牌に愛されし少年   作:てこの原理こそ最強

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第9話

長野に引っ越して来て二週間ぐらいがたった。今日はなんか父さんの友達が近くに住んでるみたいだから一緒に行くことになった。先にその父さんの友達はなんて名前の人から聞いてみたら“宮永”と聞いたときはやっぱりと思ってしまった

 

自宅から歩いて十五分くらいのところにその宮永家はあった。生前に見ていたアニメとそのまんまの通りに建っていた

 

「よぉ!久しぶりだな!」

 

「あぁ。よく来たな」

 

家の前には既に宮永さんのお父さんが立っていた。父さんは興奮気味に手を上げながら呼びかけた

 

「まぁとりあえず上がっていけよ」

 

「あぁ、邪魔するよ」

 

「お邪魔します」

 

父さんに続いてオレも家に上げてもらった

 

「お父さん、お客さん?」

 

「あぁ」

 

「っ!」

 

そう声をかけながら二階から降りてきた二人にオレは驚いた。宮永 咲(みやなが さき)さんがいるのはわかっていたが、まさかまだお姉さんの照(てる)さんがいるとは思っていなかったからだ

 

「うちの娘達で姉の照と妹の咲だ」

 

「こんにちは」

 

「…こ、こんにちは」

 

照さんの方は笑顔で挨拶してきて咲さんの方は人見知りを発動しているのか一応挨拶はするが照さんに隠れている

 

「どうも。君達のお父さんとは学生のときの知り合いでね。あ、こっちがうちの息子だ」

 

「翔です」

 

オレは丁寧にお辞儀をしながら挨拶を返す

 

「照が二個上で咲が君と同い年だ。仲良くしてやってくれ」

 

「はぁ…」

 

「そういえばお前はまだ打ってるのか?」

 

「麻雀か?あぁ、娘達もできるよ」

 

「そうか。なら翔、二人の相手してくれば?」

 

「いきなりだな。まぁお二人がいいって言うならオレもいいけど…」

 

「なら私も入れてもらおうかしら」

 

そう言いながらキッチンからお茶を持ってお母さんと思われる人が出てきた

 

「そっちも家族でするのか」

 

「まぁな」

 

「えっと、翔くんでいいかしら」

 

「はい」

 

「じゃあ、翔くん。こっちにいらっしゃい。照と咲も」

 

オレは三人について行ってリビングから出た。そして案内された部屋には原作でもあった全自動の麻雀卓があった

 

「さ、始めましょう」

 

まさか小六にして全国一位と魔王とそのお母さんと麻雀を打つことになるとは…

それに不安要素もあった。一つ、二人のお母さんの実力を全く知らない。二つ、二人は原作と同じぐらいの能力をもう持っているか。三つ、咲さんはもうこのころからプラマイゼロをやっているのか、だ

 

まぁあれこれ考えても仕方ないのでとりあえず打ってみることにした

 

一局目、原作通りなら照さんは和了らない。ホントかどうかわからないからとりあえず和了っておきたいかな…

 

「ツモ。2000・4000」

 

今回は和了るのを優先したため満貫を和了った。すると()()がきた。そして始まった

 

「ツモ。300・500」

 

「ツモ。500・1000」

 

「ツモ。2000オール」

 

照さんの能力はもうできているらしい。しかし…

 

「ロン。12000」

 

「…」

 

まだ未完成らしくお母さんにハネ満の直撃を食らった。顔には出さないが動揺しているみたいだ

 

「ツモ。1000・2000」

 

その動揺の合間にオレが上がりトップに立った。そしてオーラス、これまで動かなかった魔王が動いた

 

「カン」

 

咲さんは暗カンをして王牌から嶺上牌を取った

 

「嶺上ツモ。2000オール」

 

咲さんが和了ってその局は終了した。なんと一位はオレで照さんが最下位という驚きの結果になった。しかしそんな結果どうでもいいと言うように照さんとお母さんは咲さんを睨んでいた。オレはそれに気づいて言葉を発する

 

「あの〜」

 

「あ、なんでしょうか?」

 

「少し咲さんをお借りしてもいいですか?」

 

「…えぇ」

 

「どうも。咲さんちょっと」

 

「えっ!」

 

オレは咲さんの腕を掴んで部屋から引っ張り出した

 

「咲さん、あれはわざとですか…?」

 

「……なんのことかな…」

 

()()()()()()ですよ」

 

「っ!君には関係のないことだよ…」

 

「そうかもしれないです。でもそれを見て明らかに場の雰囲気が変わりました」

 

咲さんも自覚しているのか俯いたまま黙ってしまった

 

「なぜこんなことを…」

 

オレはその答えを知っている。でも彼女自身の口から聞かないといけない気がした

 

「……私、家族で麻雀やってるんだけど、負けるとお菓子がもらえなかったから勝とうと頑張ってたの…でも今度は勝ち続けたら怒られたんだ。したらこんな打ち方のなっちゃった…」

 

咲さんは目尻に涙を浮かべながら話してくれた

 

「咲さんは優しいんですね。でも今その打ち方をしてて()()()()()()?」

 

「っ!」

 

「楽しくなければそのうち麻雀が嫌いになっちゃいますよ?」

 

「…………たい

 

「ん?」

 

「私も楽しく麻雀したい!」

 

