そんなわけあるかい。というか、そんなに若くはできてないよ」
「ふふん。枯れてるのは嫌いじゃないわよ?」
はぁ~っとヤンは深々とため息を突いた。
どうもおかしい、調子が狂わされっぱなしだと。
(会話の主導権が握れないのが、こんなに厳しいとはね……)
精神的には後退に次ぐ後退……できるなら、いっそ撤退戦に移りたいヤンだったが、敵は手強くそう簡単に逃がしてくれそうもない。
爛々と楽しげに輝く青空色の瞳を見てるだけでそう思ってしまう。
(空に吸い込まれそうっていうのは、こういう気分なのかな?)
どこか場違いな事を考えながら、
「ところで愛人がどうこう言ってたけど……そもそも、私はまだ結婚してないんだが?」
「そんなこと、知ってるわよ」
お嬢様は「何を当たり前な事を」と言いたげな表情をしながら、ヤンの隣に座るアンネローゼを見て、
「まさか、これだけの家に住んでて結婚資金がないってことは無いわよね? もしそうなら、出してあげるけど」
「いえ、そういうことじゃないですよ?」
「……いくら軍人の基本給が安いと言っても、そこまで金に困ってないよ」
さて、我らが自由惑星同盟なのだが……軍人は公務員であり、その給与は”公務員基本法”に準ずる物である。
何が言いたいかと言えば、いざ戦場に出る……いや、作戦に参加すればその立場に応じた危険手当は付くし、その他の手当/特別手当も公務員だけあって手厚いが、基本給は決して高いものではない。
まあ、それも階級に応じて(特に将官クラスの年俸は国全体で見てもかなりの高給)なのだが……ただ、基本的な衣食住は補償されるので、そこまで加味すればまあまあ悪くない給料と言えるだろう。
「ということは……ヤン、アナタのヘタれが原因ってこと?」
「失敬な。学生結婚なんて、成功例の方が少ないだろう?」
まあ、統計学的には正しい反論なのだが、
「アナタねぇ~。学生である前に軍人でしょうが? 実際、戦場に出たらいつあの世とやらに宅配されるかわからないんだから、軍大学なんて後方中の後方にいられるうちに結婚しときなさいって」
トリューニヒトも軽く正論で返す。
「大きなお世話だよ。まったく」
「大きなお世話ついでに聞くけど……アンネローゼ、アナタまさかまだ処女なんてことは……」
すると話を振られたアンネローゼはにっこり微笑み、
「ウェンリー様に来ていただいた初日の夜に、美味しくいただきましたわ♪」
「……私はいただかれたらしいよ?」
「そ、そう。アナタ達の力学的関係が良く理解できたわ」
(肉食はアンネローゼの方だったようね……)
とトリューニヒトは心の中で呟いた。
新進気鋭(自称)の政治系合法ロリをたじろかせるとは、やはりアンネローゼも只者ではないようだ。
まあ、ヤンを「可愛い赤ちゃん」と言ってのけるあたりから、常人じゃないことはわかっていたが。
☆☆☆
「私とアンネの関係を理解してくれたようで幸いだけど、それを踏まえた上で……いきなり愛人なんてどういう了見だい?」
「それは簡単よ♪ ワタシ、奥さんや妻や女房なんて呼ばれ方する生き物に進化できる要素ないもの。炊事/料理/洗濯に代表される家事全般は壊滅的、生活能力0査定。子育てなんて冗談じゃないわね」
「それに関しては大いに共感できるところだけど……」
思ったより自分と共通項があったことに軽く驚くヤン。
ふとアンネローゼと執事アイランズが生暖かい目をしていた。
ふと二人の視線が合う。そして合点がいった様に頷いた。
おそらくだが視線の意味は、
『世話のし甲斐のある
『仕え甲斐のある
という感じだろうか? 字は同じでも読み方が違うようだが。
支える側二人も妙な
「私が聞きたいのは、そういうことじゃないことくらい理解してるだろ?」
「そりゃね」
とお嬢様は小さく微笑み、
「それを語るには、ヤン……アナタの疑問、なんでワタシがわざわざ”ヨブ”なんて男の名を名乗ってるかを説明した方が手っ取り早いと思うわ。それもわざわざ”
「拝聴しようじゃないか」
少なからず好奇心を刺激されたヤンに、トリューニヒトはコホンと咳払いして、
「そもそも”ヨブ・トリューニヒト”っていうのは、同じく政治家だったお父様の名前よ。まあ……もうこの世にはいないけどね」
お嬢は、合法ロリと言う視点からならないすばでぃ(挨拶
うん。思ったより真面目な内容(?)になってしまったことに、軽く驚いています(^^
そして、アンネローゼ様強し!
これぞ正妻の貫禄?
あと、ヤンとお嬢ニヒトがなんとなく共通項多くて(頭脳派、私生活が壊滅的にズボラなどなど)気が合いそうな予感……