更識家の流夏君   作:NO!

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流夏君、パパと遊びたいみたいですがパパは寝ているみたいで、遊べないみたいです。

「あう〜〜」

 

 ある日の昼下がり、ここは更識家の流夏君の遊び部屋。そこには流夏君と彼のお母さんである更識刀奈さんがいました。

 

「こら流夏、止めなさい」

 

 刀奈さんは仰向けに寝転がっていますが流夏君は嬉しそうにお母さんの顔近くで暴れていました。これにはお母さんもタジタジですがまんざらでもなさそうでした。

 流夏君はお母さんに甘えていますが暴れているようにしか見えないのです。すると、刀奈さんは笑いながら流夏君を抱き締めました。それも、頬と頬をくっ付けるように。

 

「うああ〜〜」

 

 流夏君は嬉しそうに笑っていますが刀奈さんも笑います。

 

「ふふっ。流夏ったら、お母さんが大好きだからね〜」

「うあ〜〜」

 

 お母さんの言葉を理解したのか流夏君は更に笑います。これには刀奈さんも微笑みますが流夏君を抱き上げると上半身を起こし、そして再び流夏君を抱き締めました。

 

「うぁあ〜〜」

 

 あらあら、流夏君ったらお母さんの行動に破顔してしまいましたが刀奈さんは未だに微笑むと、ある事に気づきます。

 

「そうだわ流夏、お父さんの所へ行こうか?」

「あう?」

 

 お母さんの言葉に流夏君はキョトンとしました。何も解らないみたいです。でも、お母さんが流夏君に判り易いように訂正しました。

 

「パパの事よ? 判る?」

「うぁぁ〜〜」

 

 あらあら、流夏君ったら、パパと訊いて破顔しました。パパ〜。とお父さんの事を思い出しているみたいです。それは流夏君の父であり、刀奈さんの夫である楯無さんの事です。

 彼は今、暗部関係の仕事で書類整理をしていました。その為、ここにはいませんでした。ですが、刀奈さんがそう言ったのも、ある理由がありました。

 

「私達が行けば、パパも元気に仕事に取りかかれると思うのよ?」

「う〜〜?」

「勿論、ママ達は遠くで見ているだけ、遊ぶ事は出来ないけど……それで良い?」

「うにゅ〜〜?」

 

 流夏君は首を傾げていました。刀奈さんの言葉を理解していないみたいです。でも、刀奈さんはクスッと微笑むと、流夏君を抱っこしながら立ち上がりました。

 

「うああ〜〜」

 

 流夏君、お母さんに抱っこされて笑いました。でも、刀奈さんは笑うと、流夏君を連れて部屋を出ました。向かうは、夫であり、流夏君のお父さんである楯無さんがいる書斎でした。

 

 

「あんた〜〜っ!!」

「あぁぁーーーーっ!!」

 

 その頃、商店街では妙子さんが旦那さんである熊さんに卍固めしていました。理由は熊さんが五反田夫妻の長女、澪ちゃんに対して、泣かしてしまったからです。それも熊さん特有の強面の顔が原因でもありました。

 

「「ハ、ハハ……」」

「キャッ、キャッ〜」

 

 そんな二人の夫婦漫才を五反田夫妻は苦笑いし、お母さんの虚さんに抱っこ紐で抱っこされている澪ちゃんは泣いていましたが何時の間にか笑っていました。

 

 

「う〜〜」

 

 場所は戻って、ここは楯無さんがいる書斎の前の通路。そこには刀奈さんと、彼女に抱っこされながらキョトンとしている流夏君がいました。

 流夏君は襖を見ていますが刀奈さんは微笑んでいました。

 

「ここよ流夏、ここにあの人、パパがいるわよ?」

「うあぁ〜〜」

 

 流夏君は破顔しました。パパ〜と思っているようですね。でも、刀奈さんは微笑むと、襖の向こう側にいる旦那さん、楯無さんを呼びました。

 

「貴方、ちょっと良いかしら?」

 

 刀奈さんは楯無さんに対して訊ねます。ですが……。

 

「……あれ?」

 

 おや? どうした事でしょうか? 楯無さんから返事はありません。これには刀奈さんも不審に思いますね?

