青春は赤く染まりて   作:原作未読の魔改造フェチ(百合脳)

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 原文を適当な長さで区切って取り分けて最初と最後をそれっぽく加工して校閲かけて上げるだけだから書けてる所までは比較的間を置かずに投稿。

 ……校閲かける度に新しい文を加筆する癖が普段の執筆速度を悪化させてる気がする。


愛。故の恋。故の激憤

 話は一週間ほど前に遡る。

 

 入学直後の浮ついた雰囲気が冷めやらぬIS学園。その中でも特に騒然としているのは世界唯一の男性操縦者が籍を置く一年一組、即ち私と一夏のクラスだ。

 女生徒達は一夏を囲み、しかし皆それぞれ牽制しあうおかげで話しかける勇者は現れず。結果として若干の距離をおかれ延々眺められるだけ。その様はまるで動物園の檻の中のアルパカの如し。

 さっきからちらちらと私の方に縋るような視線を送ってきているが、知ったことか。私まであの微妙な雰囲気の空間に取り込まれるのは御免なので、助けてやる気は毛頭無い。

 

 

 

「ちょっとよろしくて?」

 

「へ?」

 

「まあ、何ですのそのお返事は!」

 

 む、状況に変化があったようだ。金髪縦ロールの少女が一夏に何事か話しかけている。

 というより一方的に言いがかりを付けているように見えるが。やれ「話しかけられる事が光栄」だの「やはり男はこんなものか」だの、典型的な女尊男卑主義者のようだ。まったく、ISを動かせるというだけで世の全ての男性より優位に立った心算とは……度し難い。

 

 私からして見れば男だろうが女だろうが優劣などある筈が無い。我が最愛の想い人以外は全てが等しく無価値な虫ケラだろうに、どちらが上だ下だと喧々囂々に浅ましく騒がれても迷惑なだけだ。やはり人類などという生物は愚昧で浅薄な欠陥品だな。私達だけ残して滅べばいいのに。

 ……いや、「滅べばいいのに」などと他人任せではいかんな。ここはやはり私が手ずから滅びを齎すべきだ。己の手で成し遂げてこそ、私の宇宙(そら)より深い慕情の証明にもなろうというもの―――

 

 

 

「知らないですって!? イギリス代表候補生で入試主席のこの(わたくし)、セシリア・オルコットを!?」

 

「すまん、代表候補生って何だ?」

 

 クラス中の女子がずっこける音で我に帰る。いかんいかん、危険思想に飛びかけていた。

 そもそも世界の滅却などという大業、まぁ愛さえあればやってできないことでは無いだろうが、やったら確実に叱られる。というか嫌われる。以前提案してみたら「頼むから絶対やめてくれ」と土下座されてしまった。他ならぬ愛する人からの頼みとあっては断れまい、諦める事にしたのだったが……話の流れでつい妄想してしまう位は勘弁して欲しい。

 

 そんな事より一夏の奴、代表候補生という概念そのものを知らなかったのか。流石に驚きだ。ま、代表候補生だから何だという話だが。あの自尊心で凝り固まったような女は一夏の知識の無さよりも、自分を知らなかった事のほうが気に食わないようだが、飽くまで候補に過ぎないのだから知らなくても無理は無かろうに。せめて国家代表に正式に選ばれてから有名人ぶれ。

 ちなみに私は国家代表であろうと顔も名前も覚えられない自信がある。興味の無い動物に一々脳のリソースを使ってやる暇も労力も無い。そんな記憶力の無駄遣いをするくらいならば、我が将来の伴侶(確定事項)の愛しい顔を執拗に脳裏に焼きつけたり、恋しい名前を幾度も心裏に刻み込んだりする方がよっぽど有意義だ。

 

 と、そこで授業開始の予鈴が鳴り女子達は慌てて席に戻る。イギリスの代表候補らしい少女(名前は覚えてない)も捨て台詞を吐いて去っていった。結局何の用事だったのやら……まあどうでもいいか。

 

 

   ※   ※   ※

 

 

「と、いう訳で授業の前にクラス代表を選出する! 自薦・他薦は問わん、意見のあるものは挙手しろ」

 

 教室に入ってくるなりそんな事を宣った織斑千冬。もとい織斑先生。何が「という訳」なのかは知らんが、物珍しさから生徒達は皆挙って一夏を推挙する。入学して日も浅いこの時期の判断材料なんて第一印象以外ありえないし、当然の帰結だな。あ、一夏が辞退を申し出た。却下された。

 

 完全に傍観者気取りで推移を眺め愉しんでいた私だったが、そうもいかない事態が起こる。

 

 

「納得いきませんわ!」

 

 さっきの代表候補生(英)が抗議の声を挙げたのだ。当然自分が選ばれるものと思い込んでいたが誰も名前を挙げないばかりか、彼女の基準では見下されるべき男が何故だか自身を差し置いて推薦される始末。無駄にプライドの高そうな彼女には我慢ならなかったらしい。

