ある日の昼前頃、ここはとある商店街から数キロ離れた先の道路。ここには多くの車が走っていますがお出かけか仕事、プライベートでの目的で走る車ばかりでした。
ですが、そんな車の中には、ある高級感溢れる黒い車が走っていました。その車はある場所へと走っていますがその中には二人の男性と、一人の女性、更には一人の赤ん坊がいました。
「あう〜?」
その赤ん坊は流夏君でした。この子は車の後部座席の左側にあるチャイルドシートに座っていましたがシートベルトもしていました。落ちないようにもしているのです。
でも、流夏君は窓の方を見ていますが景色を見ているのです。移動しているようにも思えるし、なんか変わってる〜〜、と、思っているみたいです。
「ふふっ。流夏、お外が気になるの?」
そんな流夏君を隣に座っていたお母さん、刀奈さんが微笑ましそうに訊ねました。無理もありません、赤ん坊は見たことも無い景色には不思議そうにジッと見ているのです。
でも、今日はお出かけなのです。買い物もそうですが、今日はある人たちに会うためでありました。流夏君はお出かけには気づいているかどうかは判りませんが彼はお外の景色を見続けているのです。
それに、そんな流夏君の様子を、助手席から見ている人がいました。刀奈さんの夫であり、流夏君のお父さんである楯無さんです。
「流夏、気になるのか?」
楯無さんは流夏君の様子にも笑いますが流夏君はお父さんの言葉に気づき、お父さんを見ます。お父さんはニカッと笑いますが流夏君はキョトンとしていました。
流夏君は再び外の方を見ますが何も解らないみたいです。
「流夏、やっぱり気になるのね?」
刀奈さんが訊ねると、流夏君はお母さんも見ました。でも、流夏君はキョトンとしていましたが刀奈さんは、あることを教えました。
「今日はお出かけよ? それに貴方の大好きな……ふふっ」
刀奈さんは意地悪そうにその先を言いませんでした。そんなお母さんの様子に流夏君はキョトンとしていますが刀奈さんは何も言わずに微笑みながら楯無さんを見ます。
「貴方、もうそろそろかしら?」
「ああ、済まないが商店街に着く前に近くに駐車場が無いかを見てくれ。その後は運転手さんの自由で良いよ」
「判りました。ですが私は駐車で停まり次第、ガソリンスタンドでガソリンの補充をしておきます、その後は駐車場に戻り、お三方が戻るまで、車の中で待機しています」
「そうか、頼む」
楯無さんが運転手の男性にそう言うと、運転手さんはそう応えました。その言葉に楯無さんは頷きました。そして、楯無さんは後ろを見ます。
流夏君は外を見続けていましたが楯無さんは微笑むと、妻の刀奈さんを見ます。彼女は夫が見ている事に気づいているのか微笑むと頷きました。
楯無さんは微笑んでいましたが二人は互いを愛し合っているからこそだからですね。
「うぁあ〜〜」
でもでも、流夏君は窓の外の変わる変わる景色を見てキョトンとしていました。そんな流夏君に刀奈さんと楯無さんは微笑みますが車内は穏やかな空気が流れていますね。
「う〜〜」
「よし、そろそろ来る頃だな、それに味噌汁も上手く出来たし」
その頃、ここは商店街の中にある、とある食堂屋さん、五反田食堂。その店内では私服にエプロン姿の一人の男性がカウンターの向こう側にある厨房で何かを作っていました。
勿論、料理です。でも、彼の前には大きな鍋がありますが、料理の出来がいいのか余程嬉しそうなのか、何度も頷いています。その人はとても若いのですが赤髪に黒いバンダナが特徴的な男の人でした。
「もうそろそろ、一……あ〜〜今は楯無か」
男性は何かを言い掛けましたが何故か訂正しました。でも苦笑いしていますが不意に店の奥を見ます。店の奥には何もありませんが何故か微笑むと、鍋の火を消し、口を開きました。
「もうそろそろ終わったか〜〜?」
男の人はそう言いながら、店の奥へと向かいました。
「う〜〜?」
数分後、流夏君はお母さんに赤ちゃん紐で抱っこされながら商店街の中に居ました。お母さんの隣にはお父さんもいますが二人は仲良く歩いていました。
