青春は赤く染まりて   作:原作未読の魔改造フェチ(百合脳)

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執筆前ワイ「『セッシーは死んだ』の一文で済ますのも可哀想やな……せや、ちょっとだけ頑張るシーンを追加したろ(慈悲)」

執筆後ワイ「強化しすぎたか……(ハ並感)」


なおプロットの改変により一夏君の戦闘は消滅した模様(無慈悲)
なぁにその内二組の子と戦わせたるからな、待っとれよ(予定は未定)


青の死闘・赤の遊戯

 時は流れて、クラス代表決定戦当日。

 専用機の搬入が遅れ準備が間に合わなかった一夏を待つ間、第一試合は私と英国青ドリルで戦う事になった。ピットから飛び立ち、先にアリーナの上空で待機していた青ドリルと対峙する。と、唐突に話しかけられた。

 

「逃げずに来ましたのね、その蛮勇だけは褒めてさしあげてもよくってよ?」

 

「自ら望んだ戦だ、逃げる訳が無かろう……というか涙目だぞ」

 

「もう虚勢張らないとやってられませんわコンチクショー!」

 

 言葉遣いも乱れている。先週の騒動以来、私に対して恐怖心を拭えないらしく、今日に至るまで顔を合わせる度に悲鳴を上げて逃げ出していた。むしろ顔を合わせる前に避けられてきた。が、いよいよ決闘となれば逃げも隠れも出来はしない。こうして面と向かって戦わざるを得なくなった為、一周回って開き直るしか無いのだろう。

 

 彼女が纏う機体は第三世代の専用機ブルー・ティアーズ。詳しくは知らんが複数のレーザービットを操る遠距離戦特化の機体らしい。対する私の専用機、『姉さん謹製の』第四世代機は完全近接特化―――名を紅椿という。

 姉さんはエネルギー刃を飛ばせる双剣だの何だのを載せたがっていたが、私が頼み込んで武装は大剣一本にしてもらった。千冬は『雪片』という剣一本で世界最強にまでのし上がったのだ、ならば私も余計な武器はいらん、同じく一刀にて覇を示さねば奴に並ぶ事などできん。

 また、千冬の単一仕様能力(ワンオフアビリティ)『零落白夜』によるSE減衰に対抗する為、この機体の単一仕様能力(ワンオフアビリティ)『絢爛舞踏』はSEを増幅させるものとなっている。つまり紅椿は完全に対千冬戦を意識した機体に仕上げてもらったと言う事だ。……尤も、実際に私と千冬がIS戦を行う事などまず無いだろうが。生身でやった方が手っ取り早いし、私達はIS乗ってない時の方が強いし。

 

 だがこの紅椿の本質はそんな上っ面の性能などではない。

 確かに世界各国が第三世代機の開発に躍起になる中で作られた第四世代機というだけでも特別だが、そんなことよりこの機体は『姉さんが私の為に』全精力を傾けて設計してくれた逸品なのだ。技術とか理論以上に姉さんの愛がこれでもかと詰め込まれている、もうこれ婚約指輪とかその類のISだよねつまり婚約IS。謂わばこの紅椿は―――あの赤い(きおく)を形にしたような真紅のISこそは、私と姉さんとの愛の結晶であり想いの証明。

 ならばこれで勝てねば嘘というものだ。

 

 

 

 そんな私の紅椿に臆していた青ドリルであったが、遂に覚悟を決めたのか私をキッと睨み付け、ビシッと人差し指を突き付けながら精一杯自分を鼓舞する為の台詞を吐き始めた。

 

「第四世代機だからって調子に乗らないで下さいまし! 聞けば日本の諺にもあるらしいではありませんか、『機体の性能の違いが戦力の決定的差では無い』と! 要は操縦者の腕前が肝心要! (わたくし)代表候補生! 頑張れ私負けるな私、普段通りの実力さえ出せればきっと勝てる―――」

 

「私はISを発明した姉さんの妹なんだ、世間に発表される前から開発も手伝ってた……つまり試作機のテストパイロットとかもやってたし、操縦時間も練度もお前とは桁が違うぞ? 姉さん曰く、私の腕前ならばモンド・グロッソで優勝狙えるレベルらしい」

 

「―――もうどうにでもな~れ☆」

 

 完全にキャラ崩壊を起こした英国青ドリル。その眼は死んだ魚よりも濁っている。

 

 

