このすば! 俺はまた魔王を倒さなきゃいけないようです   作:緋色の

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今回は短めにしています。
おそらく次が長くなると思われるので


第七話 もしかして最強の敵? 前編

 俺達は領主の悪事を暴き、逮捕した。

 

 悪魔を操っていたという話は、あの日戦いに参加した冒険者から広がり、三日ほど経つと、アクセルの住人は知ってて当然というほどになった。

 

 そして、当然のことながら、他の街から来ていた人々にも領主の一件は知られ、その人達から他の街へ話は運ばれて。

 

 一週間もすれば、国中が知るところとなった。

 

 今回の件はまさに激震と言うべきものだ。

 

 アクセルの領主が悪魔を使って様々な悪事を行っていた。

 

 領主はその地を預かる者だ。

 

 言い換えれば責任者であり、代表者とも言えるほどの立場だ。

 

 その人が起こしたとあって、他の領主並びに貴族にも飛び火している。

 

 貴族に対する信用はかつてないほどに揺らいだ。

 

 貴族達にとって救いなのは、今回の件を暴いて解決したのがダスティネス家ということ。

 

 ダスティネス家が解決したことになってるのは、俺がダクネスの親父さんにお願いされて、手柄を譲ったからだ。

 

 全てを公表し、領主を裁くと約束した親父さんを信じたのも理由の一つだが、もう一つ大きな理由がある。

 

 それは俺のような冒険者が解決したと知られれば、不快に思った貴族が暗殺を企てる恐れがあるからだ。

 

 そうなったらどれだけの貴族に狙われるかわかったものじゃないので、俺は喜んで譲った。

 

 ダスティネス家が解決したという事実から、貴族の皆さんは、アルダープのような悪徳領主もいるが、ダスティネス家のように国と民を守る貴族もいると主張できた。

 

 とはいっても、その主張も焼け石に水みたいなもので、そこまで信用されなかった。

 

 そんな時に動いたのがこの国の王女アイリスだ。

 

 アイリスは国民に宣言した。

 

 ダスティネス家と協力して、アルダープの悪事を全て調べあげ、またそれに関与した者全員を逮捕し、重い処分を下すと。

 

 今回の件を解決したとはいえ、貴族であるダスティネス家と協力するという発言は信用を意味している。

 

 王族がそこまで言うなら大丈夫だろう、と国民は納得した。

 

 貴族に対する信用は回復したわけではないが、とりあえずは決着がついた。

 

 

 

 アイリスが宣言してから一週間後。

 

 領主の件から大分時間が経ったが、俺はみんなと約束していた宴会を開くことにした。

 

 本当はもっとはやくに宴会を開こうとしたが、ダクネスがいなかったので延期した。

 

 領主の件ではダクネスが主導したという体なので、親父さんと一緒に王都へ行っていた。

 

 アクセルからしばらくはなれていたダクネスが戻ってきたのは三日ほど前だ。

 

 戻ってきて早々に宴会に参加させるのは流石に気が引けたので、三日後に宴会をするとだけ伝え、ダクネスをゆっくりと休ませた。

 

 夕方を迎える時間。

 

 ギルドには宴会に参加する冒険者が集まっている。

 

 俺がいくらでも奢ることになっているので、ここぞとばかりに来ている。

 

 ギルド側も結構高価なお酒を用意していたりと、金を巻き上げ……もとい稼ぐ姿勢を見せている。

 

「遅くなってすまない」

 

 ダクネスがギルドにやって来た。

 

 これで揃ったので、俺達は宴会をはじめようとしたのだが。

 

「待ってくれ。みんなに大事な話がある」

 

 ダクネスがこれから宴会するとは思えない真面目な顔で話しはじめる。

 

「おそらく既に私のことは知っているだろうが、改めて名乗らせてほしい。私の本当の名はダスティネス・フォード・ララティーナ。ダスティネス家の者だ」

 

 それを聞いても誰も驚かない。

 

 領主がララティーナと呼びながら助けを求めたのを見たら、ダクネスが貴族なのではないかと疑問視する。

 

 疑問に思った冒険者は俺のところに来たので、しらばくれても無駄だと思い、本当のことを話した。

 

