「びぇ〜〜ん!!」
ある日の正午、此処は更識家の縁側が見える和室。そこは今暗く、障子などで締めていました。しかし、松岡さんは今、大ピンチでした。理由は簡単、抱っこしている春奈ちゃんが泣いていたのです。
理由は、春奈ちゃんが近くにいるポチに手を伸ばしていたのです。ポチは寂しそうに見ていましたが、隣には敷き布団があり、春奈ちゃんが寝ていたのです。
松岡さんは春奈ちゃんを、彼女のお母さんである刀奈さんの所へと連れて行こうとしたら、泣き出したのです、今まではなかったのです——でも、理由はありました。
ポチと一緒にいる〜〜と。ポチはうるうるしており、松岡さんは困惑すると、ポチは「ワン!」と吠えました。
「どうしたポチ?」
松岡さんが訊ねると、ポチは胸を張りました。自分が春奈様を見る! と訴えていました。松岡さんは判らず困惑していました——春奈ちゃんは泣きじゃくる中、ポチは胸を張っていました。
松岡さんは春奈ちゃんとポチを交互に見ると、徐々に気づき、溜め息を吐くと、春奈ちゃんを敷布団の上に寝かせました——すると、泣くのをやめました。でもでも、近くにポチが俯せで座っており、春奈ちゃんを見ていました。
何にも思わない中、春奈ちゃんを見て軽く鳴きました。
「クゥン? (どうしたんだ春奈様?)
ポチが鳴くように訪ねると〜〜?
「うふふ〜〜」
あらあら、春奈ちゃんったらポチを見て涙が残りつつも、笑っていました。さっきまで、松岡さんに抱っこされても泣かなかったのに、部屋を出ようとした瞬間、泣いていたのにな〜〜?
今は赤ちゃんらしい可愛い笑顔を見せていました。松岡さんが嫌いではありません、春奈ちゃんはポチと居たかったのです。
ポチが近くに居るからのと、ポチが常日頃から傍で見守ってくれるから安心出来るのです。
ポチが傍にいる〜〜。春奈ちゃんは嬉しそうに指をしゃぶり始めました。赤ちゃんは皆そんな事をする訳じゃないけど、春奈ちゃんはする方でした。
春奈ちゃんはお兄ちゃんの流夏君だけでなく、ポチとクロもお兄ちゃんと思っているのです。ポチは春奈ちゃんの笑顔に顔を真っ赤にすると、にへら〜〜と頬を緩めました。
ああ、顔をペロペロしたい……! ポチはそう思っています——でも、出来ませんでした。理由は簡単、ばい菌が付いたら可愛らしい頬に傷をつけたら悪いのです。
ポチはそう感じてう〜〜と唸りますが悲しそうな顔をしているのです。春奈ちゃんは指をしゃぶりながらキョトンとしている中、襖から声が聴こえ、松岡さんが襖が開けました。
「ポチ〜〜春奈〜〜」
襖が開くと、てちてちと歩いてきた子が居ました。流夏君です。流夏君は春奈ちゃんとポチを見てニパッと笑いました。
春奈ちゃんは流夏君を見て「ふぁぁぁ〜〜」と声を上げて喜びました。ポチは慌てて平常な顔をします。流夏君は妹とポチを見て笑う中、てちてちとポチの方へと歩み寄ると、抱き着きました。
ポチは突然の事でビクッとする中、流夏君は嬉しそうに笑っていたのです。ポチは顔を真っ赤にする中、松岡さんは軽く揶揄いました。
「あらら? ポチちゃんどうしたの〜〜? 流夏様に抱き着かれて嬉しそうですね〜〜」
彼の言葉にポチはギロリと松岡さんを睨みます。松岡さんはポチの様子に「わっと!?」と驚きました。ポチは松岡さんに対して唸り声を上げ——ませんでした。
流夏君と春奈ちゃんを怖がらせる為に、しなかったのです。流夏君はポチに甘え、春奈ちゃんはポチに笑っていました。二人の兄妹はポチに可愛がられ、可愛がる関係の中、障子で遮られている縁側の方から、鳴き声がしました。
松岡さんがそれに気づき、流夏君はポチを抱きしめながら障子を見ると、こう呼びました。
「クロ〜〜」
流夏君がそう呼ぶと、障子の方から嬉しい鳴き声がしました。遊んで欲しい、構って欲しい、と訴えているようでした。そんな様子に松岡さんは苦笑いしつつも、障子に近づき、開けると〜〜そこには、口をハッ、ハッとしながら嬉しそうにパクパクしているクロが居ました。
クロは流夏君を見て笑う中、流夏君はテクテクと歩き出すと、窓を叩きました。クロと遊びたいみたいです。クロはにへら〜〜と笑うと、耳を羽のようにパタパタさせていました。
