鮮血のカタルシス   作:ネコ缶

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暗殺者にとって、直接、人を殺すことで
間接的に他者を救うことが
善で、

人を殺さないで愛してしまったこと
は悪と言えてしまうのでしょうか。

(7月2日 誤字脱字があると言う報告があったので
修正致しました)


空想と現実

「ごめんなさい」

私は、それしか言えなかった。

 

「大丈夫、ゴホ、少ししたら、

痛くなくなるから。」

 

私は健一君に聞こえないよう

(痛かったよね)

とささやいた。

 

私には、人を好きになる資格

 

は無いんだ。

 

好きな人を二度も殺そうとするなんて。

 

「僕が寝てる優香を驚かせちゃった

のがいけないんだ」

 

違う、私が全部悪いの。

 

「もう12時だから、僕も寝たいから、

一緒に寝ていい?」

 

 

「どうして!!!」

 

 

 

私は、健一くんと出会ってから、

 

最も大きな声を出した。

 

自分でも驚いた。

 

こんな声、何年ぶりだろう。

 

健一くんは驚いて、

 

半歩だけさがった。

 

 

「私は、あなたを二度も殺そうとしたんだよ。

 

そんな人間と、どうして一緒にいたいと思うの!

 

殺されるかもしれないのよ‼︎

 

『自分の命』を大事にすることより

私と寝たいの?」

 

 

「そうさ」

 

私は、驚く。

 

私が守ろうとする命は、

 

そんなに安くない。

 

安くない‼︎

 

「僕は、いつも、他人の顔色を伺い

 

他人が、他人『様』が

 

気分を害さない

 

ように気をつけながら生きてきた。

 

でも、そんな人生、無意味だ」

 

私は、しばらく沈黙したが、

 

かろうじて沈黙を破ることができた。

 

「分かったわよ。

これからは、一緒に寝たり、

ハグしたり、キスしたり、

なんでもしてあげる。

だからさ、

命は、大切に、した方が、

いいと思うよ?」

 

私は、涙をこらえ、

必死で笑顔を作る。

私が言える台詞ではない。

 

「わかった」

 

そういうと、

 

健一くんは、私の布団の

 

中に入ってきてくれた。

 

「もう、首締めないから」

 

私は、健一くんの頭を撫でる。

 

なんて、気持ちのいいんだろう。

 

健一くんはもう殺さない。

 

健一くん? いや、

 

【もう誰も殺さない】

 

どんな人間にも、

 

愛(区別)すべき人がいるはずだ。

 

私でいうと、

 

健一くんや、

 

義父、いや『本物』の父である

 

真お父様。

 

明日、お父様に、

 

法律の改正をお願いしてみよう。

 

『殺す』のではなく、

 

『育てる』ようにと。

 

お父様は、とっても偉く、

 

ただの官僚なんか足下に及ばない。

 

お父様が呼びかければ、

 

法律の一つや二つ、

 

いくらでも変わるはず。

 

 

ーーー翌朝ーーー

 

 

「おはよう健一くん!」

 

私は、起きたばかりの健一くんを

 

ガバッと抱きしめる。

 

幸せにしてあげたい

 

健一くんは嬉しそうに、

 

私を見つめている。

 

【殺させない】

 

私は、健一くんの為に、

 

朝食を作ってあげた。

 

卵焼きとご飯と味噌汁。

 

冷蔵庫に入ってたもの

 

で何とか作った。

 

「いい匂いだね。

 

ありがとう。朝食作ってくれたんだ」

 

私は、感謝されて嬉しかった。

 

 

私は、人生でも、10回

 

あるかないか、

 

分からないほどの上機嫌で

 

健一くんにご飯を運ぶ。

 

「はい、あ〜んして」

 

「自分でできるよ」

 

「照れなくてもいいのよ。

私にやってほしかったんでしょ?」

 

私は、色っぽい声を出した。

 

私って、こんな声が出せるんだ。

 

健一くんの顔が、

 

みるみる紅くなっていった。

 

「うん」

 

「可愛いんだから、チュッ」

 

私は思わずキスをしてしまった。

 

表現するなら、

 

『座っている幼稚園児みたいで、

 

弱くて、心が真っ白で、

 

紅くなりながら、

 

モジモジしている弟。

 

そんな健一くんに対して、

 

エプロンをつけている高校生の私。』

 

そんな感じだった。

可愛い。

 

 

健一くんは、虚ろな表情になる。

 

 

沢山したのに、まだキス慣れてないのかな?

 

 

もう一回、やっても、いいよね?