 そういうわけでダクネスが予想してた通り、みんなは知っているわけで、こうなることを予想していた俺はみんなの顔を見て。

 

「おい、ララティーナ。今から宴会やるんだから、堅苦しくするなよ、ララティーナ」

 

「そうだぞ、ララティーナ」

 

「ララティーナちゃん、名前可愛いね」

 

「ララティーナ、はやく終わらせろよ」

 

「酒が飲みたいんだよ、ララティーナ」

 

「ララティーナ可愛いよ、ララティーナ」

 

「ララティーナ、顔赤いけどどうした、ララティーナ」

 

 ダクネスは羞恥で顔を真っ赤にして、目尻に涙を溜めてプルプル震えていた。

 

 きっとダクネスとしては、お前が貴族でも関係ないさ! みたいなことを言われたかったのだと思うけど、そんなのは知ったことではないので、ララティーナという可愛い名前で呼んであげる。

 

「ララティーナ、酒を注げよ」

 

「ララティーナ、はやく座って乾杯しましょう」

 

「ララティーナさん、ほらここ」

 

「お、お願いしますから、ララティーナはやめて……」

 

 貴族のことが知られてもみんなに受け入れてもらえたのに、どうしてそんなに泣きそうにしているのだろうか? 変な奴だ。

 

「こんな迎えられ方は……くう……」

 

 泣きそうな顔で俺達の席に来て、プルプルと震える手で酒が入ったグラスを持った。

 

「「「ララティーナにかんぱーい!」」」

 

「うわあああああああ!」

 

 喜びのあまり立ち上がって叫んだダクネスを俺達はにやにやしながら見る。

 

 ああ、酒というものはこんなに美味しいものであったか!

 

 俺達は上機嫌で酒を飲んでいく。

 

 

 

 

 

 翌日。

 

 飲み過ぎたせいなのか、昨日の記憶はほとんどない。

 

 しかも二日酔いで酷いことになっていた。

 

 食欲も全然ない。

 

 トイレ以外はベッドで寝て過ごそう。

 

 この日は体調を回復させるために一日中横になる。

 

 一日を無駄にした。

 

 次の日。

 

 昨日ずっと寝ていたおかげで、体調は大分よくなるも、今度は酷い空腹に襲われた。

 

 一日中食べてなかったからなあ、と思って、奮発して有名なステーキ屋に行ってたらふく食べた。

 

 少しするとムカムカしてきた。

 

 間違いなく胸焼けだ。

 

 時間が経つにつれて吐き気は強まっていく。

 

 高いものを食ったんだ、吐いてたまるか!

 

 宿に戻った俺は吐き気と激しい攻防を繰り広げる。

 

 吐き気はお前には負けたよとばかりに引き下がる時があるが、しかし少し時間が経つと再び襲いにくる。

 

 俺はその一撃を耐え、吐き気の勢いが弱まるのを待つ。

 

 高い金出して食った肉を吐くわけにはいかない。

 

 ベッドに横になり、なるべく動かないようにすることで吐き気を押さえる。

 

 ところが今回の吐き気は過去最大級で、数々の大物を倒してきた俺でも勝機を失いかけている。

 

 な、何て奴なんだ。

 

 ここまで、ここまで強いなんて……。

 

 この圧倒的な無力感。

 

 楽な方に流れてしまいたくなるほどだ。

 

 ……吐けば、楽になるのか。

 

 ば、ばか! 何弱気になってるんだ!

 

 ステーキの代金を思い出せ。

 

 五万、五万だぞ!

 

 そんなに高いものを食べておきながら吐くなんてもったいないことをするのか?

 

 そりゃ、あんなに酷かった二日酔いの次の日に脂っこいステーキを食べて胃は大丈夫なのかとか思ったりしたけども、我ながら消化に優しいものを食べればよかったなあとか思ってるけども!

