魔法少女リリカルなのはEXTRA SEQUENCE   作:黄金馬鹿

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偶にはシリアス回があってもいいよネ!


第十六話

「ねぇ、ライアン君」

「何ですか、なのはさん」

 

 ライアンはなのはと二人、とある公園のベンチで二人一緒に座っていた。

 目の前では子供達が遊んでおり、微笑ましくなってしまう。それはなのはも同じようで、彼女の顔を横から見ると、小さく微笑んでいるのが分かった。だが、少し気になったのは、彼女の胸元には何時も一緒の相棒、レイジングハートが居ない事だろうか。ライアンも己のポケットを弄ってみたが、クロノ達から授かったN2Uが何処にもない。

 なのははそんなライアンの様子に気が付いたのか、クスクスと笑っていた。

 

「わ、笑わないでくださいよ……」

「ふふ、ごめんね」

 

 結局、体の何処を探してもN2Uは見つからなかった。どうせ今日は使わないからいいか。とライアンはN2Uを見つける事を放棄し、なのはと共に目の前を見つめる。

 だが、ふと思った。どうしてこうなったんだっけ。どうしてなのはと二人きりで公園にいるんだっけ。そんな頭の中の疑問は晴れる事無く、ライアンはなのはの横でひたすらに思考を巡らせていた。が、その最中。なのはが声をかけてきた。

 

「ライアン君はさ。今どうなの?」

「どう、とは?」

「楽しい、とか悲しい、とか……忙しい、とかさ」

 

 そう問うなのはの顔は少し悲し気に見えた。

 その言葉にライアンはすかさず楽しいけど忙しい、と答えようとした。が、その言葉がライアンの口から出る事はなかった。何か、本能的な物が、それは違うだろうと叫んでくる。

 だが、その理由が分からない。結局、ライアンが何かを言う前になのはが口を開いた。

 

「寂しいよね。辛いよね。たった一人で戦うのは」

「な、のはさん……?」

 

 何を言っている。一人ではない。だって、ライアンには友がいる。ヴィヴィオがいる。そして、何よりも、なのはがいる。それの何処が寂しいんだ。辛いんだ。

 何が、たった一人なんだ。

 

「だけどね。あっちのわたしも、頼ってみて。あの子は、二十年も昔だけど、ちゃんと私だから」

「一体何を……!?」

 

 だが、その時、ライアンの頭に何かが走り、その直後に思い出した。

 なのはが消え、ライアンが過去へと渡った事。そして、ライアンはそこでたった一人、過去を救って未来を取り戻すために戦っていると。

 

「じゃあ、私は行くね」

「ま、待ってください! 俺、まだ話したいことが!! 言いたいことがまだあるんです!!」

 

 立ち上がり背を向けるなのはの肩へ手を伸ばす。が、手は届かない。いや、届いているのに触れる事が出来ない。まるで、なのはがそこに居ないと示しているように。

 何度も足掻くように手を伸ばす。だが、なのはには届かず、彼女の姿が段々と透明になっていく。

 行かないでほしい。もっと、色々と教えてほしい。もっと、沢山話していたい。

 もっと、貴女と一緒に居たい。

 

「……そうだね。なら、もしも本当に困っちゃったとき。どうしようもない時。私を呼んで」

「どうしようも……ない時?」

「うん。どうしようもできなくて。ピンチで。ピンチでピンチで。どうしようも出来ない時。一度だけ、私は君に力を貸してあげる」

 

 振り向いたなのはの顔は、何時もと変わらない笑顔で。だけど、その瞳からは、涙が数滴垂れていた。

 

「それと、君には内緒にしていたけど……私は君に、もう一つだけあげた物があるの」

「もう一つ……?」

「うん。合言葉は、『全力全開』。きっと、この力は君の力になってくれるから」

 

 そう言うと、なのはは再び前を向いた。気が付けば、目の前は公園ではなく、真っ白な何も無い空間になっていた。なのははそこにゆっくりと歩を進めていく。ライアンは、彼女の後を追おうとするが、距離は縮まらず、離れていく。どれだけ足を動かしても、なのはに追いつくことは出来ない。

 なのははそんなライアンの事を見ることなく、最後に一言だけ呟いた。

 

「またね。私の、好きな男の子」

 

 その言葉を最後に、ライアンの意識は完全に落ちた。

 落ちる寸前。なのはの笑顔が見えた、気がした。

 

 

****

 

 

