「あう〜〜」
ある日の正午、快晴の中、流夏君はお父さんの楯無さんと従者であり、流夏君を守る任務もある松岡さんと一緒に、ある場所へと向かっていたのです。
と言っても、楯無さんに抱っこされており、腕の中にいる流夏君は嬉しそうでした。
彼等が身につけている服は、休日の場合、いつもの普段着でした。彼等は今、休日を愉しもうとしていたのです。
今回、彼等が向かうのは、流夏君にとって、一番好きな場所——その場所は憩いの場であり、流夏君が唯一、広々と遊べる場所!
そうです! 彼等が向かうのは、おや? 流夏君はその場所に気づいたのか、破顔しました。
「ファァァ〜〜!」
流夏君は笑いながら、その場所を指差しました。そうです! その場所は公園です! その公園からは沢山の子供達の笑い声が聞こえますがとても広く、緑も多い場所でもあるからです!
流夏君はその場所を見て必死に手を伸ばす中、楯無さんと松岡さんは微笑ましそうに見ていました。三人が入り口に着くと、少し離れた場所では数人の女性——所謂、ママさんたちが話をしていた時に、誰かが楯無さん達に気づいたのです。
ねえ、あれって!
間違いないわ! 織斑さんよ!
きゃぁぁ! 嬉しいわ!
あれって流夏君じゃない!?
ほんとほんと、お父さんに似て可愛いわ〜〜
ママさん達はキャァキャァと嬉しそうに顔を真っ赤にする中、楯無さんは気づき、苦笑いしていました。因に彼等は、流夏君を見ています。
「ああ〜っ、まただ……」
「仕方ありません、当主様は世界的に有名なお方、このような庶民の憩いの場所にいることに嬉しいのですからね?」
松岡さんは流夏君を見ながら理由を話します。
流夏君は緑の芝生をテクテクと歩きながら笑っていました。風が気持ち良く、更には家の中にある庭よりも広い場所を自由に歩き回れるからです。
流夏君は辺りを歩き回った後、「パパ〜〜」と歩み寄ってきました。楯無さんは膝を突き、両手を横に伸ばすように広げると、流夏君はテクテクと歩み寄り、お父さんに抱きつきました。
お父さんの楯無さんが抱きしめ返すと、流夏君は『うふふ!』と笑っていました。
二番目で大好きなお父さんに抱きしめられて嬉しいのですよ! お母さんにはない強さと、抱っこしてくれる温もりも違うけど、甘えたくなるのです!
流夏君は笑う中、楯無さんは彼を抱きしめたまま立ち上がりました。流夏君は笑う中、松岡さんは微笑んでいました。その光景を、周りは微笑ましくも、小さな女の子達は、何故か流夏君を見て顔を真っ赤にしていました。
「うぁぁ〜〜」
流夏君はお父さんに笑う中、女の子達は突然、顔を真っ赤にしたままその場から離れ始めました。
突然のことでお母さん達は困惑し、自分達の娘さんを追いかけ始めました。
「う〜〜?」
流夏君は女の子達の様子に首を傾げていました。女の子達は恥ずかしがる中、松岡さんは苦笑いしていました。
ああ〜〜またやったな〜〜と思っていますが、流夏君は無意識のうちに、女の子達を惚れさせていたからです。
さっすが流夏君! 楯無さんと刀奈さんの子であって、二人の血を強く受け継いでいるからです。
松岡さんは流夏君は何も分からずキョロ、キョロと見渡していました。
「……!?」
刹那、松岡さんは目を細め、視線をある方へと向けました。表情は険しく、その表情は仕事を受け持つ意味で、暗部の顔をしていました。
楯無さんも気づくと、目を細めました。
「……どうした?」
「……近くに、嫌な視線を感じます」
「視線?」
楯無さんの言葉に松岡さんは頷くと、彼は口を開きました。
「この件は私に……当主様は平然とした顔で流夏様と戯れてください」
「……分かった——流夏」
楯無さんは微笑みながら流夏君を見ました。流夏君は「あう?」とキョトンとしていましたが、楯無さんは笑みを浮かべたまま、こう言いました。
「松岡さんは急用で暫くは離れるって、その間に、お父さんと遊ぼうな?」
「そうしてください、私は、トイレに行きますから——でかい方を」