 

 だけど俺は魔王を筆頭に多くの強敵を葬ってきた伝説的冒険者……佐藤和真だ。

 

 たかが、吐き気に負けるわけがない。

 

「ふっ、ふう……」

 

 いけない、これはいけない、

 

 吐き気はあろうことか尿意と手を組んだ。

 

 いくら俺が最強の冒険者……とは言っても、迫り来る尿意を追い払うことはできない。

 

 しかし、今トイレに行けば俺は……。

 

 だが、万が一にもお漏らしでもしようものなら。

 

 お漏らししたと知られれば、それこそ五万エリスの損失? 損害では済まないわけで。

 

 この宿屋も長い付き合いだ。

 

 迷惑はかけたくない。

 

 俺の名は佐藤和真。

 

 五万エリスぽっちで騒がない男だ。

 

 トイレまで来た俺は手始めに口からクリエイトウォーターを出した。

 

 全て出し切る。

 

「はあ、はあ……うぅ、五万エリス……」

 

 もうお腹に五万エリスはないのに、吐き気はあり、便器からはなれられない。

 

 結局、この日も一日無駄にした。

 

 

 

 三日後、俺は完全復活した。

 

 ちゃんと胃に優しいものをとり、その間酒は一滴も飲まず。

 

 健康って素晴らしい。

 

 こんなにも体が軽いなんて……。

 

 もう何も怖くない!

 

 軽い足取りで俺は冒険者ギルドに来て。

 

「カズマカズマ」

 

「カズマだよ」

 

「今ギルドのお姉さんから聞いたのですが、何と魔王の幹部バニルがキールのダンジョン付近で目撃されたみたいです」

 

 もうそんな時期か。

 

 俺の世界でも今ぐらいにバニルと会ったな。

 

 そういえばキールはどうなってるんだ? 俺の世界だとアクアが珍しく女神して浄化したけど、こっちは何もやってないよな。

 

「キールのダンジョンにはリッチーとなったキールがいたんだけど、王都から来たアークプリースト達によって倒されたのよ。それで問題が解決したと思ったらバニルよ。ルナさんとか泣きそうになってたわよ」

 

「そうだろうな」

 

 リッチーはかなりの大物だ。

 

 それが片付いて懸念がなくなったのに、幹部が来たのでは状況は変わっていない。

 

 それにしてもキールがいなくなってすぐにバニルか……、何か引っかかるな。

 

「ギルドも大変だな。ま、王都からまた誰か来て倒してくれるだろ」

 

「カズマ」

 

「んー。久しぶりに何かクエスト請けようかな。一撃熊でもやるか?」

 

「カズマさん、あのね」

 

「おっ、今日のゆんゆんはいつもに増して可愛いな」

 

「カズマ、バニル討伐を依頼されている」

 

「バニル討伐にいらないとされている? よかったあ、これでゆっくり酒が飲めるぜ」

 

「現実を見て下さい。私達が退治するんですよ!」

 

「嫌だあ! ついこの間マクス倒したばっかじゃねえか! 俺達運悪かったら死んでたんだぞ! 爆発魔法とかとんでもないの使われたんだぞ!」

 

 おかしい、おかしいって、絶対におかしい。

 

 ベルディア、デストロイヤー、マクスウェル。

 

 こいつら滅茶苦茶強いんだからな。

 

 それなのに俺達みたいなぽんこつパーティーが倒してるんだぞ。

 

 それって色々おかしいよ。

 

 で、そこにバニルも加えるんだぞ。頭がぶっ壊れてるんじゃねえのか? それって。

 

 ていうか、どうせめぐみんの爆裂魔法で倒すんだから、俺はいなくてもいいじゃん。

 

「めぐみん、お前の爆裂魔法で倒してこい」

 

「やはり言いましたよ。倒すのは構いませんが、カズマも一緒に行きますよ」

 

「めぐみん、唯一の取り柄の爆裂魔法で倒してこい」

 

「唯一!? 今唯一と言いましたか! 何の取り柄もないだめ男よりはマシですよ」

 

「だめ男!? お前は俺と出会わなかったらどん底人生歩んでたちんちくりんだろうが!」

 

「何をー! あれは時期が悪かっただけで、もう少ししたら凄く強い人とパーティー組めてましたよ! ええ! カズマと違ってセクハラしないし、イケメンの勇者様みたいな人とね!」

 

「それ見たことか! これだから女は! イケメンしか頭にないのか!? そんなに言うなら強いイケメンと組めばいいだろ! こんなパーティー、抜けてやる!」

 