でもでも、流夏君は街の中を不思議そうにきょろきょろと見ていました。店が沢山あって、店の人らしき人達が街行く人達を呼んでいました。
買い物をしている人や自分と同じくらいの赤ちゃんか、子供を連れているお母さんもいました。皆、何をしているのかは知りませんが、流夏君には判らないみたいです。
ここ何所〜〜? と思っているかもしれませんね、ですが街を行き交っていることに変わりは無いですね。
流夏君は街の中を未だ、きょろ、きょろと見ていますが刀奈さんはクスッと微笑みました。
「流夏、気になるの?」
「うぁ〜〜?」
「フフッ、やっぱり気になるのね?」
刀奈さんはそう言いながら流夏君の背中を優しく撫でます。
「うあぁ〜〜」
流夏君ったら、とても嬉しそうに破顔しました。とても気持ちいい〜、そう思っているみたいです。自分の背中を撫でるお母さんの手の平がとても気持ち良いみたいです。
温もりをも感じているみたいですけど赤ちゃんの彼にはそう感じるのも無理はないみたいですね。
ですが、そんな流夏君を刀奈さんは微笑みますが隣にいる楯無さんも流夏君を見て微かに笑みを浮かべていました。我が子が嬉しそうに笑っている。それだけでも幸せを感じていました。
二人は愛息の笑う姿に微笑みますがそんな彼等を呼ぶ者がいました。
「おや、一坊じゃねえか!?」
すると、そんな二人を呼び止める人がいました。二人は不思議そうに声をした方を見ると、そこは野菜や果物等が並べられている八百屋でした。
その店の人らしき中年夫婦が二人を見て驚いています。そして声を上げたのは旦那さんらしき中年の男性でした。
「あっ、熊さん!」
楯無さんがその男の人を熊さんと言いました。熊さんと奥さんらしき人は二人を見て笑っていますが楯無さんと刀奈さんは店の方へと歩きました。
流夏君は抱っこ紐を着けられている為、自然とお母さんに連れられるようになっていました。
「お久しぶりです、熊さんに妙子さん」
「久しぶりだな〜〜結婚式以来か?」
「そうなりますね」
「そうかそうか、それにしても……」
楯無さんが訊ねると、熊さんは気軽に応えてくれました。すると、彼は楯無さんの隣にいる刀奈さんを見ました。
「一坊の女房か? かあ〜〜っ、べっぴんじゃねえか!」
「いえ、私は……」
刀奈さんはべっぴんと言われて嬉しそうでした。でも、熊さんは流夏君に気づきました。
「それに、その赤ん坊も可愛いな〜〜名前は何て言うんだ?」
「流夏です、男の子です」
「流夏か〜〜可愛いな〜」
熊さんは流夏君を見て笑っていました。
「あう〜〜」
でもでも、流夏君は熊さんを見てキョトンとしていました。すると、熊さんは耳を引っ張られていました。やったのは女房の妙子さんでした。
「イチチチ! 何すんだ母ちゃん!?」
「止めなさいアンタ、そんな怖い顔で見られたら泣いちまうだろ?」
「止めてくれよ母ちゃん〜〜! そんな事言われたら俺、傷付くだろうが〜〜」
「別に良いんだよ! それに」
すると、妙子さんは熊さんを解放しました。熊さんは引っ張られた耳を抑えますが妙子さんは気にもせずに刀奈さんを見て微笑みます。
「相変わらずべっぴんさんね〜一夏君には勿体ないくらいよ!」
「いえ、この人には、その……」
妙子さんの言葉に刀奈さんは頬を真っ赤にしました。それを見た妙子さんは微笑みますが不意に楯無さんを見ます。楯無さんは刀奈さんを見ていますが彼は奥さんの肩を引き寄せます。
あらあら、刀奈さんたら、楯無さんの行動に驚きますがまんざらでもなさそうです。そんな二人に熊さんと妙子さんは愛息と愛娘を見る両親のように見守っていました。
いつ見ても仲良し、そう思っているみたいです。同時に楯無さん、いえ、一夏さんの成長と彼が生涯の伴侶を得た事に嬉しかったのです。
それは勿論、結婚式に招待された事も有ったからですね。
「…………」
そんな中、流夏君は八百屋にある果物や野菜をジ〜〜ッと見ていました。林檎やオレンジ、レタスやきゅうり等の色んな色がありました。何だろあれ〜〜? それに見た事もない色も一杯ある〜〜。そう思っているのかもしれませんね?
