ようやくフリーター生活から解放される……!
そして始まる社畜生活! 夢と希望に溢れすぎ!
ところでIS世界の時系列とかよく分からないので適当で。
原作との相違点とかは独自設定って事で一つ。
少し昔話をしよう。千冬と私との因縁についてだ。
そもそも私が千冬に対して嫉妬の念を抱いたのは、今を去ること10年前―――白騎士事件と呼ばれる、日本に飛来したミサイル2341発を一機のISが全て撃墜したという、世界にISの実力を知らしめた一件に端を発する。
結論から言うとこれは愚物に塗れた世界に対してISを認めさせるため、我が愛しの
他人に対し一切の関心を持たなかった姉さんが、初めて興味を持った唯一の親友。それが織斑千冬であり、だからこそ信頼する彼女を白騎士の操縦者として選んだ……と姉さんは言ったが、私にはそれが何よりショックだった。
姉さんは、私よりも織斑千冬を……あの女を信頼し、パートナーに選んだのだ。私だってISの開発を微力ながら手伝っていたし、試作機のテストパイロットも主に私の役目だった。だが最後の最後、一番重要な局面で姉さんが頼ったのは妹の私ではなく、千冬だったのだ。下手をすれば世界を敵に回しかねない大事に私を巻き込みたくなかったから、と姉さんは語ったが、それは私が弱かった所為だ。私がもっと、何があっても私なら大丈夫だと信じてもらえるほどに強ければ、姉さんは私を選んだに違いないのだ。
だから私は千冬を妬んだ。癇に障る話だが、彼女は確かに強い。その『強さ』という要素こそが、当時の私には無くてあの女にはあった絶対の差。故にこそ、私は彼女を越えたいと願った。越えねばならないと定めた。ただ排除するのでは意味が無い。彼女の強さを真正面から叩き潰し乗り越えて、それで初めて姉さんに相応しい
そうして鍛錬を重ね幾年が過ぎた頃か。漸く千冬の強さに追いついた頃、姉さんが世界的重要人物になった影響で町に居られなくなり、転校せねばならなくなった。その事に関しては別に姉さんを恨んだりしていない。どこに住むことになろうが、私には姉さんさえ居ればそれで十分なのだから。
重要人物保護プログラムだか何だか知らないが、私達に引越しを強要してきた政府の連中も、私と姉さんは一纏めに管理するつもりだったらしく、引越し先でも一緒に暮らせると聞いていたので否やは無かった。
だから引越しの直前、姉さんが突如失踪してしまった事こそ私にとって致命的な事件であった。
今にして思えば、姉さんが他の誰かに管理されるような生き方を良しとする筈が無いだとか、自分が傍に居る事で私に迷惑をかけてしまうことを憂いたのだとか、当時の姉さんが何を考えて失踪などしたのかも納得はいく。
だがその時の私にとって重要だったのは、それまでは隣に居て当然だった、己が半身とも呼べる最愛の人が失われてしまったという一点に尽きた。その事実に私は酷く憔悴し、というかもう発狂し、完全に廃人と化していた。放っておけば数日も立たぬ内に自ら命を絶っていただろう。
そんな私を放っておかなかったのも、やはり織斑千冬であった。
生家を引き払い、政府が用意した新居へ移る前日。父親が営んでいた、もはや無人となった剣道道場の片隅に私は居た。そこに飾られていた真剣を見つめながら、その煌めく白銀を突き立てて自らの腹を開けば、臓物と共に零れ出すあの懐かしき思い出の様な『赤』を拝めるだろうか……などと半ば以上本気で思案していた時の事。
扉を勢い良く開け放って現れた千冬は、一直線に私に駆け寄ると渾身の右ストレートを私の顔面に叩き込んだのだ。流石に呆然とする私に対して、彼女は一喝した。「仮にも私が好敵手と認めたお前が、
その瞬間、私は先程まで眺めていた刀を抜き放ち、目の前の宿敵の首元に突き付けていた。対する千冬は、眉一つ動かさず静かに私を見据える。回避動作も防御反応も示さなかった。私が刀を止めると
実際、私は彼女を斬るつもりは無かった。確かに、投げかけられた言葉自体は私にとって許し難い侮辱であったが、その言葉を否定できない程度には無様を晒していたという自覚はあったし……何より当の千冬自身が、私の姉さんへの愛情が『その程度では
