魔法少女リリカルなのはEXTRA SEQUENCE   作:黄金馬鹿

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最後が適当に……


第十五話

 それは、何年前だったか。少なくとも、二年以上は前だった。

 ライアンはオフの日にある人に呼び出された。その日はなのはにプライベートでの教導をしてもらおうと思っていたのだが、突如舞い込んできたその連絡は、休日を次の日に作るから来てほしい、という事だった。

 しかし、その連絡をしてくれた人はかなりの大物であり、ライアンはガッチガチに緊張しながらも会合予定の部屋へと向かい、ドアをノックし声を上げた。

 

『誰だ?』

「ら、ライアン・レギルス三等陸士です」

『そうか。入ってくれ』

 

 当時まだ三等陸士であったライアンが呼び出された場所。それは、一端の管理局員では入る事の出来ないような場所にある談話室、のような物だった。ここは主に執務官や提督が意見を交わしたり仕事の受け渡し、情報の受け渡しを行うような場所であり、そこに三等陸士が足を踏み入れる、というのはかなり珍しい事でもあり、緊張する物であった。

 ライアンはその中の指定された一室に定刻通りに到着し、今許しを得たため、失礼します。という声と共に中に入った。

 中にいたのは、二人の男性だった。

 

「よく来てくれたね。僕はユーノ・スクライア。無限書庫の司書長をやっている」

「初めまして。クロノ・ハラオウン提督だ。今日は無理に呼び出してしまってすまなかったな」

 

 迎えてくれたのはなのはの身内の中でも数少ない男性と言われるユーノ・スクライア司書長とクロノ・ハラオウン提督だった。

 二人とも、管理局員の中ではかなりの有名人であり、ユーノとクロノは特に最年少で司書長、執務官になったと言われるエリート中のエリート。戦闘もでき、頭もキレる。まさに管理局員の理想そのものとも言えるような人物達だった。

 ライアンはガッチガチに緊張しながらも座ってくれ、と言われ、言われるがままに二人の対面に座る。

 何を言われるのか。まさか、何かやらかしたのか? そんな特に記憶にない物を不安がっていると、ユーノは呆れたような顔をしてクロノに声をかけた。

 

「クロノ……一体どんな文面で通信を送ったのさ。凄い緊張しているじゃないか」

「え? あ、いや……普通に今日この時間にここに来てくれと……」

「はぁ……ここってそれなりに偉い人じゃないと入れない所だよ? そんな所に呼び出したら緊張するに決まってるじゃないか」

「そうか? 僕は小さい頃からここに入っていたが……」

「そりゃ、身内に提督がいるし自分も執務官だからね……」

 

 二人は何か話しているが、ライアンはその内容が分からない位には緊張して頭がガッチガチになっていた。マルチタスクで思考を分割してもその全てがガッチガチになるくらいには緊張していた。

 ユーノはクロノに向かって呆れた溜め息をつくと、ライアンの方へ向き直った。

 

「えっと、ライアン、だったね。どうだった? なのはの教導は?」

「え、なのはさ……教導官のですか? そ、その……とてもタメになりましたし、やはり教えてくれるのが上手くて……」

「鬼のような内容だった、と」

「はい、鬼のような……あっ!? い、いや、その、これは……」

「クロノ、イタズラしない。まぁ、大丈夫だよ。これはプライベートだし、本音をぶっちゃけても」

 

 クロノは小さく笑い、ユーノは冷や汗をかきまくるライアンを落ち着かせようと声をかけた。

 そして数秒の後、ライアンは落ち着いたが、それでも緊張は解けなかった。

 

「少し落ち着いた所で、そろそろ本題に入るか」

「本題、ですか?」

「あぁ。聞きたいのは一つでね。君は、どうしてなのはに引き続き教導してもらいたいと思ったんだ?」

 

 それは、どういうことか。そう聞こうとしたが、その理由は再びクロノの口から放たれた。

 

「言っては悪いが、彼女の教導はかなりのスパルタでね。タメにはなるがもう受けたくない、という人間が九割九分なんだ。だから、気になってね」

「ちなみに、また受けたいっていう一分の物好きは機動六課の元メンバー」

 

