牌に愛されし少年   作:てこの原理こそ最強

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第28話

控え室にはもう部長は戻っていた

 

「戻りました〜」

 

「ただいま♪」

 

「おかえり」

 

「お目覚めか、咲ちゃん。ってなんでそんなに笑顔なんだじぇ?」

 

「ん〜?えへへ〜♪」

 

戻っても咲の笑顔は戻らなかった

 

「あんたぁ、咲になにしたん?」

 

「あははは…」

 

「咲?」

 

「は、はい部長」

 

「はい!」

 

「え?」

 

部長に呼ばれてようやく元に戻った咲に部長はバナナを渡した。咲はそれの意味がわからないようで頭には?マークがいくつも出ていた

 

『副将戦前半戦、開始です!』

 

さて、和に透華さん、モモのいるこの副将戦はどうなかな?

 

東一局も始まり四人とも堅実に打っていく

 

『もったいないな』

 

『はい?何がですか?』

 

『この試合だよ!今年のルールは運の要素が強すぎる。さらに試合数が少ないのも偶然性を高めている』

 

『しかし、プロみたいに年2000試合数なんて学生には無理ですよ?』

 

『去年までは地味な競技ルールだったが今年のルールはまるで一万人の中からより優れた者を選り分けるシステムにも見える。今あそこで戦っているのは堅実に実力を高めた選手なだけに半荘二回で結果を出すのは惜しいのだ』

 

確かにな。デジタルな選手は堅実ではあるが逆に早々崩れたりしない。そんな選手は長期で数多くの戦いをもできるからな。それがたった半荘二回で決まってしまうのは確かに惜しい

 

「リーチ」

 

藤田プロの話に賛同していると風越の人がリーチをかけた

 

「ノータイムでベタおりか」

 

「のどちゃんぽいじぇ」

 

まぁ和だったら二向聴(リャンシャンテン)から親リー相手に勝負はしないだろ

 

透華さんもおりたか。さすがデジタル派。でもたまにだけど透華さん()()なるよな。あの状態になった透華さんは手強かったし、今回は大丈夫なのかな?

 

『流局。風越の一人聴牌となりました。それにしても、堅いメンツですね』

 

『デジタル的には黙にする基準を調整する必要があるな』

 

ー東一局 一本場ー

 

「ロン。1000は1300です」

 

『副将戦、最初の和了りを決めたのは清澄高校原村 和。しかしなんとも地味な和了りです』

 

「地味だじぇ」

 

「ボロボロの配牌から即座に喰いタンとか和らしいけどね」

 

「リー棒供託もあったしのぅ」

 

とりあえず和は一回和了ったな。それに和らしいからこっからエンジンかかってくるかな?

 

ー東二局ー

 

『東二局。親は原村 和です』

 

東二局で和の対面の透華さんの配牌がいきなり両面(リャンメン)十分でいい感じの二向聴となっていた

 

「ポン」

 

これで二副露(ツーフーロ)。連荘狙いか?

 

「リーチですわ!」

 

『龍門淵高校龍門淵 透華、先制リーチだ!このリーチに対し他家はどう出るのか?』

 

三巡目にして透華さんのリーチ。和はどうするか

 

『三人ともベタおり気配。またしても堅い』

 

二副露したのにベタおりを選択するその決断力はマジですげぇな。だが、だからこそ和は強い

 

「聴牌」

 

「「「不牌」」」

 

その局は全員がおりに成功し透華さんの一人聴牌となった

 

ー東三局 一本場ー

 

「リーチ」

 

十巡目に風越の人がリーチをかけた

 

「聴牌」

 

「「「不聴」」」

 

『またもや流局。回し打ちした鶴賀も和了れずに終わりました』

 

モモはまだなんの動きも見せないな。リーチもかけないし。モモもデジタルな打ち手だっけか?

