「ウニュ……」
「ふふっ、春奈」
某月某日、此処は更識家の流夏君と春奈ちゃんの遊び部屋。そこには、少し多めの玩具に囲まれながら春奈ちゃんがお母さんの刀奈さんに抱っこされながらも甘えていました。
刀奈さんは愛娘の春奈ちゃんを見て微笑んでいますが春奈ちゃんは少し嬉しそうでした。ママを独り占め〜、そう考えているみたいですね?
「春奈は甘えん坊ね? 誰に似たのかしら?」
「ニュ〜〜」
春奈ちゃんは更に甘えてきます。これには刀奈さんも笑いますが、ふと、ある事に気づきました。
「そうだわ春奈? パパや流夏の所に行きましょうか?」
「……ムニュ?」
お母さんの言葉に春奈ちゃんはキョトンとしていました、でも、刀奈さんは先を言います。
「パパと流夏はね? ……フフッ、それは春奈も一緒に来れば判る事よ? 私達も行きましょう」
刀奈さんは笑いながらそう言った後、春奈ちゃんは。
「うぁぁ〜」
あらあら? 春奈ちゃんは笑いました。嬉しいと思っているみたいです。春奈ちゃんの様子にお母さんは春奈ちゃんを抱っこしながら立ち上がり、部屋を出ました。
「流夏、今日はお客さんが来てるぞ〜〜?」
「う〜〜?」
その頃、楯無さんは流夏君と手を繋ぎながら通路を歩いていました。楯無さんはニカッと笑っていますが流夏君は何も解らないみたいです。さっきまでママと春奈ちゃんと居たのに、またパパと一緒です。
無理も有りません、ママの刀奈さんは春奈ちゃんと一緒にいる為、後から来ます。本当だったら、ママと遊べる筈でしたがお客様が来た為に出来ませんでした。
そうです、実はさっき、従者の一人にお客様が来たからです。その為、二人は今、その状況だからです。
でもでも、流夏君も一緒はどうしてでしょうね? 普通なら、お客さんはパパとママが対応します。でも、流夏君に何をさせるんでしょうかね?
楯無さんは流夏君を視て笑っていますが流夏君はキョトンとしていました。
「うぁ〜〜」
すると、少し先の方から何かの声が聴こえました。楯無さんはそれに気付き笑いますが……。
「あう!?」
一方で流夏君は少し驚きました。そうです、流夏君は此の声に気づいたのです。それは懐かしくも、自分が大好きな人……流夏君はそれを聴いていても立ってもいられず……。
「う〜〜!」
流夏君は楯無さんから離れると、テテテテ! と足早で其方の方へと歩きました。
「お、おい流夏!?」
これには楯無さんも困惑します。ですが流夏君は襖を開けようと背伸びしていました。でも、届かないのです。
「う〜〜う〜〜!」
流夏君は襖を開けようと、必死に手を伸ばしていました。でも、届きません。届け〜〜と自分に言い聞かせていました。そんな流夏君を楯無さんは苦笑いしていますがこう思っているみたいです。
流夏、そんなに彼女に逢いたかったのか? と。勿論、流夏君にとって、あの娘は流夏君の大好きな人なのです。楯無さんはそれに気づきますがふっと笑うと、愛息の方へと近づき、代わりに開けてあげようとしました。
でもでも? 彼が開ける前に、襖が開きました。流夏君が開けたのではありません、ある人が開けてくれました。それは襖の向こう側、客室に居る人がでした。
「流夏様?」
その人は楯無さんよりも年上かつ、茶色の長い髪を纏めており、琥珀色の瞳に眼鏡を掛けています。服も黄色の上着にピンクのシャツ、膝まである黄色いスカートを穿いていました。
彼女は布仏……いえ、今は五反田虚さんでした。彼女は流夏君を見てキョトンとしていましたが襖の向こう側から子供の声に反応して、開けたからです。
「うあぁ〜〜」
流夏君は虚さんを見上げていましたが虚さんは彼を見て微笑んでいました。ですが、楯無さんに気付きました。彼は自分に近づくように
「当主様」
「こんにちは虚さん、それに当主様は良いですよ?」
虚さんは楯無さんに頭を下げますが楯無さんは苦笑いしながら答えました。二人は学園で先輩後輩の立場にありますが地位は逆です。
でも、それでも友人としても接していました。それに浮気じゃありませんよ? 楯無さんは刀奈さんや家族一筋であり愛妻家。虚さんは旦那さん一筋でしっかり者のお母さんなのです。
何方も生涯の伴侶を大事にしているのです。虚さんが来たのも勿論、遊びに来た事ですが彼女だけではありません、何故なら……。
「ウワァァ〜〜」
「ファァァ〜〜」
あらあら、幼児達の嬉しそうな声が聴こえました。その声に親達は微笑ましそうに見ていますが流夏君は部屋の中に入ります。そこには……。
「ウ〜〜!」
何と、虚さんだけではありませんでした。部屋には、客間には女の子の赤ちゃんもいました! その娘は真ん中には向日葵の刺繍のされた黄色い服にピンク色のズボンを穿いています。
顔立ちは虚さんに似ていますがお父さんの面影もありました、赤髪がかった茶髪に琥珀色の瞳が特徴的な女の子の赤ちゃんでした。そうです! この娘は五反田澪ちゃん! 虚さんの長女であり流夏君の幼馴染み!
