県予選は団体戦も個人戦も終了してあとは全国大会の日程が来るのをを待つだけとなった。団体戦、個人戦共に全国出場を決めた“清澄高校”はすぐに注目の的となった。今日は放課後に雑誌のインタビューがあると聞かされている。ちょうど今和がインタビューを受けているところである。そのようすを少し離れたところのベンチに座って眺めているオレと咲であった
「おーい、咲ー、翔ー」
「京ちゃん」
「なんだ?」
「ほれ」
こんな暑い中走りながらやってきた京太郎は咲に一枚の紙を渡した
「夏祭り」
「そ、今週なんだ。期末テストも終わったばっかだし、ちょうどいいだろ?」
「うん、そうだね。麻雀部のみんなも誘って行こ?」
「もちろん!翔も来るよな?」
「あぁ…わりー。先約があるんだ」
「えぇ!」
「なんだ。それなら仕方ねぇな」
「仕方なくないよ!翔くん、私達と行けないの!?」
「だから先約があるんだって」
「誰!誰と行くの!」
「いろんな人とだよ」
せっかくなんだからみんなで楽しんでくればいいのになぜか咲はオレが行かないのに納得が行かないらしい。こっちも大変だったんだぞ…都合あわせるのとか時間調整するのとか…
ー数日前ー
よっしゃ、今日はこんくらいで大丈夫だろ。もうすぐテストだから復習ちゃんとしないとな。まぁ赤点はないだろう
PLLLL…
そろそろ夏の到来を肌で感じるぐらいの気温の中、まだうちわだけで頑張っているオレの携帯がなった。画面には『モモ』と表示されていた
「もしもし、モモか?」
『はいっす。翔くん、今大丈夫っすか?』
「あぁ、大丈夫」
『よかったっす。それでなんすけど、来週末に夏祭りあるの知ってるっすか?』
「そういえばポスターが貼ってあったな。それがどうかしたか」
『翔くんは、もう一緒に行く人決まっちゃったっすか…?』
「いや、特にそういう人h『本当っすか!!』…お、おう…」
『じゃ、じゃあ…私と行かないっすか…?』
「ん?逆にオレとなんかでいいのか?」
『もちろんっす!』
そうなのか。まぁこのところモモと遊びに行けてないし県予選とかもあってなるたけ合わないようにしてたからな
「う〜ん…じゃあ行くか」
『ほ、本当っすか!いいんすか!?』
「お前から誘ったんだろ?それともやめとくか?」
『絶対行くっす!』
「そっか。なら咲とか京太郎も誘っていk『ダメっす!!!』…なんでだよ」
本日二度目の食い気味返事。オレを誘ったってことは幼馴染みんなで行きたいってことじゃないのか?
『こ、今回は二人っきりで行きたいっす…ダメ、っすか…?』
「あぁ…わかった。今回は二人で行こう」
『ありがとっすー!!じゃあ時間とかはまた連絡するっすね』
「おう」
そこで電話は切れた。どれだけ夏祭りが楽しみかわかるくらいの声の明るさだったな
コンコン
するとそけへオレの部屋のドアをノックされた
「はいはい」
『翔くん。今いいかな』
「美穂子さん?いいよ」
『それじゃあ少し失礼するね』
ノックした人の正体は美穂子さんだった。何やら緊張してる感じの声のトーンだけど今更どうしたんだろ。それに入ってきた美穂子さんの頰が少し赤く見えるのは気のせいかな
「どうしたの、美穂子さん。今更オレの部屋に入るのにノックとかいらないのに」
「い、一応毎朝ノックしてるのよ?翔くんがいつも寝てるだけで」
「あぁ。いつも感謝してます」
「ふふっ、どういたしまして」
「それで?どうしたの?」
「あ、実はね…これなんだけど」
そう言って見せてきたのはモモが言ってた夏祭りのポスターだった。なんか嫌な予感…
「な、夏祭り…」
「うん。それでこの日はコーチが休みにしてくれて…」
「へぇ〜。風越にしては珍しいな」
「うん。だからもし翔くんがよかったら、一緒に行けないかな…って思ったんだけど…」
やっぱりかー…う〜ん…もうモモと約束しちゃったしな…
「えっと…無理なら、いいんだ…」
そんな悲しそうな顔しないでー!!