 

ー東四局 二本場ー

 

「チー」

 

「ロン。1300は1900」

 

和は緊張はしているがいつも通り打ててるようだ。合宿での特訓の成果かな

 

ー南一局ー

 

南場に突入して最初の和の手牌は

{一萬一萬六萬四筒四筒六筒九筒四索六索六索北北} {九筒}

となった

 

「対子が五つ、鳴いて対々和(トイトイ)かな」

 

「対子五つは七対子の一向聴(イーシャンテン)暗刻(アンコ)がないこの場合なら対々和より七対子だじょ」

 

「役牌もドラもないからね」

 

「わしゃぁ染めやすそうなら鳴いてくがのぅ」

 

「オレなら暗刻になるまで待ちますかね」

 

「あんたん打ち方は参考にはならん」

 

染谷先輩の指摘に咲以外のみんなに『うんうん』と頷く

 

「ポンですわ!」

 

いきなり和の捨てた{六萬}を鳴く透華さん

 

「おー!」

 

だがそのおかげか和が{六筒}をツモって聴牌

 

『清澄高校原村 和、二巡目にして七対子聴牌です。一方食い仕掛けの龍門淵は断么九(タンヤオ)、ドラ4の一向聴』

 

「なんでリーチしないんですか?」

 

「七対子は待ちを変えやすいからね」

 

「じゃあここで初心者の京太郎に問題だ。七対子の待ちとして{六索}よりよさげな牌は何種類ある?」

 

「えっと、一、二、八、九、字牌だとして既に使ってるの除くと…十五種類か?」

 

「正解だ」

 

「牌の種類は全部で三十五種類だから二回に一回くらいで待ちがよくなるじぇ」

 

「おぉ!算数ドリルの成果出てるな!」

 

「えへん!」

 

高校一年生にもなって算数ドリルって…やっぱりおかしいよな

 

「リーチ!」

 

そして和がリーチをかけた

 

『清澄高校原村、風越女子深堀の捨てた{六索}を見逃してツモってきた一枚切れの{西}単騎でリーチだ!』

 

『あぁ!そのうちの一枚を龍門淵 透華が一発で摑まされました!』

 

『最悪だが、これはおりるだろう』

 

透華さんが切ったのは和の元物である{四索}

 

『おりたー!これはまた流局か?』

 

「なんでさっきの{六索}で和了らなかったんだろう?」

 

「それじゃあたったの1600点。でもリーヅモで裏のれば12000点だじぇ!」

 

「のれば、だろ?」

 

そらから回って回って八巡目

 

「ツモ」

 

和が和了る

 

「1600・3200です」

 

裏は残念ながらのらなかった。そしてそれを和了った瞬間、和は熱を出したように顔が赤くなった

 

「あぁぁぁ!!」

 

「原村さん!」

 

「のどちゃん発熱!相手は死ぬ!」

 

「勝手に殺すなよ」

 

「合宿のときでも何度かあったわね。普段からクールな和がペンギンを持つとさらに冷静に、まるで機械のように無表情になっていくんだけど…」

 

「ある点を超えると急にのぼせたように表情が柔らかくなりましたね」

 

「こうなったのどちゃんは手がつけられないじぇ!」

 

「そうね」

 

覚醒したかな。化けた和はまるで神の化身。あの場に天使が舞い降りる。そういえばネットのアイコンも天使みたいだったな

 

「でも和ってオレが対面にいるときはずっと顔赤かったような…」

 

「それは今のとは別物じゃぁ」

 

オレはなにが違うのかさっぱりわからなかった。てかさっきから透華さんずっとニヤけ顔になってるから、むっちゃ気味が悪いですよ…

 

『南二局も流局!風越女子深堀、またしても和了れず。この膠着状態から抜け出すのは一体どの高校か』

 

ー南三局 一本場ー

 

和の配牌は

{一萬二萬二索五索六索八索八索六筒八筒九筒中西白} {中}

 

「ドラが二つ。でももう親が捨ててるじぇ」

 

ドラは{中}だが親が既に一枚捨てていた

 

「ポン」

 

風越の人がモモから鳴きを入れる

 

「リーチっす」

 

『鶴賀学園東横 桃子、リーチです』

 

モモもようやくリーチか。この試合初めてじゃね?

 

『あぁっと!続いて清澄高校原村 和も聴牌』

 

「これは{二索 八索}待ち?」

 

「{中}もあるじょ?」

 

「さっきの{二索}切りが裏目になった形ね」

 

「あ、そっか!振り聴!あ、でも和って振り聴が多くてもリーチしてたような…」

 

「貴様の目は節穴か!この犬!」

 

「犬は関係ないだろ!」

 

「犬ー!犬ー!」

 

また夫婦漫才が始まってしまった

 

「もう残りは{八索}と{中}が一枚ずつだけね」

 

「しかも振り聴じゃけぇ他家から出ても和了れんわ」

 

「いいな」

 

