「ウァア〜〜」
「フフッ、春奈、パパとお兄ちゃんは別行動だから、暫くはママと一緒にいましょうね〜?」
「ウ〜〜?」
その頃、刀奈さんは春奈ちゃんと、五反田家の三人に鈴さんと彼女の息子であろう狼君とお祭りの中を歩いていました。出店の人が人を呼ぶ声、出店を見て回る人達とすれ違います。
賑やかであることに変わりは無く、彼女達はお客さんとして、出店を回っていました。刀奈さんは春奈ちゃんに笑っていますが春奈ちゃんはキョトンとしていました。
「うう〜〜」
「大丈夫ですよ弾さん、楯無さんは絶対にそんなことをしませんから」
「だけどよ〜〜」
一方で五反田夫妻は、落ち込む弾さんを虚さんが慰めるという光景がありました。弾さんは楯無さんの言葉に震えていたのです。
ですが、本当はそんなことをするつもりではなかったのです。弾さんは最初、インチキしようとしたのです。籤引きで自分達五反田家、更識家で回ろうとしたのです。
しかし、千冬さんに直ぐに見破られ、彼女からは『五反田兄、私を流夏と一緒にするようにしてくれ』と脅は……説得してきたのです。これには弾さんも何度も頷き了承したのです。
インチキすることはいけませんね? いえ、自業自得でしょうね。そんな事を刀奈さんは知りませんが楯無さんも知りません。彼は今頃何をしているのかも知らないのです。
「パパ〜」
あらあら、澪ちゃんが弾さんを慰めるように頭を撫でました。これには弾さんも「澪〜〜」と涙ながらに嬉しそうでした。
そんな家族のやり取りに刀奈さんは微笑んでいましたが春奈ちゃんを視ます。
「ウフフ〜〜」
あらあら、春奈ちゃんったら、お母さんを視て破顔してしまいました。甘えたいみたいです。
刀奈さんはそれに気付き笑っていますが笑った顔の愛娘を視ているからですね。
「相変わらずですね、一……言え、楯無に甘えられて、幸せそうで何よりです」
そんな刀奈さんに鈴さんが訊ねました。鈴さんの言葉に刀奈さんは振り返ると、彼女は笑みを浮かべていました。
安堵、その物を意味していましたが刀奈さんは微笑みました。
「ええ、彼は私のために良くしてくれたわ——流夏、春奈と言う大切な子供達もできた」
「そうですか……でも、私は嬉しいですよ?」
その言葉に刀奈さんは目を丸くしますが、鈴ちゃんは抱っこ紐で抱っこしている狼君を見ました。
「す〜〜う?」
あら? 狼君の目がぴくりとし、もぞもぞしました。
すると、狼君の翡翠色の瞳が微かに見えました! まだ眠たそうでしたが、鈴さんは微笑んでいました。
「私は失恋したけど、今は幸せです」
鈴さんはそう言っていましたが狼君の頭を撫でていました。そんな様子に周りの大人達は心配そうに見ていました。
そうです、鈴さんは楯無さんが好きでした。箒さんを含めた他の三人と一緒に楯無さんを狙っていました。
しかし、彼が選んだのは刀奈さんでした。五人は、簪さんは失恋しましたが、酷く落ち込んでいました。
それでも、前を向きました。鈴さんは結婚式では何もしなかったのも、諦めたのです。本当はやけ酒をI呷《あおり》たい程、暴れたかったのかもしれませんでした。
しかし、彼女はそれでも前を向きました。失恋したのならば仕方ない、新しい恋をしたいと。
その結果、幼なじみであり、現在の夫である御手洗 数馬さんと意気投合し、交際し、結婚し、狼君をもうけましたから。
「今は……数馬や狼がいるから、寂しくないわ……」
鈴さんは狼君の頬を優しく包むように掴みました。
「ニュ〜〜」
狼君は眠たそうに船を漕いでいますがママを見て嬉しそうでした。ママ〜と甘えたいみたいです。鈴さんは「フフッ」と笑っていますが確かに幸せそうでした。
失恋してしまいましたが彼女はもう、一人ではありませんでした。数馬さんや狼くんがいるのです。妻として、母としての幸せを得たからです。
鈴さんは笑みを浮かんでいますが刀奈さんと虚さん、弾さんは安堵していました。春奈ちゃんと澪ちゃんは何も分からないみたいですが、狼君は、不意に、ある人を見ました。
刀奈さん——いいえ、刀奈さんが抱っこ紐で抱っこしている春奈ちゃんです。春奈ちゃんは狼君を見ていましたが、初めて逢うのです。しかし、狼君は……。
「……フォォ!?」
あら? 狼君、春奈ちゃんの顔を見た途端、眠気が一気に吹っ飛んで、目をハートのようにしながら声を上げました。
その様子に鈴さんは「ろ、狼!?」と慌て、五反田夫婦と澪ちゃんは「?」とキョトンとし、刀奈さんもキョトンとしていました。
「う〜〜?」春奈ちゃんは狼君の様子に声を上げていましたがキョトンとしていました。赤ちゃんだからまだ分からないみたいです。
でもでも、狼君は四ヶ月とは思えない程、必死に手を伸ばしていました——春奈ちゃんにです。
その訳は、簡単です。狼君は春奈ちゃんに、惚れたからです。所謂、一目惚れでした!
