多分、リアルタイムで読んでる方ってほとんどいないだろなぁ~と。
さて、今回はちょっと”この世界における同盟軍”の内部事情的な話が出てきます。
どこぞの星のどこかの国と似てるような、そうでもないような?
「ちょ、ちょと中将閣下! 私、広報部! 報道員! 非戦闘部署!」
アオバ大尉、なんでもいいが何故に
まあ、その程度の反論、
「それがどうした? 大尉は大尉だろうが? オマケに経歴見てみりゃ士官学校卒じゃねーか」
ほらみろ。言わんこっちゃない。
それにしても、アオバ大尉は士官学校出てたのか? 意外だな。
ってことは先輩か……話には聞いたことないから、俺が入学したときにはもう卒業していたのだろう。
基本、士官学校は女生徒が少ないから目立ちやすいんだ。
コイツは自由惑星同盟の徴兵制度が影響している。
戦時国家だけあって、同盟も労働力不足を危惧する産業界の反対もありさほど大規模に行っているとは言えないが、基本的に成人男子には24ヶ月の兵役義務がある。
勿論、徴兵免除の方法もある。”宗教的徴兵拒否”や”良心的徴兵拒否”なんて概念は既に歴史用語になってる(俺もヤン先輩から学生時代に聞いてそんな物が過去にあったことを初めて知った)ため、基本的には「兵役で国家に貢献せぬなら対価を払え」とわかりやすい”兵役免除特別課税”が基本だ。
一人一律毎月1500ディナール(約15万円)の支払いを徴兵期間に相当する24ヶ月続ける(一括払いも可)ことになるが、例えば富裕層にとっては問題にもならないはした金だろう。
しかし、庶民に毎月1500ディナールは少し厳しい金額だろう。減額すらも一切なしだ。この兵役免除税は100%軍事費に転換されるのだから、軍も国も遠慮する理由がない。
そして、徴兵も免除税の支払いも拒否すれば、戦時国としては非常に重い罪になる”兵役逃れ”の罪となり、逮捕されればあっさりと処刑になる。
しかも軍法による銃殺ではなく、刑事法による処刑だ。
同盟の処刑は、ある意味合理的な分エグいぞ?
なんせ苦しまないで死ねる分、”
同盟の医療は、
国の言い分としては、「生きてるうちに市民に迷惑かけたのだから、死んだときくらい役に立て。それで帳尻つけてやる」なのだろう。
これが浸透しすぎてて、「移植用臓器が少なくなると処刑が増える」なんて都市伝説があるくらいだ。
おっと、話がずれたな。
徴兵免除には支払うコストが高いし、かと言って徴兵逃れは内臓抜かれての死亡ルート一直線……どうせ軍隊行きが拒否できないのなら、鉄砲玉扱いの下っ端兵より、どうせなら給与も待遇もいい士官で軍隊生活を送りたい。
なんとも生臭い話だが、士官学校を受験する未成年者の志望動機の本音は、こんなものも多いのも事実。
なら、兵役の義務がない婦女子の士官学校入学志願者は元々少ない。
それに意識高い”国防女子(最近、こういう言葉があるらしい)”だとしても、何も倍率激高な士官学校に入学しなくとも、士官になりたいだけなら他にも手はいくらでもある。
例えば、人材の育成と確保のために軍が経営する各種軍専門学校、いわゆる”専門
具体例をあげると、ドールトン少尉が卒業した”軍航海士専門学校”だ。他にも軍計理士学校、軍看護士学校、軍調理士学校など軽く20校以上ある。
共通してるのは、”短期士官養成教育課程”がカリキュラムに組み込まれていること、士官学校と同じく学費無料どころか少ないとは言え在学中も給与支払いがあること、卒業できればそれぞれの学校に応じた国家資格が取れること、そして卒業と同時に”准尉”という、少尉より一つの下の階級が与えられることだ。
ちなみに准尉ってのは一兵卒が普通に上がれる最上位(下士官の一番上)とされてる軍隊もあったようだが、同盟においては”短期士官養成教育修了者に与えられる士官に準ずる階級(准士官)”と認識されている。
全体的にお得感が強いな。蛇足ながら”短期士官養成教育課程”は軍学校だけでなく、一部の大学や専門学校にも常設されている。
逆にデメリットは服役期間が一般徴兵の倍の48ヶ月と長いこと(それでも士官学校出身者の60ヶ月より短い)、士官学校出身(正規士官教育修了者)の少尉には必ずある万歳昇進(正規任官より1年後に生存してれば無条件に中尉へ昇進する)がないことなどだ。
強いて言うなら、退役し予備役に編入されても即応士官(予備役招集がかかった際に最優先に再招集/現役復帰される者)扱いされる期間が正規士官並の長さとかもか?