『ん?』

 

咲のいきなりの言葉にみんなが先の方を向く

 

「原村さんすごく楽しそう。合宿でもこういうときの原村さんはすごかった」

 

「お前も早くあそこに行きたいか?」

 

「うん!早く打ちたい!」

 

「そうか」

 

咲なら大丈夫だとは思うが、衣姉さんに潰されないかは心配である

 

『こ、これは!清澄高校原村の最後の当たり牌が鶴賀学園東横の手に。しかも原村は振り聴のためこの{中}で和了ることはできません!最後の希望が今、絶たれました!』

 

『…違うだろ?』

 

『は?』

 

「ポン」

 

和はモモが出した{中}を鳴く

 

「待ちを変えた?いつもなら{中}を安牌(アンパイ)にしておりるんじゃ?」

 

「鳴いても安牌三枚。しかもこの五面張(ゴメンチャン)はたくさんの和了り牌が残ってるじぇ!」

 

「ツモ。2100・4000です」

 

『原村 和、鶴賀と風越を躱して鮮やかな和了り。さらにリードを広げました!副将前半戦はついにオーラスを迎えます』

 

もうオーラスか。流局が多かったせいか早く感じるな

 

『し、しかもここまで原村以外誰も和了っておりません!原村以外が焼き鳥状態!』

 

そういえばそうだな。全然気づかなかった

 

『このオーラスも原村が制せばパーフェクトゲームとなります』

 

「和、エンジンかかってきたみたいね」

 

これからはこの状態が最初から発揮できるかが課題だな。っ!この感じ!透華さん…

 

『副将前半戦もいよいよオーラス。現在、清澄高校の原村 和がトップ。しかもまだ彼女以外誰も和了っていません。パーフェクトゲーム寸前です!』

 

ー南四局ー

 

『さぁ、オーラス開始です。果たして原村 和のパーフェクトゲームは達成されるのか?』

 

十一巡目がすぎてラス親の透華さんが聴牌

 

『龍門淵 透華、リーチせずに黙聴に取りました。この一撃が原村 和のパーフェクトゲームを阻止してしまうのか?』

 

どうもさっきから和よりな実況なんだよな。確かにパーフェクトゲームになったらすごいし盛り上がるけど実況は中立であるべきでしょ

 

『一方、原村 和は配牌、ツモ共に最悪。まだクズ手の三向聴(サンシャンテン)です』

 

まぁ麻雀だしいい手が来ないときもあるわな

 

『これはベタおりですか?』

 

『七対子なら二向聴。ま、龍門淵の捨て牌から聴牌臭を感じて様子見といったところか』

 

「リーチですわ!」

 

ありゃ?闇で11600(ピンピンロク)あったらデジタルはリーチしないんじゃ?いつもの透華さんなら点数より和了率を優先するよな…どうしたんだろ

 

他家は三人とも現物を処理

 

「ツモ!8000オールいただきますわ!」

 

『お、親倍!しかもこれで原村 和のパーフェクトゲームを阻止した!』

 

あらら、逆転されちったか

 

「さぁ!連荘でしてよ!」

 

透華さんを調子付かせちまったかな

 

「いきなり大物手がきたじょ!」

 

「逆転か。でも勝負が終わったわけじゃないわ。和ならまだやれるはずよ。和なら」

 

「のどちゃん…!」

 

和はデジタルに徹するけど透華さんはたまにデジタルから外れることがあるからな。予測しづらい

 

『龍門淵はオーラスの一撃で清澄高校を逆転。一転してトトップに躍り出ました!』

 

十巡目、今度もまた透華さんが聴牌。今度は闇でいくのかリーチをかけずに{五索}を切った

 

「ロン。メンタン、2600(ニンロク)2900(ニック)っす」

 

モモが初めて和了ったけど、あの透華さんが無警戒でリーチに振り込んだ!?どういうこと!?

 

『鶴賀学園東横 桃子、トップの龍門淵高校から2900の和了り。これで前半戦は終了です』

 

「原村さんなら逆転されて終わり…」

 

「それでも!それでものどちゃんなら…のどちゃんなら後半やってくれるはず!のどちゃんなら!」

 

「う、うん。そうだよね」

 

「そうだじょ!」

 

何回のどちゃん言うねん。まぁ後半期待しましょうか。それよりモモの和了り方、透華さんの振り込み…妙だな…

 

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