 目が覚めると、空は赤く染まりかけていた。つまりは夕方に近い時間帯。大体、午後の三時かそれより後位だろう。目が覚めてから、耳にやかましい何かの音が響いてくる。

 魔力を吐き出しつくしたリンカーコアは魔力を回復させるために再び寝ろ、と脳に命令を出してくる。魔力はそれなりに回復したが、ヘイムダル一発分すら危ういレベルまで消耗している。街を一部を完全に凍結させるSオーバーの魔法を使ったのだから、当たり前と言えば当たり前だろう。

 ライアンはそのまま睡魔に負けて再び眠りにつこうとしたが、ふと頭の下に何か柔らかい物があると気が付いた。それは枕のようで、しかし違う物。よく分からない物だった。

 

「……なんだ、これ」

 

 小さく、寝ぼけたように呟いた。それに触ろうとしたが、声を発した直後、ライアンを見知った少女が覗き込んだ。

 

「あ、ライアンさん。目が覚めたんだ」

「………………なのは、ちゃん?」

 

 一瞬、その顔が未来のなのはと被ってしまい、なのはさん、と言ってしまいそうだったが、何とか違和感が無いようになのはの名前を呼べた。

 だが、覗き込むなのはの顔がに、若干の違和感があった。偽物だとかではないが、一言で言うならば、近い。物凄く近い。それに、立って覗き込んでいるのなら、なのはのバリアジャケットのスカートが見える筈のなのに、見えない。というか、真横になのはの体がある。そして、ライアンの頭は地面よりも若干高い場所にある。

 さて、これはどういう事だ。どういう状況だ。なるべく頭を動かさないようにして考える。

 

「街が凍っちゃったと思ったら、その真上にライアンさんがいて……それで、ビルの上に行くとそのまま戻ってこなくなっちゃったから、心配して来ちゃったんです」

「……あー、ちょっと無茶しちゃってね」

 

 暫し考えていると、今の状況がかなりマズい物になっているのではないか、と思ってしまう。

 なのはの小さい手がライアンの頭を撫でる。つまり、なのはから撫でやすい位置にライアンの頭があるということ。そして、頭の下にあるのが硬いビルの床ではなく、柔らかい物になっている。

 つまり。誰かに見られたら人生が終わる可能性がある。警察に捕まるか、戦闘民族高町家の男連中に抹殺されるか。

 

「そ、それでさ、なのはちゃん。俺、今どういう状況?」

「えっと……ライアンさん、倒れるように寝ちゃってたので、寝にくくないように膝を枕代わりにしたんですが、ダメでしたか?」

「駄目じゃないけど……ちなみに、誰の膝?」

「わたしの、ですけど」

 

 さて、途轍もなくラッキーで途轍もなくヤバい状況になった。

 正直に言ってしまえば、このままなのはの膝の上で寝ていたい。つまり、膝枕を堪能していたい。とても堪能していたい。このまま二度寝したい。

 だが、そうは問屋が許さない。誰かに見られたら一発で断頭台に立たされる状況にある現状。とても名残惜しいが、すぐに離れなければならない。

 

「そ、そうか。じゃ、なのはちゃんの足も辛いだろうし、とっとと起き上がるよ」

 

 まだ魔力切れでクラクラしているが、流石に立ち上がらないとマズい。命の危機的にも、倫理的にも。色んな意味でマズい。

 なのはに不自然に思われないように立ち上がろうとする……が、なのはがそれを止めた。起き上がろうとするライアンの体と頭に手を置いて、そのまま再び寝かせた。

 天使からは、逃げられない。

 

「駄目ですよ。ライアンさん、魔力が無くなって上手く動けないんですよね? ユーノくんが後数時間は寝かせておかないとって言ってました」

「い、いや、でも早く戻らないと士郎さんと桃子さんが心配するだろ?」

「ちゃんと電話しましたし、一度だけ顔を見せてからアリサちゃん達の所に行くって言っておいたので大丈夫です。それと、ライアンさんが急に消えたのはユーノくんが何とかしているので大丈夫ですよ」

 

 どうやら、この子は結構用意周到らしい。決してライアンを逃さまいと包囲網を敷いている。

 一度やると決めたら本当にあまりの事がない限りは引かないなのはらしい、と言えばらしいのだが、トレーニングウェアを着た男が幼女に膝枕してもらっているなんて絵面、危なすぎる。

 なのはは子供故の羞恥心の薄さからか、膝枕に対して何の羞恥心も持っていないようにしか見えない。それに発情する、という訳ではないが、命の危険をビンビンに感じてしまっているため、冷や汗が出てしまいそうになる。

