鮮血のカタルシス   作:ネコ缶

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二十五年前

天雅 真
(暗殺部隊の総長で
悪法、『社会否貢献者教育法』
つまり、ニートは殺してもいいという法
を施行した張本人)が、法科大学で弁護士に、
なろうとしていた頃の話である。



サイファ 前半

 

大学病院にて

 

「修兄貴は、俺なんかより優秀だな。

三十の若さで、

大学病院の天才外科医と

称せらているんだから。

俺なんて、ギリギリで法科大学に入った

ようなものなのに」

 

白衣を着た兄貴は、かっこよかった。

 

「真、お前だって、これから、

俺と同様に、困ってる人を助ける

為に、必死で勉強してるんじゃないか。

 

こんな、お兄ちゃんの昔からの約束

を守ってくれる弟がいて俺は、

鼻が高いよ」

 

「ああ、ありがとう、兄さん」

 

 

クソ、俺は、困ってる人を救う為に、

 

法律を学んでいる。

 

それなのに、大学では、法律の抜け道を

 

探したり、悪法を使った、

 

論点のずらし方、

 

弁護士、検事は、みんな

 

俺が、絶対的に正しいと思ってきた『法』

 

を自分の成果を挙げる為に、

 

解釈を捻じ曲げ、曖昧にして、

 

悪用する。

 

 

法廷では、どうでもいい事に時間をかけて、

 

その間に、

証拠を捏造、

削除するのだ。

 

 

『正しい法』を

『悪用』する。

 

これが、

 

優秀と呼ばれる、

 

弁護士、検事、官僚、政治家の

 

『テクニック』何だ。

 

これが、大学で学ぶことなのか。

 

皮肉すぎる。

 

 

一方、兄貴は、

 

老若男女誰でも、対等に接し、

 

明るく、手術はおろか、回診、

 

看護師に対する指導も、人一倍

 

丁寧で、自分を犠牲にしてまでも、

 

人を助けるという

 

心臓外科医の鏡であった。

 

そして、今までミスをした事がない

 

という『天才』だった。

 

 

「兄貴、たまには俺みたく、

休みを取ったり、

息抜きもしたらどうなんだい?

俺にとっては怠けだけど、

兄貴とっては、それも『仕事』だよ」

兄貴、頼むから、睡眠だけはとって

くれ。

 

「ありがとう。だが、俺には、

これから、『未来』のある患者達が

待っているんだ」

 

ピピピピ

 

「すまない、そろそろ、

回診の時間だ。

久々に話せて楽しかった」

 

俺は、病院を後にして、

 

大学の図書館に勉強しに行った。

 

俺も、兄貴に負けず、

 

(もう負けているかwww)

 

頑張らなきゃな。

 

 

 

半年後、

 

俺が、大学で授業を受けている

時だった。

 

俺の携帯電話が鳴った。

 

「お兄様が、回診中に倒れました。

おそらく、重度の貧血だと思われます

至急、来てください」

 

「何だと!」

 

俺の声が講堂に鳴り響く。

 

 

俺は、急いで、病院に駆けつけた。

 

 

「兄貴、大丈夫か!」

 

「ゴホ、まったくお前は、

大袈裟なんだから。心配ねーよ」

 

 

「兄貴、、、

やっぱりムリしてんだよ。

休めよ」

 

「すまねーが、

それは難しい相談だ」

 

兄貴は、膨大な量のスケジュール表

を見せてくれた。

 

「俺には、こんなに沢山の患者

が待っているんだ。

そして、俺は、

普通の医師の倍丁寧にやる。

人命相手に妥協は許されないんだよ」

 

「そうは言ったって………」

 

兄貴がこうなってしまっては、

もう止められないのは、

弟である俺がよく知っていた。

 

両親が心臓発作で死んでから、

 

一人で俺を育ててくれたし、

 

みんなには、神の様に優しい。

それも、

 

兄貴の絶対的な『正義感』

 

からくるものであった。

 

「兄貴くれぐれも、度を超えた、

無理だけはすんなよ

(多少のムリは何弁言っても通じないけど)」

 

俺はそう言うと

長居すると休養の邪魔になると思い、

静かに病室を出て、家に帰った。

 

 

 

もう少し、いた方がよかったかな。

 

 

 

一ヶ月後ついに、事件が起きた。

 

俺は、すぐさま、

「兄貴!!!どうして、

車なんかに飛び込んだんだよ!