柔らかい肌にお母さん譲りの水色の髪に赤い瞳は可愛らしく、成長すれば美しい少女になるからです。
狼君はそれに気づいたのかは、彼にしか分かりません。
彼の様子に、鈴ちゃん、虚さん、そして春奈ちゃんのお母さんである刀奈さんは気づいたのです。
「フフッ、春奈、狼君は恐らく、貴女にホの字よ?」
刀奈さんは春奈ちゃんにそう言うと、春奈ちゃんは「うにゅ?」と何も分からないみたいです。
狼君の様子にどんな反応するのかは、どんな印象を抱いているのかは、狼君のこれから次第でしょうね?
「う〜〜う〜〜!」
狼君は必死に手を伸ばしています。春奈ちゃんに対してです。
春奈ちゃんはキョトンとした顔で狼君を見ていますが、ある人を思い出します。
「うにゅ〜〜に〜〜」
春奈ちゃんは流夏君を思い出していたのです。にぃには〜〜? と考えているみたいです。
狼君よりも、流夏君を、お兄ちゃんを選んでいるのです。仕方ありませんよ? お兄ちゃん大好きっこだから。
狼君が必死に手を伸ばしているにも関わらず、春奈ちゃんは流夏君を探していました。
「……ぷ〜〜」
そんな春奈ちゃんに澪ちゃんは頬を膨らましました。狼君という(勘違い)男の子がいながらも、流夏君のことを考えている春奈ちゃんに嫉妬したのです。
それだけじゃありません。彼は千冬さんと一緒にいるのです。楯無さんや簪さん、箒さんとも一緒にいますが今頃、千冬さんに甘えられているかもしれないのです。
千冬さんは叔母ば……ごほん! 大切な甥っ子と一緒にいて、嬉しいのです。こうなったのもお父さんが原因ですが、流夏君は甘ているのかもしれない——刹那、澪ちゃんは。
「ぷ〜〜」
澪ちゃんは頬を膨らませてしまいました。流夏〜〜と可愛らしい怒りを覚えていたのです。千冬さんに甘えられている流夏、それを思い出すだけでも嫌な思いをしていたのです。
流夏は私の好きな人だよ〜〜と可愛らしい独占を考えていたのです。娘の様子に五反田夫婦は「澪?」と不思議そうに見ていました。
でもでも、澪ちゃんは(流夏〜〜覚えていろぉ〜〜)と考えていたのです。
「どうしたの澪?」
虚さんが訊ねても、澪ちゃんは流夏君のことを覚えているため、聞いていませんでした。
「クシュン!」
「なっ!? り、流夏、寒いのか!?」
その頃、別行動をしていた楯無さん、千冬さん、簪さん、箒さんと一緒にいて、千冬さんに抱っこされた流夏君の様子に千冬さんは慌てるのでした。
流夏君はくしゃみをしましたが、澪ちゃんが噂をしていることには分からないみたいでした。
千冬さんは慌てていましたが、流夏君は何も分からないままでした。
「う〜〜? にゅ〜〜?」
ともあれ、流夏君はさっきとは違い、ご機嫌は普通でした。