 どうにか出来ないか、と冷や冷やしていると、魔力回復となのはの意見、どっちも尊重できる素晴らしいアイデアが頭の中をよぎった。

 

「じゃ、じゃあ、俺、フェレットになるよ!」 

 

 余り働かない頭で何とか折衷案を見つけ、すぐにライアンはフェレット化した。

 なのはは少し名残惜しそうな声を出したが、それに気づかないフリをしてフェレット化を完遂させ、なのはの肩に飛び乗った。

 

「これで問題なし……」

 

 これなら誰かに見つかっても何とかなるだろう、と一息ついたが、なのはは肩に乗ったライアンを掴んで持ち上げると、膝の上に置いた。

 

「お、おおう?」

「肩じゃ寝にくいじゃないですか」

「そ、そうでも無いんだが……」

 

 実際にアリサの肩の上でライアンは結構くつろいでいた。だから、寝にくい、という訳ではないのだが、なのははそこを譲ってくれない。ここで無駄な口論をしたらどうなるのか分かったものじゃないため、ここはなのはの膝の上でくつろがせてもらう事にした。

 決してなのはの膝の上だからではない。決して。絶対に違う。

 

「……ライアンさんって凄いんですね」

「何がだ?」

 

 膝の上に乗せられ、撫でられていると、ふとなのはがそんな事を口にした。

 このまま寝たふりをしても良かったのだが、ちょっとなのはの口調が何時もの明るい感じではなく、暗い感じだったため、ここは相談に乗ることにした。

 ライアンが起きている事に気が付いていたのか、ほぼノータイムで返された言葉になのはは驚くことなく再び口を開いた。

 

「色んな人を魔法で助けて、倒れちゃうのにあんなすごい魔法を使ってジュエルシードを止めて……本当に、魔法使いみたいで」

 

 なのはの声色は、かなり暗いものがあった。

 きっと、幼い子供なりに魔法使いについて……魔導士について考えるものがあったのだろう。ライアンからしたら魔法というものはかなり身近な物であり、機械的な物でもあった。だから、昔から魔法に対しては夢を持たず、いうならばメジャーなスポーツのような物だった。

 しかし、なのはは違う。魔法というものは本来有り得ない物であり、テレビや漫画の中にしかない、キラキラとした不思議な、何でも出来てしまうような力。ライアンとは真逆とも言える存在だった。

 

「わたし……今日はジュエルシードが発動する前にジュエルシードを見つけてたんです」

「……そっか」

 

 そうだったのか。じゃあ何で見逃したんだ。そんな事はライアンは考えなかった。

 ただ、一言。そっか、と呟くだけだった。

 

「でも、見逃しちゃったせいでこんな事になっちゃって……わたし、こんな事になっちゃうなんて知らなくて……」

「……そうだな」

 

 こんな事になるなんて、ライアンだって知らなかった。知っていたら、もっと早く行動を起こしていた。いや、なのはが見逃した時には既に動いていた。

 なのはが何を思って見逃したのかはわからない。だが、それはきっと、もう少しだけ、もう少しだけ様子を見て、ジュエルシードが願いを正常に叶えてくれる事を期待したのではないか。あるいは、もう少ししたら回収しようと思っていたのではないか。

 当時のなのはの考えた事はわからない。が、ライアンはなのはを叱る事はない。管理局員として動いていたなら、厳重注意を施した所だが、今のライアンはただの無職ニートな魔導士だ。管理局員としての考えは持っていない。

 

「まぁ、そうさな……その気持ち、よく分かるよ」

「……え?」

 

 知らなかった。分からなかった。こんな筈じゃなかった。そんな事、ライアンも思ったことはある。それこそ、管理局に入った事すら、ライアンは後悔している。

 だが、そこから得られた物は、とても、とても。言葉に出来ない位大きかった。

 なのは、という最愛の師に、彼女から繋がっていった、沢山の人達。親切にしてくれて、力を授けてくれた、恩師達。愛してくれた、虹の魔力を持った少女。

 今、ここにいる事を決意させてくれた……過去を守ることを決意させてくれた、不屈の心を持った人。

 彼女達と繋がれた事。それは、後悔の一つである管理局に入った事から繋がったのだ。

 

「じゃあさ、これから後悔しないように頑張ればいいんだよ」

「これ、から……?」

「俺もさ、後悔している事は幾つもあるさ。つい最近、大きな選択肢も選んできた。それに後悔が無いって言ったら嘘になるさ」

 

