狙ったわけじゃないですが、夏も近づく八十八夜の直前に88話の投稿です♪
なんか、米的な意味で縁起が良さげな、末広がりのゾロ目で好きな数。
ただし、内容は……冒頭からちょっと昼飯時には似合わないというか(どちらかと言えば、深夜アップ向け?
特にカレー食べながら読んでる方には要注意(ヲイ
とりあえず、アンネローゼ様が最初からかっ飛ばします。
「ただいま、私の可愛いアンネローゼ」
「お帰りなさい♪ わたしの愛しいウェンリー様!」
自由惑星同盟首都惑星ハイネセン、中心都市ハイネセン・ポリスの片隅でヤンとアンネローゼは抱き合い、公衆の面前……というより報道が全国ネットしてるというのに委細承知の上、あるいはまったく気にすることなく何度となく唇を重ねるのだった……
特に詳しく書くことではないが……久しぶりというほどではないが、とにかくしばらく会えなかった二人の距離と時間を埋めるようにその日の夜、ついつい燃えあが~れ♪ 萌えあが~れ♪と愛がBURN-UPしてしまったようだ。
具体的には、上で1回、前で3回、そして……
『だってウェンリー様に全部もらって欲しかったんだもの♪ これも女心よね?』
とアンネローゼの
腸内洗浄液を事前に用意していたり、前準備段階の注入作業からヤンにおねだりしたり、わざわざ「アンネの恥ずかしいところ、見ててくださいませ♪」と嬉々として放水やら排出やら見せびらかすあたり、この女確信犯である。
というかどんなに見た目が可憐でもアンネローゼの本質は肉食獣(実の弟は黄金獅子ってぐらいだし)であり、ヤンは見たまんま草食獣である以上、喰う喰われるの関係は当面変わりそうもない。
ちなみに、ライオンで狩りをするのは主に雌である。
追記しておくと……少なくてもヤンがそばにいる間、アンネローゼは便秘とは無縁の生活を送れるようになったらしい。
深くは追及しないが……かっ飛ばすなぁ姉上!
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
さて、素材であるヤンとドック機能を保有してるアンネローゼが、同盟ミューゼル家第二世代艦ないし同盟
『ヤン・ウェンリーを
と叫んでカードをかざしたかは知らないが、ヤン・ウェンリーは同盟軍の
(まあ、これも作戦の内、俸給の範囲内だよねぇ)
と別に嫌な顔もせずに迎えに来た黒塗りの高級地上車の後部座席に乗り込むヤン。
言うまでもなく
とりあえず帰ってきて即座に吊るされなかった分、原作で『精神的リンチ』と謳われた査問会議よりは100億倍は紳士的だろう。
さて、いざ軍法廷ではなくその一段階前の査問会議室に足を運ぶと……
「待っていたぞ? 若いの」
議長席に陣取っていたのは……
(んげげっ!……”ラザール・ロボス”中将閣下かぁ)
ラザール・ロボス、自分の恩師であるシドニー・シトレ大将の若い頃からライバルと目されており、一足先にシトレが大将に昇進してしまった為、どう考えてもシトレ派に属されてると思われてると自覚してるヤンとしては、今もっとも会いたくない人物の一人だった。
「では、査問会を始めよう」
そして、ロボスの朗々とした声で、今回の作戦の問題点が読み上げられてゆく。
簡単にまとめると、
・ヴァンフリート4=2への有人基地設営に失敗
・その失敗をよりによって敵の前で告げたこと
・敵に対して敗北宣言をしてしまったこと
特に『敵である銀河帝国の貴族に作戦内容について口を滑らし、作戦の失敗と敗北を肯定した』ことを激しく詰問、叱責され……特にロボスが激しく追及してるように
そう、”見えた”だ。
(完璧に茶番だよね。これは……)
実はヤン、車に乗り込んだ後に端末を渡され、確認するように促されていた。
そして、そこに描かれた内容はまさに今、査問会で言及されてる”台本”だったのだ。
「……以上だ。何か反論、あるいは申し開きはあるかね?」
「いいえ。ありません」
(まあ、楽でいいけどさ)
ヤンに与えられたセリフはこれだけだった。
「ふむ。信賞必罰は組織の根幹。我々は君の起こした問題行動に対し、何らかのペナルティを与えねばならん」
「はい」
(ロボス閣下……大根役者とは言いませんが、目が笑ってますよ?)