「と、途中からでもいいなら…」
「本当に!?」
「あぁ。でもたまの休みをオレなんかと過ごしていいの?」
「もう。翔くんはもう少し女心を知った方がいいよ?」
「いや、オレ男だし…」
「私は翔くんと過ごしたいの」
「わ、わかったよ」
こうしてオレは次の夏祭りを幼馴染の女の子と隣の家のお姉さんとの二段階で行くことになった。モモに言ったらめっちゃブーブー言われたけど全国に行くまでにまたどっか行く約束で事無きを終えた
このあと透華さんからも連絡があって龍門淵のみなさんと一緒にと夏祭りに誘われたがさすがに断ったら衣姉さんが大泣きしてしまったらしい。すぐに龍門淵邸に出向いて泣き止むまで衣姉さんの言うことを聞いてたらいつの間にか夜で泊まる羽目になるとは思わなかった…そのときの一さんはなんか呪文のようなものを唱えててちょっと怖かった…
こんな感じのため咲達とは夏祭りには行けないのだ
「夏祭りか!」
「うぉっ!」
京太郎がニヤニヤしながら何か妄想の世界に浸っているところへ突然優希が現れた
「なんだよ突然に!」
「祭りなら私にお任せだじょ!」
「浴衣からのぞくセクシーな姿でみんなをメロメロにしてやるじぇ!」
「また己とは程遠い考えを…」
さすがに優希にセクシーという言葉は似合わないな
「翔くん!まだ話は終わってないよ!」
咲のお説教はまだ終わってなかったらしい…
「そ、そういえば優希。何か用か?」
「翔くん!」
「お!忘れてたじぇ!ビッグニュースだじぇ!部長から聞いたけどまたまた合宿が予定されてるらしいじょ!」
「そういえば全国前に合宿があるって和が言ってたな」
「その通り!来週末にやるらしいじぇ。しかも部長が言うにはビッグゲストが用意されてるらしいんだじょ!」
「ビッグゲスト?」
「なんだそれ?」
「もしかしたらイケメンカリスマエステキシャンがやってきて咲ちゃんや私のをのどちゃんぐらいのわがままおっぱいにしてくれるかもー!」
「誰がわがままおっぱいですか?」
「うおっ!のどちゃん!」
「原村さん。取材終わったの?」
「今、終わりました」
「人気者は大変だな」
いつの間にやら取材を終えた和が戻ってきていた
「翔さん」
「ん?」
「次は翔さんをお呼びです」
「…マジで?」
「はい」
和や咲ならともかくオレなんかに聞くことなんてないだろ
「あの、翔さん…」
「ん?どうした?」
「このあと優希と勉強しようと思ってるんですけど、もしよろしければご一緒にお願いできませんか…?」
「オレがいなくても和の成績で教えられたら優希も大丈夫だろ」
実際和は学年でも十番以内には入る学力の持ち主だからな
「わかった。勉強場所携帯に連絡しといてくれよ」
「わ、わかりました!ありがとうございます!」
なぜかこんなことで笑顔になる和の隣を通ってオレは取材陣の元へ向かう
テストも終わり例の夏祭りまであと三日となった今日、麻雀部員はみな部室に集まっていた。しかも一年生はみんな席に座っている優希の周りに集まっている
「赤点!?」
「あぁ、期末テストの」
「そうです。優希ったら全然テストの準備をしないで…結局数学で赤点を取ってしまって。それで今週の金曜日の午後に追試になったんです」
「金曜日って…」
「夏祭りの日じゃねぇか!」
優希はこの前みんなで勉強するってときも初めて五分で寝に入ってしまっていた
「そうだ!お祭りの日だから追試はお休みにすればいいんだじぇ!」
バンッ!