 これは何だ。アンケートか何かなのか。ガッチガチに緊張した頭で何とか言葉を見つけ出し、ライアンは声を出した。

 

「……もっと、受けてみたかったんです」

「ん?」

「あの人の教導は……その、凄く大変でした。ですけど、あの人の教導を受け続ければ、きっともっと上を目指せる……もしかしたら、あの人と一緒に肩を並べて事件を解決出来る日が来るかもしれない……だから、まだ教えてもらいたかったんです。色々と。一から」

 

 そして。ライアンはそう言い、再び口を開いた。

 

「俺は、あの高町なのはに育てられたんだぞって……胸を張りたかったんです。あの人の教導は、俺のようなへっぽこでも、ここまでやれるようになる、最高の教導だぞって」

 

 ライアンは一人、あの教導には満足していた。また受けてみたい。そして、もっと上へ。上へ行きたいと思っていた。が、同僚たちはキツかった。もう受けたくない。そんな言葉を吐き続けるだけだった。

 だから、もっと教えてほしかった。確かに凄くスパルタだけど、それを乗り切ればここまで強くなれる。あの人の教えは、そこまで至れる程凄いんだと。

 それを聞いたクロノとユーノは暫しそれを黙って受け止め、再び口を開いた。

 

「なるほど、君は凄い物好きなんだな」

「僕達も一度受けてみたけどギブアップしたからね……」

「え? そうなんですか?」

「そりゃあもう。興味本位で受けてみたら死にかけたよ」

「ある程度は鍛えているが……本の虫と戦艦で偉そうにふんぞり返ってる二人の男が受けたらな。それをまだ体が出来上がっていない君が受けて、まだ受けたいと思うのなら、本当に物好きとしか思えんさ」

 

 クロノの言葉は少し棘があるように感じたが、ライアンにはクロノは単純に凄い奴だ、と言っているように聞こえた。そんなクロノが懐からある物を取り出すと、ライアンの前に差し出した。それは、カード状の待機状態になっているデバイスだと一目で分かった。

 

「僕達は賭けをしていてね……なのはが三十歳を超えるまでに君のような物好きが出てきたら、その物好きにその時のデバイスの中では破格の性能をしているデバイスを送ってから今度集まった時に酒を奢る、という賭けをしてな……」

「まさか来ないだろう、と思っていたら来てしまったんだ。急にこんな事を言っても困惑されると思うけど、受け取ってほしい」

 

 クロノとユーノがいきなりぶちまけた事実にライアンは大いに困惑した。つまり、この人達は賭けに負けたからライアンにデバイスをプレゼントする。そう言っている。流石にいきなりそれを言われても、ライアンは困惑しか出来ない。

 

「君を巻き込んだことは正直にすまないと思っている。だが、君が受け取ってくれないと……」

 

 クロノがそっと後ろの扉を見た。ライアンが閉めた筈の扉は若干開いており、そこから物凄い怖い笑顔の何処かで見た黒い戦斧を持った金髪の女性、物凄い怖い笑顔の何処かで見た杖を持った茶髪の女性。そしてデバイスと思われる剣を砥石で研いでいるピンク色の髪の毛を纏めた女性がいた。漏らしそうだった。

 

「ぼ、僕達が彼女達に処される……!」

「も、もしも君が受け取ってくれないとおしおきに全力の『模擬戦』をさせられんだ……!」

 

 何時の間にか、二人の顔色は真っ青を通り越して白くなっていた。再び扉を見ると、ガッションガッション音を鳴らしながら変形を続ける黒い戦斧、謎の真っ赤な短剣、素振りをする音の三重奏が奏でられていた。

 

「さ、流石に僕達も面白半分にこんな賭けをしたことは悪いと思っているけど!」

「僕には家族がいる! 娘が二人いる! 家族を残して死にたくないんだ! だから、君は何も言わずに受け取ってくれ! 頼む!!」

 

 二人が必死な形相でライアンの肩を掴む。ふと、二人の後ろを見ると戦斧を構える金色の死神さんと謎の本を構える歩くロストロギアさんがいた。気絶しかけた。

 

「あ、あの……後ろ……」

「フェイト! 落ち着け、落ち着いてそのバルディッシュを下ろせ!!」

「はやてもシグナムをけしかけないで!! 死ぬ、死ぬから! 僕達じゃ抵抗むなしく三枚下しだから!!」

 