 めぐみんに背を向けて、逃亡を図る俺の前にゆんゆんが立ちはだかる。

 

「行かせないからね。喧嘩したって感じにしても駄目よ」

 

「ゆんゆん! カズマなんか引き止めないでいいんですよ! どこへでも行けばいいんです!」

 

「ちょっとめぐみん! どうして本気になってるのよ! カズマさん逃げようとしてるだけだから」

 

「どけ、ゆんゆん! どかないなら……、全裸で床に転がることになるぞ!」

 

「ひっ!」

 

 俺が右手を前に出すと、ゆんゆんは恐怖で顔をひきつらせて逃げた。

 

 マジの反応だったんだけど。そんなに俺って危ないかね。

 

 いや、今はそんなことはいいんだ。今はギルドから逃げて、バニルとの対決を避けないと。

 

 俺はギルドから出て、

 

「誰かあの男を捕まえろ! 捕まえた者には一千万エリス払う!」

 

「「「うおおおおおお!」」」

 

 ダクネスが金で冒険者を動かしているのを聞いた。一千万エリスって本気じゃねえか……。

 

 しかし、そんなことをしても無駄だ。

 

 潜伏、敵感知、逃走、逃げるのに必要なものを俺は持っている。簡単に捕まえられると思ったら大間違いだ。

 

 アクセルの冒険者なんかじゃ捕まえることはできない。隠れる場所なんていくらでもあるんだ。

 

 しばらく走り、裏路地に行き、ものの陰に隠れる。

 

 正面からは見えず、横から覗かないと見つからないので、しばらくは時間が稼げそうだ。

 

 そこに潜伏ですよ。これでますます発見が困難になり、俺の身の安全は保証されるというもの!

 

 この魔王すら倒した俺に隙などない。

 

 

 

 

 次の日。

 

「は、はなせえ! 俺はもう戦いたくないんだ!」

 

「いいから来いよ」

 

「いやあ、読み通りだったな」

 

 サキュバスの店に行こうとしたら、待ち伏せしていたダストとキースとテイラーに捕まった。

 

 まさか、こいつらに捕まるなんて……。

 

「少し静かにしろ」

 

 テイラーは俺の口に布を当てて、布の端を頭に回してきゅっと結んだ。これでは喋れない。

 

 こんな、こんな奴らに捕まるなんて……。こんなの生き恥みたいなものだ。

 

 行きたくない。ギルドに行きたくない。こいつらに捕まったなんて知られたら、俺の評判はがた落ちだ。

 

 何とかして逃げたいが、後ろはテイラーに塞がれ、左右の腕はダストとキースにしっかり掴まれている。

 

 こいつらの力は俺より上だ。そもそも俺は高レベルとは言っても、そこまでステータスは高くない。

 

 自分で言うのも悲しくなるほどのステータスだ。

 

 元の世界のめぐみんの筋力に負ける程度のもので、アークウィザードにも勝てないというのはそれだけで筋力の低さを証明してるもんだ。

 

 俺は優れた頭脳で作戦を立て、敵の弱点を突くタイプだ。力が弱いのは当たり前だ。

 

 もはやどうにもならない。

 

 買収しようにも、口に巻かれた布のせいで上手く喋られないため、どうしようもない。

 

 そうこうしてる内にギルドが見えてきた。

 

 ギルドに連れていかれ、ダクネス達の前につき出される。

 

 仲間達の視線はとても痛く、冷たい。

 

 まるでバニルとの戦いから逃げたのを責めているような目をしている。だけど、俺みたいに特別なものを持っていない男には荷が重い。

 

 巻かれていた布は外された。

 

「お金いっぱいあるんだから危ない橋渡るのやめようぜ」

 

「おいやめろ。犯罪を犯すような言い方はやめろ」

 

「何で逃げるのよ。バニルが相手でも、いつもみたいに倒せるわよ」

 

「わざわざ危険な真似はしなくていいだろ。大体何で俺達なんだよ? もっと強いパーティーがいるだろ」

 

「それこそ私達が最も活躍しているからでしょう。幹部、デストロイヤー、大悪魔、これらを次々と倒していった我々に要請が来るのもある意味当然でしょう」

 

