更識家の流夏君   作:NO!

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流夏君と春奈ちゃん、自分達はお昼寝している為、周りは何かをしているかには気づいていないみたいです。

 

 

 

 ある日の正午、更識家の寝室——そこには部屋を暗くして、小さな布団の上で仰向けに寝ている二人の赤ちゃんがいました、流夏君と春奈ちゃんであり、その横には二人を見守り、子守りの役目を与えられた従者、黒影さんがいました。

 松岡さんは別件で忙しいらしく、彼が変わりに子守りをしていました。因に更識夫婦はある件でちょっとした問題がある為、流夏君と春奈ちゃんの遊び部屋にいました。喧嘩ではありませんよ? まあ、今はお昼寝をしていました。

 

「……くず、ウグっ……」

 

 あら? 春奈ちゃんがくずっているみたいです。何かを訴えているようにもお思えますが黒影さんは春奈ちゃんの様子に気づき、近づき間に……あら? 流夏君は眠たそうな目をしながらも、春奈ちゃんに……。

 

 

「なぁな〜〜よ〜〜よ〜〜」

 

 流夏君は布団の上で仰向けになり、くずっている春奈ちゃんのお腹を優しく叩きます。ポン、ポンと小さな音がしている中、流夏君は春奈ちゃんをあやしていました。

 お兄ちゃんとしての役目と、お父さんからいつも、『妹だけは絶対に守るんだぞ? お父さんとお母さんや従者達が居ない時、春奈を守れるのは、流夏しかいないからな?』と言われていたからです。

 まだ幼い頃の流夏君から聞いても分からなかったのかもしれません——でもでも、今の彼はお父さんの楯無さんの言葉はしっかりと聞いていたのです。

 今の彼の行動は春奈ちゃんを気遣い、優しく声をかけているのです。その姿はお兄ちゃんとして、そして、その姿はお母さん、刀奈さんの言葉もありました。

 

『流夏、春奈をちゃんと守るのよ? それだけじゃなく、女の子には優しく、大切な人ができた時には手をあげず、守るのよ?』

 

 お母さんの言葉を流夏君は……思い出しているかどうかは分かりませんね? 流夏君は春奈ちゃんを守る為、お兄ちゃんとして落ち着かせているのです。

 流夏君は当たり前のことをしているのではなく、自分が出来ることをしているからです。楯無さんと刀奈さんの間に産まれた長男として、次期当主(?)としての役目を果たしているのです。

 そんな流夏君の行動に春奈ちゃんは流夏君のポン、ポンとした手が気持ちよかったのか、そのまま安心しきったかのように眉を寄せなくなると、

 

「……ス〜〜」

 

 あら? 春奈ちゃんったらお兄ちゃんの流夏君に甘えるように、お兄ちゃんの方を見るように身体の向きを変えました。

 それだけでなく、小さな両手を必死に伸ばしているみたいです。お兄ちゃんを求めているようにも思います。甘えたいようにも思えます。

 

「……な〜〜」

 

 妹のそんな行動に流夏君は流夏君は優しく手を取ると、春奈ちゃんと共に、そのまま目を閉じると、可愛らしい寝息を立てました。

 

 

「……」

 

 そんな様子を、黒影さんはじっと見ていましたが微笑むどころか、じっと見ていました。手助けしようと思っていましたが流夏君の行動で止め、そのまま見守っていたのです。ですが、ある人物を思い出していました。

 それは、黒影さんの妹である女性でした。彼に良く似ている中、とても優しく、母親のような慈愛に満ち溢れていたのです。暗部内でも有名で、人気があったのです。

 しかし、その妹は……重い病にかかっており、余命僅かでした。本来の彼女の仕事は流夏君と春奈ちゃんを刀奈さんと一緒に見る仕事でした。

 その妹の病は直すことも出来ず、更には気丈に振る舞っていたのです。ある日、黒影さんが訊ねたのです。どうして泣かないのか? とーーそしたら、

 

『お兄ちゃん……だって泣いたら、春奈様や流夏様が哀しむからよ?』

 