「おや気になるのかい?」
妙子さんが流夏君に気づき、訊ねました。流夏君は妙子さんを見ますがニヤ〜〜ッと嬉しそうに笑うと同時に恥ずかしそうにお母さんの胸に顔を埋めてしまいました。
恥ずかしいのです。それに流夏君の癖でもありますけどね? でもでも、熊さんは耳を抑えながら
「ははは! 母ちゃんが怖くてそうなったんだよ!」
熊さんはそれを勘違いしたのか笑いました。ですが、それを聞いた妙子さんは熊さんをジッと見ると。
「あんた〜〜!!」
うえっ!? 妙子さん、熊さんに卍固めをしました。
「あああ〜〜ッ!!」
熊さんは妙子さんの技に悲鳴を上げました。これには更識夫婦と近くを歩いている人達もビックリしました。突然の事で驚いているみたいです。
「うぁあ〜〜」
でもでも、流夏君は笑っていました。とても面白い〜〜そう思っているみたいです。
「あ、あの……」
楯無さんは二人に尋ねようとしました。すると、妙子さんは笑いながら応えました。
「ああ気にしないでいいんだよ!? 何時もしているから」
「何時もしているって、母ちゃん、止めてくれよ!」
熊さんはそう懇願しますが妙子さんは怒ると技を更に強くする意味で腕に力を入れました。
「煩いね! それに昨日、勝手にレジのお金を使おうとしただろ!? 何を考えてるんだい!?」
「別に良いだろ〜〜」
「ダメだね! 勝手に使ったら私でも怒るよ!? それにアンタの相手は後で良いけど、このまま待ってなさい!」
「そんな堪忍してくれよ〜〜」
熊さんは泣きそうでしたが妙子さんは楯無さんと刀奈さんに対して微笑みました。
「ところで今日はどうしたんだい?」
「あっ……そうだ! 俺達」
「ああ〜〜」
妙子さんの言葉に楯無さんは気づきました。でも、流夏君は妙子さんの技で苦しめられている熊さんを見てキャッキャッと笑っていました。
「ダメよ流夏? そんなに笑っちゃ」
そんな流夏君に刀奈さんは困惑していましたが流夏君は笑い続けていました。
「遅いな……どうしたんだろ?」
その頃、五反田食堂では、バンダナを着けている男の人が厨房に立ちながら店内にある時計を見てそう呟きました。でも、カウンターの向こう側には、一人の女性が立っていました。
男性よりも年上に感じますが赤髪が掛った茶髪に茶色い瞳に眼鏡を掛けていました。女性らしく黄色いブラウスに青いスカートを穿いていました。
背中には、ある赤ん坊を抱っこ紐で抱っこしていました。でもでも、その赤ん坊は背中で抱っこされながらも辺りをきょろ、きょろしていました。
「別に良いじゃないですか弾さん、刀奈様と楯無さんが来るまで、もう少し時間がありますよ?」
「それはそうだけど……」
「それに厳さんは今、お出掛けしていますし、お義母さんも厳さんと一緒にですからね」
「そうだよな〜〜じいちゃんがいたらお玉もんだけど、今は大丈夫だし」
「そうですよ」
「でもな〜〜少し心配だからだな……」
女性の言葉に男性、五反田弾さんは納得しているみたいです。ですが何処か不安そうでした。無理もありません、今日は新作の味噌汁を親友でもあり、悪友でもある一夏、つまり楯無さんに試食してもらう為でした。
楯無さん達のお出かけとは、弾さんに呼ばれたからです、空いてる時間を彼が楯無さんに聞いた為に何とかなりましたが弾さんは楯無さん達を待っているのです。
でも、そんな弾さんは女性、いえ、彼の奥さんである虚さんは宥めていました。でも、弾さんは話題を変える意味で笑いました。
「それに虚、背中にいる……」
すると、扉の開く音が聴こえました。これには二人も扉の方を見ました。
「悪い、悪い、遅くなった」
「ごめんね虚ちゃん」
「あう〜〜」
楯無さんと刀奈さん、流夏君でした。更識夫婦は妙子さんの言葉に思い出し、ここへと来たのです。
「どうしたんだ一夏? 遅かったな」
「ごめんごめん、八百屋さんとこの妙子さんと少しお話をね」
「あ〜〜あのおばあさんか、判るぜ? 気が良い人だけど、お前が久しぶりに来たからな〜〜」
楯無さんと弾さんは他愛も無い会話をしていました。
「虚ちゃん、久しぶりね」
「は、刀奈様もお元気で何よりです。流夏君もお元気そうで何よりです」
「フフッ、ありがとう……それに」
刀奈さんは虚さんの背中にいる赤ん坊を見ます。
「澪ちゃん久しぶり、ほら、流夏?」
刀奈さんがそう言うと流夏を虚さんに見せました、同時に虚さんは身体を横にします。すると、その赤ん坊は澪ちゃんと言う名前でした。ふっくらとした肌にお母さん譲りの赤髪がかった茶髪でありました。
「ファァァァ〜〜」
「ウァァァァ〜〜」
あらあら、流夏君と澪ちゃんたら互いの相手を見て破顔しました。そうです、澪ちゃんは五反田弾と妻の虚さんの間に産まれた長女なのです。
彼女も流夏君と同じ生後五ヶ月ですが流夏君の大好きな女の子なのです。そうなのです、刀奈さんが意地悪していたのは澪ちゃんに逢える事を隠していたのです。
お母さんの人誑し的な事に流夏君はまんまとはまっていたのですがとても嬉しいサプライズ。これには流夏君だけでなく、澪ちゃんも嬉しいのです。
「ウ〜〜ア〜〜」
「ウ〜〜」
あらあら、流夏君たら澪ちゃんを見て必死に手を伸ばしているみたいです。でもでも、澪ちゃんもお母さんに背中で抱っこ(抱っこ紐を着けています)されながらも流夏君に必死に手を伸ばしています。
そんな二人の子供に更識夫妻と五反田夫妻は微笑ましそうに見ていました。でも、そんな周りに二人は気にもせずに必死で手を伸ばしていたのです。
でもでも、二人はとても嬉しそうですが必死に手を伸ばしていた事に変わりはありませんでした。それに今日は流夏君、いえ、流夏君と澪ちゃんはご機嫌いいみたいですね。
「ウフフ!」
「ウアア〜〜」