 どうやら、あちらは予想以上に修羅場らしい。笑えてしまう。

 だが、ライアンも管理局から支給される安物のストレージデバイスはあまり性能が良くなかったため、いつか買い替えたかったと思っていた所だ。

 

「えっと……何だかよく分かりませんけど……そういう事なら、有り難く使わせてもらいます」

 

 ライアンは必死な二人を見ていると、なのはがそんな風に思われていた、とか色々と言いたい事はあったが、なのはが知らないならいいか。と思ってしまい、そのデバイスを受け取った。

 その瞬間、クロノとユーノの後ろに居た二人の死神は消え、クロノとユーノは胸を撫で下ろした。

 

「し、死ぬかと思った……」

「あ、ありがとう……」

「い、いえ。こちらこそ。こんないい物を頂いてしまって……」

「そこまでの物じゃないよ。そのデバイス……N2Uには僕達の切り札とも言える魔法を入れておいたから、有事の際は使ってくれ。なのはの教導を受けていれば何時か使えるようになるだろう」

「有事の際って……」

 

 そんな茶番のような事が起きた結果、ライアンは二人からN2Uを受け取った。この杖は、なのはのレイジングハートと同じように、十年以上の付き合いになると知らずに。

 

 

****

 

 

 走る。そして、変身。誰もいない道でフェレット化を解き、ライアンはバリアジャケットを纏う。黒いバリアジャケットの中からカードを一枚取り出し、それを投げる。

 

「N2U、セットアップ!」

 

 投げると同時に叫び、N2Uを展開。杖となったN2Uをその手に握り、幻術魔法をかけてから空へ飛び立つ。そして、暫く上昇すると、海鳴の……今のこの街の惨状を嫌にも目にし、息を呑んだ。

 それは、衝撃的な光景であり、ミッドチルダでは見たことの無い光景でもあった。

 街が、巨大な根っこか蔦のような物に蹂躙されている。道路を砕き、建物を折り、車を吹き飛ばす。正しく災厄の体現。故に、それを見て思わず体が硬直した。

 これは一人二人の魔導士でどうにかなる物ではない。はやてのよう広域殲滅型の魔導士を使い、一気に街ごとこれを吹き飛ばす。それしかこれを解決する方法は思いつかなかった。が、ライアンにはそんな高威力の範囲指定型殲滅魔法は使えない。

 だが、まだ解決する方法はある。これはジュエルシードが起こした災厄だ。だから、ジュエルシードを止めれば、この災厄は止まる。壊れた街が一気に修復されるという事は無いだろうが、それでもこれ以上の被害は抑える事が出来る。そのためには、なのはに動いてもらわなければならず、ライアンは正直に言えばやれる事がない。

 それでも人助けは出来る、とライアンは災厄へ向けて飛び立つ。

 遠くからは分からなかったが、近づいてみると、ジュエルシードによって生み出された巨大な木や蔦の上には逃げ遅れた人が沢山いた。子供も、大人も。車に乗っていたが故に下手に動けない人や恐怖で腰が抜けた女子供。それ等を助けようとするがどうにも出来ない男性等。正しく地獄絵図を体現したかのような光景。これをどうにか出来るのは、魔導士であるライアンとなのはとユーノ。この三人だけだった。

 しかし、なのはとユーノはジュエルシードを探している事だろう。なら、ここはライアンがどうにかしなければならない。幸いにも、幻術魔法が多少使えるライアンなら、バレる事無く、再び超常現象が起こったと思わせる事が出来るだろう。

 ライアンが幻術魔法で己の姿を完全に見えないようにしてから動いた。

 

「シグナムさん。炎の刃、お借りします! 焼き斬れ、紫電一閃!!」

 

 炎の魔力弾では火力が足りないし燃やすということは二次災害を引き起こす可能性がある。故にここは焼きながら斬る魔法、シグナムから教わった紫電一閃で木を切断。そして木の上に取り残されている人を回収し、地面に下してから再び違う場所へと向かい、紫電一閃で焼き切る。