そうです! 流夏君が声に反応したのも、彼女の声だと言う事に気付いたのです! 同時に……あらら!? 二人共、あまりの嬉しさに抱き合ってしまいました!
「おい流夏!?」
「澪!?」
これには楯無さんと虚さんも驚きますが流夏君と澪ちゃんは嬉しそうに声を出していました。
「あう〜〜」
「う〜〜」
流夏君と澪ちゃんは甘えていますが楯無さんは慌てて、流夏君を澪ちゃんから引き剥がそうと抱き寄せます。
「ウ〜〜!?」
流夏君は澪ちゃんから離れません。そうです、流夏君は澪ちゃんに逢いたかったのです! その為、それを補給する意味で甘えているのです!
「力強っ!?」
楯無さんは愛息の行動かつ、澪ちゃんに抱き着く力が強い事に気付いていました。ですが、赤ん坊とは思えない程ですが流夏君は甘えたいのです、澪ちゃんに。
澪ちゃんの方はお母さんの虚さんが流夏君から引き剥がそうと澪ちゃんを引き寄せます。
「う〜〜!」
澪ちゃんも負けじと、離れようとはしません。でもでも、赤ちゃんである為、二人は簡単に引き剥がされてしまいました。
「ウ〜〜レ〜〜!」
「ウァァ〜〜」
流夏君と澪ちゃんは声を上げながら互いの相手に対し、手を伸ばしていました。
「「ハハハ……」」
そんな二人に親でもある楯無さんと虚さんは苦笑いしました。自分達の子供達が好きな人に対して行動している。そう気付き、思うだけでも苦笑いしか出来ませんでした。
「どうしたの? 貴方?」
すると、楯無さんの近くから声が聴こえました。その声に楯無さんと虚さんは反応し、見やると、そこには春奈ちゃんを抱っこしている刀奈さんがいました。
二人が我が子達の相手をしていた間、彼女は愛娘を連れて、此処まで来たのです。
「刀奈、実は……」
楯無さんは不意に腕の中にいる流夏君を視ます、彼は澪ちゃんに対して腕を伸ばしていますが澪ちゃんも腕を伸ばしていました。
「うん? ……あっ、フフッ、澪ちゃんに逢えたからかしらね?」
刀奈さんは何かに気付き笑いますが楯無さんは苦笑いしていました。ですが、刀奈さんは流夏君が春を見せている事に微かに喜んでいました。
ませたとしか思えませんでしたが流夏君は澪ちゃんが好きである事に気づいているからです。
「まあ……それに、虚ちゃんも久しぶりね?」
刀奈さんは虚さんを視ました。
「あっ、はい、刀奈さんもお久しぶりです、それに、春奈様も久しぶりです」
虚さんは春奈ちゃんを視ました。そうです、彼女等が来たのは遊びに来たのもそうですが、春奈ちゃんも視る為でした。五ヶ月ぶりでしたが彼女達は春奈ちゃんを視る為であるのと、澪ちゃんを流夏君に逢わせる為に連れて来たからでもありました。
一方で二人は幼馴染みでもありますが今はママ友にも近いですがね?
「…………」
一方で春奈ちゃんはある場所をジッと視ていました。その先には大好きなお兄ちゃんに対して、必死に手を伸ばしている澪ちゃんを捉えていました。
澪ちゃんは未だに流夏君を視ていましたが凄く嬉しそうでした。
「……う〜〜」
春奈ちゃんは澪ちゃんを何とも思っていないように視ていましたが、この娘は気付いていないのです……何故なら、この先、流夏君を巡っての争奪戦を繰り広げる未来(可愛らしい物)が待っているからです。
でもでも、流夏君は大好きな澪ちゃんに逢えて、ご機嫌良いみたいです。
「ウフフ〜〜!」