 

「う〜〜?」

 

 流夏君はお母さんに抱っこされながらも襖をジ〜〜ッと見ていました。でも、刀奈さんは旦那さんの名を呼びます。

 

「貴方? どうしたのかしら?」

 

 刀奈さんは不審に思い、襖を開けました。向こう側は楯無さんがよく使っている書斎でした。そこには難しい本が何冊も収められている本棚に机、パソコンもありました。

 ですが、肝心の楯無さんは……。

 

「あら? ……ふふっ」

「うああ〜〜?」

 

 刀奈さんは呆れていますが微笑み、流夏君は不思議そうに見ていました。二人の視線の先には座布団を枕代わりにしながら仰向けに寝ている旦那さん、楯無さんがいました。

 彼は寝息を立てていますが起きる気配はありませんでした。そうなのです、返事が無かったのも寝ていたからなのです。

 

「あらあら、パパ、寝ているみたいね?」

「う〜〜?」

 

 刀奈さんはそう言いながら襖を閉めると、楯無さんの所まで歩み寄り、彼の横に正座しました。

 

「貴方。ふふっ」

 

 刀奈さんは悪戯っぽく訊ねます。でも、楯無さんは寝ている為、何の反応もありません。でも、流夏君は。

 

「あう〜〜?」

 

 流夏君、安心しているように寝息を立てているお父さんをジ〜〜ッと見た後、必死に手を伸ばしています。

 パパ、起〜き〜て〜遊ぼうよ〜。そう訴えているみたいです。でも、お父さんには何の反応もなく、静かに寝息を立てていました。

 そんな中、刀奈さんは苦笑いしながら流夏君に注意しました。

 

「こら流夏ダメでしょう? パパが寝ているでしょう?」

「う〜〜」

 

 刀奈さんは流夏君にそう言いますが流夏君はお父さんに対して必死に手を伸ばしています。パパ〜、と甘えたいみたいです。でも、楯無さんは寝返りを打ちます。それも、刀奈さんの膝を見るように。

 

「貴方……ふふっ」

 

 刀奈さんは楯無さんを見て微笑みます。旦那さんは無意識に自分の方を見ている事に嬉しかったのです。同時に、無邪気かつ子供のように寝ている彼を見続けていました。

 ああ、この人は余程疲れていたのね……そう思っているみたいです。不意に視線をテーブルの方へと向けます。そこには書類の山が有りました。三、四百は有りますが全て終わった後でした。寝ていたのも多分、終わった後の安心感かつ、睡魔が襲ってきた為に、今の状況になったんだと、刀奈さんは直感しました。

 刀奈さんは彼を見て哀しそうに微笑みます。彼は自分の為に楯無を襲名してくれた。それも愛する自分の為に自らを犠牲にした。

 刀奈さんは楯無さんに対して感謝と後悔をしました。出来る事なら自分は彼の為にサポートしたい、同時に刀奈さんは流夏君を見ます。

 

「ムニュ〜〜うぁあ〜」

 

 流夏君たら、お父さんに対して、まだ手を伸ばしていました。パパと遊びたい〜、そう思っているみたいです。でも、楯無さんは眠っている為、それは出来ません。

 遊べるのは起きた後じゃなきゃダメみたいです。刀奈さんは流夏君を見て微笑みますが不意に口を開きました。

 

「流夏、今はママと遊びましょうね?」

「あう〜〜?」

 

 お母さんの言葉に、膝の上に座っている流夏君はお母さんをキョトンと見ました。ママ〜? と不思議そうに見ているのです。

 

「パパはお休みしているし、起こしちゃ悪いからよ?」

「う〜〜?」

 

 お母さんの言葉に流夏君は何も解らないみたいです。でも、刀奈さんは流夏君を微笑みながら見ていました。

 

「パパはね、ママや流夏の為に頑張ってお仕事したのよ? それに今は疲れているから、少しの間はママと遊びましょう?」

「うあ〜〜」

 

 お母さんの言葉に流夏君は笑います。ママと遊ぶ〜〜。全く、流夏君は直ぐにパパからママに変えましたね。恐らく、優先順位はママの方が上だからでしょうね?