私は何も言わず、敵意も殺意も持たないまま、ただ千冬を睨みつける。相手も私の目を真っ直ぐに、澱みない瞳で睨み返してくる。数秒の後、私は大きく息を吐くと刀を下ろし、鞘に納め、腰に佩く。そのまま道場の外に向かって歩き始め、千冬とすれ違いざまに言葉を交わした。
「用事を思い出した。行ってくる」
「行ってこい、箒。お前の為すべき所を為せ」
互いに背を向け合ったまま、別れの挨拶はそれで十分。そう思ったが……道場の出入り口で一旦立ち止まり、僅かな逡巡の後、ギリギリ聞こえる程度の声で告げる。「感謝する」と。一時と言えど道を誤りかけた私を、正道に叩き戻してくれた(認めたくは無いが)恩人であり、好敵手でもある……
反応は気にせずその場を後にしたが、奴の事だ。聞こえなかったフリでもしてくれたのだろう、律儀に。そんな彼女に対し、まだまだ敵わない、と思いつつも―――いつか必ず、心身共に奴を凌駕する強さを持ってみせる、と固く誓い、歩む足を速めたのだった。
ちなみに道場の扉のすぐ傍で、怒涛の展開に着いて来れなかった一夏がフリーズしていたが……どうでもいいので無視した。
以上が私と千冬の
かくして私は故郷を去り……政府の手を逃れ、失踪した。
全ては姉さんを探し出し、共に人生を歩む為。置いて行かれてしまったのなら、追いすがれば良い。全く私ときたら、そんな簡単な事にさえ気付けず燻っていたのだ。その件に関してだけは、本当に
ともかく私は私が最善と思う方法で姉さんの痕跡を追い、道中で若干の邪魔はあったものの特に問題も無く旅を続け、半年の後には姉さんの
久しぶりに会う姉さんの顔を見た瞬間、会えなかった半年分の想いが暴発し、衝動のまま姉さんを押し倒しそのまま致してしまったのも、今となっては良い思い出だ。姉さんも最初は驚いていたものの、最終的には受け入れてくれたので和姦である。問題無い。
その日、私の片思いは成就し、念願だった『
※ ※ ※
そして現在、私は再び、今度は自分自身の意思で姉さんの下を離れ、IS学園に居る。それは姉さんの為であり、自分の為でもある。姉さんにとってもイレギュラーであった男性操縦者―――アホの一夏のデータを採り、姉さんが研究中の男性用ISの開発に役立てる為。そして織斑千冬と久しぶりに剣を交える為。
姉さんと容易に会えなくなるのは寂しかったが、卒業までほんの数年の辛抱だし、定期的に電話で会話はできるし、長期休暇には帰省できるし、何より離れていても心は繋がってるし……と、自らを奮い立たせて篠ノ之箒はここに居る。姉さんが失踪したあの時より、少しでも心は強くなれただろうか。
……なんて事を考えながら、席に着いて授業の開始を待っていると、無駄に乳のでかい女が教室に入ってきて、開口一番叫ぶ。
「と、いう訳で! 一組のクラス代表は、織斑一夏君に決定しました!」
「……え? あれ? 俺ッ!?」
なんだ、あの童顔巨乳は教師だったのか。全く気付かなかったが、多分初めて見る顔だし仕方無い。だが姉さんに関係無い事を記憶する意義も見出せないし、憶えておく必要は無いか。
とか思考してる間にも、一夏は食い下がる。
「先生っ! なんで俺が代表なんですか!? つか俺、結局決闘してないんですけどっ!?」
「えーと、言い難いんですけど『決闘してない』というのがそのまま答えですね……。結局オルコットさんは篠ノ之さんとの試合の後、戦闘できる精神状態じゃ無くなって棄権扱いですし、その篠ノ之さんは「満足した」とか言って自主的に棄権しちゃうし……結果、織斑君は不戦勝で2戦ストレート勝ち、という事に……」
「なんだろう、凄く納得いかないのに理屈の上では確かに俺が優勝してる……!」
微妙な表情で真実を告げる緑髪の教師と、項垂れてわなわな震える一夏。そんな二人を尻目に、
「ちょっと宜しいですか? この場を借りて謝罪をしたいのですが……少しお時間頂けないでしょうか?」
「構わん、話せ」
「篠ノ之、お前に許可を出す権限は……まあいい、何だオルコット」
