罪なのかもしれないが、それでも生きる事は
美しいのだと思います。
優香の妹が自殺した。
私の妹が、自殺した。
妹は、目立ちたがり屋
だったけど、
昔は、姉と
三人で、仲良く生活していた。
みんな、お父様が大好きで、
お父様も私たちを、
愛してくれた。
どうして、三人は
『バラバラ』になって
しまったの?
そうか、
私がみんなを裏切ったからか。
「優香、大丈夫?」
健一君が私の事を心配してくれた。
「うん、ありがとう」
妹にとって、
私に殺される事が幸せだったのか?
例えそれでも、
私はもう人を殺さない。
私は、『人間』なのだから。
私は、健一君の手を掴んだ。
「さあ、あと少しだから
行こう」
私たちは、施設の方に
歩いて行った。
二時間後、
私たちは、
サイファおねい様と
お父様と相対した。
おねい様とお父様は、
互いに抱き合っていた。
お父様に、健一君を
生かす様にお願いしないと。
「お父様、お願いが………」
「ダメだ。ニートは皆、
例外なく殺せと言っただろ!」
「ですが、健一君は、
優しい心を持っています。
ですから………」
「忘れたのか、優香‼︎」
お父様の声が響き渡る。
「優香、
お前が
殺した両親は、
最初は優しかっただろ。
お前は、
そいつに騙されているんだ」
私は、母を思い出す。
父からどんなに
暴力を振るわれても
私に優しくしてくれた。
だから、母が苦しまない
為に父を殺したのだ。
でも、そうしたら、
私は、母にとって
『悪魔』になってしまった。
母は、結局、私の事を愛して
いなかたんだ。
人間は皆、裏切る。
健一君だっていつかは………。
「優香、
今度またみんなでキャンプに行こう?」
みんなで、行ったキャンプ。
姉も、お父様も幸せそうだった。
また、同じ想いをしたい。
でも………。
「優香、今だったら、
パパを裏切ったこと許してあげる。
その代わり、
『その人を殺しなさい』」
サイファお姉様が冷静な口調で言う。
それが、暗殺組織のルール(法)
だったのだ。
「お父様、優香には、
出来ません」
「そうか、なら………」
お父様が拳銃を取り出す。
「裏切り者には、『死』を」
バーン‼︎
…………どうして
…………どうして、
こんな事に、
どうして、私に向けられた拳銃が、
健一君が受けているの?
健一君が、私をかばったんだ。
ドサッという音がして健一君が倒れた。
「健一君、健一君、健一君、
起きて‼︎しっかりして‼︎」
「うぐー、優香、
今まで、ごめん。
僕が生きていたせいで、
辛い想いをさせていたんだね。
僕が死ねば、優香のお父様と、
おねいさんとまた、幸せに
暮らせるなら、僕は、
喜んで死ぬよ。
今まで少しの間だったけど、
ありがとう。
そして、ごめん」
「健一君、ねえ、健一君!
ああーーーーーーーーーー‼︎」
私は泣き叫んだ。
ガチャ
お父様が私のこめかみに銃口を
押し付ける。
「すまない」
「うぐああああああああああ
ああああああああああああ
ああああああああああああああ‼︎‼︎」
突然私の身体から光が放たれる。
私は、知っていた。
お父様とおねい様ですら
知らない特殊能力。
私は、以前、麻薬のアジトに
一人で乗り込んだ時、
10人の大男に囲まれ、
銃口を当てられ
まさに、絶体絶命だった。
その時、私の身体から
光が放たれた。
私の能力、
それは、
半径20メートルの範囲の
生命なら、30秒間だけ
無条件で生死を
支配し、その生命の行動
も操れるというものだ。
だがその代わり、
その間は、理性が吹っ飛ぶ。
つまり、その間だけ、
私は、人間ではなくなる。
私は、気がつけば、
10人の無抵抗の大男全員
を包丁で刺して、
内臓を食べていた。
私は、この能力はもう二度と
使いたくなかった。
30秒間だけ私は
『優香』でなくなる。
誰かに、
いや、心の奥に住み着いている
醜い獣に身体を奪われるのだ!
また、この能力を使うなんて‼︎
父が光に当たって後方に吹っ飛ぶ。
『優香‼︎ パパになんていう事を!