 その時、試合開始を告げるブザーがなった。曲がりなりにも代表候補生という事か、死んだ眼のままでも試合開始と同時に動き出し、手に持ったレーザーライフルで先制攻撃を放ってきた。私はそれを剣も抜かずに裏拳一発で弾いて見せる。あ、もっと眼が死んだ。どんどん瞳から光が消えて行き、表情は引き攣った半笑いで固定される。……この玩具、なかなか面白い反応するな。

 

「……死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない……」

 

「心配せずとも殺しはせん、昨夜姉さんから『身体的にも精神的にも殺すの禁止、怪我もダメ、というか絶対防御抜いたら怒るからね!?』と電話があったからな。まぁお前を玩具にして暫く遊んだら満足してやる」

 

「……つまり絶対防御を貫く自信はお有りですのね? それも天災こと篠ノ之博士のお墨付き……嗚呼、人の世とは、こんなにも儚い物だったのですね……そうだ出家しよう」

 

 何か明後日の方角を見ながら聖句を口ずさみ神に祈りを捧げ始めた。しかもこっち見てないのに射撃はさっきより正確且つ苛烈になっている。精神的に追い詰められ過ぎて一種のトランス状態に入った事で、秘められた才能が表に出てきたのか? ますます楽しい玩具になってきたな。だが神などという下らない偶像を崇拝するくらいなら神聖の擬人たる姉さんを信仰すべきだろうに。……精神が不安定な今のうちに洗脳すれば姉さんの敬虔(忠実)信者()として使えるかな? 試してみるか。

 

 

   ※   ※   ※

 

 

 ―――一方、箒とセシリアが戦っている間のピット待機組。

 漸く一夏の専用機『白式』が届き、一安心したのも束の間。アリーナで行われている戦闘に目を向けた真耶は、その異様な展開に首を捻る。

 

「篠ノ之さん、何をしてるんでしょう? オルコットさんの鬼気迫る攻撃を軽々と回避してるのに、反撃するでも無く何か語りかけているようですが……」

 

「さて、また良からぬ事には違いないだろう。大方洗脳とか、その辺りじゃ無いか? それより私としてはオルコットの方が気になるな。完全に正気を失ったままだが、明らかに試合前より成長している……見ろ、BT兵器とライフルの同時攻撃だ。資料によるとBT兵器使用中の本体は動けなくなる筈だったのだがな」

 

 見れば彼女の言うとおりの光景。即ち四機のレーザービットとセシリア本体が同時に行動し、連携を取りつつ四方八方から十字砲火(クロスファイア)を仕掛けるセシリアの姿。……そしてそれを平然と避け、或いは手にした大剣で受け流しながら、セシリアに束の魅力を懇々と説く箒の姿。何の光景だ、これ。

 真耶は遠い目になりながら、千冬は楽しげな表情でその光景を眺めていた。そして一夏は、隅の方で漸く届いた白式の初期化(フォーマット)最適化処理(フィッティング)を行っている。……アリーナの戦闘には極力目を向けないようにしながら。所謂現実逃避である。

 

「オルコットさんが錯乱する気持ちも分かりますけどね……私だって対戦相手の機体が未知の第四世代機だって言われたら相当狼狽するでしょうし、()してあの実力ですよ? こうして見てるだけでもあの操縦技術がかなりハイレベルだって分かります。モンド・グロッソに出ても活躍どころか優勝だって狙えそうな……」

 

「違うぞ山田君、『狙えそう』じゃない。もしも篠ノ之がモンド・グロッソに出場したなら間違いなく優勝する、それは確定事項だ」

 

 千冬の予想以上の高評価に、彼女の普段の厳しさを知る真耶は目を丸くする。

 

「え、何を根拠にそんな……」

 

「自分で言うのも何だが、私が『ブリュンヒルデ』だからだ」

 

「えっと……つまり?」

 

 もっと意味が分からなくなった。千冬が『ブリュンヒルデ』と呼ばれている事と箒がモンド・グロッソ優勝確実レベルの実力者である事の間にどんな関係があると言うのか?