「ダメです!だいたい追試に通らなかったら今度は補習です!合宿に行けませんよ!?」
こんなに強気に怒る和は初めて見たな
「まぁまぁ和。優希も怯えちゃってるから…」
「あ、はい…」
とりあえず和を宥めるために頭を撫でる
「でもさ優希。せっかく和が心配して言ってくれてたのにこれで補習にまでなったら優希だけじゃなくて和まで悲しむぞ?」
「うぅぅぅ…」
すると咲が優希の手を握る
「優希ちゃん。私も手伝うから、一緒に追試の勉強しよっ?」
和も優希の反対の手を握る
「一緒に頑張りましょ?」
「咲ちゃん…のどちゃん…」
「しゃあねぇな。俺も付き合ってやるよ」
「翔くんは?」
「翔さん…」
咲と和、牽いては優希までが懇願の顔でこっちを見てくる
「そんな顔すんなよ。オレも手伝ってやるから」
「み、みんな!じゃあ勉強は明日から頑張るとして、今日は麻雀するじぇ!」
「ダメです!」
「今日から勉強だよ」
これでも麻雀を打とうとする優希を咲と和が両腕を引っ張って行く。部屋から出る前に咲と目があった
「はいはい。よろしくな」
「〜♪うん♪」
咲のナデナデを求める表情はすぐわかるようになった。その顔を見てオレは出て行く咲の頭をそっと撫でた
オレはその帰りに美穂子さんに出会った
「美穂子さん」
「翔くん」
美穂子さんは手に封筒のようなものを持っていた
「それ、うちからの合宿のお誘い?」
「う、うん」
美穂子さんは何やら悩んでいる様子。なんか長く一緒にいるからだいたい美穂子さんの考えてることがわかる気がする
「迷ってんの?」
「…」
沈黙は肯定とはよく言ったものだな
「まったく…美穂子さんは他人のこと考えすぎだ」
「翔くん…」
「たまには自分のわがままを言ってもいいんじゃないんか?」
「…翔くんには何でもお見通しなのね」
「そりゃ結構な付き合いだからな。後輩想いないい先輩だと思うぞ?でも後輩のことも考えるならなおさら合宿には参加するべきだと思う。それに美穂子さんの全国前の調整にもなる」
「そうね」
「美穂子さんも、最後くらい自分のしたいようにすればいいんじゃない?」
「…ありがとう、翔くん。おかげで決められたわ」
「それならよかった」
美穂子さんってどこか霞姉さんに似てるよな。他人を優先するところとか我慢するところとか
ギュッ
そして帰ろうと歩き出した瞬間、美穂子さんはオレの腕に抱きついてきた
「美穂子さん?」
「わがまま言っていいのよね?なら家に着くまでこのままで帰りましょ」
なんかデジャブ…
今日は夏祭り当日。ではあるが優希の追試の日でもある。部長以外の部員全員で追試の行われる教室の外で待機している
どれくらい待っただろうか、教室の扉が開き先生が出てきた。その後に続いて生気の入っていない優希が出てきた
「燃え尽きたじょ…」
と思ったらもう立ってる気力すらないのか廊下にうつ伏せに倒れてしまった
「優希ちゃん!」
「追試どうでした!?」
「取り敢えず全部書いたじぇ…」
「不安ですね…」
「こりゃ補習決定かな」
「ま、やるだけのことはやったんじゃ。さて、追試も終わったしみんなで夏祭りに行こうか?」
「うぉー!行くじぇ!」
さっきまでの姿とは打って変わって一気にキラキラ状態になる優希
「追試の結果もわかっていないのにいいんでしょうか…」
「えっ?原村さんは行かないの?」
「べ、別に行かないとは言ってません!」
「よかった!」
「よーし!祭りのタコス屋台制覇するじぇ!」
「じゃあ行こっ!み・ん・な・で!!」
「うっ…」
咲はわざとらしくオレの方を向いて「みんな」という語を強調して言ってきた
「え、翔さんは来れないんですか…」
和もそんな悲しいそうな顔しないでくれ!!