声と共に、職員会議か何かで遅れたのだろう千冬……もとい織斑先生が入室してきた。私が勝手に発言の許可を出したのを咎めかけたが、時間の無駄と思ったのだろう、話を先に進める。
「先日は些細な事で激昂し、あまつさえ道理の通らぬ暴言を吐いて騒動を起こしてしまった事、先ずは改めて謝罪致しますわ。本当に、申し訳ありませんでした」
いかにも貴族らしい、大仰な仕草で頭を下げる英ドリル。誰が見ても完璧と認めるだろう謝罪だった。そんな姿を見てか、一夏が前に歩み出て声をかける。
「頭を上げてくれよ、セシリア。自分の非を認めて、しっかり謝ったんだから、もう皆も許してくれるさ。それに先週の騒動は、俺にも非がなかったとは…………あれ? 俺、何もしてなくね? むしろやらかしたのって箒じゃね? 少なくとも俺は巻き込まれただけ……」
「そう、本当に申し訳なく思っておりますのでっ! もう一度、しっかりと謝らせて頂きますわ!!」
言葉の途中で急に考え込んでしまった一夏は放っておいて、大声で叫んだドリルはつかつかと私の下へと歩み寄ると、……それはもう見事なまでのジャパニーズ・ドゲザを決めて謝罪を続ける。
「本当に! 貴女様の姉君であると同時に人類文明の先導者、地上に舞い降りた女神であらせられる所の篠ノ之束博士様に対する冒涜の数々!! ただ伏して赦しを乞う以外にありませんわ!」
『……えっ? そこっ!?』
私以外のクラスメイト達の声が重なるが、逆にそこ以外のどこを謝罪すると言うんだ。
ともかく、私は目の前で裁きを待つ罪人に、優しく声をかける。
「顔を上げろ、私はもう許したし……姉さんは寛大だからな、そもそも怒っちゃいない」
そう、姉さんが「許してやれ」と言った以上、私も此奴を許すのは確定事項だったのだ。それに加えて、先の決闘においては私を散々に楽しませてくれる玩具としての才覚を見せ、姉さんの偉大さと神聖さに気付き回心する姿勢も見せたのだ。ならばこれ以上罰を与える事も無かろう。
「嗚呼、何て慈悲深い……何という懐の広さでしょう、束様も、箒様も……」
「姉さんはそれでいいが、私は姉さん程の人物では無いからな。呼び捨てで構わんぞ」
「ははっ、では恐れ多くも、箒さん、と……」
「ああ、そう呼びたければそう呼んでも構わんぞ……と、そうだ、それなら私も貴様の事を名前で呼ぶとしよう」
そう、私も私なりに、この女を認めたのだ。あの決闘で、私や千冬には及ばずとも十分な力を示した事に敬意を表し、また曲がりなりにも姉さんの信徒としての自覚も芽生えたという事で、ちゃんと名前を覚えてきてやったのである。
「これからは『
「箒! とりあえず名前間違ってるぞ箒! 他にも言いたい事はあるけど!」
むう、いざこざのあったクラスメイト同士が
というか、名前が違う? そんな訳無いだろう、見ろセシリルの様子を。
「わ、私の名を呼んで頂けるなんて……恐悦至極に存じますわ……! ああ、幸せすぎて死んでしまったらどうしましょう」
「それでいいのかセシリアぁ!? てかキャラ変わりすぎだよアンタ!!」
私に名を呼ばれただけで昇天しかねない程感動しているセシリル。やっぱり私の覚えた名前で合ってるじゃないか。そんな完全にトリップ中の彼女の両肩を持ち、ガクガクと身体を揺さぶりながら絶叫する一夏。
「全員静まれ! 授業を開始するぞ!」
「えっ、あの、織斑先生!?」
「言いたい事は分かるが山田先生、もう色々収集が付かん。とにかく授業を始めるしか無い」
混迷を極めた状況を見かねてか、織斑先生が強引に授業を始めた。私は元より、呆然としていたクラスの者共も慌てて支度を始める。そして織斑先生の出席簿が、未だ陶酔中のセシリルの頭部を強打した。無論一夏は一瞬で席に戻っている。奴の危機回避能力は平常運転だ。
「あ、頭が割れますわッ……!」
「峰打ちだ、安心しろ。オルコット、授業の開始を遅れさせた罰として放課後第二アリーナに来い。私が直々に補修を行ってやろう」
あ、あの眼は
……とか他人事のように考えつつ、放課後に地獄を見る事が確定したセシリルに心の中で合掌。だが助け舟は出さない。だって他人事だし。
次回、例のあの人登場予定。
投稿がいつになるかは知らんけど。