 紫電一閃は魔力の斬撃を炎の魔剣、レヴァンティンに乗せて放つ、という近距離攻撃型の古代ベルカ魔法だが、ライアンの使う紫電一閃は炎の斬撃をN2Uを振るう事で放つ、という遠距離技に変わっており、フェイトのハーケンセイバーに近い技になっている。

 それ故に、多少のリーチの誤魔化しも効く上に、魔法発動のために魔法名を叫んだ場合も、雷撃の紫電一閃か、炎熱の紫電一閃かを寸前まで相手に悟らせないように出来る優秀な魔法だ。

 それを使いながら、ライアンは残された人や、巨大な木と瓦礫等に挟まれ動けない人を助けていく。

 だが、それが気に障ったのか、ライアン目掛けて巨大な木が薙ぎ払われるように物凄い速さで接近してくる。まともに当たれば確実に致命傷を負ってしまうだろう。だが、それならまだ対処は出来る。

 N2Uの中から魔法を選択。それを発動させる。その瞬間、ライアンの魔力がN2Uの先端にハンマーのように集まり、形を成す。

 

「ヴィータさん。黒鉄の鉄槌、お借りします! ぶち抜けッ!」

 

 構えたN2Uの先端の魔力の一部が爆発を起こす。その爆発によりライアンの体は回り、そして物凄い勢いで向かってくる木へと突撃していく。ヴィータのように慣れていないため、精度が高くない上にヴィータの魔法の威力の半分も出ない同名の魔法。しかし、一点突破の性能はヴィータのお墨付き。

 焼き切っても再生され、そのままぶつけられる可能性がある。ならば真正面からぶち抜けばいい。その意思に答え、魔力で出来たハンマーの先端がドリルのように尖り、回転を始める。

 これが、なのはの次にライアンに様々な事を教えてくれた恩師の魔法。ライアンの信じる、最強のハンマー使いの一点突破の突撃魔法。

 

「ラケーテンッ! ハンマァァァァァァッ!!」

 

 そして、直撃。その瞬間、途轍もない衝撃波が撒き散らされ、質量的には月と鼈程の差がありそうな二つの力が拮抗をする。

 ライアンも腕が吹き飛んでしまいそうな錯覚に陥ったが、この程度では腕は飛んで行かない。すぐに再び腕に力を込め、ミッド式故の火力の低さを補うための最後の一撃をお見舞いする。

 

「炸裂しろォ!!」

 

 直後、ハンマーを形成している魔力の一部をプロテクション・バーストの要領で爆破する。その爆発力はライアンの突撃力を更に上げ、迫ってきた木を一撃で払いのけた。

 木が弾かれ、完全に勢いを無くしたところでラケーテンハンマーの魔力を四散させ、すぐにN2Uを構える。

 

「連なり天に座せ、白銀の龍! ヘイムダル!!」

 

 そして、己の周囲が凍り始める程の冷気を纏い、吹き飛ばした木の上に巨大な氷塊を作り上げ、そのままぶつける。その大質量にジュエルシードによって生まれた木は倒れ、そのまま動かなくなった。

 ライアンはそれに一息ついてから、再び周りを見渡した。すると、地上の木に覆われている場所に二人の女の子が身を寄せ合ってジッとしているのを見つけた。すぐにそこへ向かうと、その二人の少女を見てライアンは息を呑んだ。

 その二人は、つい数分前までなのはと共にいたなのはの親友、アリサとすずかだった。

 二人はこの超常現象に巻き込まれ、腰を抜かしたのか座り込んでしまっていた。その頭上は木に覆われ、変に動いたら怪我をしてしまいそうだった。ライアンはその二人をどうしようかと一瞬考えたが、すぐに魔法を発動させた。

 

「紫電一閃」

 

 二人の周りにある木を魔法で焼き斬り、二人の周りを氷結魔法で凍らせ、ドームのような物を作って安全な場所を確保した。そのいきなりの出来事に二人は目を白黒とさせていたが、ライアンはその二人に対して声をかける事はなかった。

 

「……え、なんなの……本当になんなの……」

「はうぅ……」

 

 二人はいきなり起きた超常現象に声を出していたが、ライアンはすぐに飛び立った。

 そして、空から海鳴を見渡すと、海鳴の街は更にジュエルシードの生み出した植物に覆われていた。これでは、どれだけライアンが救出作業に入ったとしても、犠牲者がいつか出てしまうだろう。