『ちょっと面白くなってきたのかな?』と思いつつヤンが呆れていると、
「ただ、君の今回の船団指揮は評価すべき点も多々ある。そこを差し引き、1階級降格処分とする」
(まあ、妥当なところだね。中尉に逆戻りっていうのは、複雑と言えば複雑だけど)
とはいえ、ヤン自身は出世にさほどこだわりはない。
ただ、給料が下がるのをなんとアンネローゼに伝えるべきか悩むくらいだ。
何やらその心情は、『部署変更で給料が下がったことを妻に伝える事を悩むサラリーマン』に似てなくもない。
無論、アンネローゼのことだからヤンの給料が下がろうと降格されようと、あるいは軍から放逐されようとも気にもとめないだろうが。
アシュリー? きっとヤンが軍から放り出されたら満面の笑顔でジャンピング肩叩きをして、政界へと誘う事だろう。
「残念だがヤン・ウェンリー
「ちょ、ちょっとお待ちください、ロボス閣下」
「なんだね?」
「小官の記憶が正しければ、小官は臨時任官で今回の作戦限定で”中佐という
「それは君の記憶違いだ」
「ちょっ!?」
あまりと言えばあまりの強弁に、思わず珍妙な声を上げてしまう我らがヤン・ウェンリー。
ロボスはその表情に満足したのか、
「ヤン・ウェンリーは”中佐から少佐から降格処分となった”。これが軍の出した結論だ。良いね?」
「は、はい……」
実際には、『降格に見せかけた昇進』……やはりと言うべきか? ラザール・ロボスも長い間、軍という権力機構の中核に居ただけあってただ者ではなかった。
つまり、海千山千の……
(食えない妖怪タヌキ
思わず声に出さずに毒づくヤンであった。
☆☆☆
ヤンが軍の中央施設から出ると同時に黒塗りではないが、2ドア・クーペタイプの高級地上車がすぅーっと横付けしてきた。
(アストンマーチンDB5のレプリカ? 色はガンメタリック・シルバー。どちらかと言うと、ボンドカーっぽいけど……誰だ?)
自由惑星同盟での地上車の流行は、ここ数十年の間”ネオ・クラシック”とか”レトロ・フューチャー”と呼ばれる20世紀から21世紀にかけての……2039年に勃発した13日戦争前のカーデザインを現代風にアレンジしたものだ。
その中でも”オールド・リアリティ”と呼ばれるジャンルは、モディファイを最低限にとどめ、外観を可能な限りオリジナルに近づけるように仕上げた物で、その最高峰の一つが外観どころか『レシプロ式内燃機関』まで再現したリンチの愛車、惑星オールドタイマー製のコブラ427SCiレプリカだろう。
芸能や文学風習まで含めて古典文化に興味津々のヤンが、核で世界と人類が滅びかける前の時代、『世界でもっとも有名だったスパイ映画シリーズ』を知らないわけなかった。
「ヤン
顔を出したのは、007ことジェームズ・ボンドではなく別の意味でまたしてもタヌキ親父……いやいや、
「耳が早いですね? ”グリーンヒル”准将閣下」
喰えない男の代表格のようなドワイト・グリーンヒルだった。
「乗りたまえ。家まで送ろう」
「……では、ありがたく」
声色はあくまで普通である。
だが、そこには『抗いがたい”圧”があった』と後にヤンは語ったという。
世界において、接点というものがある。
また、分岐という物も。
それは普通、目に見えるものではない。
だが、確かにそれは存在する。
なぜなら、こうして物語は新しいステージに”繋がって”しまったのだから……
読んでいただきありがとうございました。
いや~、お気に入りの大量解除と評価のだだ下がりが怖い内容でした(^^
あっ、一応これでも気にしてるんですよ?
「だったら書くな」と言われそうですが、それでも迸る熱いパトスとエロスは止められない!(キリッ
まあ、微EROの次は、出てきましたね本格的には初登場のボス狸(笑
こいつはこいつで英国風狸と違う意味で、煮ても焼いても食えなさそうです。
妙にハイテンションになってしまいましたが、やたら日常パートの多い新章もよろしくお願いします<(_ _)>