許さない‼︎
あれ、身体が動かない。
手から光が出ない?
どうして?
これじゃあ、優香を殺せない』
私は、健一の怪我を治した。
『じゃあね、健一。
私がいなくても、幸せに
生き続けてね』
私は、健一に嫌われてもいい。
私の存在なんか、忘れても
いいからその代わり、
健一に幸せに生きて欲しい‼︎
私は健一を強く抱きしめ
今までで一番、永いキスをした。
30秒間だけ私は全てを支配できる
女神なのだ。
殺戮の女神
『じゃあね、健一』
私は父の方に向かう。
『サイファ、今から、
あなたの一番、大切な物を、
壊していくから、
それが嫌なら、
私を殺してみなさい』
『優香‼︎‼︎』
サイファは自分の能力を
使おうとするが、
この空間では、私が、
女神なのだ。
サイファの努力は無意味だ。
サイファはエネルギーを
生成できず、
その代わり、サイファの質量
は減ってゆく。
本来なら、地球が滅ぼせる
ほどのエネルギーだが、
この空間では無意味だ。
サイファの身体が
少しずつ『消』えてゆく。
髪の毛、手、足、、、
サイファは、この世から
消えてしまった。
サイファが生きた跡はもう何もない。
サイファは私の挑発だけで死んだんだ。
『サイファ、すまない』
『次は、あなたの番よ
天雅真』
私は包丁で父の身体を切り刻む。
まだ殺さない。
健一が味わった苦しみを、
私から健一を奪った苦しみを
味わってから死んでもらう‼︎
グサグサ、ビチャ
「あれ、お父様?」
ついに、30秒経ってしまった。
血に染まったお父様、
お父様に馬乗りになりながら、
紅い包丁を持っていた私。
私は包丁を落とした
『優香』は気がつけば泣いていた。
「優香、お前に暗殺者として
もっとも重要な事を、
昔教えたよな。覚えているか?」
それは、残酷な事を示唆していた。
「はい、殺す相手に対して
『主観的』になるな。
という事です」
「そうだ。
相手にも、
大切な家族、愛人が
いるかもしれない。
殺すという事は、
その周りの人の想いを
踏みにじる事になる。
そんな事を考えてしまったら
人など、命など、
簡単には殺せなくなってしまう」
「お父様、、、」
「優香、本当は、
私が間違っていたのだな。
悪人を殺して善人を救う事が
私やサイファ、
優香の幸せなのだと
今まで信じてきた。
だが、所詮、
私の独りよがりだったのだな。
すまなかった。優香」
「パパ」
「泣くな‼︎相手に主観的になるな
最期くらい、約束を守ってよ」
「はい」
私は、涙を流すのを我慢した。
それがパパに対する本当の幸せ
なのだ。
「いい子だ。昔も今も」
パパはそう言うと安らかに
息を引き取った。
「パパが死んだ後は、
『泣』いてもいいよね」
ぽとぽと。
パパの顔がびしょ濡れになった。
私は、人を殺しすぎた。
私は、死ななければならない。
その償いとして。
「優香?」
健一君が駆け寄ってきた。
来ないで。
私には、あなたと愛し合う資格も、
お話しする資格も、
生きる資格すら無いのだから。
「健一君、私は、
今まで犯してきた罪を償う為に
自殺しなければならないの」
「どうして‼︎
僕は優香が好きだ。
例え、優香が今まで
どんな凄惨な事をしたとしても、
僕は好きなんだ
命を守ってくれた優香が。」
「でも私は、罪を償なわなければ………」
『違う‼︎』
健一君の声が響き渡る。
『自殺するというのは、罪をつぐなう
という行為でなく、
罪に背を向け、『罪から逃げる行為』
の事を言うんだ。だから、僕とともに
『生』きよう』
私は、気がついた。
もっとも重い罰は、罪悪感から
自殺する事ではなく、
愛する人とともに償いながら、
生きる事なのだと。
『幸せ』こそもっとも『不幸』なのだ
ふふふ、なんか世の中おかしいや。
『分かった』
その後、私たちは、
今もとても幸せでありながら
罪悪感と共に生きている。
私たちが死んだ後、
あの世で、
私と、健一君とお父様と
妹とサイファお姉様
みんなで仲良く、
幸せに暮らせるかな?
今まで読んでいただきありがとうございました。