 

「このクラス唯一の国家代表候補生であり尚且つ入試主席でもあるこの私を差し置いて、ただ珍品であるというだけの理由からそこの情けない男がクラス代表に選ばれるというのですか!? まして男に率いられるクラスで学園生活を送らねばならないなど、そのような屈辱っ!! とても我慢なりませんわ!」

 

 己惚れと男性蔑視がこれでもかというほど入り混じった抗議、というか演説に顔を顰める者も多く、一夏など今にも食って掛かりそうな雰囲気だったが、ここまでなら私は何の感慨も抱かなかった。瑣末な物が瑣末な事を喚いていても心底どうでもいいだけだ。

 

 

 が、私にも逆鱗というものはある。

 

 

「大体、こんな後進的な国で暮らさねばならないこと自体、本来なら耐え難い事ですの! 全く、国も野蛮ならそこに暮らす民も無学な凡夫でっ!?」

 

 恐らくはIS知識が皆無だった一夏を扱き下ろしたかったのだろうが、関係無い。

 そこまで聞いた時点で私は袖の下に隠し持っていた小刀を投擲。一夏も何か言い返そうとしていたようだが遅い。口を開くより早く私の小刀はドリル髪の女の喉元に向かい直進、狙い過たずその大動脈に突き刺さる………直前、横から飛んできた出席簿によって弾き落とされる。

 ()り損ねたと分かった私は、腰を抜かしてその場にへたり込んだドリル女や突然の事態に固まっている一夏を無視して教卓に向き直り、ブーメランのように帰ってきた出席簿をキャッチして一息吐いている女を睨み付ける。

 

「何のつもりだ……ですか、織斑先生」

 

「落ち着け篠ノ之、仮にも学び舎で流血沙汰……いや殺人事件を起こすんじゃない。いや学び舎の外なら良いという訳でもないが」

 

 ……こいつの指摘を認めるのは癪だが、なるほど少々頭に血が上っていたようだ。こんな場所で公然と人を殺しては色々と面倒が増える。どんなにこのドリルの存在価値がマイナスだろうとも今は耐え忍び、後々誰にもバレぬよう暗殺して秘密裏に死体を処理すべきだった。

 

「……何か良からぬ事を考えているようだが、そういうことじゃ無いからな? 篠ノ之への説教は後にするとして……オルコット、貴様の発言にも確かに問題があった。教師としての建前を脇に置けば、私は家族(おとうと)を公衆の面前で罵倒されたのだしな。のみならず、性差別的な内容に傲慢が過ぎる態度、そして極めつけは日本という国家への侮辱。仮にも代表候補生なら自分の発言には注意する事だ……下手をすれば国際問題だぞ?」

 

「え、ええ……確かにそうですわね、軽々しい発言でしたわ。私も平静を欠いていました、居丈高な態度は反省いたします。考えて見れば、世界最強(ブリュンヒルデ)の織斑先生も日本人でしたし、クラスの皆さんも日本の方々……一時の感情に任せて国ごと貶めて良いものではありませんでしたわね。皆様には謝罪いたします。……ですが! 如何に織斑先生のご家族でしょうと、そこの情けない男がクラス代表に相応しく無いというのはひゃあっ!?」

 

 間を置いて少しは冷静になったのか、穴掘り機(ドリル)は自分の調子を取り戻し始めた。心に染み付いた女尊男卑の考え方はそう簡単に変えられないだろうが、それでもある程度自省し、その上でなお『織斑一夏』という個人への対抗心からクラス代表として認めない、といった様子だ。それに対し一夏も今度こそ抗論しようと口を開きかけたが遅い。先に私が動いていた。

 後で暗殺? 知らん、コレは今この場で消すべき存在だ。一瞬で間合いを詰めると彼女の胸……心臓に向かって貫手を放つ。そのまま致命の一撃となるべきそれは、同じく一瞬で間に割り込んだ千冬の手でまたしても止められる。

 

「やめろ篠ノ之。何が気に食わないのか知らんがオルコットも一応は謝罪したんだ、それでも織斑のクラス代表就任が許せないと言うなら後は当人同士の問題で……」

 

「謝罪だと? 私が聞いた限りでは謝罪など一言も発したようには聞こえなかったが?」

 

「……あぁ、なるほど。許せなかったのはそこか」

 

 私の言葉を聞いた千冬は苦い顔になりながら溜め息を吐く。だが私とて譲れないものがある。

 驕り高ぶりも男性差別も私にとってはどうでもいい。国家を蔑んだ発言の結果国際問題が起ころうと私には関係無い。故にそんな部分を反省しようが頭を下げようが謝罪の内には入らない。

