しかし、何故かギャグ多めに……
自由惑星同盟首都惑星”ハイネセン”周辺宙域
「まさかこうも早く再会できるとは思わなかったよ」
ヴァンフリート星系行き特別編成護衛船団……16隻の護衛艦と10隻の軍正規輸送艦という十分に護衛に気を使った編成の、いかにも大事な積み荷を運んでいそうな船団の旗艦、巡航艦”バーミンガム”のブリッジにて、ヤン・ウェンリー
だが、ブリッジに集結した級友×2と後輩×2は……
「「「「ヤンが(ヤン先輩が)帯銃してるっ!?」」」」
確かにヤンは腰にホルスターを下げて、その中に本来なら女性が護身用に持つような小型軽量が売りのコンパクト・ハンドガンタイプのブラスターを突っ込んでいた。
蛇足ながら、自由惑星同盟軍の服務規程的には個人携行武器に対して特に制限はない。例えば、ブラスターではなくこの時代では多分に趣味的な実体弾使用の火薬式拳銃を愛銃としてる者も少なくない。
むしろ、作戦行動中は武器の携行が義務付けられてるのだが……
「いや、そこはそんなに驚くところかい?」
ちょっと引き
「いや、だってお前……俺が知ってる限り、義務以上の射撃訓練はした事がなく、ついでに『重くて疲れるから』とか『どうせ撃っても当たらないから』とかってふざけた理由で服務規程無視。任務中だろうが何だろうが帯銃しようとしなかったお前が……なあ?」
と周囲に同意を求めるジャン・ロベール・ラップ
「ふむ。どうやらラインハルトの姉君と交際してるって話だからね。毎晩、ベッドの上でエクササイズしていたから、ヤンも少しは腰が鍛えられたんじゃないか? まあ、別にベッドの上とは限らないけど」
さらりと下ネタを混ぜ込むのは、船団付作戦参謀で複数いる恋人が全員年齢一桁(あるいは10歳以上年下)という噂があるマルコム・ワイドボーン
確かに同棲してる娘たちは皆、容姿が幼い。
ちなみにこのヤンの同期の桜二人、今回の作戦は『表向き
なので、この臨時船団の副司令&参謀就任にかこつけて「出世の前払い」で昇進していた。
同盟軍という組織は人材の弾力的運用……組織の硬直化を防ぐ為に人事の柔軟的運用を軽んじておらず、適当な大義名分があれば出世や配置転換は積極的に行なわれていた。
まあ、それはいいのだが……
「ちなみにボクはアウトドアも好きだゾッ☆」
キラッと擬音がつきそうな無駄に爽やかな顔でサムズアップするロリペド疑惑のあるケモ耳好きであった。
「それになんか制服着崩れてないし。先輩が真面目に服務規程守るなんて、一体どういう風の吹き回しですか……?」
と少し薄気味悪そうな顔をするのは、まだ少年の面影が残る伊達男に卵であるダスティン・アッテンボロー
この度、万歳昇進(士官学校卒業者は大過なく1年過ごせば、自動的に少尉から中尉に昇進する)の前払いという名分で中尉の階級章つけることになったようだ。
「まさか、いつの間にかすり替えられた
無論そんな訳はなく、制服がアイロンかけられて新品のようにぴっしりしてるのも、きっちり着こなしているのも主にアンネローゼのおかげ(内助の功とも言う)である。
ヤンの私生活の大半がアンネローゼに握られている証拠でもあるが。
「誰が
これまた蛇足だが、”物語シリーズ”をはじめ多くのラノベ作品群は英訳版が古典作品として宇宙時代にもしぶとく残っており、21世紀の日本に例えるなら小泉八雲の記した怪奇譚のような扱いになっているようだ。
例えば”物語シリーズ”はフィクションではあるが、人間が人間らしくたった一つの星の上で生きていた平和な時代をいきいきと描いた、『当時の大衆文化や生活がユーモアに記された、純文学と呼ぶのは微妙だが堅苦しくない娯楽古典小説』として、何度も映像化されるくらい人気が高い。
少なくとも古典好きなら一度は読んだことがあるだろう。
なんせ別に古典が好きでもないアッテンボローが現代同盟語訳版を読んでるくらいだし。
「あっ、この切り返しは本物だ」
「当たり前だろうに」
更に蛇足ながら、ヤンの好みはファイヤーシスターズなら”
見た目がロリっぽいからという訳ではなく、メリットを提示できれば存分に仕事を手伝ってもらえそうだから……らしい。
一番欲しい人材は、言うまでもなく羽川翼らしいが。
「ああ、
軽く現実逃避(?)してるのは、阿良々木家の長男とは声質が違うアンドリュー・フォーク
アッテンボローと同じく万歳昇進前払い組で、今回は3機編成の
ちなみに残りの二人のパイロットは士官学校を出てない下士官なので、幸か不幸か一番若いフォークが先任となる。
因みに護衛艦群の中で巡航艦は”バーミンガム”だけで残りは駆逐艦のため現状、船団のスパルタニアンは3機のみだ。