 そんな真耶の疑念を()んだのか、千冬は言葉を続ける。

 

「つまりだな、私はモンド・グロッソで優勝したからこそ『世界最強(ブリュンヒルデ)』と呼ばれるのだろう?」

 

「え、ええ、それは、まあ……」

 

「私は優勝した。ならばあいつも優勝できるという事だ。逆に言えば、あいつ程の力量でも優勝が不可能ならば私にだってできん。私達の実力はそう言い切れる程度には伯仲しているからな」

 

 その言葉に真耶は眩暈がしてくる。それは今まで孤高にして無双と思われてきた世界最強(ブリュンヒルデ)・織斑千冬自身が、己に並び立つもう一人の『世界最強』を認めたという事に他ならないからだ。何だからってそんな存在が今まで表に出る事無く、今になって目の前で常識外れの戦闘を繰り広げているというのか。真耶の脳は完全にキャパオーバーとなっていた。

 ふらりと倒れかける真耶には気付かず、終始薄笑いを浮かべながら、だが真剣そのものの眼差しで千冬は観戦を続ける。その表情(かお)は教師としてのそれでなく、言うなれば戦士としてのそれ。……より具体的に表現するなら狂戦士(バーサーカー)表情(かお)であるが。久方ぶりに見る箒の戦いぶりに当てられ、抑えきれぬ闘争本能が滲んでしまっている。

 

 

「おお、偏光制御射撃(フレキシブル)も使い始めたか。あんな無駄に複雑な螺旋軌道を描いてビームを飛ばすとはな、オルコットもオルコットで部門優勝者(ヴァルキリー)以上の強さになっているようだ。機会があったら私も戦ってみたいものだな……!」

 

 箒のみならずセシリアに対しても闘志を燃やす千冬。どうやらセシリアの(SAN値(正気度)を代償にした)急成長は、世界最強(ブリュンヒルデ)からして見ても『戦い甲斐のある強敵(えもの)』だと判断されるに至ったようだ。……こんな戦闘狂(バトルフェチ)に興味を持たれた事が、セシリアにとって良いことだったのかはさておき。

 

 そんな千冬の隣で、人知れず卒倒する山田真耶。暗転する意識の中、最後に瞳に入ってきた景色は、偏光制御射撃(フレキシブル)により不規則(ランダム)且つ複雑怪奇(ミステリアス)に曲がりくねり、三次元的に歪み捻じれながら包囲を狭める光の檻のようなビームの網目と、それを刀の一振りで起こした空間断裂により全弾力尽くでセシリアに打ち返す箒の姿だった。

 

 

 

 

「なぁ白式、俺の幼馴染が遠い世界に行っちゃったんだよ……。千冬ねぇも多分あっち側だし……お前だけは俺の傍に居てくれよな、白式……白式ぃ……」

 

 ちなみに一夏は虚ろな目で白式に話しかけていた。箒が(あと千冬も)色んな意味でぶっ飛んでるのは今に始まった話でも無いのだが。

 

 

   ※   ※   ※

 

 

「……束様最高……束様万歳……束様……あへぇ……」

 

「これで良し」

 

 教化(せんのう)完了。

 

 いや、なかなかどうして。最初は「捨てる前のガラクタで手慰みに遊んでみるか」程度の気分だったのだが……予想だにしない逸材だったな。千冬には遠く及ばないとはいえ、私をちょっとだけ本気にさせる程の才能を秘めていたとは。いやそれ以上にアレだ、こいつはリアクションが一々面白い。ちょっと磨けば良い芸人になれそうだ。

 といった事を考えつつも、どういう原理か知らんが途中で無数に枝分かれしたり、弾道の軌跡ではなく実体ある光の帯として鞭のように振るわれたりする、幾重もの偏光制御射撃(フレキシブル)のビームを、手に持った大剣から飛ばした自在に曲がる斬撃(フレキシブルもどき)で尽く断ち切る。それを目の当たりにした(白目剥いてるから見えてるか怪しいが)青ドリルは、手に持ったライフルを自らの頭にガンガン叩きつけながら泣き笑いの表情で(とび)の鳴き声のような奇声を発している。やはり面白い反応を返す……逸材だ(リアクション芸人として)。

 

 ともあれ、私による教育(ちょうきょう)が心の芯まで行き届いたのか、聖句を口にする代わりに我が恋人(ねえさん)を崇め奉る言葉しか吐かなくなった青ドリル。私も期待以上にこの試合(あそび)を堪能したので十分満足だ。そろそろトドメを刺してやろう。

 

 私は空間跳躍で一気に青ドリルの懐に潜り込む。ちなみに空間跳躍と言うのは読んで字の如く、空間を足で蹴りつけて跳び越える事で、ある程度の距離を無視して転移(ワープ)する技術だ。ISは一切関係無い肉体的な技術なので生身でもできる。千冬もできる。

