いせまじょ ~異世界の魔女達の夜~   作:ジト民逆脚屋

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いやぁ、あれですね。境界線上のホライゾン十巻、挿し絵に尻神様が何回も降臨していましたね。
尻推しか……!


〝魔法〟の始祖

 何が一体、どうして?

 

 公国魔導部隊〝バーバヤーガ〟隊員シルヴィア・クシャトロワは鈍い汗を流した。

 彼女の目の前には、連邦を除く五国のネームド魔女が勢揃い。下手をしなくても、世界を相手に戦える戦力だ。

 

 それが今、何故か自分という最底辺の魔女に注目している。

 一体何をどうしたらいいのか分からず、混乱するシルヴィアに一つ声が掛けられた。

 

 「同志軍曹、あまり気にする事はないぞ?」

 「いや、ブレーメイヤ少将。私にそれは無理です……」

 

 気にするななんて無理だ。

 自分はネームド魔女の様に、精神異次元系ではない。

 精神通常系だ。つまり、一般魔女。

 

 「シルヴィア・クシャトロワ軍曹様、あまり気をお詰めになられない方が宜しいかと……」

 

 良い人だー。

 踊り子みたいな露出過多な格好をしているから、この人ももしかすると精神異次元系ではと疑っていたが、自分と同じ精神通常系だ。

 

 「〝魔神〟様の問いに答えられなければ、魂ごと燃やされて消えるのですから、気負っても無意味です」

 

 前言撤回。自分以外全員精神異次元系だ。

 最早、この場で平静な精神なのは自分だけだ。

 残りは手遅れ、時既に遅し。

 

『では、シルヴィア・クシャトロワよ。我の問いに答えよ』

 「ひゃ、ひゃい!」

 

 フレスアードが持つ長杖から重厚な声が尋ねてきた。

 

『〝魔法〟の始祖を貴様は知っているか?』

 「ふぇ?」

 

 問いの意味をいまいち理解出来ず、気の抜けた声が出た。

 〝魔法〟の始祖、何だそれは?

 シルヴィアも魔女だ。〝魔法〟に関する知識は持っている。だが、〝魔法〟の始祖という意味が解らない問いに、彼女は混乱した。

 

 ーー〝魔導〟の始祖の一人がテレジア・ディートリッシュ陛下だから……ーー

 

 どうなるんですか?

 そう言えば、自分は座学の成績もあまり良い方ではなかったと、シルヴィアは思い出す。

 

 ーーせ、生活魔導の成績は学内トップ……!ーー

 

 何故士官学校受けた?

 答えは単純、食いっぱぐれないからだ。公国は身分主義というか、貴族社会の名残が今も多く残っている。

 その為か、上に逆らったりすると、気付けば失業なんて事がざらにある。だが、軍に入れば余程の事が無い限りクビは無い。自分から辞めるか、天に召されるかだ。

 

『どうした? 答えられぬか?』

 「あ、いやいや、待ってくださいって!」

 

 ーー待って、本当に待って!ーー

 

 チラリと自分の上官を見る。

 パイプから紫煙を吐き出して、御機嫌な御様子。隣の巫女にえらく構いたがっているが、久々に会った姪に構いたがる叔母の気分なのだろうか?

 あ、うざがられて凹んだ。

 兎に角、上官は当てにならない事が解った。ならば、もう自棄だ。

 正解か不正解か知ったことか。大体、正解があるのかこの問いに?

 

『シルヴィア・クシャトロワ、答えよ』

 「〝魔法〟の始祖なんて知りません。というか、〝魔法〟って何時始まったんですか?」

 

 シルヴィアの答えに、その場に居た全員が目を見開いた。

 

『それが貴様の答えか?』

 「いや、あの、〝魔導〟の始祖のお一人がテレジア・ディートリッシュ陛下ですよね。だから、〝魔法〟の始祖も居るんじゃないかなって思うんですけど、私は知りませんし、〝魔法〟が何時始まったのかも知りません」

 

 ーーもっと真面目に授業受けとけばよかったー!ーー

 

 他の魔女達なら答えられたかもしれない。

 〝魔法〟の始祖という事は、〝魔法〟の始まりという事であり、自分達が生きている世界の始まりという事だ。

 シルヴィアの知識と記憶には、〝魔法〟の始まりに関するものは無い。

 流石に、そんな重要な事を忘れているとかは無い筈なので、シルヴィアはあまり得意ではない言い訳を必死に考えていた。

 伝説の〝魔神〟に言い訳が通用するとは思えない。〝魔神〟の炎に焼かれれば、魂ごと消えて無くなる。

 どうせ燃やされるなら、足掻いて燃やされてやる。

 シルヴィアは決意(自棄)を胸に、姿の見えない〝魔神〟に向き合った。

 

 「〝魔法〟の始祖という事は、この世界の始まりと言っても過言ではない筈です。だって、〝魔法〟が無ければ今の世の中を形作っている〝魔導〟も無い筈です」

『………』

 

 〝魔神〟は黙して語らず、シルヴィアは一息肺の空気を入れ換えた。

 

 「私は最底辺の魔女です。しかし、魔女です。仮にでも〝魔導〟を扱う者が、その母体となった存在を知らないというのはおかしいかもしれませんが、私は〝魔法〟の始祖を知りません」

 

 言い切り、震え出す。なんだか論点がズレていた様な気もするが、知らないものは知らないのだ。

 〝魔法〟の始祖、それはつまり、この世界を作った神か何かだ。

 神の存在を論ずるという訳ではないが、神を知っているかと問われれば、答えはイエス。

 神の事を知っているかと問われれば、答えはノーだ。

 そんな、聖書か神話で語られている事しか知らないのに、知っている事になるのか、真実なのか、そんなの誰にも解らない。

 

『ふむ。鎌槌、ナジェーリア・リトリア、魔女、これが貴様らの答えか?』

 

 震え目を回しているシルヴィアを横に、〝魔神〟が魔女達に問うた。

 

 「そうである」

『そうか』

 

 一拍置いて、〝魔神〟が笑った。

 

『正解だ、魔女。貴様らは、我の問いに答えた』

 「ふぇ? 正解!」

 

 目を回し震えながら、頭からエーテル煙を出していたシルヴィアがリューヌに介抱されながら復帰した。

 

『ああ、正解だ。魔女、シルヴィア・クシャトロワ、貴様が正解した。誰も〝魔法〟の始祖を知らぬ。それが答えだ』

 「誰も知らない。それは貴方もですの?」

 

 暇だったのか、急に構ってきたナジェーリアを手で押し退けながら、菊代が〝魔神〟に問うた。

 そして、〝魔神〟が答えた。

 

『ああ、その通りだ。万に近い年月を在り続けたが、我の存在が確立した頃には、既に〝魔法〟は存在していた』

 「という事は、〝魔法〟は〝魔神〟様よりも遥か太古に確立していたと?」

『その通りだ、我が魔女よ』

 「じゃあさ」

 

 そこまで言ったところで、ウルレイカが手を上げた。

 

 「〝魔法〟はどっから来たのさ? 何も無い所から、いきなり生えたりしないでしょ?」

 「まあ、それに関しても」

 

 同志軍曹の意見を聞こうではないか。

 濡れ布巾を頭に乗せ、脳の冷却をしていたシルヴィアがスゴい顔でナジェーリアを見た。




次回

頑張れ同志軍曹、君が主人公だ!
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