魔法少女リリカルなのはEXTRA SEQUENCE 作:黄金馬鹿
大好物ですありがとうございます公式様
時間は歩いている内に過ぎていき、気が付いたら学生の下校時間になっていた。小学生は元気に帰り、中学生や高校生は若干疲れたような顔で、しかしやっと帰れるという希望のようなものを持った表情で歩いている。今日一日、過去の海鳴の観光に費やしたライアンはそんな学生達に混ざり、適当な路地を曲がって幻術魔法を発動した所で返信魔法を使い、黒いフェレットの姿に変身し、あの動物病院の上に戻った。
暫くそこで暇を潰していると、視界の端でなのはがアリサ、すずかと共に一匹のフェレット、ユーノを連れて動物病院の中に入っていくのが見えた。どうやら、ここまでは史実通りに動いてくれているようだ。ライアンが接触したというイレギュラーはこの最重要とも言えるイベントを潰さずに済んだらしい。数十分の時間が過ぎ、なのは達が動物病院から出ていくのを確認してから、ライアンは己の魔力を外部に漏らさず、念話も受け取らないように細心の注意を払いながらこの日の夜のため、一旦眠りについた。一日歩いて疲れた結果だった。
そして、次に違和感を感じて目を覚ますと、ユーノが封鎖結界を展開し、魔力を持つ存在以外を外界とシャットダウンしている所だった。これを張られた感覚に違和感を感じて目を覚ましたようだ。子供ながらもこの結界の精度と展開速度、見てわかるレベルの強靭さはユーノがどれほど優秀な補助魔導士であるかを現しているようだった。ライアンならもっと強度は低く、展開速度も精度も低くなってしまう。
ユーノの結界に感嘆していたが、直後に動物病院全体が揺れた。そして、建物の破片が飛び散り、ユーノが外に向かって飛び出した。直後、真っ黒な毛玉のような物が動物病院に突き刺さり、外に飛び出したユーノは丁度そこに居合わせたなのはによって抱き留められていた。どうやら、ユーノの念話をシャットアウトしていたためか、ジュエルシードの怪物の接近にすら気が付かなかったらしい。屋上から下を見ればなのははユーノを抱いたまま逃げ出し、ジュエルシードの怪物はなのはを追って外へ飛び出した。ライアンもそれを飛行魔法で追う。
少し離れた場所でなのはは止まっており、ユーノから赤い宝石。インテリジェントデバイスであり、なのはの生涯の相棒となる杖、レイジングハートを受け取っていた所だった。が、機動に手間取っているらしく、なのはは困惑している。そして、それを狙いジュエルシードの怪物がなのはへ向かって飛びかかってきた。
ユーノが動き、なのはを守ろうとしていた。が、ここで介入しなければタイミングを逃す。そう判断したライアンは魔法を使い、介入する事にした。
ここから話は動く。過去改変の改変が始まる。それを自覚し、ライアンはソニックムーヴを使い飛び込んだ。
「プロテクション・パワード!」
本来ならカートリッジを使ってのプロテクションを無理矢理普段の魔力で行使する、ライアンの最も防御力の高いプロテクション。なのはの使うプロテクションEXに位置するプロテクションだが、その硬度は並みの砲撃では抜けない位には硬い。
後ろを見ると、なのはとユーノは突然の乱入者に目を白黒とさせていた。それを見てライアンは焦る。ジュエルシードの怪物は予想以上に攻撃力が高い。人間状態でデバイスを使えば簡単に防げるレベルだが、デバイスを使わずの、魔力運用的には効率の悪いフェレット姿でのプロテクション。その硬度は通常のプロテクション・パワードよりも遥かに低かった。
「えっと……あ、貴方は?」
「話は後だ! 時間は稼ぐから早くしろ!」
フェレット状態でプロテクションを触り、プロテクションの表面にある魔力を収束し爆発。ジュエルシードの怪物をそれで吹き飛ばす。
だが、このままでは攻勢に移れないしN2Uに登録されている魔法も使うことが出来ない。本当ならフェレット形態のままで事なきを得たかったが、そうも言っていられない状況になってしまった。
舌打ちをかましながらフェレット形態から人間の形態に戻る。それと同時にバリアジャケットを構築。いつもの管理局で一般採用されている物を真っ黒にして装飾を付けただけのバリアジャケットを羽織り、人間形態に戻る。それを見てなのはは度肝を抜かしたのかヘタレ込んでしまい、ユーノはそのバリアジャケットを見た瞬間に驚いていた。やっぱりもうちょっとデザインを凝ってカッコいいオリジナルにしておけば良かった、と若干後悔する。
「ふぇ、フェレットさんが男の人にぃ!?」
「そのバリアジャケット、もしかして貴方は管理局の!?」
「話は後だって! 俺は封印魔法使えないしそんなに強くないから早めに封印をしてくれ! N2U、セットアップ!」
腕輪型からカード型に変化したN2Uを投げ、杖に変えてからそれを握る。それを見てなのはは何かに気が付いたのか声を上げているがここは一旦無視だ。ここは物凄いスピードで近づいてくるジュエルシードの怪物に視線を投げ、N2Uに登録されている魔法から最適な物を選択する。