 妹さんの言葉は切なくも、悲しい物でした。死期を悟り、それでも二人の、当主とその奥様の子供達を可愛がっていました。

 その光景を、今でも忘れることはありませんでした。妹がすべきことを、兄である黒影さん自身が引き継いだのです。

 忍びの仕事もありながら、育児にも協力していたのです。妹さんが亡くなったのはそれから間もなくでした。多くの従者が泣き、楯無さんは辛そうに俯きながら、膝の上にいる流夏君を優しく抱きしめていました。

 刀奈さんは春奈ちゃんを抱っこしながら泣いていました。周りが泣く中、黒影さんは泣いていませんでした。いいえ、泣くのを我慢していたのです。

 妹の為にも生きる——暗部の仕事を引き受ける——そう決めていたのです。でも……今の彼は、何も言わず、両手を二人の兄妹の頭を、そっと撫でるように動かしていたのです。

 

「ム、ニュ……」

「ウ、ニュ……」

 

 二人の顔は寝ながらも笑みを零していました。その光景は可愛らしく、ほっこりします。その光景を見ているのは、黒影さん一人——独り占めしているようにも思える中、黒影さんは俯きます。

 にやけを止めているのでなく、頬がにへらとした訳でもありません。彼は寝ている二人には見せまいと、ある表情をしていたのです。その表情は無表情でありますが、悲しそうにも思えるのです。

 泣くのを我慢しているのです——妹の葬式でも泣かなかった彼は泣くのを我慢しているのです。理由は、従者として涙を流すのは不要——仲間を喪う時でも、誰かが亡くなった時でも涙を流さないようにしていたのです。

 黒影さんは何も言わず、二人の頭を撫でていた手をそっと離れさせると、そのまま風のように消えました。寝室にはお昼寝をしている流夏君と春奈ちゃんしかいませんが、黒影さんが傍で見守っている為、何の問題もありませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「刀奈〜〜このままじゃ、流夏が悪い奴になっちまうよ〜〜」

「大丈夫よ貴方——流夏と春奈は私達の大切な子供達だから、悪い人間にならないわよ? 貴方と私の血を強く受け継いでいるからね?」

「それでも心配なんだよ〜〜」

「(……悪役の玩具を集めただけで、流夏は悪い人になるとは限らないけど……まっ、この人の弱気な姿を見るだけでも、良いかしらねっ!)」

 

 その頃、楯無さんは正座した体勢で座りつつも、刀奈さんの膝の上に頭を乗せていました。理由は流夏君が悪役ばかりの玩具を集めている為に流夏君が悪い人間になるのではと危惧していたのです。

 そんな彼を、夫を妻である刀奈さんは微笑ましくも、愛しそうに見ていたのでした。彼は当主でありながら弱気になっていました。そんな様子を刀奈さんは微笑ましそうに見続ける中、母親ののように頭を撫でていたのでした。

 

「(……それに、貴方が気になるのも仕方ないけど、流夏が決めたことだから、別に良いかしらね?)」

 

 刀奈さんは、ふと、流夏君が集めた玩具を見渡します。流夏君が集めている玩具は皆、悪役ばかりなのです。白い身体に黄色い目のライダー、コブラを仕える紫のライダー、青い肉食恐竜と白い草食恐竜のロボット、電池を使う青い肉食系の恐竜ロボに、紺色のスーツを纏うレンジャー系の人、黒い身体に禍々しい赤いラインがある巨人。

 どれも流夏君が自分の目で見て集めた物ですが、悪役ばかりでした。流夏君が何故それらを集めたのかは分かりませんが、刀奈さんは夫の楯無さんを宥めることにしたのです。

 楯無さんは弱気になる中、刀奈さんは「よしよし」と慰め続けていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ〜〜これで良いかな?」

 

 その頃、千冬さんは、流夏君に対して、ある玩具を買おうと通販をしていました。パソコンの画面には、紫の草食恐竜と、白い大きな翼竜が同梱されている玩具でした。しかし、千冬さんは知らずのうちに(終盤まで敵)悪役の玩具をまた買っていたことを、知らないでいたのでした。

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