「あのね。私だって少しは成長してるんだ。多少なりとも同盟軍人として自覚的であろうと……」
「ないな」
「ないね」
「ないっしょ」
「ないです」
「それは流石にひどくないかい?」
地味に凹むヤンであった。
場を仕切り直すようにコホンと咳払いして、
「すみません。”フィッシャー”少佐。お騒がせしてしまって」
「いえいえ。お気になさらずに」
ヤンの一礼ににこやかに返してくるのは、”バーミンガム”の艦長であり、後に『艦隊運用の達人』や『人型航路図』として知られるようになるエドウィン・フィッシャーである。
「それに少なくともこの作戦中は、貴官の方が階級は上ですよ? ヤン
「いやぁ、恐縮です」
と困ったように頭を掻くヤンである。
今回の任務限定の臨時任官で中佐になったが、本来のヤンの階級は大尉。階級も年齢も、ついでに軍人としての風格もフィッシャーの方が上だ。
それにヤン本人は否定するが、東洋系の血が強く出てるせいか割と童顔なのだ。
もし、彼の所属が自由惑星同盟軍ではなく香港三合会あたりで、場所が巡航艦のブリッジでなくロアナプラのオフィスだったら、黒スーツとサングラス装着必須だったろう。
ついでに拳銃も火薬式に替えて、もう1丁追加しなくてはならない。
「フィッシャー少佐は本来、このバーミンガムの艦長だけど、今回の作戦では航宙参謀兼首席参謀として参加してもらうことになってるよ」
フィッシャーは小さいが奇麗な敬礼と共に、
「よろしくお願いします」
階級が上の者に先に敬礼され、慌てて返礼する級友と後輩。
まあ、敬礼なんて物が行動規範からスコンと抜け落ちてるようなヤンが最先任で船団司令官だというのだから、
私生活は除くとしても、別段ヤン・ウェンリーは同盟軍人として模範的ではないものの、決してだらしないという訳ではない。
ただ、ヤンは規律と言う物を意図的に緩く解釈しようとする傾向があるのは確かだ。
例えば、作戦中(戦闘中ではない)に私的空間で飲む好物の”ブランデー入り紅茶”の紅茶/ブランデー比が少々おかしく、どちらかと言えば”ブランデーの紅茶割り”と表記したくなる事がままあることとか。
☆☆☆
「ああっ、そうだ。もう一人紹介しないと」
ヤンは思い出したように大尉の階級章を付けた軍人の肩を叩き、
「バグダッシュ大尉さ。彼は軍大学の同級生でね、今回の作戦では情報参謀として参加してもらうことになったんだ。いやー、我ながら良い出会いに恵まれたもんだよ」
はっはっはっと快活に笑うヤンに対し、情報部からグリーンヒル直々に今回の作戦にレンタルされたバグダッシュは顔の筋肉の一部を引き攣らせながら敬礼し、
「”リョウ・マ・バグダッシュ”大尉です。よろしく」
と自己情報を絞ったシンプルな自己紹介に徹した。
どうでもいいが、バグダッシュのフルネームは地味に初登場だ。
何やら副業で”街の狩人”やってたり、別の世界線で合体ロボットチームのリーダーやってそうな名前な気がする。
射撃技能と身体能力は間違いなく同盟軍トップクラスだが、ケンシローやスグルという名が入ってないあたり格闘技能と筋肉量はそこまで高くないようだ。少なくとも人街領域や超人ではないだろう。
だが、その疲労を表皮の裏側に隠したような微妙過ぎる表情から、ヤンと相応の付き合いのある面々は何かを察したのか同情的な視線をバグダッシュに一斉照射したという。
☆☆☆
「さて、こうして一応は護衛船団、護衛艦群の首脳部が揃ったんだ。ただ同窓会をやるというのも芸がないな」
そう切り出しながら、ヤンは作戦の趣旨と全容を伝え始めた。
最初は興味津々で聞いていた面子だったが、話が進むにつれだんだん呆れたような表情になり、最後は頭痛を抑えるようなしぐさでラップは、
「ヤン、それは作戦とか戦術プランというより、むしろペテンの類じゃないのか?」
「実にその通りだよ。ラップ、今回の作戦の肝は、いかにイゼルローン要塞に引きこもる帝国艦隊を騙して誘って引っ張り出すかなのさ」
その笑みは、ラップもワイドボーンもアッテンボローもフォークも誰も知らないヤンの顔……
「さあ、
読んでいただきありがとうございました。
久しぶりにン・ファミリー予備軍(?)の同期×2+後輩×2が登場です(^^
ラップは平常運転っぽいですが、特にワイドボーンとアッテンボローが絶好調(笑
アムr……もとい。フォークがなんか悪化してる?
ちなみにサブタイの謎ワード「維新」は、物語シリーズの”西尾維新”先生と、ブラック・ラグーンの頼れるアニキ”張維新”だったりします。
なんかこのあたりの作品、この世界線の自由惑星同盟には、完全にかどうかは不明ながら残っているみたいですよ?
そしてゴッドバレーは中の人ネタですね~。