「翔くんは!他の人と行っちゃうんだって!!」
「悪かったって…」
まだ根に持っているらしい…
今日開催される夏祭りは地元の人にとっては夏の一大イベントなのだ。だからここら辺の人はみんなこの夏祭りに参加する。よってなかなかの人混みだ。そんな中オレは入り口付近でモモを待っている
「翔くーん!」
「お、来たな」
浴衣に身を包み手を振りながらカランカランと下駄の音を立てながらかけてくるモモの姿が近づいてくる
「お待たせしました」
「そんなに待ってないよ。その浴衣、似合ってるな」
「ありがとうっす♪翔くんも似合ってるっすよ♪」
「モモに着て来いって言われたからな。まだ着れてよかったよ」
モモは黒を基調とし白い線で花の模様が描かれている浴衣を着ている。ちなみに今日はオレも浴衣を着ている。本当は着るのめんどくさいから私服で来ようと思っていたらそんなオレの考えてたことをわかっていたかのようにモモから浴衣を着てくるようにと連絡があった
「じゃあ行くっすよ!あんまり時間もないことですし」
「すまんね」
「別にいいっす。こうして一緒に来れただけでも嬉しいっす」
「そっか」
「はいっす♪」
それからはモモに手を握られいろんな屋台を回った。オレと触れたことによりいつもよりかモモの姿は他の人には見えるようになってしまったため屋台のおっちゃんとかに『お、青春だね〜』とか言われるとモモは顔を真っ赤にして恥ずかしがっていた
「今日はありがとうございました」
「いや、オレの方こそ楽しかった。最後まで付き合えなくて悪かったな」
「いいんすよ。でもここまで来ちゃって大丈夫なんすか?」
「まだ時間あるから大丈夫。ホントは家まで送ってやりたいんだがそしたら時間的にな」
「わかってるっす。駅まで送っていただいただけで大丈夫っす」
モモとの夏祭り巡りを終えて今度は美穂子さんとだ。でも暗い中会場から一人でモモを帰らせるわけにはいかないと思って駅まで送ってきた次第だ
「じゃあ気をつけてな」
「はい。今日は楽しかったっす」
「オレもだよ。また来週だな」
「そうっすね」
来週にはあれが待っている。モモの反応を見るに鶴賀も参加するんだろう。それならまたそこでモモとも会える
そうしているうちに電車が来た
チュッ
電車の扉が開いたのを見てもう一度モモの方を向こうとすると頰に柔らかい感触を感じた
「今日のお礼っす♪」
そう言ったモモは既に電車に乗っておりすぐに扉が閉まって行ってしまった。まったく…
夏祭り会場に戻ると美穂子さんはもう着いていた
「ごめん美穂子さん。少し遅れた」
「ううん、大丈夫」
「ありがと。……やっぱ美穂子さんは浴衣も似合うな」
「あ、ありがと…」
美穂子さんは褒められて恥ずかしいのか頰を赤くして俯いてしまう。美穂子さんは桃色を基調に水色の大きな花が足元に刺繍された浴衣を着ている
「じゃあ行こう」
「う、うん…」
ギュッ
「ん?」
「あ、甘えてもいいよね…?」
この前と同様オレの腕に美穂子さんが抱きついてきた。おそらく今回もずっとこのままであろう
「そうだ。今日翔くんのところの部長さんに出してきたよ」
「あ、合宿の?」
「うん。私達も参加させてもらうね」
「おう。歓迎するよ!ん?歓迎であってる?」
「ふふふ♪それでいいと思うよ♪」
笑われてしまった…恥ずかしい…
「さっ、行こっ?翔くん♪」
「お、おう」
美穂子さん楽しそうだな。それだけで今日来た甲斐があったな
「あ、そうだ翔くん。ちょっと耳貸して?」
「ん?なんだ?」
こんな人混みなら普通に話してても聞こえない気がするんだがな…オレは美穂子さんの口元に耳を持っていく
チュッ
するとさっきモモのときと同じような感触が伝わった
「今日付き合ってくれるお礼だよ♪」
すると再度オレの腕を組んで人混みの中に進んで行った