とにもかくにも、軍隊に入って士官扱いの飯と給与をゲットしたいなら楽な方法は他にあるのだ。
なので難関な上にそれなりに厳しい士官学校の女性割合は平均して毎年1割弱、同盟軍全体での女性の割合が3割超であることを考えれば、どれだけ少数派かわかると思う。
(アオバ大尉に積極的に士官学校を目指す理由があったとは考えにくいんだが……)
結局はそれも俺の主観なんだが。
「だーかーらー! 私の専門はメディア戦略でありまして!!」
「誰にだって初めてはあるし、何事も経験だろーが?」
はぁ……仕方ない。
これ以上、口論を続けさせても時間の無駄だ。
というよりロック親父、最早イジりにかかってるし。
「アオバ大尉」
俺は大尉の小さな肩に手をポンと置き、
「ミューゼル君?」
「諦めろ。人材不足はどうにもならん」
俺も諦めた。
「で、でも……」
「俺は別に大尉が副長で不満はない」
少なくとも、”あっちの世界”でノルデンとかいう俗物を押し付けられたときよりは遥かに状況はいい。
「ミューゼル君!?」
なぜ、そんな驚いた顔をする?
「大尉は俺が上官じゃ不満か?」
「あやっ……ひどいよ。それ殺し文句だ」
? 何を言ってる?
「クックックッ……ミューゼル、お前随分と上手く言葉転がせるようになったじゃねえか?」
なんのことだ?
「アオバ、どうやらミューゼルはお前を御所望みたいだぜ?」
「中将閣下!!」
別に所望というわけじゃないんだが……まあ、いいか。
「ここで応えなきゃ女が廃るってな。しかも、いかにもお前好みの年下……」
「わーわーわー!!」
だからいきなり騒ぐな。
「んで、どうすんだよ?」
「ううっ……わかりましたよぉ。謹んで”イナズマ”の副長の座、お受けいたします。でも、どうなっても知りませんからね?」
ふん。それこそ杞憂だ。
「アオバ大尉、俺がそんなヘマを許すと思うか?」
「ミューゼル君……その、お手柔らかにね?」
なるほど。上目遣いが悪くないな。こういうのを可愛いというのか?
「結構結構。ミューゼル、せいぜいこき使ってやれ」
「はっ!」
俺は敬礼で返すが、
「あーそれと、俺はプライベートには口は出さん。休憩中、ナニをどこでしようがな」
「閣下!!」
ニヤニヤ笑う中将と顔を真っ赤にする大尉……よくわからんが、とりあえず話はまとまったんだろう。
とにもかくにも、次の辞令が届くまでは俺はアオバ大尉と共に宇宙を駆ける事になる。
正直言えば……俺は確かに鼓動が高くなるのを感じていた。
同盟上層部:「兵隊なりたくないなら出すもの出してもらおうか?」
うん。トラバース法よりは平和的?(^^
良くも悪くも同盟は戦時国家ということですねぇ~。
そして無自覚にフラグおっ立ててるミューゼル君の明日はどっちだ?