五月某日の昼間、此所は日本の某所に建てられ、広大な敷地が特徴的な和風の家、更識家。
その更識家にある、とある和室――とても広く、畳や襖等の和室に欠かせない物がありました。
西洋にない東洋の、日本の独特的な造りと、古来から続く日本としての特徴を汚す事なく、それを続ける意味でも、後世にも残す意味でも存在していました。
でも、そこは何もない訳ではありません。そこには三角、四角と言った色んな形をしている幾つもの積み木や、車の玩具、クマのぬいぐるみ等の人形がありました。
和室のイメージを崩し、西洋のイメージを取り入れる様な物ばかりでありますがそこは只の和室ではありませんでした――そこは子供の遊び部屋でもあったのです。
なのに部屋には誰もいませんでした。これでは玩具は何の意味もありませんね? ――――おや? 襖の外から誰かの声が聴こえました。
その声はどんどんと大きくなっていきますが和室の方へと近づいて行きました――そして、開きました。
その部屋の襖を開けたのは、一人の二十代前半の、外側に跳ねた空色の長い髪に、ルビーの様な紅い瞳が特徴的な女性でした。
白のブラウスを着て、下には水色のジーパンを穿いていました。
勿論、その人は、この部屋に来たのには理由があります――何故ならその女性は、いえ、その人は、ある赤ん坊を片手で抱き抱えていました。
その赤ん坊はまだ一歳にも満たないのか、髪の毛は少ししかありませんでした。
でも、瞳は黒ですがとても綺麗で穢れなく、水が含んでいるような頬が特徴的な赤ん坊でした。
しかし、顔立ちは抱き抱えてくれる女性に少し似ていました。
そんな赤ん坊に、女性は微笑ましそうに見ていました。何故なら、赤ん坊を抱き抱えている女性は、赤ん坊のお母さんだからです。
「ほら流夏、貴方の大好きな玩具があるお部屋に来たわよ?」
その女性は赤ん坊を流夏と呼びました。でもその赤ん坊は、女性を、お母さんをじっと見ていましたがお母さんが何を言ってるのか理解していません。
だってまだ赤ちゃんですから――お母さんが何を言ってるのかは判らないのです。
けど、お母さんはクスッと笑うと、襖を閉め、少し歩くと、その場で正座し、その赤ちゃんを畳の上に置く様に放しました。
「ファァァァ〜〜〜〜」
あらあら、赤ちゃんったら部屋にある玩具を見て嬉しそうに徐々に笑顔を浮かべ始めました。そうです――この赤ちゃんは玩具が大好きなのです。
でもそれは全ての赤ちゃんに共通する事――仕方ありませんね。そんな赤ちゃんにお母さんは「仕方ない子ね、流夏ったら」と嬉しそうに言ってました。
そして、その赤ちゃんの名は更識流夏(りゅうか)君――この家の当主でもありお父さんは更識楯無(旧姓は織斑、旧名は一夏)と、その妻でもありお母さんは更識刀奈の間に生まれた零歳五ヶ月の男の子です。
そして、流夏君は部屋にある玩具を見て喜びながら四つん這いで進み、玩具を遊び始めました。
そして、そんな流夏君を見たお母さん――刀奈さんは我が子を微笑ましそうに見ていました。
そして今日も、流夏君はご機嫌いいみたいですね。
「ウフフフフ!」
全三話予定ですが続けるかもしれません。