「だからってなあ……。マクスは動き封じてなんとかなったけど、バニルは大悪魔で幹部だぞ。全てを見通す悪魔だぞ。勝てるわけない」

 

 それにバニルとは戦いたくない。

 

 全てを見通されて、俺の秘密を暴露されては困る。

 

 あいつはそういうことをやってくる奴だ。そんなことをされたら最後、俺はこの街にいられなくなり、魔王討伐は諦めるしかない。

 

 そうなれば元の世界のあいつらに二度と会えない。それはつまり…………、つまり平和に生きていけるってことじゃないか? なーんだ、困ることなんか何もないな。

 

「もしかしたら、これが俺達の最後の戦いになるかもな。めぐみん、ゆんゆん、ダクネス、お前達と一緒に過ごした日々は俺の宝物だ」

 

「なあ、何でそんな優しい顔をしているんだ?」

 

「まるで本当に最後の戦いに挑む人みたいだからやめて! これからもずっと一緒に戦うんだから!」

 

「いったいどうなったらそういう考えになったのか聞きたいのですが」

 

「大丈夫だ。お前達ならすぐにいい奴を見つけて、魔王も倒すだろう。お前らは俺が知る限り最高の冒険者だ」

 

 この三人ならたくましく生きていける。

 

 俺みたいなレベルだけの冒険者にはもったいない。

 

 こいつらには可能性がある。その可能性を広げるためにももっと凄い奴と組んで、上を目指すべきだ。

 

「ギルドの中を見ろ。俺より強い冒険者は山ほどいるんだ。お前達三人と組んでくれる奴はごまんといるさ。なあ、みんな!」

 

 誰も俺達を見なかった。

 

 見てはいけないという雰囲気がギルドの中を支配している。

 

 おかしい、実におかしい。

 

 こいつらはこの街でかなり活躍している部類に入るのに、どうして誰も見ないのだろうか。

 

 俺が知る範囲では問題はあるけど、こうなるほどではないはずなのだが。

 

 見てくれだっていい。

 

 何が起きているというのか。

 

「カズマさん、私達は何回か他の人に頼まれて一緒に依頼を請けたことかあるの」

 

「そうか。お前らは実力はあるしな。上級、爆裂、耐久、全てが最高レベルだし、頼まれたりするよな」

 

 どうしてだろう。アクア達と組んで泣いたダストが思い出されるのは。

 

 こいつらはいったい何をやったのだろうか。

 

 三人は何も話さない。だけど、それだけで想像できてしまう。

 

 ところ構わず爆裂魔法を撃ち込む頭のおかしい娘、嬉しさのあまり睨み付けるぼっち、敵の集団に飛び込む変態。

 

 ギルドの職員が俺をじっと見ているのは、彼女達との解散は許さないと伝えるためだろう。

 

 えっ? 俺の知らないところで何やったの。

 

「お前ら、マジか……」

 

「ふっ。我々にはカズマしかいないということですよ」

 

「そ、そうね。私達を引っ張ることができるのはリーダーのカズマさんだけなのよ」

 

「誰からも必要とされない私達には、数々の大物を倒してきたお前しかいないということだ。さあ、共にバニルと戦おう」

 

 こいつらの言葉がこんなにも嬉しくないのは何故だろうか。

 

 聞けば聞くほど重くなってくる。

 

「はあ……」

 

 魔王より強いかもしれないバニルと戦うのか。

 

 めぐみんの爆裂魔法を撃ち込めば勝てるだろうけど、今回ばかりは分が悪すぎる。

 

 バニルのことを知っているというのを見抜かれてしまえば、相手もそれに応じた作戦を立てられるということだ。

 

 つまり今回に限定して言えば、俺の知識は勝率を下げる要因になる。

 

 それに倒したとしても残機があるからという理由で普通に復活するし。

 

 おそらくこの世で最も倒しがいのない相手だ。

 

 バニルとの戦いを前にして気合い十分といった様子の三人を見て、そもそも勝ち目があるのか疑問に思えた。




戦闘が絡むと一万文字超えやすいので、短めにしました。
それにバニルを出すわけですから、あの結構濃いキャラなら会話も多くなるでしょうし。
ゆんゆんとバニルの初遭遇か……友達っていいよね

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