ここは遠距離魔法では確実に出遅れる。ならば、近接魔法を仕掛けるしかない。魔法を選択し魔力を流すことでプログラムを起動させ、その魔法を使用可能にする。
「エリオ。お前の雷撃、借りるぞ!」
後天的な特訓による魔力の電撃への変換。その力は親友とも言える青年が師から受け継いだ魔法。それを受け継ぎ、今振るう。
斬り結ぶという馬鹿な真似はしない。ここは、斬り飛ばす。故に、横に構えるのではなく、上段で構え、カウンターとして狙う。
タイミングは正しく刹那。ジュエルシードの怪物との距離が零になったその瞬間にそれを一瞬にして振るう。
「紫電、一閃!!」
N2Uの先端に取り付けられた槍として使える矛。それを使ったエリオ式の雷撃での紫電一閃。エリオは打撃をそう呼んでいるが、ライアンはそれをデバイスで行う。
敵を倒すという事を最優先として考えられた古代ベルカの魔法を遠距離戦主体であるミッド式にグレードダウンさせた劣化版の紫電一閃。本来ならばフルバックであるキャロやルーテシアにすら当たらず牽制にしかならないそれだが、知能を持たない怪物相手なら十分な攻撃となる。
斬り裂かれたジュエルシードの怪物はそのまま吹き飛んでいき、道路の上で横たわった。が、それで攻撃を緩めるほどライアンは甘い教導をされていない。こういう知能を持たない、封印しない限り復活する怪物への対処は封印が入るまでこちらのペースで攻撃を与え続ける事。それに限るのだとなのはとヴィータからは習った。それを使う機会は今までなかったが、これは絶好のチャンスだ。ライアンは追撃のために一瞬で発動させる魔法を選び、魔力を通す。
「スティンガーブレイド!!」
四つの魔力刃を召喚。それをジュエルシードの怪物に向けて放つ。囲み、死角からの一撃を加えていく四本の魔力刃はジュエルシードの怪物を切り裂き、その役目を終えるとそのまま消えていく。それのコントロールを終えたライアンはすぐに次の魔法を選択する。
後ろのなのは達はまだ時間がかかるようだ。なら、少し大がかりな魔法で足止めをする。
選択するのはなのは直伝のディバインバスター。それにはやてから教わった氷結魔法を組み合わせて完成させたライアンオリジナルのディバインバスターのバリエーション。それをチャージし、再生に手間取っているジュエルシードの怪物を完全にロックオンし、魔力を開放する。
「一撃氷結! ヘイムダルディバインバスター!!」
冷気を放ちながら青色のディバインバスターがジュエルシードの怪物に直撃する。それはジュエルシードの怪物を吹き飛ばすような威力はなかったが、それが当たった場所からジュエルシードの怪物は徐々に凍っていき、やがて全身が凍り付いた。
ヘイムダルディバインバスターは模擬戦等では禁止されている効果を持っているが、その効果は威力を削った代わりに絶大だ。当たった相手は問答無用で凍り付き、動けなくなってしまう。これを使えるのは管理局の上司から特別な許可を貰ったときだけだったが、今はそんな枷はないし時間稼ぎをするには最適な魔法だ。軽くN2Uに付いてる氷を手で払ってから再び後ろを見る。すると、なのはがレイジングハートの機動に成功したのか、膨大な量の魔力を放出しながらも桜色の光に包まれバリアジャケットを展開し、レイジングハートをその手で握っていた。
そのバリアジャケットはかつてなのはが使っていた小学校の制服を軽くアレンジしたものではなく、ライアンも見たことのある、映画でのなのはのバリアジャケットだったが、当初なのははバリアジャケットのデザインを決める時間がなかったため小学校の制服を思い浮かべた、と言っていたのを聞いたことがある。だとすると、今回はライアンが時間を稼いだおかげでそれなりにバリアジャケットのデザインを決める時間があったのだろう。
なのははセットアップを終わらせると走ってライアンの横にやってきた。
「お兄さん!」
レイジングハートを両手で握り可愛らしい走り方で走ってきたなのはを見てライアンは軽く癒されたが、その表情はライアンを心配している表情だった。
確かに、あんな怪物の相手を一人でしていたら心配の一つもされるだろう。笑顔を見せ、大丈夫だ、と言ってやれば、なのははよかった、と安心した声を漏らした。そこにユーノも混ざり、ライアンに向けて質問をした。
「あの、貴方は管理局員なんですか? それに、あの氷結魔法は……」
「結論から言えば、俺は管理局員ではない。後、氷結魔法は教わったものだ」
その言葉を聞き、ユーノは肩を落とした。確かにユーノ的には魔法の事を知らないなのはを巻き込むよりも事情通であろう管理局員と協力をした方がよっぽどいいだろう。なのはがどれだけ才能を持っていてもなのはは一般人。魔法戦闘の訓練をした管理局員よりも危険度は高い。
だが、ライアン的には、なのはにレイジングハートを持たせた時点でもう遅い。彼女は一度関わったことからは意地でも引こうとはしない性格だからだ。
「なんかごめんな、フェレット君。一応、俺はミッド出身の魔導士だ」