松岡さんはそう言うと、楯無さんは松岡さんから離れ、流夏君を連れてその場を歩き去って行きました。
「う?」流夏君はキョトンとしていましたが、楯無さんは流夏君に微笑んだままでした。
「フフッ……さてと」
「あれが更識家の子供達のうちの一人、更識流夏か〜〜」
公園から離れた場所では全身汚い服をしたおっさんがいました。
おっさんはホームレスみたいに思えますが、流夏君を見て笑っていました。
理由は簡単、流夏君を誘拐しようと考えていたのです。
この男はギャンブルで多額の借金を抱え、酒癖も悪く、奥さんや子供にも逃げられたのです。
流夏君を誘拐しようとするのも多額の身代金を手に入れるためでした。
流夏君がこの公園に来る日もあらかじめ知っており、いつ来るか、いつ帰るのかも把握しているのです。
そんな、人間の屑が流夏君を見て笑う中、離れた場所では流夏君はパパの楯無さんと遊んでおり、無邪気その物でした。
赤ちゃんだから、そうなりますもんね? ですが、男は楯無さんを見て、少し困惑します。
「でも、どうすっかな〜〜いつも親父や他の奴らがいるから、目を離した隙はないしな〜〜」
おっさんは悩みました。流夏君の傍には常に楯無さんか松岡さん、他の従者が見ており、中々、離れる隙はないのです。
それもその筈です、そんなことをしたら親失格であり、従者失格なのです。楯無さんは父親として、従者は当主の大切な子を守るために、それを義務としているからです。
従者は更識流夏という、大切な当主の子を守るためですから。楯無さんは大切な我が子を守るためでもあるからです。
おっさんは何も知らず、なおかつ、流夏君をどうすれば誘拐出来るかで悩む中。
「流夏様を誘拐する考えをする屑が消えろ」
刹那、後ろから声が聴こえ、振り返ると、腹を強く殴られ、そのまま意識を失いそうになりました。
おっさんが最期に見た光景は、憎しみに満ちた、松岡さんの顔が見えたのでした。
「流夏、もうそろそろ帰るぞ〜〜」
「あう?」
あれから一時間半が経った頃、楯無さんはそう言いました。流夏君はキョトンとしていましたが、楯無さんは微笑みながら彼の頭をなでました。
流夏君は嬉しそうに笑いますが、気もちいい〜〜と思っているみたいです。楯無さんの手の温もりがいいみたいです。
楯無さんは笑う中、懐からバイブ音がしました。
楯無さんは流夏君を引き寄せながら懐に手を入れると、バイブ音の正体はスマホであり、彼はスマホを取り出すと、軽く捜査し、それを耳に当てました。
流夏君を見ながら笑っていますが内心、少し怒っていました。
『不審な視線の正体を突き止め、此方で始末しました』
「そうか、松岡、その何かは?」
『男ですが、警察に届けますか? 猥褻物陳列罪とかで』
「其方に任せる、どのくらいで戻る?」
『一時間経たないうちに戻ります』
「そうか、すまないな」
『従者としての仕事なので、流夏様は大切な存在でありますからね』
「……こっちはそろそろ帰る。刀奈や春奈を心配させたくないからな」
『そうして下さい——私は帰りに、何かを買いにいきますね」
「そこまでしなくても……」
『いえ、流夏様を不安にさせた為の償いです、では』
「あっ、ちょっ」
松岡さんは携帯を切りましたが、楯無さんは「ああ〜〜」と思っていますが、流夏君は「あう?」とキョトンとしていました。
楯無さんは流夏君に気づく中、微笑むと「帰るか」と言って、流夏君を抱っこしました。
「う〜〜?」
流夏君は首を傾げていましたが、楯無さんはそのまま、公園を出るように歩いて行きました。
女の子達は、まだ悶えていますが流夏君はそれに気づかないまま、一応、ご機嫌はいいみたいです。
「ウ〜〜〜!」
余談ですが、松岡さんは流夏君の為に、白いケータイを使った白い身体に紫色のラインがあり、背中に重たそうな装備を付けたバトルライダーを、春奈ちゃんには食パンの顔をしたヒーローを買ったそうです。
次回、お祭り編再開。
因に流夏君はバトルライダーが好きなのは、大抵、白い身体の悪役達です。