今回は、ちょっと解説会っぽい話かな?と。
ちょっと原作に出てこない技術やら価値観やらがありますので、ちょっとまとめておこうかな~と。
またしても地味で退屈な話かもしれませんが、楽しんでもらえたら嬉しいです♪
自由惑星同盟軍大学、ハイネセン地上キャンパス、技術開発研究部艦艇科、フルダイブVR-CADルーム
『”ヤン坊”、
”思考加速”というのは読んで字のごとく『VR空間上で、脳を強制的に活性化させて体感時間を引き伸ばして
その起源は古く、実は西暦2038年の13日戦争直前の時代のフルダイブ型VR-MMOに、初歩的なそれが実装されていたという逸話が残っている。
ただ、それは言い方を変えれば『1秒を1分と感じられるように脳の時間認識を
まあ、軍人は必ず最高ランクの
まあ、正確にはメディカル・ナノ・インプラントだけでなく、ナノマシーン注入型の汎用接触/非接触接続量子インターフェースである”ナノ・インタラクティブ・クォンタム・インターフェース(N.I.Q.I)”なんかも積極的に利用されている。
まあ、”
実はこれもやたらと複雑な機材/機器をを扱う軍人なら注入必須なのだが、医療用ナノマシーンと同様に情報処理用ナノマシーン一般にもありふれたもので、特にフルダイブ系ゲームユーザーには必至だろう。
何しろ仮想空間への感覚移行/同調に必ず必要になるからだ。要するに、21世紀日本でヘッドギアやゴーグルなどで表現されてるそれを、人体内蔵式にしただけと考えていい。
「それじゃあ……12倍加速で休憩をはさみ計2時間(体感で24時間相当)ほど。脳性疲労解消で一旦、タンクベッドで強制睡眠かな? ところで”デルフ”、その”ヤン坊”っていうのはなんだい? 何やら無性に天気予報とかしたくなるんだけど……」
『おかしいな……
「小坊主って。童顔なのは確かに認めるけど、これでも私は二十歳を越えてるんだけどね?」
『阿呆。二十歳なんて俺っちに言わせれば、まだオシメが取れたばっかだっつーの。いっぱしの大人扱いされてーなら、せめて五十歳は越えてこい』
「そんな無茶な」
『無茶なもんかよ。今の人間は90年ぐらいは生きるんだろ? 人生の半分近くを大人扱いされりゃ十分だろーが。この時代、何をもって大人とするのか難しいけどよ、俺っちの見たてじゃどいつもこいつも歳を食っても大人ってのになりきれねー奴ばっかにみえけっけどな。ウケケ』
まあ、ちょっとだけ解説を。
基本、自由惑星同盟には”年齢制限”というものはそれぞれに設定されていても、21世紀の日本では当たり前である”成人”という概念は『同盟法』には存在しない。
これは同盟だからという訳ではなく、銀河帝国もそうだし、そもそも銀河連邦時代からそんな感じだ。
『特定の年齢になったら大人とみなす』、わかりやすい例を出せば飲酒・喫煙の許可年齢等というものが無い。
そもそも、こういう概念は国家や民族などで『価値観の住み分け』できていた時代の産物であり、それを可能としていた旧来型のコミュニティは13日戦争~90年戦争で完全に滅んだ。
当然である。90年戦争の直後の人類の状況を端的に言えば、『勝者も敗者もなく、生者と死者しかいなかった』だ。
国家も民族も、そして最低限の社会すらあったものじゃなかった。老若男女もなかった。ただ生き残るために戦い、そこには老人も子供もなかった。
戦争自体は、一応西暦2129年に地球統一政府の樹立と同時に終戦したことになっているが……実際には、国家連合どころか国家すらもどの勢力も維持できておらず、むしろ人類が存続してること自体が奇跡的だった。
皆さんは、”PSYCHO-PASS”というアニメ作品をご存じだろうか?