「あ、いえ。勝手に期待した僕が悪かったんですから謝らなくても……」
「……ねぇ、結局あれはどうしたらいいの?」
ライアンとユーノで魔導士にしか分からない話をしていると、なのはがレイジングハートを片手に声をかけてきた。なのはが指を指した場所には、今にも氷を割って出てきそうなジュエルシードの怪物がいた。
あの氷、内側からだとシグナムですら暫く動けないレベルだったのに、こうも短時間でヒビを入れられると流石にへこむ。
が、相手は人じゃないから仕方ないと割り切ってなのはにやる事を教える。
「いいかい、そのデバイスであれを封印するんだ。殆どの工程はその杖が全部やってくれるから、君はどういった形で封印をしたいかをイメージするんだ」
「イメージ……?」
「そう。どんな形でもいい。相手に重い一撃を当てるイメージをするだけでいい。それだけで君の杖は封印をしてくれる」
そこがインテリジェントデバイスの最も優れている点であり、いい点だ。魔法を知らなくてもデバイス自身が使用者の魔力を使うことによってその時に応じた魔法を使ってくれる。ストレージデバイスでは決してありえない事だ。
そして、なのはの持つレイジングハートは初戦闘でありながらなのはに飛行魔法を使わせ、砲撃魔法と防御魔法を使ったという。勿論、封印も。
だから、この戦闘ではなのははイメージをするだけでいい。なのはが魔法を発動しなくても、レイジングハートが魔法を発動してくれるから。なのはは何となくだがそれが分かったのか、レイジングハートをジュエルシードの怪物に向けた。ライアンもほぼ割れた氷を見てN2Uを構えた。
「俺があれを止める。君は封印を」
「は、はい!」
「緊張はするな。それに、失敗したっていい。君は俺が絶対に守るからな」
その瞬間、氷が割れ、ジュエルシードの怪物がその姿を現した。
それを認識した瞬間、ライアンは魔法を発動させた。
「チェーンバインド! レストリクトロック! アイスバインド!」
それは全て補助系であり、バインドの魔法。
ライアンが展開した魔法陣から水色の鎖が飛び出し、ジュエルシードの怪物を縛り、更にその体をリングのような物が締め上げ、そこに氷結属性を持たせたバインドが加わる。一種類のバインドを頑丈に掛けることがセオリーであり、何個ものバインドを同時に操ることは一つ一つがおざなりになり、かなり脆くなる。
が、相手はバインドを破る方法を知らない怪物。力づくで破ろうにも種類の違うバインドを一つ一つ破っていくのはかなり時間がかかる。それ故に、それをなのはが撃ち抜く。
なのははレイジングハートの指導を受けながら、シーリングモードとなったレイジングハートをしっかりと握り、構えている。トリガーに指をかけ構え、レイジングハートが魔力を先端に収集し、スフィアとして留めておく。本来ならばインテリジェントデバイスを持っていたとしても、初めての魔法でここまで出来る人間は数が少ない。それを、制御をレイジングハートに任せているとはいえ、スフィアを暴発させずに留め砲撃として放つ。それも、初めての魔法で。
ライアン自身、なのはだから当たり前だろう、と思っていた節があったが、こうして見てみると、なのはの才能の凄さが実感できる。なのはの後ろに回り込み、万が一にも巻き込まれないようにして一安心してからバインドをもう一つ増やしておき、なのはに後を任せる。
「レイジングハート、お願い!」
『All right. Divine buster』
レイジングハートの声が響く。直後、トリガーが引かれ桜色の砲撃がレイジングハートから飛び出し、怪物を呑み込んだ。
それを見て、かつてあの桜色に呑まれた記憶が蘇り、冷や汗が噴き出るが、砲撃の反動ですっ飛んできたなのはを抱き留め、封印の完了を見守る。
ジュエルシードは怪物の中から青い光と共に現れ、桜色の砲撃に呑まれながらその光量を落としていき、砲撃が止まったころにはジュエルシードは空中をふわふわと浮いているだけだった。どうやら、封印は無事に完了したらしい。
ライアンに抱き留められたなのはは暫く目をぱちくりさせていたが、ジュエルシードが無事に封印できたのを雰囲気で感じ取り、胸を撫で下ろしていた。
少しイレギュラーはあったものの、ジュエルシードの怪物は無事に封印できた。それに、こうして知り合えた事からP.T事件解決までは共に戦うことは出来るだろう。
目指すのはハッピーエンド。そのための一歩をライアンは踏み出した。高町なのはの、魔導士としての第一歩と共に。
主人公は一応、原作キャラ(なのはの身内)の魔法を一つずつ使うことが出来ます。一部被っている魔法も存在しますがそれらを組み合わせてオリジナルの魔法に仕立て上げていたり。ヘイムダルディバインバスターもその組み合わせの一つです。
ベルカ式の面々の魔法はミッド式に落としているので結構出力がダウンしていたり。エリオ直伝の紫電一閃も牽制にしかならないレベルで出力低下してますし。
まぁ、ミッド式で接近戦仕掛ける方が頭可笑しいからね! 仕方ないね!