 

「パパは……フフッ、今は私と遊びましょう? それにママもパパが大好きなのよ? パパはママの初恋の人で……クスッ」

 

 刀奈さんは楯無さんの頭を撫でます。壊れ物を扱うように優しく、と、です。

 

「パパはママの事を大事にしている。勿論、流夏の事もね?」

「う〜〜?」

 

 流夏君は何も解らないみたいです。でも、刀奈さんは微笑むと、不意に流夏君を見ます。

 

「それに、あなたも何れ……ううん、今は良いかしらね?」

 

 刀奈さんはそう言うと、流夏君を優しく抱き締めました。

 

「うぁあ〜〜」

 

 あらあら、流夏君ったら笑いました。ママの温もりが嬉しいみたいです。でも、刀奈さんは流夏君を見て、ある事を思っているみたいです。

 それは流夏君が何れ、楯無を襲名する事。それは、刀奈さんと楯無さんが一番思っている事です。彼は何れ成長し、当主となるべき者。彼は多くの経験を積む事で一人前になる事です。

 ですがそれは困難であり、茨の道です。でも、彼には多くの仲間がいます。勿論、自分達もいます。彼が一人前になるまで、多くの事を教えるのです。

 父から子、子から孫、更に孫から曾孫と言う事になります。でも流夏君は後継者でありますが今は赤ちゃん、今は愛情を与える事が何よりの大事な事なのです。

 

「それにお義姉さんからも言われたのよ?」

「う〜〜?」

 

 ママの言葉に流夏君はキョトンとしました。ですが刀奈さんは瞑目しました。それは、ある人の言葉を思い出していたのです。

 

『更識姉、お前は母として流夏と言う愛息に愛情を注いでやれ、優しさを教えてやれ、間違った事は間違っていると教えてやれ。母としての責任を果たすだけでなく、流夏を強く、誰よりも優しい青年として育てろ』

 

 刀奈さんはその言葉を思い出していたのです。その言葉はとても重みが感じられますがお義姉さんの言葉でもあるのです。義理の姉としてのお願いとも捉える事が出来ますが刀奈さんはそれを重く受け止めているのです。

 自分は楯無の妻であり、流夏君の母。それは彼等に愛情を注ぎ、妻として、母として彼等の傍にいると決めました。刀奈さんは頷くと、瞼を開き、流夏君を見ます

 

「う〜〜?」

 

 流夏君は首を傾げました。でも,刀奈さんは微笑むと楯無さんを見ます。

 

「流夏、私は貴方のママだけど、この人の妻でもあるわ……それに」

 

 刀奈さんはクスッと笑いました。

 

「私は……いえ、今は良いわ」

 

 刀奈さんは首を左右に振ると、ある事を思い出しました。

 

「あっ、でも遊べないみたいね? 流夏はもう、お昼寝の時間だからね?」

「うわあぁ〜〜?」

 

 刀奈さんはそう言うと、流夏君は何も解らないみたいです。お昼寝〜〜? 。そう思っているみたいですね。でも、赤ちゃんは寝る事も大事なのです。

 刀奈さんは流夏君の為ですが彼女は微笑むと、立ち上がりました。

 

「あなた、私達は部屋で寝るからね?」

 

 刀奈さんはそう言うと、流夏君を連れて、書斎を出ました。勿論、自分達の部屋で流夏君をお昼寝させる為です。でも、自分も寝る為ですからね。

 流夏君はもうすぐお昼寝ですが今日も機嫌いいみたいです。

 

 

「うぁぁ〜〜っ」

 

 




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