あるいは、”アップルシード”でもいい。
人類史未曽有の巨大戦争……徹底的な破壊と殺戮の後、残ったのは上記の2作品よりも凄惨な状況だった。生存人口10億人以下……ぶっちゃけ『北斗の拳』より少しはマシってぐらいだったようだ。
文字通り”人類は衰退しました”状態で、近代的な都市が再興されるまで実に終戦から2世紀以上かかった。
そんな中で国家や文化圏の違いなどで年齢がまちまちだった『年齢による成人という線引き』は、廃れたというよりその大本がなくなってしまった為に維持不可能となったのだ。
銀河連邦時代でも結局はその価値観は廃れたまま放置(ごく一部にローカル的な因習としては残ってたらしいが、公的制度としては存在しなかった)され、それを受け継いだ同盟では”年齢制限”が『それに必要と判断されれば設定される』だけであり『何歳で成人(何歳で大人)』という概念は薄く、平たく言えば年齢という要素は『考慮はされてもさほど重視はされない』空気がある。
例えば、同盟法に婚姻に関する規定はあっても年齢性別に関する事項はなく、また飲酒喫煙に関しても特に年齢指定はない(無論、各自治政府で独自に設定している所も多いが、全く無い星も多い)。
また、同じ理由で少年法もない(法律に未成年という区分が存在しない)。基本、『犯した罪に対する対する法的刑罰の執行』であり、情状酌量の余地はあっても『年齢により罪の軽重が変わるのはおかしい。それでは年齢により同じ人間とはみなしてなく、法の公平性に反する』と解釈されるわけだ。
平たく言えば『5歳で殺そうが、85歳で殺そうが、殺したという
そもそも、同盟法以前の”同盟憲章”にさえ……
『自由と権利を尊び、その表裏である義務と責任を等しく重んじる』
という一文が記されている。これも意味的には、『自由と権利は保証するが、その裏には義務と責任が付きまとうのを忘れんじゃねえぞ?』となるあたり、21世紀の日本人の視点から見れば、かなりシビアな国策だろう。
無論、自由も権利も義務も責任も年齢は考慮されていない。それでも強いて子供時代と言えるのは、義務教育期間の9年と就学前の時間だけだろうか?
もっとも、義務教育というのは『良質な労働力を確保する為、国家が義務として課す最低限の教育』という認識だから、本当に子供かと問われれば微妙なところだ。
例えば、義務教育期間中の結婚に関しては特に制限があるわけではなく、また実際育児室や授乳室が福利厚生の一環として完備されてる学校もあるくらいだし、産休制度も年齢如何に関わらず整っている。
つまり現代日本で言えば、確実に案件になるだろう小中学生相当の年齢で結婚/妊娠/出産を経験する女児は、多数ではない物の一定数存在するのだ。
また、医療用ナノマシーンに限らず医療技術の進歩で高齢出産だけでなく、低年齢/超低年齢出産(驚くべきことに……かなりの
また、母体が危険と判断された場合は、人工子宮の使用許可も下りるそうな……
☆☆☆
『んじゃあ、どっから行くよ?』
「とりあえず、現在の標準戦艦の基礎データ全てと、現在存在している、あるいは計画中のバリエーションモデルの一覧からかな?」
『あいよ』
フルダイブVRの醍醐味、物理空間では投影できないほどの立体ディスプレイと3Dモデリングデータが浮かび上がり、
「さて、じゃあ早速始めようか。思考をどれだけ加速しようと時間は有限だからね」
読んでいただきありがとうございました。
いや~、今回は割と難産でした(^^
実は設定/説明回の方が、書くのに手間がかかる罠w
なんせ動きが無いですから、勢いで書けないですよね~。
読者の皆様が退屈しなければ良いですけど(汗
それにしても……四歳児が孕んで安全に出産できる同盟脅威の技術力w
実は現実世界でも、5歳7か月で出産したって出産最低年齢記録があるようですよ?