 

「どうすれば……!」

 

 なのはの封印を待つ間にも、きっとかなりの被害が出てしまうのは間違いないだろう。だが、それをジッとしてみている訳にもいかない。だが、それなら。この街の都市機能には少し麻痺してもらうが、あの魔法で周囲を安全地帯に変える方がいい。

 

「後でユーノから何か言われるかもなぁ……」

 

 ボヤキながらも、その超広範囲な魔法で人を巻き込まないようにその魔法の範囲に居る人をライアンはソニックムーヴを使いながら範囲内に居る人をサーチャーや索敵魔法でしらみつぶしに救出していき、そして範囲内の人は完全にゼロになった。

 その間は五分程。まだ周囲を見てもなのはらしき人影は見えないし、桜色のスフィアも確認できない。それを把握してから、ライアンは恐らく中央であろう場所の真上に陣取り、魔法陣を展開した。この魔法は封印にも使えるが、少し構築プログラムを弄れば多少の融通は利く魔法だ。それで一時的にこの木の動きを止め、なのはに確実に封印してもらう。恐らく、魔力の使い過ぎで倒れるだろうし、数時間程その魔法は解ける事が無いと思われるが、これもコラテラルダメージだ。翠屋に設置していたフェレットの幻を維持する魔力すら使い、ライアンは魔法を練り上げる。

 

「クロノさん……永久凍土の魔法、お借りします」

 

 直後、ライアンの周りには四つの魔力のスフィアが生まれ、範囲内の対角線上に四つの魔力スフィアが配置される。そして、その中央に立つライアンがN2Uを振り上げると同時に、ヘイムダルの時とは比べものにならないほどの冷気が発生し、ライアンの全身が、バリアジャケットが凍り付き、皮膚にもその氷がへばり付く。髪の毛すら凍り始めるその冷気の中、魔力を練り続ける。

 この魔法はこんな街中では撃たないような……本来なら闇の書事件までは隠しておくべき魔法だ。だが、こんな未曾有の大災害が起こったのなら、隠しておくことは無い。確実に、犠牲者をゼロで留める。

 

「極寒よりなる凍土。凍てつく棺のうちにて、彼の者を押し留めん!」

 

 四つの魔力スフィアが冷気を発し、魔法の起動準備が整う。それを確認した瞬間、動き始めたジュエルシードの生み出した木。だが、この魔法はそれよりも速い。

 確実に、押し留める。

 

「凍てつけ! 極大凍結魔法、エターナルコフィンッ!!」

 

 直後。世界が凍った。

 ライアンの足元。そして、四つの魔力スフィアの真下から世界は氷に覆われていき、物凄い速さで氷は世界を覆っていく。そして、ものの数秒でライアンの指定した範囲は凍土に覆われ、木は完全に動かなくなった。

 極大凍結魔法、エターナルコフィン。その氷の強度はお墨付きであり、あの闇の書すら封印できるほどの性能を持つ代物。魔法ランクは、なのはのスターライトブレイカーすら上回る、Sオーバー。ライアンが授かった魔法達の中で唯一威力の減衰をさせずに撃てる魔法であり、一番最初に授かった魔法でありながら一番最後に習得した魔法。ライアンの切り札の一つ。管理局では禁止のレベルにまで至った魔法だ。

 それを、今この場で顕現させた。勿論、あのクロノですら放った後は疲労困憊になるレベルの魔法であるため、彼に劣るライアンでは、魔力をすぐに使い切ってしまう。

 それは今回も同じであり、ライアンは指定された範囲が完全に凍結されたのを確認してから、少し遠くにある、凍っていないビルの屋上に行くと、そのまま倒れた。

 

「あー……あったけぇ……」

 

 エターナルコフィンの冷気にやられ、体が冷えていたライアンはビルの屋上であったかい日差しを感じると、そのまま眠りについた。その直前、桜色のビームが視界を横切った気がしたが、それが何かを確認出来る程、ライアンに余裕は無かった。




ライアン氏、街中でエターナルコフィンを使う。一応、彼の切り札の一つであり、人に向けて撃ってはいけない魔法No.1でもあります。
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