 だけど。笑顔で送り出してくれた人がいた。信じてくれた人がいた。

 だから、頑張ろうと思った。あんな未来を変えるために、愛してくれた少女を切り捨ててまで、変えようと決意した。

 

「そうだな……なのはちゃんは、どうしてジュエルシードを集めようって思ったんだ?」

「それは……」

 

 言えないだろう。言えるような、胸を張って言えるような理由ではないだろう。

 なのはは、ただただ手伝いたかったんだ。目覚めた新しい力、魔法でライアンとユーノの役に立ちたいと思った。だから、こうしてバリアジャケットに身を包んで戦おうとしている。

 だが、先日から。あの強大な力を持ったジュエルシードモンスターを見てから、その考えも揺れてきている。あんな命を賭けてまで戦うような場所に、お手伝い感覚で居てもいいのかと。

 だから、特訓で強くなろうと思った。もっと、手伝えるように。

 その結果がこれだ。ジュエルシードを見逃し、ライアンが倒れるような事態にまでなって。

 

「……じゃあさ、なのはちゃん。これからどうしたい? ジュエルシードがあんな暴走を起こしたけど……君はどうしたい? もう嫌だって逃げ出したいか? 魔法なんて懲り懲りだってレイジングハートをユーノに返すか?」

「……」

 

 黙り込むなのは。責められている、と思ったのだろうか。その表情は暗い。

 ライアンはそんななのはを見て、何も言わずに人型に戻ってなのはの頭を撫でた。

 

「別に責めてる訳じゃない。ただ、俺はさ……お手伝いでもいい。偽善でもいい。無謀だっていい。なのはちゃんがやりたいって思ったことを……自分の信じた物を信じればいい」

「自分の……信じた物を、信じる?」

「そう。こんな事が起こったとしても……なのはちゃんがジュエルシードを集めたいのなら。こんな事が起こる前にジュエルシードを止めると決意したのなら。俺はなのはちゃんの決めたことに口出ししない」

 

 管理局というブラックな場所に自ら入っても、ライアンは愚痴こそ言っても抜ける事は無かった。管理局員として、戦っていた。

 それが、なのはに近づける最善手だと信じていたから。なのはの生徒としてではなく、隣に立つ相棒となれる最善手だと思ったから。あの純白の魔導士と共に在り、守れる存在になれると信じていたから。

 だから、ライアンは貫き通した。その意思を。

 その意思は今ここでも貫いている。隣に立ちたい人が子供になっても、過去に戻っても。彼女を守る。その一つの目的のために。

 

「だから、改めて聞くよ。なのはちゃんは、これからどうしたい?」

 

 きっと、なのはの言葉は、決まっている。

 こんな事を目の当たりにして、黙っている訳がない。この毒牙が関係ない人に、親友に、家族に向くことを、なのはは許容出来ないから。

 なのはは、一度決めたことを、絶対に曲げないから。

 

「……わたしは、止めたい。ジュエルシードがまたこんな事を起こす前に。後悔しても、一度決めたことを貫くために」

「お手伝いじゃなくてか?」

「うん。ライアンさんとユーノくんのお手伝いじゃなくて、わたしが止めたい。わたしは、魔法が使えるから」

 

 その言葉を聞いて、ライアンは安心した。いや、満足したと言うべきか。

 それでこそ、高町なのはだと。

 

「……じゃあ、これから頑張ろうな」

「うん!」

 

 異物として入り込んだライアンだが、こうやって相談に乗ることも悪くはないだろう。と、なのはの頭を撫でながら思った。

 

「じゃあ、ライアンさんはこのまま寝て魔力を回復させないと……」

「フェレット化」

 

 ライアンを膝の上に寝かせようとしたなのはだったが、結局フェレット化で逃げられるのであった。

 一方その頃。

 

「す、すずかぁ……この氷、溶けないんだけどぉ……」

「出入り口が小さすぎて出れないよぉ……」

 

 ライアンの作った氷のドームは予想以上に頑丈であり、更に出入り口の生成もミスったのか小さすぎたため、アリサとすずかは寒さに震えながら救出を待つのであった。

 ちなみに、氷がそう簡単には溶けないように設定していたライアンが魔法を解除したのはこれより一時間後だった。




A's後の魔法バレの後、ライアンはアリサとすずかにボコられるんじゃないかな?

そして淫獣化が進むライアンなのであった。多分、バレたら戦闘民族高町家のサンドバックになるんじゃないかな(遠い目)




あと、毎日更新が途切れたら日付変更と同時に更新に変わるかも。
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