 

紅く硬直してる健一くんを見て、

 

思ってしまう。夢みたいな気分だ。

 

 

私は、無意識に健一くんの

 

 

ほっぺ、に唇を近づける。

 

 

あと、三センチ、

 

あと、二センチ、

 

あと、一センチ!

 

 

その時だった。

 

 

ガッシャーン‼︎

 

 

 

窓ガラスの割れる音が聞こえた。

 

 

健一くんは、驚いて立ち上がった。

 

 

もしかして、、、、私はぞくっとする。

 

 

数秒後、私たちの目の前に、

 

五人の少女がいた。

 

 

「優香先輩、エプロンなんかして、

何してるんですか?

あなたは、この男を昨日までに、

殺すはずでしたよね?」

 

私は、健一くんを守るようにして抱いた。

 

「あなたたちには、殺させない‼︎」

 

五人は呆れた表情だった。

 

「はぁ?

『殺戮の女神』と呼ばれた人が、

何いってるんですか?」

 

その通りだ

 

「私たちの模範だったのに、

真様の命令に背くなんて、

『幻滅』しました。」

 

五人たちの冷めた目線、

が私の心に突き刺さる。

 

「裏切り者は、殺さないと」

五人のうち一人がボソッと呟く。

 

「優香先輩、あなたは、

もう、優秀な尊敬すべき

暗殺者ではなく、

あの男同様、

『クズ』です」

 

以前の私のように、

冷静な声だった。

 

 

「死んでください」

 

五人は、

拳銃やスタンガン、ナイフ

など常備していた武具を取り出す。

 

「優香、こっちだ!」

 

健一くんは私の手を引く。

 

バン!

 

「えっ。そんな………」

鈍い拳銃の音が聞こえた。

 

健一くんが倒れた。

 

「グググ、優香、ググ、

逃げ、ろ!」

 

床が真っ赤になる。

 

「健一くん!しっかりして!」

 

カチャ

 

倒れた健一くんに気を取られて

銃口を向けられてしまう。

 

暗殺者として失格である

 

「あーあ、一発じゃ仕留めきれなかったなあ〜。

 

心臓、貫通できなかった。

なんで左肩に命中するんだか。

私、拳銃苦手なんですよねー」

 

後輩の一人が私のこめかみに

 

銃を向け、私を嘲笑う。

 

私たちの命など、

こいつらからしたら

ゴミなのだ。

 

「ふふ、でも、この位置なら」

 

後輩は余裕そうに、

銃を引こうとする。

 

「キサマー!」

 

私は、銃を持っていた後輩の腕の関節

を握り、

長年の暗殺の経験から、

関節をへし折った。

 

「ぎゃー、許して先輩!」

 

私は、床に這いずり回っている

後輩の顔面を踵で踏み潰す。

 

気絶したようだ。

 

「健一くん、

すぐに手当てしてあげるから、

じっとしてるんだよ」

 

私は健一くんの頭を撫でた。

 

「さあ、次は、誰がこうなりたい?」

私は、残り四人に問いかける。

 

「優香様、許してください」

 

四人とも土下座して

詫びた。

 

「許すわけないじゃない」

 

 

 

 

 

「ウオー!!!」

 

それを聞いた4人は、

気が狂ったように、

私に襲いかかる。

 

『人を殺すということは、

 

同時に、殺されでもいい

 

ということ。』

 

暗殺者にとって『自明の心理』

 

だったはずだ。

 

少なくとも私にとって。

 

 

私は、襲いかかってきた4人を

 

1人ずつ、凶器をかわし

 

殴り倒し、気絶させた。

 

【もう誰も、人は殺さない】

 

私は、健一くんを、手当てした。

 

「はあはあ、ありがとう、優香」

 

少し弱っているが、命は無事な様だ。

私は、胸を撫で下ろす。

「まだ喋らないで、止血が終わってない」

 

私は自分の下着を破り、

 

健一くんの肩に巻きつける。

 

なかなか出血が止まらない。

 

お願い、止まって!

 

 

 

 

無事、出血が止また。

 

「もう、動いていいよ」

 

「ありがとう」

 

「もう、心配したんだよ」

 

私は、健一くんを抱いた。

 

嬉しくて、また喋って、

 

くれたことに泣いた。

 

 

 

人は、嬉しくてもこんなに泣くんだ。

 

 

私の人生で初めてそう思った瞬間

 

だった。




暗殺者が恋をして人を生かそうとすると、
その人は、
どんな気持ちになるのでしょうか。
過去の罪に対しての制裁の意識と
恋人との未来に対しての希望。
二つの排反する気持ちのジレンマ
を抱き続け悩み苦しんだ挙句、
辛い道を行くことになってしまうのでしょうか?
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