愛情表現のようでした。クロなりの流夏君への愛情と一緒に遊んで嬉しいのです。流夏君は『ふふふ!』と笑う中、松岡さんは微笑みました。
「う〜〜」
一方で春奈ちゃんは指を咥えたまま、ポチに笑いました。ポチは春奈ちゃんに、にへら〜〜と頬を緩めており、嬉しそうでした。春奈ちゃんとポチ、流夏君とクロ——其々の相手をしている中、流夏君が来た襖から、ある女性が部屋に脚を踏み入れました。
幼い兄妹の母親であり、当主の愛妻・刀奈さんでした。
「あらあら? 春奈と流夏ったら、ポチやクロと遊んで貰って嬉しそうね〜〜」
お母さんの言葉に春奈ちゃんと流夏君はお母さんに気づき、流夏君は「ママ〜〜」と嬉しそうにてちてちと駆けよりました。お母さんは春奈ちゃんの近くまで来て、屈むと、流夏君を受け止めるように抱きしめました。流夏君は甘えていました。
春奈ちゃんはキャッキャッと笑う中、刀奈さんは流夏君を抱きしめつつも、春奈ちゃんの頬を触りました。春奈ちゃんは頬を撫でられてくずったそうに笑っていました。
そんな光景を松岡さんと、ポチとクロは微笑ましそうに見ている中、刀奈さんはある事を言いました。
「流夏、春奈——それにポチにクロ、今日はお客さんが来るわよ?」
「あう?」
「ワン? (お客様ですか?)」
お母さんの言葉に流夏君とポチは気にしました。すると、クロは突然、ある匂いを嗅いで、目を見開くと耳をピコピコさせながら吠えだしつつ駆け出しました。
「ク、クロ!?」
「ワン!? (クロ、どこ行くんだ!?)」
松岡さんとクロは気にする中、松岡さんは縁側と庭を繋ぐガラス引き戸を開けると、ポチもその匂いに気づき、ゆっくりと歩き出し、庭に出ると駆け出しました。
庭の、特に玄関まで続く道近くでクロはある犬と戯れていました。その犬はドーベルマンでした。しかし、その犬はポチとクロにとって、かけがえの無い家族なのでした。
「ワンワン!(ヴェルニカ〜〜!)」
ポチはそのドーベルマンをヴェルニカと呼んでいました。そうです! 彼はヴェルニカ! ポチとクロの弟にして、フランスで生活していたのです!
そのヴェルニカの飼い主は、近くに居ました! 二十代前半の長い金髪に薄紫色の瞳が特徴的な女性でした。オレンジ色の女性スーツを着ており、手には、ある赤ん坊を抱き抱えていました。
その赤ちゃんは女の子であり、オレンジ色の赤ちゃん服を着ており、女性と良く似つつも紺碧色の瞳が特徴的な赤ちゃんです! 可愛らしくも、親指をしゃぶっていました。女性は微笑む中、ヴェルニカに行ったのです。
「ヴェルニカ良かったね。大好きなお兄ちゃん達に逢えてね?」
「う〜〜〜〜」
その女性はヴェルニカに対して優しい言葉をかけます。赤ちゃんはキョトンとしていました。でももで、玄関の方から、ある女性と二人の赤ちゃんが来ました。
刀奈さんです! 春奈ちゃんを片手で抱きかかえており、もう片方の手は流夏君と手を繋ぐようにしていたのです。刀奈さんに気づいた女性は微笑むと、言いました。
「お久しぶりです刀奈さん」
「久しぶり! シャルロットちゃん!」
女性はシャルロットと言うと、刀奈さんは答え返しました。お互いを自己紹介していたのです。すると、シャルロットさんは抱き抱えている赤ちゃんに優しく微笑みながら言いました。
「エリカ、私が言っていた流夏君と春奈ちゃんだよ?」
シャルロットさんは赤ちゃんをエリカと呼びました。彼女の名はエリカ・デュノア——女性のシャルロット・デュノアの姪であり、養女でした。
シャルロットさんの言葉にエリカちゃんは「うにゅ?」と流夏君と春奈ちゃんを交互に見ました。キョトンとしていました——いえ、直に恥ずかしそうにシャルロットさんの胸に顔を埋めました。
恥ずかしいようにも思える中、流夏君と春奈ちゃんはキョトンとしていました。流夏君は首を傾げていました——でもでも、それは可愛らしいのと、春奈ちゃんは兎も角、澪ちゃんにとって、後の、新たなる恋のライバルが現れたのでした。
近くではポチ、クロ、ヴェルニカがじゃれあう中、今日もご機嫌は、う〜〜ん、判らないみたいです。
「うにゅ〜〜??」