 そうして零距離から必殺の剣技を見舞ってやろうと思ったのだが、それにギリギリ反応してみせた青ドリルは自爆覚悟で実弾型BT兵器(ブルー・ティアーズ)のミサイルを放った。直後、発射された瞬間のミサイルをビームが貫き、即座に爆発を起こす。私に直撃させるのは不可能と判断して爆風による範囲攻撃を狙ったのだろう。良い判断だがまだ甘い。爆風を切り裂いて事無きを得る。

 

 その瞬間、切り裂いた爆風の向こうからショートブレード(イギリス製の、インターセプターとか言ったか)を構えた青ドリルが特攻を仕掛けてきた。なるほど、爆発は囮で本命はこちらだったか。確かにこれには少々驚いた。まさか遠距離戦用機に乗った射撃特化の操縦者が、自ら捨て身で近接戦闘を仕掛けてくるとは思わない。

 私の驚きを余所に、狂ったような雄叫びを上げながら斬りかかる青ドリル。

 

 

「もうヤケクソですわァーーー! 全知全能にして永遠偉大たる我らが主・束様ぁぁーーー!! どうか(わたくし)にご加護をぉォーーーーー!!」

 

「ふッ……!」

 

 うむ、しっかり世の真理に辿り着けたようで何よりだ。一人の若者を正しい道に導けたかと思うと、私も感慨深いものがある。姉さんの下僕(どうぐ)としての自覚も芽生えたようだし、これからはちゃんと名前も覚えてやるべきか。確かセ何とかだったと思うが。後で調べておこう。

 

 しかし私の意表を突くという発想は悪くなかったが、()()()()()()()()な。そう思いながら私は既に青ドリルの背後に回っている。というか剣も振りぬいた後だ。三つの振り下ろしと三つの横払い、三つの刺突。合わせて九つの斬撃を刹那の間・同一箇所に食らった青ドリルは、既にSEも意識も失い落下していった。ま、死にはしないだろう。

 近接戦闘という条件ならば、何をどう足掻いたところで所詮付け焼刃の貴様よりも私の方に分があるのは自明の理だし、束様(ねえさん)の加護と言うのなら私の方が恩恵を受けるに決まっているだろうに。私と姉さんは赤い糸で雁字搦めに縛られ括られ束ねられた、密接不可分な関係なのだから。

 

 

   ※   ※   ※

 

 

「気は済んだか? 箒」

 

「ちふ……織斑先生」

 

「今だけは千冬で構わん。敬語もだ」

 

 ピットに戻ると織斑千冬が出迎えた。と同時に救護班が駆けつけて、アリーナに墜落していた青ドリルと……何故かピット内に倒れていた緑髪の教師を担架で運んで行く。一夏は部屋の隅でISにぶつぶつと話しかけるのに夢中で、試合が終わった事にも気付いていない様子だ。

 他に誰も私達の会話を聞いていないようだし、改まった態度を取る必要も無いと言う事か。

 千冬もうざいくらいフレンドリーに話しかけてくる。マジうぜぇ。

 

「オルコットも最後の方は並の国家代表以上に強くなっていたようだが、それをああも容易く破るとはな。流石は我が強敵(とも)だ、そうでなければ詰まらん。それでこそ、だな」

 

「なに、こんな茶番は児戯だろうさ。何しろ私の越えるべき目標(かべ)は千冬、貴様なんだぞ?」

 

「ふっ、そうだったな。だが簡単に行くと思うなよ箒、並ぶところまでは許してしまったが……何、私とてまだまだ伸び代はあるのだ。ちらとでも慢心すればすぐに引き離してやるぞ?」

 

「抜かせ、慢心などできるものか。貴様の厄介さはこの私が一番よく知っているのだからな」

 

 そう、私はこの女を―――織斑千冬(世界最強)を越える。越えねばならん。それはもはや義務ですらある。

 

 ―――この女が、『白騎士』であるが故に。

 だから私は、立ち止まる訳にはいかないのだ。いつの日か必ず、この女を『最強』の座から引き摺り下ろす為に。……私は今よりもっと強くなる。姉さんの、一番傍に居る為に。




4ss同時投下という蛮行の後遺症により、気力・体力・時の運などが低下しました。
よって、向こう数ヶ月は音信が途絶える事が予測されます。

ですがいつか必ず戻ってくるという誓いの証として、本ssを短編から連載に移行しました。
とりあえず失踪中にクラス対抗戦以降のプロット練ってきます。ではまた。
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