 一夏が軽蔑されている? それこそ興味無いな。幼馴染ではあるがそれだけの関係だ。命の危機とかなら片手間に救ってやらん事も無いが、公の場で謗られた、程度の小事なら自分で勝手に対処すれば良い。少なくともそんな些事で私は動かん。

 

 このドリルが真に謝罪すべきなのは、そんな下らない事では断じて無い。

 にも拘わらず、こいつはこの教室内に犇く有象無象……況してや忌々しい織斑千冬にまで謝罪を行っておきながら、()()()()()()()については一言も触れなかった。その時点でこのドリルにはこの世に存在する資格など無い。即刻破棄すべきである。

 

 

「あー、オルコット。追加で謝罪が必要なようだ、さっさと済ませろ」

 

「え、謝罪……とはこれ以上誰に? 断っておきますがそこの男性操縦者が実力も知識も不足しているのは侮蔑ではなく只の事実で……」

 

「いや、織斑の事では無くてだな……」

 

 そう、自身や自国への侮言に対し抗弁しようとした口を開きかけたまま、事態に着いて来れずに再び固まっている一夏の事など一切関係無いのだ。謝罪すべきは私の想い人に対して、である。

 日本を後進的と言い放ち、日本人を無学と嘲笑ったこいつは、その日本人が()を生み出したのかを忘れているようだ。より具体的に言うならば、日本人である所の私の唯一無二の恋人がどれだけ革新的で、どれだけ天才で、どれだけ偉大であるかを丸っきり無視している。

 

 そう、それは世界を一変させた発明……インフィニット・ストラトスの開発者にして私の自慢の()でもある、愛しい愛しい私の想い人。

 

 

 

 

「此奴の姉……篠ノ之束の事、だ」

 

 

 

   ※   ※   ※

 

 

 

 ―――あか。あか。あか。

 あぁ、ぜんぶぜんぶあかくなる。あかいだけになる。

 

 

 走馬灯すら巡らない。巡っているのかもしれないが、心身を蝕む赤のせいで認識できない。

 もはや助からないという確信があった。自力ではもはやどうにもならず、而して他者からの救いの手など期待できない。こんな地獄のような赤の中に、一体何者が飛び込んで来れるというのか。無理に救助を行おうとしても犠牲者が増えるのが関の山である。どちらにしろ私は助かるまい。

 

 

 ―――ああ、ここが私の終端か。この絶対的で絶望的な、無限の『赤』が私の()か。

 

 今正にどうしようもなく生が零れ落ち、自ずから死を迎え入れんとした時。

 最期の瞬間に、私の赤を―――私を押し潰す赤の世界を切り裂いて、飛び込んで来たのは。

 

 

 

 

 『箒ちゃん! 助けに来たよ! もう大丈夫だから―――!』

 

 

 

 ……一羽の、ウサギだった。

 

 

 

 

 

 その瞬間。『赤』が、割れた。

 私を含め全てが赤に支配された世界に突如亀裂が走り、粉々に砕け散ったように感じた。そして世界に色が戻る。いや、私の目に映る景色がほとんど赤一色なのは変わりないのだが、それを景色として認識できるようになった―――つまり永久に手放しかけていた私の意識が再び覚醒し、真紅に染まって停止寸前だった私の脳ももう一度稼動し始めた、という事だ。

 

 見れば私の体には応急処置の跡。隣には私の手を固く握って呼びかけ続ける姉―――篠ノ之束の姿。こんな状況でもトレードマークであるウサ耳は着けたままで、それが何だか可笑しくて。私は自分の状態も忘れて自然と口元が綻んだ。

 

 私が目を覚ましたのに気付いたのか、泣きそうになりながらも涙を堪えて私を元気付けるように笑いかける。そして何事か話しかけたが、目覚めたばかりでまだ聴覚が完全には戻っていなかったため何を喋っていたのかは分からない。

 姉さんは私の様子から声が聞こえていないと悟ったのか、口を引き結んで立ち上がると同時に私の体を姫抱きに抱える。そして煉獄の火炎の中を走り抜けて安全な場所まで脱出を開始した。その間中ずっと、燃え盛る焔が姉さんの体を焼き焦がすが、細胞レベルでオーバースペックな私の姉は全く動じる事無く、ただ私を助ける為に走り続ける。

 

 その真剣な表情に見惚れながら、私の意識は再び深い場所へと落ちていく。ただし今度は死出の暗闇に向かう永久の入眠では無く、……信頼と愛情の揺り籠に包まれた、微睡みの午睡であった。




 今メインで書いてる方のss(失踪中)のプロットを考えたら箒さんと束さんのCPは不可能だった。でもどうしても箒×束の百合を書きたかった。だから別枠で書いた。
 それが本ssの全てです。

 シスコンモッピーが一夏の事そっちのけで束さんに求愛するss流行れ
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