「ならもう一回やりましょう。今度は楽しく」

 

咲さんには笑顔が戻りまた部屋に入る。そして席替えをするとき照さんがすれ違いに「ありがと」と言ったのが聞こえた

 

そして咲さんが変わったことに気づいた照さんもお母さんもさっきまでとオーラが完全に変わっていた。本番はここからだな…

 

「ツモ。嶺上開花、1300・2600」

 

「ツモ。嶺上開花、2600オール」

 

開始早々咲さんの二連続和了った。さっきとは明らかに感じが違う。和了る度にホントに楽しそうに笑顔を見せている

 

「ツモ。3000・6000」

 

すると次にお母さんが和了った。しかもまたハネ満

 

「ロン。1000点」

 

「ツモ。1300オール」

 

「ツモ。2700オール」

 

また始まってしまった。しかも照さんが親のときという最悪の状況で

 

「ツモ。4000オール」

 

やべぇな。これ以上は…すると

 

「ポン」

 

咲がお母さんから牌を鳴いた。オレはその意図を理解して同じ牌を切る

 

「カン。ツモ。嶺上開花、1500」

 

大明槓からの責任払いでオレが全て払った。しかしそれは照さんを止めるための狙いでありそれは成功した。だがオレが一人沈みであることに変わりはない。なんとかして挽回しないと

 

しかしオレは和了れないままオーラスまできてしまった。オレの点数は既に1000点を切ってるし他の三人は均衡してその差はほとんどないに等しかった。このラス親でなんかしら和了りたい。オレはそんな願いを込めてサイコロを振り山から牌を取っていく

 

最初の手牌はこうなった

 

{一萬二萬六筒七筒九筒東東東北北南南西}

 

これは完全に小四喜か字一色に持ってくしかないじゃん。しかもツモったの{北}だったから{九筒}を切った。ここまではまだ警戒もクソもないので三人もそれぞれ第一打目を切っていった

 

二巡目、オレが引いたのは{發}だったのでとりあえず手牌に加え迷いの末に待ちの多い{五筒八筒}待ちにするため{一萬}を切った。そして未だに字牌が出ていないのに不審に思ったのか照さんと目があった。咲さんは{九萬}を切り、照さんは{九筒}を切った。お母さんは{二索}を切った

 

三巡目、オレの元には二枚目の{西}が来た。これは完全に()()()()。オレはそう思って早く次の番が来るのをウズウズするのを抑え{二萬}を切る

 

四巡目、オレはいらない{七索}をツモってしまった。ホントならツモ切りにするのだがもしかしたら他家がオレの狙っている牌を持っているかもしれないから字牌を出しやすくするために{發}を切った。しかしそれは

 

「ポン」

 

照さんに鳴かれた。やべぇ、やっちまった。しかしその代わりに照さんが切ったのが{南}だった

 

「ポン」

 

オレはすかさず鳴き返す。そしていらなかった{七索}を切って{五筒八筒}待ちの黙聴に取った。照さんもはってるかな。間に合うかな…

 

五巡目、咲さんは{中}を切った。オレはそれに驚いた。{發}が鳴かれてて大三元の可能性もあるのにそれを切ったことに驚いた。すると

 

「ポン」

 

お母さんがそれを鳴いた。そしてオレの番が来た。これを和了れなかったら絶対照さんが和了る。根拠はないがなぜかそんな気がした。オレは絶対これで和了ると願いながら牌をツモった。そして牌はその想いに応えてくれた

 

「ツモ!」

 

{六索七索東東東北北北西西} {五索} {南横南南}

 

「小四喜。16000オールです!」

 

役満和了ってオレが逆転勝利でその対局は終了した

 

「ふぅ〜。ありがとうございました」

 

「ありがとうございました」

 

「ありがとうございました!」

 

「…」

 

緊張の糸が切れたオレの挨拶に返してくれたお母さんと咲さん。照さんは黙ったままだった。咲さんは前の対局とは全く違い、すごく楽しそうな笑顔だ

 

「咲…」

 

「っ!お母さん…」

 

笑顔だった咲さんはお母さんに呼ばれた瞬間表情が強張った

 

「…強くなったわね」

 

「…お母さん」

 

「翔くん、咲をありがとう」

 

お母さんは咲さんの頭を撫でた後にオレに向かって謝った

 

「よしてください。逆に家庭の事情に勝手にを首を突っ込んでしまってすみませんでした」

 

「し、翔くん!わ、私は翔くんのおかげで楽しく打てたの…だから、ありがとう!」

 

「私からも、ありがとう」

 

咲さんに加えて照さんにもお礼を言われてしまった

 

「私達だけじゃあのままだったかもしれない。だから、本当にありがとう」

 

「お姉ちゃん…」

 

「えっと…なら、どういたしまして?」

 

「ふふっ、なんで疑問形なのよ」

 

「え、あ、あははは…」

 

そのときオレは生前も含めて初めて宮永 照さんの営業スマイルではない笑顔を見た気がする

 

「翔!」

 

「は、はい」

 

「お菓子作れる?」

 

「へっ?ま、まぁ…」

 

「じゃあ今度作ってきて!」

 

「わ、わかりました」

 

照さんはオレにお菓子を作れと迫ってきた。これで宮永家の喧嘩騒動は防げたのかな…

 

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