自殺は、最も『悪業』だって言ってたよな!!!」

 

俺は、声を荒げる。

 

「俺は、二週間前、医療ミスで人を殺した」

 

修兄貴が、電池が切れかけた玩具の様に

 

弱った声で呟く。

 

「その話は、前に看護師から聞いた。

あれはもう、ほぼ事故だったそうじゃないか」

 

 

限りなくゼロに近い医療ミス

 

兄貴は、難しくて、

 

自身のキャリアを守る為にみんな、

 

ベテラン医師がサジを投げた

 

難しい手術に、

 

医師として数人の若い看護師、

 

だけで立ち向かったらしい。

 

だが、後半、兄貴はめまいに

 

襲われたが何とか手術を終えたらしい。

 

だが、この時、

 

既に兄らしからぬ

 

医療ミスをしてしまっていたらしい。

 

しかし、本来ならそれは、

 

看護師が注意してれば、スグに気がついた

 

程度のものらしい。

 

つまり、兄が全て悪いのではない。

 

でも、ここが兄らしいところで、

 

前途有望、

未来のある若き看護師の為、

 

全責任を負ったらしい。

 

『医師自身、自身のミスは、

もとより、

指導した看護師のどんなミスも

また、総て医師の責任なのである』

 

兄の口癖だったらしい。

 

無論、医院長や口だけのベテラン医師

 

からは、ひどいパッシングをうけ、

 

いまは、ほぼ解雇の状況らしい。

 

 

「兄貴、人間はやる気さえあれば、

何度でも何度でもやり直せるんだ!」

 

 

「やり直せないね!」

 

 

兄貴の目は、、、『死』んでしまっていた。

 

「俺はもう、『人間』、が嫌なんだ」

 

俺は、時間がまるで、

 

手回し式のオルゴールの様に、

 

ゆっくりになったりした気がした。

 

「最近、手術で生かした子供に、

『人殺し』て言われるんだ。

 

一応、その子の母親が注意して

叱るんだけど、

なんか、その母親も、

微笑しているんだよ」

 

 

「そんな、気のせいだよ。

子供がただ戯れただけだし、

親だってそう見える

顔つきをしていただけで、

本当は、

本気で怒っていたんだよ。

 

第1、兄貴は何時も、

物事は、何でもかんでも、

 

決めつけは良くない、

 

もっと視野を広く持てって、

 

言ってただろ」

 

兄貴は、俺の言葉を無視して、

 

続ける。

 

「 昨日、『元』患者だった

おばさま達の会話を松葉杖引きながら、

壁越しで聴いたよ。

 

『そういえば、天雅修先生、

どうなったのかしら』

 

『やっぱり、次期副医院長

はおろか、クビだってウワサ

だってあるらしいじゃないのよ』

 

『修先生は、キャリアがな〜〜

もったいないよ〜〜』

 

クソ!何がキャリアだ!

何が地位だ!

 

医師は、

技量だけが総てではないのか‼︎

 

少なくとも、俺の患者、

 

偉そうな医師達にサジを投げられ、

 

追いやられた患者達、

 

絶望を味わった患者達だけには、

 

俺の気持ちが、

 

わかって欲しかった」

 

 

「兄貴」

 

俺は暫く、

言うことが見つからなかった。

 

そうだ!

 

「兄貴、結婚してついに、

赤ちゃんが生まれたんだろ‼︎

別に、これからは、妻と子と

仲良く暮らせばいい。

時間もたくさんある。

だけど、

 

自殺なんてするほど

暇じゃ無いんじゃないの?」

 

 

 

 

「ふふ、別れたよ」

 

 

「えっ」

俺は、

 

軽率な偽善じみた発言が

 

いかに、重罪か理解した。

 

「裏切られたって。

私は、外科医と結婚したのであって

失業者と結婚したのではないって。

慰謝料と称してほぼ全財産持ってかれたよ。

 

哀しかった。

 

プロポーズの時、あんなにも、

修の人格、人間性が好きって

言ってくれたのに、、、。

 

でも、親権だけは、

子育てがしたく無いと言う理由だけで

俺に擦りつけた。

 

あんなに可愛い娘なのに‼︎」

 

 

兄が泣いている。

あんなに強かった兄が

泣いてしまっている。

 

「兄貴、そんな暗い話よそう。

今度は俺が働いて支援し返すから、

娘と暮らしてくれ。頼む‼︎」

 

「ありがとうな。

俺には何もない訳では無いんだな。

立派な弟に、可愛い娘がいるんだな。

お前に、

頼みがある。

もし、俺が死んだら、『娘の父親』

になってくれ」

 

「解ったから、

何でもするから、

そんな哀しいこと、

言わないでくれ」

 

気がつけば俺も、泣いていた。

 

「ありがとう。

話して少し、落ち着いたよ。

もう大丈夫だから、

家に帰ってくれていいよ。

 

【明日会おう】 」

 

 

俺は、家に帰った。

 

次の日、約束どうりに

 

病院に行った。

 

やけに、病院が騒がしい。

 

ガヤガヤガヤガヤガヤガヤ

ガヤガヤガヤガヤガヤガヤ

 

 

 

兄は、自殺をしていた。

 

 

舌を斬ったらしい。

 

 

 

 




書いてて自分でも悲しくなりました。
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